21世紀のモデル特別養護老人ホーム「風の村」 |
第65号 特別号(2001/11/29) メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。 このメールマガジンは、「特別号」です。 前からお約束してのびのびになっていたレポートをお届けします。 21世紀のモデルと言われる、特別養護老人ホーム「風の村」へ 訪問した報告です。(訪問 2001年10月4日(木)) ■はじめに 「風の村」は知る人ぞ、知る、全室個室でユニット型の特別養護 老人ホーム。かの有名な外山義京大教授が設計監修をし、福祉施 設の設計経験の無かった斉藤佳一建築士が設計。 5年間の準備を経て建設。 厚生労働省の方針では、来年以降、新設される特別養護老人ホ ームは原則、全室個室でユニット型が好ましいというのだが、 それを先取りしているのがこの「風の村」なのだ。 視察者が多く、もう視察の予定が一杯で、なかなか受け入れら れないというのもわかる。 いま「風の村」は人気が高く、待機者は200人。 しかし、2000年2月の開設以来、1年8ヶ月で亡くなった方は 9人。つまり、年に平均5,6人お亡くなりになる計算になるの で、待機期間は10年以上かも。 ■<「風の村」概要> 運営主体:社会福祉法人たすけあい倶楽部 特別養護老人ホーム 定員50人(全室個室)、 ショートステイ定員7人(個室)、デイサービスセンター、 在宅介護支援センター、ケアプランセンター 鉄筋コンクリート3階建て ■<風の村訪問> 風の村のある千葉の八街駅は、東京駅から特急で1時間。 視察のメンバーは、私の秘書である海野仁志(元静岡県庁職員、 特別養護老人ホームの施設整備を担当したこともある)、介護保 険チームの事務局長である中村哲治衆議院議員、その政策秘書の 阪田朋子さん、福祉・医療に詳しいフリーライターの高木裕さん、 私の5人。 八街駅からタクシーで10分で「風の村」に着いた。 美しい緑の森や畑の中にある施設で、「風の村」の名前がピッタ リだ。対応してくださったのは施設長の秋葉都子(みやこ)さん。 ◆<家> 入り口には「風の村」の看板だけ、施設の中は「トイレ」 「お風呂」など部屋の名前を書いた看板もほとんどない。 「入口の『風の村』という看板には敢えて、『特別養護老人ホ ーム』とは書かず、『風の村』としか書いていません。 施設っぽさをできるだけ抑えたいのです」と秋葉さん。 「看板があるといかにも施設という感じがするでしょ。 ここは『家』だから」と。 玄関から入る。 落ち着いた照明で、内装に木をたくさん使った美しい建物だ。 また、介護スタッフは私服。 「スタッフが制服を着て、名札をつけると、入居者が構えてし まう。できるだけ施設の雰囲気をなくしたい」とのこと。 「アットホームで家庭的な雰囲気」にするために、非常に細や かな気配り、心配りがなされている。細かなことにこだわっ て、「至れり尽くせり型から、くらし育み型へ」をモットー にしているという。 ◆<喫茶店> お話をうかがった一階の喫茶店は、ボランティアの方が運営し ていて、施設の外から地元の人が直接入れるようになっている。 フローリングの床でしゃれた雰囲気。クラシック(G線上のア リア)が流れていた。窓からは緑豊かな畑が見える。 「施設と畑の間にフェンスもないんです。門もない。 安全のために自由を抑制しないという方針です。施設らしく なくするために。この施設がオープンしてからほぼ2年です が、今まで困ったことはありません」とのこと。 ◆<落ち着いた雰囲気> 施設内を歩いた。 いや、「施設」というよりは、「ケアつき高齢者住宅」である。 私が10年来、福祉施設を見た中で、この「風の村」は何に 一番近いかといえば、スウェーデンのケア付き住宅やナーシン グホームである。しかし、和風である。 