やまのい和則の
      「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」

             第37号(2001/04/02)

 メールマガジンの読者に皆さん。
 まず、今日のメールマガジンは恐ろしく長い(今までで一番長い)
ことをまずお詫びします。今日の報告のトピックは3つ。

 痴呆性高齢者向けグループホームで泊まり込んでの報告。
 30日衆議院厚生労働委員会での、雇用対策法とグループホーム
についての私の質問。
 そして、神奈川県の質に問題があるグループホームに対して、国
と県の指導が入った報告(グループホームに指導が入ったのは日本
で初めて)です。

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 前回のメールマガジンでも書いたが、「明日、国会で質問するの
で今から2時間後に行って今日、泊まらせてほしい」と急に電話し
て、すぐに泊めてもらえる仲間がいるのが私の財産だと思う。
国会議員は現場から離れたら意味がないからだ。

 おまけに、その日の夜勤スタッフが偶然にもこのメールマガジン
の読者というラッキーもあった。

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 まず、議論を整理せねばならないが、痴呆性高齢者向けグループ
ホームは「宿直」で対応できることになっており、介護報酬でも
夜勤を想定していない。
しかし、このグループホームでは「夜勤」で対応している。

 このグループホームの夜勤スタッフは、晩9時から翌朝8時半ま
で。まず、私が訪問すると、夜勤スタッフは、介護日誌を読み、
いろいろと書き加えているところであった。介護の仕事には、この
ようなデスクワークが意外と多いのだ。

 私はこのグループホームに来るのは3回目。
4年前、開所して1週間後にも来たことがあるので、来るたびに
居心地良さそうなホームになっていて嬉しい。

 「灯りは暗くしてあります。もう皆さん寝ておられますので」と
言われ、リビングの椅子に座る。 

 「今日は、ゆっくり皆さんも寝られると思いますよ」と言われた
ので、「なぜ、『今日は』なのですか。日によって違うのですか」
と尋ねると、「違いますよ。昼間、活動的に過ごされれば、疲れて
ぐっすり眠られます」とのこと。

 「今日は、皆さん近くの桜のお花見に行かれたんです。そして、
マクドナルドでハンバーガーとマックポテトを食べられました」と
のこと。

 ただし、9人の入居者のうち一人は行かないと言われたので、
8人が2人のスタッフとボランティアさんと共に出かけたという。
このグループホームは街の中にあり、ほぼ毎日、買い物や散歩で外
出している。近くで花壇を借りて、花の手入れもみんなでしている。

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 このような話をすると、「入居者の症状が軽いから、いろんな活
動ができるのでは?」と思われるかもしれないが、入居者の要介護
度は、要介護2・3・4が3人ずつで、軽くはない。

 確かにグループホームにもいろいろある。当初から軽い痴呆性高
齢者だけを集めているグループホームもある。しかし、この日私が
訪問したグループホームは、私も今までかかわっているが、初期・
中期の痴呆性高齢者だが、ケアがゆきとどいているので、入居者が
落ち着いているのだ。

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 わざわざ私を待っていて下さったホーム長さんは、
「夜のケアは、非常に大事です。晩、ぐっすり寝られたら、日中も
元気にお年寄りは過ごせます。でも、晩、トイレ誘導や見守りが、
きっちりできず、十分に寝られなかったら、そのお年寄りは昼間、
うつらうつらすることになり、その結果、晩、起き出し、昼夜逆転
で、痴呆症は悪化します。昼間、活動的にして、晩、ぐっすり寝る
ことができれば、痴呆症のいわゆる問題行動や、周辺症状と言われ
るものの多くは、なくなります」という。

 「ただし、ここで重要なのは、いくら晩ぐっすり寝ると言っても、
トイレに起きることもあるし、寂しくなって目を醒ますこともあり
ます。その時にきっちり対応できないと、お年寄りは睡眠不足にな
り、昼夜逆転になります。だから、グループホームには宿直でなく
て、夜勤が必要なのです」とホーム長さん。

 久しぶりに会ったホーム長さんが、「山井さん、疲れた顔をして
おられますね」とおっしゃるので、「毎日忙しくて、もうボロボロ
ですよ。私にこそグループホームのゆったりした生活と、グループ
ホームの癒しが必要です」と言うと、笑っておられた。

