やまのい和則の 「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」 第37号(2001/04/02) メールマガジンの読者に皆さん。 まず、今日のメールマガジンは恐ろしく長い(今までで一番長い) ことをまずお詫びします。今日の報告のトピックは3つ。 痴呆性高齢者向けグループホームで泊まり込んでの報告。 30日衆議院厚生労働委員会での、雇用対策法とグループホーム についての私の質問。 そして、神奈川県の質に問題があるグループホームに対して、国 と県の指導が入った報告(グループホームに指導が入ったのは日本 で初めて)です。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 前回のメールマガジンでも書いたが、「明日、国会で質問するの で今から2時間後に行って今日、泊まらせてほしい」と急に電話し て、すぐに泊めてもらえる仲間がいるのが私の財産だと思う。 国会議員は現場から離れたら意味がないからだ。 おまけに、その日の夜勤スタッフが偶然にもこのメールマガジン の読者というラッキーもあった。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ まず、議論を整理せねばならないが、痴呆性高齢者向けグループ ホームは「宿直」で対応できることになっており、介護報酬でも 夜勤を想定していない。 しかし、このグループホームでは「夜勤」で対応している。 このグループホームの夜勤スタッフは、晩9時から翌朝8時半ま で。まず、私が訪問すると、夜勤スタッフは、介護日誌を読み、 いろいろと書き加えているところであった。介護の仕事には、この ようなデスクワークが意外と多いのだ。 私はこのグループホームに来るのは3回目。 4年前、開所して1週間後にも来たことがあるので、来るたびに 居心地良さそうなホームになっていて嬉しい。 「灯りは暗くしてあります。もう皆さん寝ておられますので」と 言われ、リビングの椅子に座る。 「今日は、ゆっくり皆さんも寝られると思いますよ」と言われた ので、「なぜ、『今日は』なのですか。日によって違うのですか」 と尋ねると、「違いますよ。昼間、活動的に過ごされれば、疲れて ぐっすり眠られます」とのこと。 「今日は、皆さん近くの桜のお花見に行かれたんです。そして、 マクドナルドでハンバーガーとマックポテトを食べられました」と のこと。 ただし、9人の入居者のうち一人は行かないと言われたので、 8人が2人のスタッフとボランティアさんと共に出かけたという。 このグループホームは街の中にあり、ほぼ毎日、買い物や散歩で外 出している。近くで花壇を借りて、花の手入れもみんなでしている。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ このような話をすると、「入居者の症状が軽いから、いろんな活 動ができるのでは?」と思われるかもしれないが、入居者の要介護 度は、要介護2・3・4が3人ずつで、軽くはない。 確かにグループホームにもいろいろある。当初から軽い痴呆性高 齢者だけを集めているグループホームもある。しかし、この日私が 訪問したグループホームは、私も今までかかわっているが、初期・ 中期の痴呆性高齢者だが、ケアがゆきとどいているので、入居者が 落ち着いているのだ。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ わざわざ私を待っていて下さったホーム長さんは、 「夜のケアは、非常に大事です。晩、ぐっすり寝られたら、日中も 元気にお年寄りは過ごせます。でも、晩、トイレ誘導や見守りが、 きっちりできず、十分に寝られなかったら、そのお年寄りは昼間、 うつらうつらすることになり、その結果、晩、起き出し、昼夜逆転 で、痴呆症は悪化します。昼間、活動的にして、晩、ぐっすり寝る ことができれば、痴呆症のいわゆる問題行動や、周辺症状と言われ るものの多くは、なくなります」という。 「ただし、ここで重要なのは、いくら晩ぐっすり寝ると言っても、 トイレに起きることもあるし、寂しくなって目を醒ますこともあり ます。その時にきっちり対応できないと、お年寄りは睡眠不足にな り、昼夜逆転になります。だから、グループホームには宿直でなく て、夜勤が必要なのです」とホーム長さん。 久しぶりに会ったホーム長さんが、「山井さん、疲れた顔をして おられますね」とおっしゃるので、「毎日忙しくて、もうボロボロ ですよ。