落ち着いた雰囲気。その理由はいくつかある。 広すぎない廊下、 木目のきれいなフローリングの床(廊下も居室も)、 真っ白でなく薄いベージュで模様の入ったしゃれた壁。 明るさを抑えた暖色(電球色)の照明。 「広い廊下に白い壁だと病院のような雰囲気になり、家庭的で なくなるので、お年寄りも落ち着けません」と秋葉さん。 ◆<入居者も落ち着く> 50人入居の「風の村」は、6-8人の8つのユニット(グルー プ)にわかれている。全室個室。トイレは共用でユニットごと にある。 お年寄りに挨拶をする。気のせいか、皆さん、落ち着いてお られるように思う。 入居者の平均要介護度は3.3。介護度5が11人。4が11人。 「ここで暮らすと、介護度が軽くなる人が多く、すると、 介護報酬が下がり、施設の収入が減るので困るのですが・・・。 でも、お元気になられることは本来、喜ぶべきことですが」 と秋葉さん。 「軽い人ばかりを入居させているのでは?」と視察者から言 われることもあるという。 ・人形をおぶって徘徊していたお年寄りは、流しで洗い物を する役割を持つことで落ち着いた。しかし、体調を崩し、 病院に入院して白い壁に囲まれたら、痴呆症に逆戻り。 ところが、病院から風の村に戻ってくると「ただいま」と 言ったという。 ・また、暴力行為が激しかったおじいさんも、タバコを吸う ことで落ち着いた。タバコは喫煙コーナーで吸ってもらっ ているが、その方は、ほとんどタバコは手に持っているく らいだという。 多くの痴呆症のお年寄りは、個室の中ではなく、日中はリビ ングで過ごしている。 ◆<愛用の家具> 居室には、洗面所、ベッド、タンスなどがある。 照明やカーテンは部屋ごとに異なっている。 昔、服屋さんだった男性の部屋には、SINGERと書かれた 古い足踏みミシンが置かれている。 ある女性は70年前の嫁入り道具の箪笥を持ち込んでいる。 私は多くの施設の「個室」を見てきたが、「風の村」では、 「個室」が「自分の家(居場所)」になるよう工夫がされてい る。 「自分のなじみの品がなければ、また、みんなと日中に集える リビング(セミプライベートな空間)がなければ、『個室』 は『孤室(孤独な部屋)』になってしまいます」と秋葉さん。 しかし、自分のなじみの家具がないお年寄りも多いとのこと。 ◆<車椅子対応> 洗面台は、車いすで対応できるように低くなっている。 居室の照明も明るさを控えめにした落ち着いた雰囲気だ。 また、6-8人の居室に囲まれたリビングも凝っている。 このリビングは、6-8人の憩いの場、共用のリビングルーム であり、食堂でもある。 流し台も車いす対応で非常に低い。 「役割がないのは辛い。だから、車いすで使える流しにした。 食器を洗える人には、自分の食器は自分で洗ってもらってい る」と。 また、食卓の椅子の高さも38センチと低く、お年寄りが座 って足がつくようになっている。 ◆<ごちそうは炊きたてのごはん> 置いてある食器を見ると、いろいろなものが混ざっている。 「みんな同じプラスティックの食器では、やはり、施設になっ てしまいます。自分の食器や箸も持ってきてもらっています。 食器がかけたことはほとんどありません」と秋葉さん。 誰の食器かわかるように、裏に名前のシールが貼ってある。 「自分の食器を持ち込んでもらうことで、結果的には、食器 代も節約できました」とのこと。 また、各ユニットには、台所があり、炊飯器もある。 「一番のごちそうは、炊きたてのご飯です。だから、できる 限りお米をといで、ご飯を炊く。ご飯の匂いがないと、 家庭とは言えませんから」と秋葉さん。 ◆<自由な食事時間> とにかく、家庭的な雰囲気にするために、あらゆる努力がな されている。朝は起きた順に自由に朝食を食べる。 おかゆやきざみ食の人は1〜2割。