 私たちがこんな話を薄暗い居間で小声でしている間にも、30分
に一人くらいお年寄りがトイレに行かれる。そのたびに、夜勤スタ
ッフが付き添い、トイレに誘導する。
「逆に、付き添われるを嫌がる入居者も2人います。しかし、残り
の入居者は、夜中トイレには行けても、自分の部屋にもどれない。
トイレに行けても自分でパンツをおろせない。トイレに行けてもす
でに失禁してしまっていて、その場でパンツやオムツを替えねばな
らない、というケースもある。さらに、最高齢の方は、寝ぼけてト
イレに歩く途中に転ぶ危険性があるので、付き添います」とのこと。

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 ここは、本当に居心地のよいホームだ。「入居希望者も多いでし
ょう。待機者は何人ですか」と尋ねると、「10人待っておられます。
でも、待たないで下さい、と言ってあるんです。待たれても、入居
者の方が1年後に亡くなるか、2年後に亡くなるかわからないんで
すから。だから、ほかのグループホームを紹介しています」と。

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 しかし、グループホームにも、のちほど述べるように、ピンから
キリまである。グループホームだから良いということにはならない。
 
 なお、このグループホームの入居費は月15万円。特別養護老人
ホームの2倍以上で高い。利用料が高いことが、グループホームの
問題点の1つだ。

 9人の入居者のうち2人は、「寂しいから」と電気をつけたまま
寝ている。 

 このグループホームは入居者は、9人中8人が自立歩行ができる。
一人は高齢で少し介助が必要。

 先日、入居者が一人亡くなられた。家族も泊り込み、グループホ
ームでターミナルまで面倒を看られたのだ。

ホーム長さんは、「痴呆症のお年寄りには環境の変化が一番良くな
いのですから、死期が近づいたからと言って、簡単に施設や病院に
移って下さいとは言いたくありません。

家族もこのグループホームに最期まで置いてほしい、と願われまし
たので。でも、その方の死は悲しかったですが、このグループホー
ムで最期まで看取れたことは嬉しかったです。夜勤だから、ターミ
ナルまで対応できたのです」という。

 このようなグループホームでのターミナルを希望するケースがこ
れからも増えてくるであろう。ますます宿直では全く対応できない。

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 このグループホームのお風呂をのぞいた。
ここでは、日中から夕方にかけて入居者は入浴する。ここは、当然、
一人向けの家庭的な風呂だ。入浴といえば、私はある老人病院での
実習を思い出す。汚い話になるかもしれないが、お許し頂きたい。

      ☆      ☆      ☆      

 ここは、当然、一人向けの家庭的な風呂だ。入浴といえば、私は
ある老人病院での実習を思い出す。汚い話になるかもしれないが、
お許し頂きたい。

 老人病院や特別養護老人ホームの現場を少しでも理解するため
に、今までいろいろやってきた。特別養護老人ホームのベッドで
3日間、オムツをつけて生活したおぞましい記録は私の拙著「体験
ルポ 日本の高齢者福祉」(岩波新書)に出ている。

本には書いてないが、実は、その時、オムツ体験だけでなく、わざ
と片手をベッドの柵にヒモで結んで、「身体拘束」体験で寝ること
も経験した。寝返りも打てず、恐ろしい経験だった。気分が悪くて
吐き気までしたので、一晩で止めた。「縛られる」というのは、
想像を絶する心理的打撃を本人に与えることを痛感した。

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 また、老人病院で入院している痴呆症のお年寄りと一緒に入浴し
たこともあった。朝から50人くらいがこのお風呂につかる。まあ、
銭湯みたいなものだ。しかし、看護婦さんから、「山井さん、アホ
なことやめときなさい、病気がうつるよ。先日も、この湯船にはウ
ンチが浮いてたんだから」と叱られた。

 話はグループホームに戻るが、また、お年寄りがトイレに向かっ
て歩いている。

 よそ者が滞在すると、グループホームの平和なくつろいだ雰囲気
を壊し、入居者に混乱を与えかねないので、できるだけ私も入居者
に見つからぬよう、静かに行動する。

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 さすがに、翌日の委員会では、眠たい顔では質問できないので、
徹夜はできない。そこで、私はトイレの横の居間に、お布団を敷い
て、2時から仮眠。夜勤スタッフの方は、もう少し起きていて、
介護日誌を書いたり、普段からたまっている書類書きをしながら、
お年寄りがトイレに行く際の、介助などをするという。

