通算68号No.5

衆議院本会議で初質問!(3月29日)

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小泉内閣の福祉の姿勢を問う!

 〜 障害者の雇用促進法改正案について 〜

 小泉首相や福田官房長官は、はぎれの良い改革の発言をくり返していますが、障害者福祉など弱い立場の方々への配慮が感じられません。
 そこで今回、障害者雇用について、小泉改革の基本姿勢をただしました。

質問に先立ち現場の声を聞く!
精神障害者の共同作業所を訪問

障害者を多く雇用している企業を訪ね、実状を聞く


〈山井質問1〉
■ジョブコーチをもっと増やすべき! 

 民主党の山井和則です。全国約500万人の障害者の方々の声なき声を代弁する気持ちで質問させて頂きます。
 ジョブコーチ制度は、障害者が就労する現場を、ジョブコーチが訪問し、障害者の職場が定着するように障害者と雇用主の橋渡しをする、重要な制度です。
 しかし、ジョブコーチは、来年度に800人の養成予定で、2400人しかサポートできず、就職が予想される障害者約3万人の1割にも及びません。

〈坂口力厚生労働大臣〉
★ジョブコーチ事業拡大を検討

 平成14年度には約760名のジョブコーチ配置のための予算を確保。それにより2400名程度の支援を実施できる。
 実施状況を踏まえニーズを見極めながら増員を検討していきたい。 


〈山井質問2〉
■精神障害者の雇用促進について
 〜 法定雇用率に算定すべき! 〜

 雇用されている障害者は、身体障害者の12%、知的障害者の20%に対して、精神障害者は200万人のうち5万人で2.5%に過ぎません。
 その大きな理由は、民間企業で1.8%、公的機関で2.1%という法定雇用率に、精神障害者が除外されているからです。
 私は10年前に、京都ボランティア協会に勤務し、障害者のサポートをしておりましたが、その当時から、厳しい偏見の目で見られ、公的なサポートが少ないのが精神障害者でした。
 法定雇用率に精神障害者を算定することを強く求めます。

〈坂口大臣〉
★精神障害者に対する雇用支援策を早急に展開

 今後、雇用率制度の対象とする方向で取り組むことが適切。そのためには、障害者本人の意思に反しての雇用率制度の対象とされていることを防ぐためのプライバシーに配慮した把握確認方法の確立が必要である。
 精神障害者に対する各種雇用支援策を早急に展開したい。


〈山井質問3〉
■障害者雇用率の公表について
〜法定雇用率未達成企業は56%〜

 現在、民間企業で雇用されている障害者は約25万人で、平均雇用率は1.49%と、法定雇用率の1.8%を大きく下回っています。
 企業側に聞くと、「障害者を雇うよりも、月5万円の納付金を払ったほうが安い」という声が強く、法定雇用率未達成企業は56%で、1000人以上の大企業では4社に3社が未達成です。
 これでは、法定雇用率とは名ばかりで、「金さえ払えば、障害者は雇わなくてよい」という制度です。
 各企業や公的機関の雇用率を公表することを強く求めます。

〈坂口大臣〉
★勧告でも改善が見られなければ企業名公表

 雇い入れ計画作成命令や勧告等に、法律に定めて対する手順などを経ても改善が見られない場合は、社会的制裁として企業名を公表する。
 先ほどご指摘の「金を払った方が安くつく」にならないようにしていきたい。


〈山井質問4〉
■数値目標を明示し、行政評価を行うべき!

 社会的コストの面から見ても、就労と自立の支援は、働く意欲と能力のある障害者を失業させ、施設入所や生活保護を適用することよりも必要です。
 何よりも、就労することによって、障害者は誇りと生きがい、将来への夢を持ち、地域で暮らせます。
 来年度予算で143億円の障害者雇用促進の予算を使う以上、数値目標を掲げるべきです。

〈坂口大臣〉
★厳正な雇用率達成指導を行う

 法定雇用率を達成していない企業は未達成の原因を個々に分析しつつ、引き続き厳正な雇用率達成指導を行い、障害者の雇用状況の改善に努めたい。



〈山井質問5〉
■障害児との交流 を深める教育について
〜余裕校舎や余裕教室の福祉施設への転用〜

 障害者雇用を阻むもう1つの理由は、「障害者と接したことがない。障害者に何ができるのかわからない」という雇用主の声です。
 日本社会は、障害児や障害者を社会から隔離する傾向があります。これは日本の教育の問題点です。
 私はスウェーデンに2年間留学した経験がありますが、その学校では、盲目の学生や車いすに乗った学生もおり、日々、接しているうちに、自然と障害者への接し方や障害者のできること、できないことを学びました。
 日本の学校でも、障害のある子供とない子供との交流を促す統合教育や、普通学校と養護学校の併設や交流、また、生徒数が減った学校の余裕校舎や余裕教室の福祉施設への転用を積極的に進めるべきではないでしょうか。