きざみ食もユニットごと に、その人に合わせて必要なものだけをきざみにしている。 部屋で食事をしている人は一人もおらず、みんなユニットの 共用のリビングで食事をしている。1時間くらいかけて食べ ている人もいるという。 スタッフの数が多いから対応できるのであろう。このような 対応なので、介護度が軽くなる人も多いという。 ◆<グループ処遇と個別処遇> ショートステイも、それぞれのユニットに1つずつある。 「これは、正解だった」という。 なぜなら、他の家に泊まりに来たような感じで、同じユニッ トを再び利用することによって、なじみになる。 「また、来ました。お世話になります」とおみやげを持って入 所することもあるという。 ショートステイといえども、家庭的な雰囲気が大事なのだと いう。 まさに、1つ1つのユニットがグループホームである。 ◆<ご近所へ?> おもしろいのは、別のユニットとの間にお年寄り同士の行き 来があるということだ。 自分の居室があるユニットと違うユニットに、テレビを見に、 車いすのお年寄りが出かけることもよくあるという。 グループホームでは、気の合わないメンバーでもずっと同じ 顔ぶれで一日中、毎日、過ごさねばならない。息が詰まり、 ストレスになる場合もあるだろう。 しかし、ユニットの場合は、気が合わない人がいても、他の ユニットに遊びに行くことによって、ストレスを減らすことが できると感じた。 不思議なことに、他のユニットに遊びに行っているお年寄り も、食事の時には、自分のユニットに帰ってくるとのこと。 ◆<理想はマンツーマン> ここでは、介護職員と入居者の比率は、常勤換算で1:2。 一般の、特別養護老人ホームの基準は、1:3だから、基準よ り1.5倍職員が多いことになる。やはり、1:2でないと入居者 一人一人に応じた個別ケアはできないという。 「個室だから人手がかかるのではなく、個別ケアだから人手 がかかる」。そう話す秋葉さんの後ろの庭を、スタッフに 車いすを押してもらってお年寄りが散歩している。 「マンツーマンでお世話する。これをやりたいんですよ」と。 ◆<個別ケア> 「個別ケアによって、介護職員の動きがばらばらになった。 食欲がなくなたっら、介護職員が付き添って二人で外に食 べに行ける」。 実際、先週には、食欲がないという2人のお年寄りを、 すし屋に連れて行ったら、お寿司と茶碗むしとあんみつを食 べて帰ってきたという。 ユニットごとに、レストランに外食に出かけたり、夏バテ の時はうなぎを出前してもらったこともある。 「今日の夕食は出前でおそばを食べよう」ということもして いるという。 ◆<ユニット単位> 50人全員制でなく、7〜8人のユニット単位だからこそ、 自由に柔軟に対応できるのだという。 「入浴もマンツーマンでお世話する。これが大事だと思うの です。最近つくづく思うのですが、今生きているお年寄り が来年、元気にしている保証はありません。 お年よりの1年、1日は大きいのです」 前の施設で車いすに抑制されていた人が、じっくり見守って 抑制の必要がなくなったケースもあるという。 また、抑制されない自由な暮らしによって、白い髪が黒くな ってきた入居者もいる。 入居者の8割が痴呆症なのに、ほとんどの問題行動がここで はなくなったとのこと。 玄関等も特に施錠されていないが、お年寄りが勝手に外に出 てしまって困ったのは、開設当初だけだったという。 ◆<お風呂上がりのビール> 秋葉さんは、 「個室が大事なのではなく、個別ケアができるかどうかが重要。 いくら個室でも集団ケアだったら意味がない。個別ケアをす るためには、1:2の人手は必要。入浴も一人のスタッフが 付き添って、居室からお年寄りの車いすを押して、お風呂に 連れていき、また、入浴後は部屋まで送り届ける。 『孫が銭湯にお年寄りと一緒に行くような感じ』だ」という。 