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 なお、このグループホームを訪問するに先立ち、私の知り合いの
京都のグループホームに電話をした。ちょうど、私の知り合いが宿
直であった。

 彼女に聞いた。「宿直ということは今晩、寝られるんですか」。
「寝られませんよ。寝るようじゃ、よい痴呆ケアなんかできません
よ。今晩は、1時間おきにお年寄りの部屋を訪問して、様子をみて、
オムツ交換やトイレ誘導をします。夜中に目を醒まして眠れないお
年寄りには、一晩中、付き添うこともあります」とのこと。

 「じゃあ、1時間おきに目覚まし時計をかけるのですか」
「いえ、だから、ほとんど寝ないんですよ。お年寄りが起きてトイ
レに行こうとするとすぐわかるように、居間のコタツのところで日
誌を書いたりして起きています」
「それじゃあ、宿直じゃなくて、夜勤じゃないですか」
「そうですよ。でも、介護報酬が低くて夜勤の給料が出せないので、
宿直にしているんです」

 「どんな宿直の場合、勤務形態なのですか」
「私は、今日の朝11時から夜7時まで日勤で働いて、そのまま、
明日の朝7時まで12時間宿直です。実際は、20時間働き通しです。
夜中にお年寄りが寝れないことも、トイレに行くこともありますか
ら、ウトウトと横になることはありますが、熟睡はできません」

 「明日朝7時に宿直が終わったら、すぐに帰れるんですか」
「そんなことないですよ。やはり、翌日のスタッフへの引継ぎなど
もありますから、気がつけば帰るのは朝の8時か9時です。でも、
宿直だから、宿直の当日は休みですが、その翌日はまた日勤になる
のです」

 このグループホームも非常に素晴らしいケアをしているが、それを
支えるスタッフは大変である。そこのスタッフは言う。
「早く夜勤を制度化してもらわないと、職員が身体を壊します」と。

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 今回の質問にあたって、この「宿直・夜勤」問題について調べた
ところ、横浜市では、グループホームは「夜勤でないと認められて
いない」とのこと。

 横浜市は、日本で最もグループホームに力を入れている自治体の
1つで、現在29ヶ所のグループホームがあるが、すべて「夜勤体
制」でやっているという。

 横浜市の担当者に聞いてみると、「夜勤でないと認めないという
わけではありませんが、横浜市では介護保険以前からモデル事業と
してグループホームに補助金を出していて、その時から夜勤でやっ
てもらっていたので、今でも『夜勤が望ましい』とお願いしていま
す。実際、宿直ではまわらないと思います」とのこと。

 だから、夜勤体制を持つよいグループホームでは、採算が合いに
くく、増えにくいことになってしまう。

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 さて、2時に仮眠に入った私だが、やはり、30分に一人くらいは、
お年寄りがトイレに行き、夜勤スタッフがそれに付き添っている。
そのたびに、私も目が醒める。

 4時ごろには、もう本格的にお年寄りが起き出し、顔を洗ったり、
お年寄り同志の話し声も聞こえる。

 夜勤スタッフも4時からは朝食の準備も含めて、大忙しです。
私も一度5時ごろ起き上がろうとしたのですが、入居者である痴呆
症のお年寄りから、「もう少しゆっくり寝ておいてくださいね」と
やさしく声をかけられ、断るわけにもいかず妙に納得して、「わか
りました。もう少し寝かせてもらいます」と再びふとんに入る。

 さすがに、6時には数人のお年寄りが起き、居間の電気もついた
ので、私も起き上がる。昨夜のことを夜勤スタッフに尋ねようと思
ったが、夜勤スタッフはそれどころではない。9人の入居者のお世
話でてんてこ舞い。一人の歯磨きを手伝い、朝食準備をし、寝間着
からの着替えを手伝い・・・・。息つく暇もない。