〈遠山敦子文部科学大臣〉
★余裕教室の障害者施設転用手続きを簡素化

                                                                                              児童生徒が、障害のある児童生徒と接することは、障害者に対する理解認識を深めるとともに、ともに社会を構成する市民として、成長していくためにも大事なことです。
 更に文部科学省は、施設面からも余裕教室を障害者福祉施設転用手続きの大幅簡素化を実施するとともに、障害のある児童生徒との交流教育を行う普通学校に対しては、必要となるバリアフリー経費について国庫補助を行うとともに、各自治体の取り組み支援をしている。
 今後とも学校教育において、児童生徒が、障害のある児童生徒と接する機会が広げられるように努力する。



〈山井質問6〉
■「障害者の権利法」の制定について
   〜障害者が不当に差別されない社会づくりのために〜

 失業率が高い現状において、障害者の雇用だけを優先せよとは言えません。しかし、障害があることを理由に、真っ先に解雇されるのは、差別です。
 このような雇用問題に限らず、障害者が不当に差別されない社会づくりのためには、日本にもアメリカのADA法のような「障害者の権利法」が必要です。
 障害者は哀れみや保護を必要としているのではなく、権利としての自立への援助を求めているのです。
 坂口大臣、意気込みと計画をお聞かせ下さい。

〈坂口大臣〉
★障害者の制度を真剣に見直していく

 わが国では、米国のADA法制定の動きを踏まえ、障害者基本法を制定している。
 また、障害者に対する不当な差別的取扱い禁止については、今国会に提出された人権擁護法案で手当てされている。
 米国のように一般の企業や、事業者に、雇用やサービス提供に当たり、障害者の差別を禁止し、バリアフリー化や補助手段の提供の義務付け等、わが国も導入努力を続けたい。
 また、山井議員にも色々ご協力いただきたい。



〈山井質問7〉
■構造改革と障害者雇用の関係について
〜「骨太の方針」に障害者の記述がないのはおかしい〜

 今年1月に出た「構造改革と経済財政の中期展望」の報告書の中では、「人を何より重視する経済社会」が掲げられていますが、障害者について全く言及がありません。
 また、昨年6月の「骨太の方針」の中でも、「高齢者などの働きやすい環境づくり」としか、触れられておらず、障害者は「など」という言葉に含まれるとの解釈もできますが、極めて不十分です。

〈竹中平蔵経済財政担当大臣〉
★改革の基本は自助自立の社会を創ること

 改革の基本にあるのは、自助自立の社会を創ることである。
 自らを助けることの出来る人がたくさん居れば居るほど、真の弱者、すなわち、自らを助くることが困難な重い障害者、重い病気の方に対して、本当に手厚い対応が可能になると考えている。
 そうした中で、障害者自身が単に保護の対象とされるのではなく、自らの可能性に挑戦し、切り開いていける社会を創ることは、きわめて重要であると、認識している。


 


〈山井質問8〉
■小泉改革が目指す社会について
 〜障害者が職場から切り捨てられる社会であってはならない!〜

 私の近所に知的障害者のグループホームがありますが、その入居者の4人のうち私の知人でもある2人が最近リストラにあい、「障害者の雇用促進どころやない。この不況で真っ先に障害者が首になっている」という悲鳴を聞きました。
 障害者がどのように地域で暮らし、職場で働ける社会を小泉内閣は目指しておられるのか、その決意を福田官房長官にお尋ねします。
 障害や病気、失業で苦しむ人々は、最も政治の力を必要としているにもかかわらず、最もこの国会から遠くにいて、国会に陳情に来ることも、政治献金をすることもできません。そのような人々の声なき声を代弁することこそが政治であり、そのような人々を切り捨てる政治を私は決して許すことはできません。
 私は、この1年9ヶ月、国会で仕事をさせていただいて、この永田町というところが、お金や地位や名誉のある人たちが非常に多い集まりであると感じています。強い立場の者が自分たちの立場だけを考えて政策をつくったら、ゆがんだ社会になるのは当たり前です。このような弱い立場に対する配慮が小泉内閣には決定的に欠けています。
 より多くの障害のある人々が就労し、自立し、地域に暮らせるようにすることこそが、今のすさんだギスギスした日本社会を明るく、温かくする方策であることを強く訴えて私の質問を終わらせて頂きます。

〈福田康夫官房長官〉
★社会的弱者への目配りに努める

 人を何よりも重視する国、つまり、人の能力と個性発揮を大切にし、人が活躍できる仕組み、人を育む社会環境をつくっていく。
 障害者だからと差別を受けることはなく、年齢や性別にかかわらず誰もが能力に応じ、適切な報酬を受け、生きがいを持って働くことができ、国民誰もが安心して生活できる社会を目指す。
 ま、小泉内閣はですね、社会的弱者に充分目配りをした施策の実現に努めてまいります。


〈山井の感想〉
 最後の福田官房長官の発言(下線)に象徴されるように小泉内閣は言うことはきれいですが、福祉についての理解や情熱は、残念ながらほとんど感じらませんでした。
 

この本会議の質問ビデオを貸し出しております。お気軽にやまのい事務所までご連絡下さい。またその他の委員会質問のビデオもあります。


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