2015.3.15
裁量労働制の対象拡大で過労死が激増する
~裁量労働制による過労死の実態把握もしないまま対象拡大するのは危険~
☆ 残業代ゼロ法には二つの危険がある。残業代ゼロ法の対象は、年収1000万円以上の高度プロフェッショナルと、裁量労働制の営業職、管理業務への拡大です。裁量労働制は、残業も含めた「みなし労働時間」を使用者と労働者があらかじめ協定し、残業が増えても減っても、基本的に給料は変わらないという制度です。前者だけが報道されますが、実は裁量労働制の拡大の方が、年収要件もなく対象者は多いのです。営業職まで残業代ゼロになれば過労死は激増しかねません。
☆ 営業職への裁量労働制導入は危険。裁量労働制の過労死が増えています。裁量労働制でも、深夜・休日労働の割増賃金の対象ですので、労働時間はきちんと把握しなければなりませんが、裁量労働の労働者の4割は労働時間が把握されておらず、深夜・休日労働の割増賃金が支払われていないばかりか、労働災害や過労死とさえ認定されません。にもかかわらず裁量労働が残業代ゼロ法で営業職にも拡大されます。残業しても給料は増えないのに、荷重な営業ノルマを課されたら過労死が増えます。そのため、今までは営業職には導入されませんでした。しかし残業代ゼロ法が成立したら営業職へも裁量労働制は拡大します。裁量労働制になった営業マンが過労死したら、誰が責任をとるのでしょうか。
☆ 労災認定も受けられなくなる危険。もっと深刻なのは、裁量労働制の労働者の42%は労働時間さえ把握されていないので、過労死しても労働災害や過労死の認定さえ受けられないことです。つまり裁量労働制を営業職に拡大したら、長時間労働による死者は増えるが過労死は減るかもしれません。なぜなら過労死と認定されないからです。こんな残業代ゼロ法は危険すぎます。
☆ 健康確保措置は不十分のまま。裁量労働制に適した労働者、働き方があることは、私は否定しません。しかし、そうであっても、裁量労働制の営業職への拡大によって、過労死のリスクが高まる人もいるのですから、そのリスクを防ぐ健康確保措置、労働時間規制の上限規制やインターバル規制(一定の休息時間の確保)を入れずに拡大することは危険過ぎます。
☆ 厚労省は裁量労働制の実態を把握していない。私が裁量労働制の営業職への拡大に大反対する理由は、実際、裁量労働制の適用の労働者が過労死し、ご遺族による訴訟が増えているからです。にもかかわらず、厚労省は「裁量労働制の労働者の労災認定の件数は把握していない」と回答しています。
☆ 過労死を減らすための法改正が先決。電通事件では、最高裁判決で過労死と認定されましたが、この労働者は裁量労働制でした。まず裁量労働制の労働者の長時間労働や、過労死を減らすための法改正が先決です。なのに、逆に、一番ノルマ地獄の危険性がある営業職にまで裁量労働制を拡大するのは危険過ぎます。
☆ 裁量労働制は年収200万円でも実質的に残業代ゼロ。「残業代ゼロ法案は、年収1000万円以上じゃなかったの?」と思う方もいるかもしれません。しかし残業代ゼロ法案には2つの種類があり、1番目の高度プロフェッショナル制は年収1000万円以上が対象ですが、2番目の裁量労働制の営業職への拡大は、年収要件はなく、年収200万円でも、実質的に残業代はゼロになります。
☆ 残業代ゼロ法は過労死促進法。私は荷重なノルマの長時間労働により、うつ病になった方々や過労死のご遺族の方々から、連日、話を聞いています。その立場からすれば、今回の残業代ゼロ法は、過労死促進法と言わざるを得ません。政治の仕事は国民の命を守ることです。私は黙っていられないのです。