 あるおばあさんは、廊下の家具のぞうぎんがけをしている。
あまりきれいにはなっていないようだが、「・・・・さん、ありが
とう」と夜勤スタッフがやさしく声をかける。

 最後の入居者が起きてきたのが7時前。ここでは、起床時間も自
由だ。

 あとで聞いた話だが、夜勤スタッフは2時過ぎから4時ごろまで
トイレの横に布団を敷いて仮眠したという。しかし、30分に一度
くらいお年寄りがトイレに行くので、そのたびに起きて介助したと
いう。

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 7時からみんなで朝食。ただし、一人の入居者は、気が進まない
ようで、食卓に加わらず、一人で居間の端っこで、タバコを吸って
いる。小規模だけど、個人の意思を尊重している。これがグループ
ホームの良さだ。

 今日の朝食は、トーストとソーセージ、ほうれんそう、目玉焼き
など。基本的には、みんな自分で食べられる。しかし、トーストの
ジャムで手がべたべたになっている方や、トーストをスープにつけ
て、ごちゃごちゃにしてしまっている方もいる。

 夜勤スタッフはその介助などでまた、大忙し。やっと、みんなが
食べ終わりかけた7時半頃に夜勤スタッフもテーブルに加わり、朝
食。グループホームでは、スタッフも入居者と一緒に食事を食べる
のが特長だ。

 「こののどかな雰囲気がいいですねえ。私もここに来させてもら
うのは3回目ですが、来るたびに良くなっています。皆さん、穏や
かな顔をされているし」と私が、夜勤スタッフの方に話すと、
「誉めてもらって嬉しいねえ」と私の隣の入居者の方がおっしゃる。
この方は要介護3の痴呆症なのだが、私が、「ここを誉めている」
ということは直感としてわかっているのだ。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 朝食が終わってからが、また、忙しい。これはグループホームの
カラーだと思うが、このグループホームでは、わりと、入居者が
自立していることもあり、入居者に役割を持ってもらっている。

 「・・・さん、お皿洗い手伝って」
「・・・さん、カーテンをあけてもらえますか」
「・・・・さん、掃除機をかけてもらえますか」。
ちなみに、この掃除機をかけている方は、まだ50代の若年性痴呆。
自分はこのグループホームで働いていると思っておられる。

 夜勤スタッフにすれば、自分でやったほうが早いのであるが、少
しずつ一人一人に役割と
「自分はこのグループホームに必要な人間なんだ」と存在意義をも
ってもらうのが、グループホームケアの重要なポイントだ。

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 私が国会の委員会質問の原稿を書くために、部屋のはしっこでこ
のパソコンを打っていると、「お茶どうぞ」と、一人の入居者がお
茶を持ってきてくださる。やさしい。

 その方は、私の横にちょこんと座って、
「いつかここにお見えになったことがありますね」と私に言う。
「ええ、今日で3回目です」と言うと、「ああ、そうですか」との
こと。しかし、5分すると、また「いつかここにお見えになったこ
とが・・・・」と同じ質問。私が答える。すると、また5分後に同
じ質問・・・。と続いた。

 そして、「お茶のおかわりをどうぞ」とのこと。一気に飲み干し、
二杯目をもらう。また、「いつかここに・・・・」と同じ質問。
そして、「お茶のおかわりを・・・」。また、3杯目をもらう。
「熱いかもしれませんので、気をつけて飲んで下さいね」とのこと。

 痴呆症のお年寄りはやさしいのだ。そして、世話好き。
しかし、自宅や大規模な施設では、この痴呆症のお年寄りが世話を
する相手がなかなかいない。痴呆症のお年寄りはお世話される一方
の存在になりがちだ。しかし、グループホームでは一人一人のお年
寄りに役割と出番を持ってもらう。

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 それにしても、グループホーム夜勤スタッフは偉いと思う。痴呆
ケアスタッフの鏡である。私の多くのグループホームや特別養護老
人ホームや老人病院を過去10年まわっているからよくわかる。

特に、痴呆ケアはスタッフが大事だ。

決してお年寄りを怒ってはならない。
せかしてはならない。
至れり尽せりでもダメ。
適度に出番と役割を持ってもらう。
それで、「ありがとう」「おかげで助かったわ」とお礼の言葉や誉
め言葉を連発する。
動作も言葉もゆっくりしたペースが必要。
しかし、実は、やるべき仕事は多く、一人で多くのお年寄りをお世
話せねばならない。
愛と忍耐と勉強のいる仕事だ。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 「グループホームは人なり」と言える。小規模であるがゆえに、
スタッフの人柄、人間性、専門性、力量が問われる。

