やまのい和則の
      「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」

             第32号(2001/02/04)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
今日は、政治と福祉とグループホームのメールマガジンを3つとも
同じ内容でお送りします。重なって申し訳ありません。

 内容は2つです。
1つは、私のグループホームのホームページの掲示板について。
2つ目は、雑誌「シルバーウエルビジネス」の2月号「グループ
ホーム特集」についてです。

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 このメールマガジンとともに、私は、グループホームのホーム
ページも開設しています。
「グループホームとは何か?」というレポートをはじめ、制度や
最新情報、全国のグループホームの一覧などを情報公開しています。

その中に掲示板があります。

ここでは、多くの方からのグループホームについての質問やご意見
を頂きます。

それに、私や私の事務所のスタッフの海野仁志が答えたり、グルー
プホームで働く人や、グループホームを開設しようとしている人
同士が、情報交換や交流をしています。

 まだまだ十分な内容ではありませんが、現場の生の声がわかり
ますので、ご関心がある方は、一度のぞいてみるなり、掲示板に
書き込んで下さい。

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 次に、雑誌「シルバーウエルビジネス」
(定価2310円、総合ユニコム株式会社、電話03-3563-0025)の
2月号「グループホーム特集」についてです。

特集は「グループホームの経営課題」で、1冊ほどんど全部が、
グループホームの関係の最新情報です。

このメールマガジンで、特定の雑誌を宣伝するのは、不公平かもし
れませんが、今月号はグループホームについての最新情報がそろっ
ており、すごく勉強になりました。

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 いくつかのグループホームの紹介や、レポートも掲載されていま
す。グループホームの状況も日々変わっていますので、最新情報は
嬉しいです。

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 また、グループホームの経営実態調査も載っています。
詳しくはここでは載せられませんが、グループホームの形態、ユニ
ット数、行政からの補助金額、年間支出などが調査されています。

また、グループホーム形態は、
1ユニットが58%、2ユニットが12%、3ユニットが5%です。

現場からの行政への要望は、トップが82%の介護報酬の引き上げ
です。45%が民間法人への建設補助、43%が研修費用補助です。

 一番関心があったのが、グループホームの経営で、収支トントン
が53%。10%程度黒字が16%、赤字が29%という統計です。

 この数字をどう読むか。
黒字がよい、とは必ずしも言えません。

要は、どのグループホームが“よいケア”をしているかが、問題だ
からです。黒字のグループホームは人手を少なくし、ケアが低いか
もしれません。

経営努力もあると思いますが、私の直感ですが、“よいケア”を
しようとすると黒字が出ないのが、いまの低い介護報酬の問題点だ
と思います。

だから、赤字のグループホームのほうがかえって“よいケア”を
しているということもあるかもしれません。

 ここで、私は心配です。

かつてアメリカのナーシングホームビジネスが一部抱えた問題の
ように、
「良心的なナーシングホームは、経営が成り立たず倒産。

ケアよりも経営を優先させる質の低いナーシングホームが増える。

質の悪くて儲かっているナーシングホームが、質がよくて赤字の
ナーシングホームを買収し、チェーン展開していく」。

つまり、恐るべき『悪貨が良貨を駆逐する』という心配です。

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 日本のグループホームも、そうならないと言い切れるでしょうか。
そうならないためにも、グループホームの介護報酬の向上や、
建設補助の拡大、研修費用補助は急務だと思います。

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 なお、私のインタビュー記事

「良質なグループホーム拡充に向け営利法人にも建設費補助を」
も出ています(この記事はグループホームのホームページに載って
います)。

私の発言の趣旨は、以前にもメールマガジンで触れましたが、

質の悪いシルバービジネスのグループホームが増えないためにも、
建設補助が必要なのです。

つまり、行政は建設補助を出せば、質をチェックする責任が生じ、
逆に、今のようにシルバービジネスのグループホームに建設補助を
出さない状態だと、
「金も出さない、口も出さない」となってしまいます。

行政がシルバービジネスのグループホームに「金も口も」出させる
ことが私は必要だと思います。

       ☆      ☆      ☆       

 今年も、グループホームの普及のために、
介護報酬アップ、
建設補助拡大、
グループホームの質のチェック(虐待や事故防止)、
研修費用補助、
夜勤の裏づけある制度化 などのために頑張ります。

☆      ☆      ☆      ☆       ☆

 最後になりますが、先日、訪問した病院の痴呆病棟では、
多くの痴呆性高齢者が、オムツをつけられ
「トイレに連れて行ってもらえない」と嘆き、
男性は丸坊主、
女性もショートカットにされ、
寝間着姿で、私物もほとんどなく、
テレビさえも見させてもらえない、
死ぬまで一歩も外に出してもらえないという姿を目の当たりにし、
改めて、
「この方々がグループホームに入ることができたら、どれほど喜ば
れるだろう」と涙が出ました。