また、お風呂あがりにジュースやビールも飲んでもらって いるという。それは有料だが、そこが自己決定だという。 散歩も一人がつきっきりで車いすを押して、庭を散歩する。 「マンツーマンでの対応が重要」という。 ◆<いろんな場所> 個室、 ユニットのリビング、 全員が集まれるセミパブリックな場、 喫茶店など近所の人たちと交流できるパブリックスペース という4つの場所があって、はじめて個別ケアはできるという。 入居者の動きが活発な午前中に、特に人手を厚くしている。 ちなみに、食堂は真空調理法とクック&チルという方法を採 用し、食べ物の形を保ったまま柔らかく調理するのと併せて、 調理の手間を大幅に削減しているという。 お酒やタバコも当然自由。 しかし、本当にタバコを吸う人は50人中5人で、お酒が自由 といっても、たくさん飲む人はほとんどいないという。 「個室は孤独だという意見がありますが」と尋ねると、 「日中、ずっと居室にいるのではなく、職員が誘導してユニ ットのリビングルームに出て来てもらうようにすれば、 孤独にはなりません」 「個室だけではダメです。共用のリビングが必要。また、 そのリビングに座敷ぼうきがあって、炊飯器があって、 自前の食器がある。この感覚が大事です」と秋葉さん。 ■<入居者Aさんの話> ワープロを叩くおじいさんの部屋を訪問し、話を聞かせても らった。先日、厚生労働副大臣の桝屋敬悟衆議院議員が訪問 されたそうで、記念写真があった。 大正15年生まれの75歳。要介護5で車いす。頚椎(けい つい)損傷で下半身麻痺。手にも多少マヒがある。今までに 14の施設や病院を経験。 ☆ 個室は魅力的 「個室はいかがですか?」と尋ねると、 「個室は魅力だね。個室じゃなかったら、施設には入らなかっ た。個室以外は絶対ダメ」とのこと。 Aさんは、体温を自分でうまく調節できないので、部屋の温度 を調節しなければならない。しかし、以前いた施設は4人部屋 で、朝、寒いのに同室の人が窓を開けて困った。 その苦情を職員さんに言ったことが原因で、同室の人から 『お前はわがままだ!』と言われ、気まずくなったこともあり、 他の人と同じ部屋なのはつらいらしい。 ☆ 気持ちの整理 「ここに入るっていう時に気持ちの整理をするのが容易じゃな かったよ。人間誰しも家にいたいよね。でも、ここに入って から、うちに帰りたいと思ったことはないよ。電話、テレビ、 そして、友だちとしてるワープロもある。これだけあれば、 これで満足。テレビ見たいと時は見るし、妻とも電話でいつ でも話せるし、うちにいても変わりない。ここだとやりたい ことも何でもできる」 「四人部屋の時も、同室の人とは、ほとんど口をきかなかっ た。あんな窮屈な思いは、二度としたくない。」 「ここは、希望を言えば、外出にも連れて行ってくれる。 今年の正月は、職員さんと娘むこが付き添ってくれて、 東京の国技館まで大相撲を見に行った」。 この方は大の相撲ファンで、部屋にも相撲の番付や相撲カレ ンダーがが貼ってあった。 ☆ 泊まりにこいよ! 16歳から陸軍に勤務。整備兵として、特攻も何機か見送っ たとのこと。今度、東京の青梅で当時の同窓会があるという。 「参加したかったが車で3時間もかかるのであきらめた。 そしたら、友だちが『かわりに俺たちが施設まで行ってやるよ』 と言ってくれたので、『泊りがけで来いよ。仲間連れて来いよ」 と言った。ここは、2階にお客さんが泊まる畳の部屋もあるし、 食事もできるので、気軽に友だちが呼べる」とのことであった。 ちなみに、奥さんも訪問して、ご主人のこの部屋に泊まった り、二階の畳の部屋に泊まっていかれるという。 ☆ オンブズマン 入居するにあたり、「個室」だとわかって、奥さんがこの 「風の村」に見学に来られた。 「遠くても近くても個室ならいい」と本人は言ったという。 「個室であること以外に、職員さんのよい、悪いが施設で重要 だ。