 8時にグループホームを後にして、国会に向かう。
「そろそろ失礼します。お世話になりました」と挨拶すると、
「どこに行かれるんですか」とお年寄り。
「出勤です。仕事に行ってきます」と言うと、
「あっ、そうですか。また、来て下さいね」と言って下さる。
掃除機を使っていた若年性痴呆の方も、
「いつでもまたお越しください」と言って下さる。

夜勤スタッフの方が、
「私たちが笑顔で暮らせるように、これから国会で仕事をして下さ
るんです」と説明するが、もちろん、その言葉を理解できる入居者
はいない。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 さて、国会事務所で少し国会質問の準備。
 たった一晩のグループホーム滞在だったが、改めて感じたのは、
グループホームのスタッフは、晩はゆっくり寝ていられないという
こと。
 なお、有難いことに坂口力厚生労働大臣は、2週間前にあるグル
ープホームを視察されているという。

そのグループホームに電話して、その時の様子を聞く。何か国会質
問の参考になればと思って。

ホーム長さんは、「夜間は宿直ですが、実質上は、夜勤に近い仕事
をすることもあります。私たちも困っているんです。制度では宿直
ということになっているけど、実際は、夜勤に近い業務だし、この
グレーな状況を何とか整理してほしい」とのことだった。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 朝の10時50分から厚生労働委員会がスタート。私の出番は11
時35分から12時05分まで。この日は、雇用対策法の法案審議な
ので、冒頭、雇用対策のことと、痴呆ケアの人材が今後必要になる
ことなどを述べて、グループホームの話に入った。

 まず第一問は、「坂口大臣は先日、グループホームを視察された
そうですが、ご感想はいかがでしたか?」の質問でスタートした。

 「とても良かった。グループホームに入って、穏やかになったお
年寄りも多いと聞いた。しかし、現場からは、グループホームに入
って、落ち着くと介護度が下がって、介護報酬が減るので、経営が
苦しくなる、よいケアをすると経営が苦しくなるので何とかしてほ
しい、という声を聞いた」と坂口大臣は答弁。

 以下、30分間、議論を戦わせた。
前回のメールマガジンでもお伝えしたように、「痴呆性高齢者向け
グループホームには夜勤が必要だ」というのが私の質問の趣旨だっ
たが、前向きな答弁は得られなかった。

 詳しく書きたいが、書き出すと「泥沼」になるので、あえてやめ
ておきます。

前向きな答弁は得られないし、介護報酬の引き上げも2年後の見直
し時期までわからないということで散々な結果でした。
なかなか壁は厚いと痛感。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 この議事録は、衆議院の委員部が作成しますので、2週間後くら
いには出ます。私のホームページに掲載します。ちなみに、今でも
ホームページ( http://www.yamanoi.net/ )からビデオの映像で見
られます。ご覧になった方は、是非、ご感想をお聞かせください。 

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 グループホームの介護報酬を引き上げることは、グループホーム
関係者の悲願ですが、それに向かっては、やはり、全国で

「グループホームは必要だ」
「グループホームは良いサービスを提供している」
「いまの介護報酬では無理がある」

という声を大きくあげていく必要があると思います。

 つまり、これは私が政治家を志した原点でもあるのですが、声の
大きな業界団体をバックに持たない問題は、国会では取り上げられ
ないのです。痴呆性高齢者も100万いますが、声をあげられませ
ん。そのご家族もなかなか大きな声は、あげられません。グループ
ホームの協会も、大きな声をあげられません。

 グループホームを増やそう!