私にこそグループホームのゆったりした生活と、グループ ホームの癒しが必要です」と言うと、笑っておられた。 私たちがこんな話を薄暗い居間で小声でしている間にも、30分 に一人くらいお年寄りがトイレに行かれる。そのたびに、夜勤スタ ッフが付き添い、トイレに誘導する。 「逆に、付き添われるを嫌がる入居者も2人います。しかし、残り の入居者は、夜中トイレには行けても、自分の部屋にもどれない。 トイレに行けても自分でパンツをおろせない。トイレに行けてもす でに失禁してしまっていて、その場でパンツやオムツを替えねばな らない、というケースもある。さらに、最高齢の方は、寝ぼけてト イレに歩く途中に転ぶ危険性があるので、付き添います」とのこと。 ☆ ☆ ☆ ここは、本当に居心地のよいホームだ。「入居希望者も多いでし ょう。待機者は何人ですか」と尋ねると、「10人待っておられます。 でも、待たないで下さい、と言ってあるんです。待たれても、入居 者の方が1年後に亡くなるか、2年後に亡くなるかわからないんで すから。だから、ほかのグループホームを紹介しています」と。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ しかし、グループホームにも、のちほど述べるように、ピンから キリまである。グループホームだから良いということにはならない。 なお、このグループホームの入居費は月15万円。特別養護老人 ホームの2倍以上で高い。利用料が高いことが、グループホームの 問題点の1つだ。 9人の入居者のうち2人は、「寂しいから」と電気をつけたまま 寝ている。 このグループホームは入居者は、9人中8人が自立歩行ができる。 一人は高齢で少し介助が必要。 先日、入居者が一人亡くなられた。家族も泊り込み、グループホ ームでターミナルまで面倒を看られたのだ。 ホーム長さんは、「痴呆症のお年寄りには環境の変化が一番良くな いのですから、死期が近づいたからと言って、簡単に施設や病院に 移って下さいとは言いたくありません。 家族もこのグループホームに最期まで置いてほしい、と願われまし たので。でも、その方の死は悲しかったですが、このグループホー ムで最期まで看取れたことは嬉しかったです。夜勤だから、ターミ ナルまで対応できたのです」という。 このようなグループホームでのターミナルを希望するケースがこ れからも増えてくるであろう。ますます宿直では全く対応できない。 ☆ ☆ ☆ このグループホームのお風呂をのぞいた。 ここでは、日中から夕方にかけて入居者は入浴する。ここは、当然、 一人向けの家庭的な風呂だ。入浴といえば、私はある老人病院での 実習を思い出す。汚い話になるかもしれないが、お許し頂きたい。 ☆ ☆ ☆ ここは、当然、一人向けの家庭的な風呂だ。入浴といえば、私は ある老人病院での実習を思い出す。汚い話になるかもしれないが、 お許し頂きたい。 老人病院や特別養護老人ホームの現場を少しでも理解するため に、今までいろいろやってきた。特別養護老人ホームのベッドで 3日間、オムツをつけて生活したおぞましい記録は私の拙著「体験 ルポ 日本の高齢者福祉」(岩波新書)に出ている。 本には書いてないが、実は、その時、オムツ体験だけでなく、わざ と片手をベッドの柵にヒモで結んで、「身体拘束」体験で寝ること も経験した。寝返りも打てず、恐ろしい経験だった。気分が悪くて 吐き気までしたので、一晩で止めた。「縛られる」というのは、 想像を絶する心理的打撃を本人に与えることを痛感した。 ☆ ☆ ☆ また、老人病院で入院している痴呆症のお年寄りと一緒に入浴し たこともあった。朝から50人くらいがこのお風呂につかる。まあ、 銭湯みたいなものだ。しかし、看護婦さんから、「山井さん、アホ なことやめときなさい、病気がうつるよ。先日も、この湯船にはウ ンチが浮いてたんだから」と叱られた。 話はグループホームに戻るが、また、お年寄りがトイレに向かっ て歩いている。 よそ者が滞在すると、グループホームの平和なくつろいだ雰囲気 を壊し、入居者に混乱を与えかねないので、できるだけ私も入居者 に見つからぬよう、静かに行動する。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ さすがに、翌日の委員会では、眠たい顔では質問できないので、 徹夜はできない。そこで、私はトイレの横の居間に、お布団を敷い て、2時から仮眠。夜勤スタッフの方は、もう少し起きていて、 介護日誌を書いたり、普段からたまっている書類書きをしながら、 お年寄りがトイレに行く際の、介助などをするという。