 人生の終末は人生の総仕上げ。

家族と同居できなくなった痴呆症のお年寄りがどのように扱われて
いるかを見れば、その国の豊かさ、民度、人権意識がわかります。

       ☆      ☆      ☆       

 よいグループホームが少しずつ増えていることは非常に嬉しいこ
とです。

しかし、グループホームでならもっと人間らしい生活ができる痴呆
性高齢者が、数多く、劣悪な環境の中で泣いている、いや、絶望し
ている現実の厳しさを忘れず、改めて「お年寄りは待てない!」と
いうことを自分に言い聞かせ、良質のグループホームが急増させる
ために、私は頑張ります。

       ☆      ☆      ☆       

 さらに、痴呆性高齢者だけでなく、痴呆症ではないが、介護を
必要とするお年寄りにもグループホームは必要です。

さらに、グループホームは高齢者向けだけでなく、障害者や障害児
の方々にとっても必要です。


 私は、「痴呆性高齢者向けグループホーム機関車論」なるものを
訴えてたいと思います。

それは、痴呆性高齢者向けグループホームの普及が機関車役、突破
口になって、痴呆でない高齢者向けのグループホームが増え、さら
に、障害者や障害児のグループホームのどんどん地域に増やしてい
く。

 最初から障害者や障害児のグループホームというと、
「私には関係のない問題」と逃げてしまう人が多い。

しかし、痴呆性高齢者向けグループホームの運動を全面に出すこと
により、誰しも
「自分も親も、いずれはぼけるかもしれないしなあ」と、
グループホームに理解と関心を示さざるを得なくなる。

そこを突破口に、グループホームの運動を高齢者だけでなく、
若年の障害者や障害児にも広げていくのだ。

 グループホーム運動の目指すところは、20世紀の
「弱い立場の人たちを地域から隔離する」社会から、21世紀型の
「弱い立場の人々が社会のど真ん中で生活でき、それを家族だけで
なく、地域社会全体が温かく支えていく」社会への転換です。 

       ☆      ☆      ☆       

 話は長くなりますが、実は、この「グループホーム」という名前
にも議論がありました。

1992年頃でしょうか。
日本に痴呆性高齢者向けのグループホームがほとんどなかった頃、

「スウェーデンでは、グループホームは『痴呆ケアの切り札』と言
われているのに、日本に制度がないのはおかしい!」
と議論が起こりました。

 その際に、
「グループホーム」という名前について議論になりました。
まだ、痴呆性高齢者向けグループホームが日本で制度として「在宅」
になるのか、「施設」になるのかも決まっていないときです。

 痴呆性高齢者向けグループホーム発祥の国であるスウェーデンで
は、グループホームのことを、スウェーデン語で
「グルップボエンデgruppboende」と呼んでいるのです。
グルップはグループ。
ボエンデは、「居住」という意味です。

つまり、スウェーデン語から正確に訳せば、グルップボエンデとは、
建物を意味するのではなく、「グループ居住」という居住スタイル
を意味するのです。

実際、英語では「グループリビングgroupliving」と言い、グループ
ホームとは言いません。
つまり、痴呆についてのグループホームは勝手につくった和製英語
なのです。

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 スウェーデンでは、グループホームは、在宅であり、住宅です。
だから、日本語では「施設」を連想される「グループホーム」でな
く、「グループ住宅」という名前のほうが適切だという意見もあり
ました。
もっともです。
「グループリビング」「グループ居住」と名づけようという意見も
ありました。
結局は、最終的には厚生省が「グループホーム」と決めたわけです
が、私は「グループホーム」という名前を強く主張しました。

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 たとえば、「グループホームという名前は良くない。すでにある
障害者のグループホームと混同される。障害者のグループホームと
混同されるとイメージが悪いので、痴呆性高齢者向けは別の名前に
すべきだ」という意見もありました。

 しかし、私は逆に考えたのです。
敢えて、痴呆性高齢者向けを「グループホーム」と名づけることで、
障害者向けグループホームと、将来的に必ず重なってくる。

痴呆性高齢者向けグループホームは、近い将来制度化され、かなり
増えるはずだ。

しかし、障害者向けグループホームは遅々として増えにくいだろう。
そんな時に、同じ「グループホーム」という名前にしておけば、
痴呆性高齢者向けグループホームが地域に急増する勢いにつられ
て、障害者向けグループホームも地域に連動して普及させることが
できるはずだと。 

 実際、痴呆性高齢者向けグループホームについては、多くのシル
バービジネスも参加し、量産体制にも入りつつあります。
その勢いで、障害者や障害児のためのグループホームも増えて欲し
いと思います。 

 メールマガジンを読んで下さっている同志の皆さん、これからも
よろしくお願い申し上げます。
いつも長いメールマガジンで申し訳ありません。合掌 
                 やまのい和則 拝

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