。☆〃。★〃。☆〃。★〃。☆〃。★〃。☆〃。★ やまのい和則の 「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」 - Yamanoi Kazunori Mail Magazine - 第27号(2000/12/15) 。★〃。☆〃。★〃。☆〃。★〃。☆〃。★〃。☆ メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。 もう20世紀も残すところあと2週間。皆さんも慌しい日々をお過 ごしのことと思います。 今回は政治と福祉とグループホームのメールマガジンがほぼ同じ 内容であることをお許しください。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ さて、今日はとっても嬉しいことがあり、メールマガジンを発行 します。 というのは、12月6日付けの読売新聞の切抜きに、 「痴ほうと向き合う暮らし」という健康フォーラムの報告記事がで ていました。 そこでの基調講演で、厚生省の山崎史郎老人福祉計画課長が、 次のように語っているのです。 ☆ ☆ ☆ 「厚生省が、積極的に整備を進めているのが、痴ほうのお年寄りが 7,8人で生活する『グループホーム』です。 痴ほうの方は非常に傷つきやすい心を持っている面があり、50人、 100人といった集団生活では、状態が悪くなります。 グループホームでは、調理、洗濯などの生活を本人に任せ、自分ら しい穏やかな生活ができる特徴があります。 現在、全国に700ヵ所ありますが、いずれは小学校区に1ヶ所ぐ らいは欲しいと考えています」 ☆ ☆ ☆ これは、画期的な発言です。 今まで「中学校区に1つ」という目標は、おぼろげながら出ていた のですが、中学校区に1つだと全国で約10、000か所。小学校区 に1つだと約25,000ヶ所です。 グループホームを小学校区に1つ、整備するとすれば、それが日 本全国の介護ネットワークの基礎になります。 グループホームは町に1つぽつんとあっても仕方なく、やはり、 小学校区に1つあって、のぞめば、住み慣れた地域で、痴呆症にな っても暮らし続けられる、ということが魅力です。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 私の人生最大の目標の1つが、グループホームを小学校区に1つ つくり、助け合いの「共生」社会をつくることです。 その夢の実現が一歩近づいたように思えて私は感動しています。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 次に、私がグループホームをライフワークとしている思いを書か せて頂きます。 ☆ ☆ ☆ いじめが増え、青少年の残酷な犯罪が連日のように報道され、社 会がすさんできたように思います。 人間と人間は、時には競争し、お互いが切磋琢磨することも必要で す。 勤勉に働かねば、国際競争力を維持することはできません。 しかし、あまりにも競争社会が行き過ぎると、「人間の敵は人間だ」 というギスギスしたすさんだ社会になってしまいます。 今こそ、「人間と人間は本来は、お互い助け合うものだ」というこ とを再認識する必要があります。 競争社会が行き過ぎると、「他人の不幸は自分の幸せ。他人の幸せ は自分の不幸」というような風潮になりかねません。 しかし、「他人の悲しみは自分の悲しみ。他人の喜びは自分の喜び」 と言える社会にせねばなりません。 そのような「競争」と「共生」がうまくバランスできた社会をつ くるために、私は「グループホームを小学校区に1つ(全国25000 ヶ所)」運動を提案したいと思うのです。 20世紀の福祉の問題点の一つは、町はずれにお年寄りや障害者 の大きな施設をつくり、心身に障害のある方を、地域社会から遠ざ けてきたことだと思います。 私は世界を3年間、福祉の調査でまわったことがありますが、その 国の「敬老度合い」は、その国で老人ホームがどこに建設されてい るかによって決まります。 残念ながら、先進国の中で、老人ホームが最も町はずれにあるのが 日本です。 年をとって痴呆症になったり、身体が弱ったら暮らせない地域社会 って、本当はおかしいですよね。 最も地域の助け合いが必要となり、引越しが症状を悪化させる高齢 の時に、お年寄りが見ず知らずの地域に引っ越さざるを得ないのは おかしいですよね。 ☆ ☆ ☆ このような問題点を解決するために、私はグループホームを増や す運動を、過去10年間しています。 グループホームとは、6−9人規模の痴呆症のお年寄りなどが 介護スタッフと共同生活をする場です。 民家を改造してつくることもできます。 100坪あればできます。 痴呆症のお年寄りにとっても、グループホームのような家庭的な 雰囲気の中で、スタッフと共に簡単な家事や趣味を楽しみ、残って いる能力を生かし、少しでも生きがいや役割を持つことが痴呆症状 をやわらげることがわかっています。 痴呆症になっても昔からの慣れ親しんだ家事や趣味の能力は残っ ている場合が多く、何もしないよりは、その能力を発揮したほうが、 痴呆症状が悪化しにくいのです。 また、住み慣れた地域にあるので、顔なじみの近所のお茶飲み友 だちもグループホームを訪問しやすいし、お年寄り本人もたとえ自 宅に住み続けられなくても、環境の変化が少なくて疎外感が少なく てすみます。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ このようなグループホームを、小学校区に1つつくる。そうして 地域で老いを支えるようにする。 実際、私の知っている京都のグループホームでは、最初は 「迷惑施設」ということで、グループホームに反対運動があったけ れど、グループホームができてからは、近所の子供が遊びに来たり、 ボランティアさんが集ったりしています。 グループホームが地域の助け合いの拠点になったり、痴呆症のお 年寄りへの偏見を改める教育の場になっているのです。 「グループホームができると、そこから愛が生まれる」という言葉 もあります。小学校区に1つグループホームをつくることにより、 助け合いの「共生」の社会をつくるのが私の夢です。 また、グループホームは必ずしもお年寄りだけでなく、障害のあ る方々も望めば地域のグループホームで暮らすことのできる社会 を目指しています。 私は、グループホームが地域に増えれば、いじめは減ると思いま す。今のいじめの原因は、弱い者いじめの社会そのものにあります。 三世代同居が減り、お年寄りと接する機会も減り、障害のある方々 が地域社会から遠ざけられるから、助け合いの心を子供たちが育む チャンスも減る。 しかし、グループホームが増え、地域で障害のあるお年寄りなど が暮らせるようになり、大人がボランティアとして、弱った方々を 支えている後ろ姿を、子供たちに見せることができれば、地域が変 わります。 その姿から、子供たちは、「弱った人を大事にするのが人の道なの だ」と学ぶでしょう。 温かな助け合いの「共生」社会をつくる起爆剤として、私は、 グループホーム運動を進めたいと思っています。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 私は、26歳の時、イギリスのエジンバラにある老人ホームで、 1ヶ月住み込みでボランティアをさせてもらいました。 そこはキリスト教の老人ホームでした。私はそこで教わったことは、 福祉だけでなく私の人生に大きな影響を与えました。 敬虔なクリスキャンであったその老人ホームの施設長さんの教 えは、”write a love letter”ということでした。 「愛あふれる手紙を書け」ということでしょう。 それも、「1日に1通はラブレターを書きなさい」と言われました。 それ以外にも、「口論は避けなさい」、「愛の言葉を語りなさい などと教わりました。 すさんだ社会とは、言い換えれば、愛がとぼしい社会です。 私は、人間を人間たらしめているのは人間愛だと思います。 しかし、今の慌しい毎日の中で、愛を感じ、愛を実践することは簡 単なことではありません。 また、「愛は与えられるものではなく、与えるものだ」とも言われ ます。 私がパソコンに向かってメールマガジンを書く1つの思いは、 この"write a love letter"という言葉です。 人の批判や愚痴ではなく、愛あふれるメールマガジンを1通でも書 きたい。こんなことを感じています。 やまのい和則 拝 |