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ なお、このグループホームを訪問するに先立ち、私の知り合いの 京都のグループホームに電話をした。ちょうど、私の知り合いが宿 直であった。 彼女に聞いた。「宿直ということは今晩、寝られるんですか」。 「寝られませんよ。寝るようじゃ、よい痴呆ケアなんかできません よ。今晩は、1時間おきにお年寄りの部屋を訪問して、様子をみて、 オムツ交換やトイレ誘導をします。夜中に目を醒まして眠れないお 年寄りには、一晩中、付き添うこともあります」とのこと。 「じゃあ、1時間おきに目覚まし時計をかけるのですか」 「いえ、だから、ほとんど寝ないんですよ。お年寄りが起きてトイ レに行こうとするとすぐわかるように、居間のコタツのところで日 誌を書いたりして起きています」 「それじゃあ、宿直じゃなくて、夜勤じゃないですか」 「そうですよ。でも、介護報酬が低くて夜勤の給料が出せないので、 宿直にしているんです」 「どんな宿直の場合、勤務形態なのですか」 「私は、今日の朝11時から夜7時まで日勤で働いて、そのまま、 明日の朝7時まで12時間宿直です。実際は、20時間働き通しです。 夜中にお年寄りが寝れないことも、トイレに行くこともありますか ら、ウトウトと横になることはありますが、熟睡はできません」 「明日朝7時に宿直が終わったら、すぐに帰れるんですか」 「そんなことないですよ。やはり、翌日のスタッフへの引継ぎなど もありますから、気がつけば帰るのは朝の8時か9時です。でも、 宿直だから、宿直の当日は休みですが、その翌日はまた日勤になる のです」 このグループホームも非常に素晴らしいケアをしているが、それを 支えるスタッフは大変である。そこのスタッフは言う。 「早く夜勤を制度化してもらわないと、職員が身体を壊します」と。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 今回の質問にあたって、この「宿直・夜勤」問題について調べた ところ、横浜市では、グループホームは「夜勤でないと認められて いない」とのこと。 横浜市は、日本で最もグループホームに力を入れている自治体の 1つで、現在29ヶ所のグループホームがあるが、すべて「夜勤体 制」でやっているという。 横浜市の担当者に聞いてみると、「夜勤でないと認めないという わけではありませんが、横浜市では介護保険以前からモデル事業と してグループホームに補助金を出していて、その時から夜勤でやっ てもらっていたので、今でも『夜勤が望ましい』とお願いしていま す。実際、宿直ではまわらないと思います」とのこと。 だから、夜勤体制を持つよいグループホームでは、採算が合いに くく、増えにくいことになってしまう。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ さて、2時に仮眠に入った私だが、やはり、30分に一人くらいは、 お年寄りがトイレに行き、夜勤スタッフがそれに付き添っている。 そのたびに、私も目が醒める。 4時ごろには、もう本格的にお年寄りが起き出し、顔を洗ったり、 お年寄り同志の話し声も聞こえる。 夜勤スタッフも4時からは朝食の準備も含めて、大忙しです。 私も一度5時ごろ起き上がろうとしたのですが、入居者である痴呆 症のお年寄りから、「もう少しゆっくり寝ておいてくださいね」と やさしく声をかけられ、断るわけにもいかず妙に納得して、「わか りました。もう少し寝かせてもらいます」と再びふとんに入る。 さすがに、6時には数人のお年寄りが起き、居間の電気もついた ので、私も起き上がる。昨夜のことを夜勤スタッフに尋ねようと思 ったが、夜勤スタッフはそれどころではない。9人の入居者のお世 話でてんてこ舞い。一人の歯磨きを手伝い、朝食準備をし、寝間着 からの着替えを手伝い・・・・。息つく暇もない。 あるおばあさんは、廊下の家具のぞうぎんがけをしている。 あまりきれいにはなっていないようだが、「・・・・さん、ありが とう」と夜勤スタッフがやさしく声をかける。 最後の入居者が起きてきたのが7時前。ここでは、起床時間も自 由だ。 あとで聞いた話だが、夜勤スタッフは2時過ぎから4時ごろまで トイレの横に布団を敷いて仮眠したという。しかし、30分に一度 くらいお年寄りがトイレに行くので、そのたびに起きて介助したと いう。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 7時からみんなで朝食。