 といううねりを全国に広げるしかありません。そのための運動媒
体に、このメールマガジンがなってほしいと願っています。正直言
って、私の民主党の中でもグループホームへの関心はまだまだです。

私の努力不足でもあります。

 繰り返しになるかもしれませんが、私がグループホームにここま
でこだわるのは、グループホームというサービスが、

「利用者が主人公」
「一人一人を大切にする個別ケア」
「地域で暮らせるノーマリゼーション」

という21世紀の福祉のシンボルだと思い、グループホームを増や
すことが、日本の福祉に革命を与える突破口になると思うからです。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 さて、今日のメールマガジンは長くなり、ご迷惑をおかけしてい
ますが、もう1つ大きなトピックがあります。それは、神奈川県の
あるグループホームへの国と県の指導についてです。

      ☆      ☆      ☆      

 グループホームの質が最近、問題になっています。劣悪な質の悪
いグループホームも増えています。そんな中で、神奈川のこのグル
ープホーム(株式会社経営)に日本で初めて、県と国の監査が入り、
さる3月29日に、改善の指導命令が、下されました。

2ヶ月以内に指導に沿って改善しなければ「介護保険事業者として
の認可を取り消す」というものです。

 指摘された問題は、「相次いだお年寄りの転倒事故などに適切な
緊急対応ができていなかったり、人員配置面や料金徴収に不適切な
面がみられる」などの点です。

一言で言えば、「グループホームとは何か」を十分に理解せずに
グループホームを開設し、お年寄りへのサービスの質よりも、経営
を優先させたということです。

      ☆      ☆      ☆      

 私は、「とうとう来るべき時が来たか」という悲しみを持って、
このニュースに接しました。老人病院のベッドで縛られている痴呆
症のお年寄りの姿に涙し、1989年にスウェーデンでグループホー
ムに出会い、希望を見出し、日本でグループホームを普及させるた
めに、
「グループホームは良いんだ」
「グループホームを増やそう」
「グループホームが痴呆ケアの切り札なんだ」

と10年以上、運動し、講演し、本を書き、そして、グループホー
ムを普及させるために、議員にまでなった私にとって、国や県から
指導を受ける、悪いグループホームがとうとう発覚したということ
はあまりにも悲しいことです。

 「グループホームといっても、良いものだけではない、悪いグル
ープホームもある」と、グループホームの評判も低下するでしょう。

グループホームを増やそう、という運動の輪を広げる時に、こんな
事件が起こることは残念無念です。

 もちろん、私もグループホームを増やす過程では、いつかは悪い
グループホームが問題化することはあるだろう、と覚悟はしていま
した。

しかし、悲しいです。

      ☆      ☆      ☆      

 このグループホームについても、さきほどの私の委員会質問と同
様に書き出せばキリがないので、あえて詳しくは書きませんが、非
常に重要なことなので、新聞報道を私のホームページ
( http://www.yamanoi.net/ )に掲載しました。

      ☆      ☆      ☆      

 この問題を、しっかり教訓にしないと、大変なことになります。
このような悪いグループホームがあるからこそ、厚生労働省は
「今より介護報酬を引きあげれば、悪徳グループホームが増えるか
らあげられない」と言うのです。

 深刻なのは、行政担当者は、
「今回問題になったグループホームは、氷山の一角。金儲け目当て
にグループホームの何たるかも十分に理解せずに、グループホーム
を開設したいと相談に来るケースが多く困っている」と言っている。

☆      ☆      ☆      ☆      ☆

 実際、先日のメールマガジンでも流したように、厚生労働省も
グループホームの質の確保に危機感をもち、4月からグループホー
ムに対する指導強化に乗り出します。

 それがしっかり機能することを祈っていますが、同時に、事後で
はなく、事前にいかにチェックするか。今回もグループホームから
の内部告発があったので、県の監査が入り、問題になっただけであ
り、内部告発がなければ、何ら問題は発覚していなかったのです。

 その意味では、似たようなグループホームの例は全国各地にあり
ます。厚生労働省はサービスの質の評価基準をつくって、グループ
ホームのチェックリストに対して、
☆自己評価(自分で自分のグループホームについて各項目が達成で
  きているかチェック)、
☆相互評価(近隣のグループホームのホーム長に訪問してもらいチ
 ェック)、
☆第3者評価(第3者である専門家が訪問しチェック)

という方法で質を確保することを目指しています。

 このことを通して、グループホームの質を高め、同時に、量を増
やさねばならないと思います。

 以上、非常に長い長いメールマガジンで申し訳ありませんでした。
 3時間もメールマガジンを打ってしまいました。
 このグループホームの問題は今後も報告を続けます。
                 やまのい和則 拝
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 ☆やまのい和則の「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」☆
         (2001/04/02現在 読者数 1248)

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