これは30分や1時間ではわからない。ここは、日本で も1,2を争う施設のようだが、来年からもっといい施設も できるだろう。そうしたら、中身、職員の質で勝負するしか ない。『風の村』のオンブズマンの人が俺に部屋にも名刺を 置いていっている。いい施設にしていくには、思ったことを 俺たちが言うのも必要だなあと思っている」とのこと。 ☆ 淋しい 奥さんから毎晩7時に電話があるという。しかし、ある日、 いつもより早く電話があって、どうしたのかな?と思ったら、 「うちに帰って、『ただいま』と言っても返事してくれる人が いない。寂しいから電話した」と奥さんは言った。 これには、ジーンと来たという。そもそもこの方が入居したの は、二人暮らししていた奥さんが介護で体調を壊されたことも 理由の1つだった。 ☆ ワープロが友だち 普段はワープロで手紙や自分史を打っておられる。 この方は日中はワープロばかり打って、他の人の部屋にはあ まり行かない、行って話する人は何人もいない、という。 ☆ 好みの味 食事にも満足しているが、薄味好みの入居者もいれば、そう でない人もいて味付けはむずかしいとのこと。煮物は非常に うまい。漬物の味は悪かったが最近美味しくなってきた。 食事は野菜が多くてよい。などの話。 この方は、障害が原因で過去17年間に14か所の病院、施設、 リハビリセンターなどと自宅を転々としてきたので、味にも 厳しいのだ。 ☆ 介護認定への要望 「自分は要介護5で、要介護2の人より、自己負担が高い。 しかし、自分でできることはできるだけやって、あまり職 員のお世話になっていない。要介護2でもっと職員の手を 借りているお年寄りもいる。自分はあまり手がかかってい なのに、もっと手がかかっている要介護2の人よりも自己 負担が高いのは、不公平じゃないか。在宅と施設の介護認 定のあり方を変えてほしい」という苦情であった。 ワープロが生きがいのようだが、私は 「パソコンにいつか変えたらどうですか。パソコンだとメー ルができるので世界が広がっていいですよ。私のメールマ ガジンも読めますし」と。 ☆ 国会議員への厳しいご意見 最後に、テロ対策についても議論した。 「自分は自衛隊出身なので、憲法を改正して自衛隊を派遣す べきだと思っている」と言っておられた。 また、国会議員については、次のような質問を受けた。 「国会の予算委員会質疑をさっきもテレビで見たが、予算に 関係ないようなことも質問してる。あれは何でなのか?」 と。 「予算委員会という名前ですが、一応、何でも聞いていいこ とになっています」と私が言うと、 「わかりきった質問をしたり、スキャンダルを追求したり、 予算に関係ない議論が多すぎる。1分間で国会議員の給料 はいくらになります? 無駄なことは聞かないで欲しい」 との厳しい意見。 さらに、「国会のやじは勢力争いなんだろうけど、学校で 先生の言うことをしっかり聞けと言っているのに、国民の 代表の国会議員がやじばかりではみっともないよ。聞くこ とはちゃんと聞くべきじゃないか」とのお叱りも頂いた。 ◆<個室のよさを実感> 1時間以上話を聞いたが、私にとっては特別養護老人ホーム の入居者にこんなゆっくり話を聞くのは初めて。やはり、 四人部屋でなく、個室だからゆっくり落ち着いて話ができる のだと痛感。ドアを閉めたらプライベートな空間なので、 施設というよりも「家」を訪問している感じだ。 ◆<施設から住宅へ> 私は、過去10年以上、日本や世界の100か所以上の老人ホ ームなどを訪問しているが、四人部屋の場合、10分くらい が限界でそれ以上、居室で長話すると「うるさいなあ!」と 叱られたりしたし、そもそも、まわりの入居者がカーテンの 向こうで耳を澄まして聞いているのだから、落ち着いて本音 の話が聞けない。 