ただし、一人の入居者は、気が進まない ようで、食卓に加わらず、一人で居間の端っこで、タバコを吸って いる。小規模だけど、個人の意思を尊重している。これがグループ ホームの良さだ。 今日の朝食は、トーストとソーセージ、ほうれんそう、目玉焼き など。基本的には、みんな自分で食べられる。しかし、トーストの ジャムで手がべたべたになっている方や、トーストをスープにつけ て、ごちゃごちゃにしてしまっている方もいる。 夜勤スタッフはその介助などでまた、大忙し。やっと、みんなが 食べ終わりかけた7時半頃に夜勤スタッフもテーブルに加わり、朝 食。グループホームでは、スタッフも入居者と一緒に食事を食べる のが特長だ。 「こののどかな雰囲気がいいですねえ。私もここに来させてもら うのは3回目ですが、来るたびに良くなっています。皆さん、穏や かな顔をされているし」と私が、夜勤スタッフの方に話すと、 「誉めてもらって嬉しいねえ」と私の隣の入居者の方がおっしゃる。 この方は要介護3の痴呆症なのだが、私が、「ここを誉めている」 ということは直感としてわかっているのだ。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 朝食が終わってからが、また、忙しい。これはグループホームの カラーだと思うが、このグループホームでは、わりと、入居者が 自立していることもあり、入居者に役割を持ってもらっている。 「・・・さん、お皿洗い手伝って」 「・・・さん、カーテンをあけてもらえますか」 「・・・・さん、掃除機をかけてもらえますか」。 ちなみに、この掃除機をかけている方は、まだ50代の若年性痴呆。 自分はこのグループホームで働いていると思っておられる。 夜勤スタッフにすれば、自分でやったほうが早いのであるが、少 しずつ一人一人に役割と 「自分はこのグループホームに必要な人間なんだ」と存在意義をも ってもらうのが、グループホームケアの重要なポイントだ。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 私が国会の委員会質問の原稿を書くために、部屋のはしっこでこ のパソコンを打っていると、「お茶どうぞ」と、一人の入居者がお 茶を持ってきてくださる。やさしい。 その方は、私の横にちょこんと座って、 「いつかここにお見えになったことがありますね」と私に言う。 「ええ、今日で3回目です」と言うと、「ああ、そうですか」との こと。しかし、5分すると、また「いつかここにお見えになったこ とが・・・・」と同じ質問。私が答える。すると、また5分後に同 じ質問・・・。と続いた。 そして、「お茶のおかわりをどうぞ」とのこと。一気に飲み干し、 二杯目をもらう。また、「いつかここに・・・・」と同じ質問。 そして、「お茶のおかわりを・・・」。また、3杯目をもらう。 「熱いかもしれませんので、気をつけて飲んで下さいね」とのこと。 痴呆症のお年寄りはやさしいのだ。そして、世話好き。 しかし、自宅や大規模な施設では、この痴呆症のお年寄りが世話を する相手がなかなかいない。痴呆症のお年寄りはお世話される一方 の存在になりがちだ。しかし、グループホームでは一人一人のお年 寄りに役割と出番を持ってもらう。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ それにしても、グループホーム夜勤スタッフは偉いと思う。痴呆 ケアスタッフの鏡である。私の多くのグループホームや特別養護老 人ホームや老人病院を過去10年まわっているからよくわかる。 特に、痴呆ケアはスタッフが大事だ。 決してお年寄りを怒ってはならない。 せかしてはならない。 至れり尽せりでもダメ。 適度に出番と役割を持ってもらう。 それで、「ありがとう」「おかげで助かったわ」とお礼の言葉や誉 め言葉を連発する。 動作も言葉もゆっくりしたペースが必要。 しかし、実は、やるべき仕事は多く、一人で多くのお年寄りをお世 話せねばならない。 愛と忍耐と勉強のいる仕事だ。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「グループホームは人なり」と言える。小規模であるがゆえに、 スタッフの人柄、人間性、専門性、力量が問われる。 8時にグループホームを後にして、国会に向かう。 「そろそろ失礼します。お世話になりました」と挨拶すると、 「どこに行かれるんですか」とお年寄り。 「出勤です。仕事に行ってきます」と言うと、 「あっ、そうですか。