痴呆性高齢者向けグループホームについて
提起された問題点6つ

             第64号(2001/11/02)

 メールマガジンの読者の皆さん、こんにちは。
今は11月2日(金)夕方。東京から京都に戻る新幹線の中です。

■11月1日(木)
  朝8時から民主党の介護保険チームの会合。
 首都圏のあるグループホームの責任者の方に来ていただき話を聞
 き、厚生労働省からも担当課長さんをはじめ5人が参加してくだ
 さった。議員7人を含め、合計30人の会合。

 痴呆性高齢者向けグループホームについて提起された問題点は次
 の6つ。簡単に書きます。厚生労働省さんからの答えの文責は私
 です。簡単な回答の趣旨を書きます。

1)グループホームでは、夜勤でないと晩は対応できない。
  仮眠は1時間とれればいいところ。
  しかし、今の介護報酬では、夜勤の体制を組むのは厳しい。
  宿直でやれば、明らかに労働基準法違反になる。
  (このグループホームは、スタートして5年目で、入居者は要
   介護5が3人、4が2人、3が1人、2が3人)

 *厚生労働省からは、「その実態は承知している。何とかせねば
  ならないと思っている。特に、開設後、年月が経てば、介護度
  があがり、より手がかかるようになるのも承知している」とい
  う答えであった。

2)外泊や入院だとグループホームでは、1日だけでも介護報酬が
  入らなくなる。
  特別養護老人ホームでは、入院しても、6日くらいまでは介護
  報酬がでるのに。
  このままでは、入居者の外泊もグループホームにとっては、喜
  べなくなる。

 *「そもそも施設と在宅は違う。在宅はそもそも自宅なのだから、
  そこから『外泊』というのは想定しにくかった」

3)グループホームは在宅なのに福祉機器レンタルが介護保険で受
  けられない。(要望)

4)グループホーム利用者の自己負担が、月12万円程度で、特別
  養護老人ホームの約2倍。

 *「グループホームは在宅だから、居住費の自己負担はやむを得
   ない」

5)より良いケアをするには、職員の研修などが必要だが、その研
  修費用が今の介護報酬では出せない。(要望)

6)年月が経つと、入居者の痴呆が進み、ADLも低下する。その
  とき、どう対応するのか。

  たとえば、看護婦を雇ったら「ターミナル加算」をつけるとい
  うようなことも必要ではないか?

  「重度化したら、特別養護老人ホームなどに移す」という議論
   もあるが、グループホームより少ない人手の特別養護老人ホ
   ームで十分に対応できるのか?

 *「ターミナルまでグループホームでみるかどうかは大きな議論。
  ターミナルまで看るとなれば、特別養護老人ホームとどう違う
  のか? ということになり、そこは議論を整理せねばならない」


◆こう書くと素っ気ない回答のようですが、厚生労働省の担当の方
 々も早朝からこの会合に参加してくださり、誠心誠意答えて下さ
 いました。

 私は司会者なのであまり発言できませんでしたが、これからもこ
 の6つの課題については、引き続き厚生労働省と議論を続けます。


■その後、この会合では、グループホームは
 「通過施設か、ターミナルまで看るのか」という議論をした。

私は、「様々なグループホームがあっていいと思うが、もし重度に
なれば、グループホームから退去させるのであれば、次はどこに行
くのか?
・特別養護老人ホームは満杯。
・病院も痴呆症の人はなかなか入院させてもらえない。
・老人保健施設も長期入所は難しい。
・とにかく、痴呆性高齢者をたらい回しにするのだけは、やめてほ
 しい。
・ウェーデンで1992年に行われたエーデル改革(高齢者医療福祉
 改革)でも、最大の目的な『痴呆性高齢者の居場所、終の住みか』
 をつくるということだった。
・日本でも痴呆性高齢者が安心して住み続けられる居場所をつくっ
 てほしい」と発言した。


◆なお、このメールマガジンの読者でもある特別養護老人ホームの
 介護職員さんが、この会合に傍聴に来て下さった。

彼女の意見には非常に考えさせられたので、ここに紹介したい。

 「今日の会合で、グループホームで重度化した人は、特別養護老
人ホームに移ってもらうという意見が出たけど、特別養護老人ホー
ムで十分に対応できる?」

 「待機者が多いので、そもそも入居できないと思うけれど、もし
入れたとしても問題がある。

というのは、家庭での介護のための同居と似ているんですが、特別
養護老人ホームにとっても、元気に歩いておられる痴呆症のお年寄
りがだんだんと弱ってこられて、その姿を見ているスタッフが、
重度になってからもお世話すると、お世話もしやすいし、心のこも
った介護もしやすい。

 しかし、かなり重度になってから、ポンと特別養護老人ホームに
送ってこられても、その方のお元気だったときの姿もわからなけれ
ば、なかなかいいお世話はしずらいと思います」

◆私は彼女の意見を聞いて、確かに一面で当たっていると感じた。

痴呆症と言えども、元気で一緒に料理や散歩ができるときは、グル
ープホームでお世話して、重度化して手がますますかかるようにな
ったら、より人手が少ない特別養護老人ホームや老人保健施設に移
すというのは、何か変ではないか? 

◆こんなことを彼女の話を聞きながら、
 このグループホームは、「通過施設か、終の住みかか?」という
議論は、どちらが正しいという議論ではないと思う。

しかし、あまりにも簡単に少し重度になったからと言って、グルー
プホームから退去させるのはどうかと思う。

さらに、グループホームのスタッフがもう少し引き続き重度化して
からもお年寄りをグループホームで介護しつづけたいと思った時に
はそれをバックアップする財政的な援助や加算が必要だと思う。

要は、弱った痴呆症のお年寄りの居場所をコロコロ変えない、とい
うことが大事だと思う。

スウェーデンでも同じような論争が90年代に行われ、結果として
は、できるだけグループホームで看続ける方向になっている。

ただ、スウェーデンのグループホームには併設型が多いので、多少
事情は違うが、
「痴呆性高齢者をたらい回しにしない」
「重度化したら、お年寄りを移動させるのではなく、可能な限り、
 スタッフを増やしたり、看護婦の支援を得て、同じグループホー
 ムで対応する」という考えである。

 そもそもグループホームはそれこそ「在宅」なのだから、安易に
退去させるのはおかしいように思う。

 私もグループホームの限界は知っている。

でも、あまりにも簡単に単なる「通過施設」と位置付けたら、グル
ープホームの存在意義が薄れてしまうように思う。


◆このあたりはグループホームの根本的な課題なので、また、読者
 の皆さんもご意見お聞かせください。

 この問題についてはまだまだ書きたいことは山ほどあるが、ここ
までにしておきます。

 以上で、今日のメールマガジンは終わります。最後までお付き合
い下さり、有難うございました。新幹線もそろそろ京都駅に着きま
す。合掌 
                 やまのい和則 拝

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