そんな場所で、「四人部屋の居心地はいかがですか」などと 質問できるはずもない。 ◆<本当の終の棲家> なお、2000年2月の開所以来、亡くなったお年寄りもほと んどがこの施設で亡くなり、家族もそれを望んでいるという。 厚生労働省は、来年から新設する特別養護老人ホームは、 原則として「全室個室・ユニットケア」が望ましいとしている が、そのイメージが、この「風の村」を見てわかったような気 がした。 ■<新型特別養護老人ホームの課題> しかし、「風の村」は何とかやりくりしているものの、介護 職員(常勤換算):入居者の比率を現行基準の1:3から1:2 に引き上げることが、個別ケアのために望まれると感じた。 また、現在の風の村は、他の特別養護老人ホームと同じ自己 負担だが、厚生労働省が進めようとしている全室個室の新型特 別養護老人ホームは、家賃などのいわゆる「ホテルコスト」が 自己負担になるため、現在月5〜6万程度の自己負担が2倍の 10〜12万円くらいにアップすると予想される。 所得によって介護保険料に5段階の差があるように、新型特 別養護老人ホームも所得が少ない人には安くすることが検討さ れているようだが、所得に関係なく、入りたい人全ての人が、 安く入れる制度にすべきである、と私は考える。 ◆見学させていただいた感想 この「風の村」は「施設」というよりは、ケア付きの高齢者 集合住宅というということである。 ■最後に、パンフレットより抜粋して理念を説明する。 ☆★ 風の村憲章 ★☆ 「私たちは自分の家を離れざるをえなくなったお年寄りが、新し い我が家にしっかり根を下ろし、生きる喜び、生きる意欲がし ぼまない施設づくりを目ざします。きれいに生けられた切り花 ではなく、大地に根を下ろした野生の花。『至れり尽くせり型 から、くらし育み型へ』を合言葉にします」 1、「風の村」は、暮らす人、働く人、集う人で共に創る場です。 1、「風の村」は、ひとりひとりが輝く場です。 1、「風の村」は、自然の中でゆったりと過ごす生活の場です。 1、「風の村」は、ありのままの自分に出遭える場です。 1、「風の村」は、地域に根ざしたくらしを育む場です。 ◆終わりに 「風の村」の報告は以上で終わります。もしかしたら、私の勘 違いもあるかもしれませんが、このレポートの文責は山井和則 にあります。 ◆読者の皆さんにお願い。 このメールマガジンを読んでの問い合わせは「風の村」へは、 あまりなさらないでください。スタッフの方々は、非常に忙し くされていますので。 「風の村」について、詳しくは、 「風かおる終の棲家」(風の村記録編集委員会著 ミネルヴァ書房 ISBN4-623-03459-3) をお読みいただくか、簡単なことでしたら、私の政策秘書 海野(うんの)、国会事務所(電話03-3508-7240)にお問い 合わせくださるか、私に問い合わせのメールをください。 ◆最後に、秋葉施設長から要望を聞きました。 「ユニットケアでは職員研修が非常に重要。職員研修をきっち りしないと、介護職員は業務優先になりがちで、入居者優先 になれない。ユニットケア・個別ケアは今までの集団ケアよ りも教育が必要なので、十分な研修がなければついていけな い職員が出てくる」とのことでした。 やまのい和則 ■メルマガ送信先募集中! 一人でも多くの方に私のメルマガを読んで頂き、 政治と福祉を変える輪を広げたいと願っています。 お知り合いをご紹介下さい。 メールアドレスを、「メルマガGH希望」と書いて kyoto@yamanoi.net まで送って下されば、こちらで新規登録 させて頂きします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆やまのい和則の「痴呆ケアの切り札・グループホーム!」☆ (2001年11月29日現在 登録数 1859) |