また、来て下さいね」と言って下さる。 掃除機を使っていた若年性痴呆の方も、 「いつでもまたお越しください」と言って下さる。 夜勤スタッフの方が、 「私たちが笑顔で暮らせるように、これから国会で仕事をして下さ るんです」と説明するが、もちろん、その言葉を理解できる入居者 はいない。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ さて、国会事務所で少し国会質問の準備。 たった一晩のグループホーム滞在だったが、改めて感じたのは、 グループホームのスタッフは、晩はゆっくり寝ていられないという こと。 なお、有難いことに坂口力厚生労働大臣は、2週間前にあるグル ープホームを視察されているという。 そのグループホームに電話して、その時の様子を聞く。何か国会質 問の参考になればと思って。 ホーム長さんは、「夜間は宿直ですが、実質上は、夜勤に近い仕事 をすることもあります。私たちも困っているんです。制度では宿直 ということになっているけど、実際は、夜勤に近い業務だし、この グレーな状況を何とか整理してほしい」とのことだった。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 朝の10時50分から厚生労働委員会がスタート。私の出番は11 時35分から12時05分まで。この日は、雇用対策法の法案審議な ので、冒頭、雇用対策のことと、痴呆ケアの人材が今後必要になる ことなどを述べて、グループホームの話に入った。 まず第一問は、「坂口大臣は先日、グループホームを視察された そうですが、ご感想はいかがでしたか?」の質問でスタートした。 「とても良かった。グループホームに入って、穏やかになったお 年寄りも多いと聞いた。しかし、現場からは、グループホームに入 って、落ち着くと介護度が下がって、介護報酬が減るので、経営が 苦しくなる、よいケアをすると経営が苦しくなるので何とかしてほ しい、という声を聞いた」と坂口大臣は答弁。 以下、30分間、議論を戦わせた。 前回のメールマガジンでもお伝えしたように、「痴呆性高齢者向け グループホームには夜勤が必要だ」というのが私の質問の趣旨だっ たが、前向きな答弁は得られなかった。 詳しく書きたいが、書き出すと「泥沼」になるので、あえてやめ ておきます。 前向きな答弁は得られないし、介護報酬の引き上げも2年後の見直 し時期までわからないということで散々な結果でした。 なかなか壁は厚いと痛感。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ この議事録は、衆議院の委員部が作成しますので、2週間後くら いには出ます。私のホームページに掲載します。ちなみに、今でも ホームページ( http://www.yamanoi.net/ )からビデオの映像で見 られます。ご覧になった方は、是非、ご感想をお聞かせください。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ グループホームの介護報酬を引き上げることは、グループホーム 関係者の悲願ですが、それに向かっては、やはり、全国で 「グループホームは必要だ」 「グループホームは良いサービスを提供している」 「いまの介護報酬では無理がある」 という声を大きくあげていく必要があると思います。 つまり、これは私が政治家を志した原点でもあるのですが、声の 大きな業界団体をバックに持たない問題は、国会では取り上げられ ないのです。痴呆性高齢者も100万いますが、声をあげられませ ん。そのご家族もなかなか大きな声は、あげられません。グループ ホームの協会も、大きな声をあげられません。 グループホームを増やそう! といううねりを全国に広げるしかありません。そのための運動媒 体に、このメールマガジンがなってほしいと願っています。正直言 って、私の民主党の中でもグループホームへの関心はまだまだです。 私の努力不足でもあります。 繰り返しになるかもしれませんが、私がグループホームにここま でこだわるのは、グループホームというサービスが、 「利用者が主人公」 「一人一人を大切にする個別ケア」 「地域で暮らせるノーマリゼーション」 という21世紀の福祉のシンボルだと思い、グループホームを増や すことが、日本の福祉に革命を与える突破口になると思うからです。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ さて、今日のメールマガジンは長くなり、ご迷惑をおかけしてい ますが、もう1つ大きなトピックがあります。