スウェーデン視察記 No.2

 今回は前回に続き、スウェーデングループホーム「ダルボ」の報告です。

 さて、グループホーム「ダルボ」を見て、7年前よりもかなり入居者が高齢化、重度化し、車椅子の入居者も7人中2人。

  私はこの姿を見て、日本のグループホームの5〜7年後を見た思いだった。日本ではここ2〜3年でグループホームが500か所ほどに増え、来年度予算でもさらに500ヶ所増える予定だ。
 しかし、数年後には、スウェーデンと同じように車椅子に乗った痴呆性高齢者がグループホームにも増えるであろう。


 グループホームのスタッフによると、
「入居時に、すでに車椅子である痴呆性高齢者を、グループホームが拒むわけではないが、実際には、グループホーム入居時はほとんどの痴呆性高齢者が歩行可能である」という。

 しかし、足腰が弱り、車椅子になったからという理由で、痴呆性高齢者がグループホームを追い出されることはないという。

 それは、グループホームが「住居」であり、「自宅」である以上、本人は意思表明できなくとも、家族が「最後までグループホームで面倒見て欲しい」とたいてい言う以上、追い出すわけにはいかないのだ。


 今回スウェーデンで訪問した4箇所のグループホームすべてで、スタッフは「入院治療が必要になる場合をのぞいて、グループホームで最後まで面倒を見る」と言っていた。

 ただし、あるスタッフは、「身動きできなくなると、本当は、グループホームの良さが十分に発揮できないんですけれど」と言った。

 実際、「ダルボ」グループホームでも7人中、食事づくりを手伝うことができる入居者は、ゼロであった。


 また、7年前と明らかに違ったのは、地域看護婦の活躍である。

 地域看護婦とは、日本の訪問看護婦に似ているが、より医師に近い大きな権限をもっている。

 「ダルボ」グループホームにも、1日に3回、定期的に地域看護婦が登場している。

「入居者が重度化するので、地域看護婦の役割は、ますますグループホームにとって大きくなる」とケアスタッフは言う。

 ここでは、併設された介護付き住宅(サービスハウス)に、地域看護婦が常駐しているのですぐに来られる。


 この点(併設)について、スタッフのイングリッドさん(介護職員)は、「最後までグループホームで面倒を見るわけですから、老人ホームや介護付き住宅、病院などとの併設のほうがグループホームは安心です」という。

 「単独型グループホームはバックアップが不安」と言う。

 スウェーデンでは、グループホームのうち単独型は1割も満たない。

 また、単独型でも多くのものはユニット型であり、グループホームが2〜4つくっついたものである。

しかし、私はイングリッドさんに言った。

 「スウェーデンでは、併設する相手のケア付き住宅や、老人ホームが街中(まちなか)にあるので、グループホームも併設型で問題はない。

 日本では、老人ホームが地価の安い街はずれにある場合が多いので、併設型ばかりだとグループホームも街はずれになり、グループホームの理念である”住み慣れた地域で老いる”を実現できない。だから、日本では単独型グループホームも数多く必要だ」と言った。

 イングリッドさんにしてみたら、「なぜ、日本では老人ホームが街はずれに建てられているのか」が理解できないようだった。


 ここで、話はずれるが、以上のようなやりとりを、私は7年ぶりに話すスウェーデン語で話した。正直言って、多少相手に通じていなかった部分もあるが、自分で言うのもなんだが、グループホームの取材だけはスウェーデン語が、すらすらでて、議論がはずむ。
 一般の会話はカタコトなのに。


 イングリッドさんは、グループホームのスタッフにとって最も大切なことは“チームワーク”だと言った。スタッフ同士が十分に話し合い、目指すべきケアのイメージを一致させることが大事だという。

 改めて居室を訪問させてもらったが、車椅子対応のバス・トイレ、居室、キッチンがすべての部屋についている。

 だから、グループホームは自宅であり、住居なのだ。


 ここで、グループホームの原語に触れねばならない。
グループホームはスウェーデン語では
gruppboende(グルップボエンデ)
あるいはgruppbostader(グルップボーステーデル)と言う。
gruppはグループ。
boende,bostaderは「住居」「居住」「住宅」という意味。

 ただ日本で「グループ住居」などというとわかりにくいのでグループホームとなっている。

 ちなみに、英語ではgruop-living(グループリビング)。
英語ではグループホームではないのだ。


 またイングリッドさんが言うには、「重度の痴呆性高齢者が増えると、スタッフが二人がかりで、介護せねばならない場合も出てくるので、スタッフを増やす必要がある」と言った。

 現時点では、入居者7人に対して、日中は3人、晩は1人のスタッフ。ただし、夜勤専門の職員がおり、日勤と夜勤とは別々の人がしている。


 以上、スウェーデン報告の第二回目、痴呆性高齢者グループホームについてでした。

 また続きをお楽しみに。

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               やまのい和則 拝


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