それは、神奈川県の あるグループホームへの国と県の指導についてです。 ☆ ☆ ☆ グループホームの質が最近、問題になっています。劣悪な質の悪 いグループホームも増えています。そんな中で、神奈川のこのグル ープホーム(株式会社経営)に日本で初めて、県と国の監査が入り、 さる3月29日に、改善の指導命令が、下されました。 2ヶ月以内に指導に沿って改善しなければ「介護保険事業者として の認可を取り消す」というものです。 指摘された問題は、「相次いだお年寄りの転倒事故などに適切な 緊急対応ができていなかったり、人員配置面や料金徴収に不適切な 面がみられる」などの点です。 一言で言えば、「グループホームとは何か」を十分に理解せずに グループホームを開設し、お年寄りへのサービスの質よりも、経営 を優先させたということです。 ☆ ☆ ☆ 私は、「とうとう来るべき時が来たか」という悲しみを持って、 このニュースに接しました。老人病院のベッドで縛られている痴呆 症のお年寄りの姿に涙し、1989年にスウェーデンでグループホー ムに出会い、希望を見出し、日本でグループホームを普及させるた めに、 「グループホームは良いんだ」 「グループホームを増やそう」 「グループホームが痴呆ケアの切り札なんだ」 と10年以上、運動し、講演し、本を書き、そして、グループホー ムを普及させるために、議員にまでなった私にとって、国や県から 指導を受ける、悪いグループホームがとうとう発覚したということ はあまりにも悲しいことです。 「グループホームといっても、良いものだけではない、悪いグル ープホームもある」と、グループホームの評判も低下するでしょう。 グループホームを増やそう、という運動の輪を広げる時に、こんな 事件が起こることは残念無念です。 もちろん、私もグループホームを増やす過程では、いつかは悪い グループホームが問題化することはあるだろう、と覚悟はしていま した。 しかし、悲しいです。 ☆ ☆ ☆ このグループホームについても、さきほどの私の委員会質問と同 様に書き出せばキリがないので、あえて詳しくは書きませんが、非 常に重要なことなので、新聞報道を私のホームページ ( http://www.yamanoi.net/ )に掲載しました。 ☆ ☆ ☆ この問題を、しっかり教訓にしないと、大変なことになります。 このような悪いグループホームがあるからこそ、厚生労働省は 「今より介護報酬を引きあげれば、悪徳グループホームが増えるか らあげられない」と言うのです。 深刻なのは、行政担当者は、 「今回問題になったグループホームは、氷山の一角。金儲け目当て にグループホームの何たるかも十分に理解せずに、グループホーム を開設したいと相談に来るケースが多く困っている」と言っている。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 実際、先日のメールマガジンでも流したように、厚生労働省も グループホームの質の確保に危機感をもち、4月からグループホー ムに対する指導強化に乗り出します。 それがしっかり機能することを祈っていますが、同時に、事後で はなく、事前にいかにチェックするか。今回もグループホームから の内部告発があったので、県の監査が入り、問題になっただけであ り、内部告発がなければ、何ら問題は発覚していなかったのです。 その意味では、似たようなグループホームの例は全国各地にあり ます。厚生労働省はサービスの質の評価基準をつくって、グループ ホームのチェックリストに対して、 ☆自己評価(自分で自分のグループホームについて各項目が達成で きているかチェック)、 ☆相互評価(近隣のグループホームのホーム長に訪問してもらいチ ェック)、 ☆第3者評価(第3者である専門家が訪問しチェック) という方法で質を確保することを目指しています。 このことを通して、グループホームの質を高め、同時に、量を増 やさねばならないと思います。 以上、非常に長い長いメールマガジンで申し訳ありませんでした。 3時間もメールマガジンを打ってしまいました。 このグループホームの問題は今後も報告を続けます。 やまのい和則 拝 ================================================== ☆やまのい和則の「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」☆ (2001/04/02現在 読者数 1248) |