166-衆-厚生労働委員会-8号 平成19年03月28日
・薬害肝炎
○山井委員 民主党の山井和則です。
これから五十分間にわたりまして、去る二十三日、東京地裁の判決も出ました薬害肝炎の問題、判決、そして今後の患者救済、早期全面解決ということについて、柳澤大臣、そして武見副大臣、石田副大臣に御質問をさせていただきたいと思います。
まず最初に申し上げますが、きょう私が胸につけておりますこのカキ色のバッジは、肝炎訴訟を支える方々のバッジであります。そして、きょうは傍聴席にも、原告の方、患者の方々にお越しいただいております。残念ながら、この間、たびたびの面会希望にも大臣にはこたえていただいておりませんので、せめてもということできょうは傍聴にお越しいただいておりますので、患者の方々、原告の方々の思いを少しでも代弁させていただきたいと思います。
お手元に資料は行っていますでしょうか。
きょうお配りした資料の説明から入らせていただきます。
これはもう言うまでもないことでありますが、二十三日、フィブリノゲン、そしてクリスマシンに関しても、国、企業の責任が断罪されたわけであります。そしてこれは、大阪、福岡に続く三度目の国の敗訴であります。もちろん、一部原告敗訴している部分もありますが、これが薬害であるということがこれで確定したのではないかと思っております。
まず一枚目、毎日新聞の記事でありますけれども、今回、投与の時期によって勝訴、敗訴が分かれていると。しかし、司法においてはそうかもしれませんが、国が安全だと認定した薬によってこのような肝炎にかかってしまわれた方々にとっては、その被害の大きさ、苦しさというのは、当然、年代とは全く関係ないものでありますので、こういう司法の判断を超えて、政治的にはすべての原告、患者の方々を救済すべきだと私は思っております。
二ページ目の記事でありますが、この朝日の記事にも、見出しにありますが、「「使われすぎている」血液製剤普及の教授」と。今回、フィブリノゲンでもクリスマシンでも、やはり、その有効性を超えて、特に必要でなかったのにこの薬剤が投与された。ですから、患者の方々にとっては、必要性が十分になかったにもかかわらず投与をされてこういう肝炎になってしまった、まさに怒りがますます高まっているわけであります。
そして三枚目、日経新聞「「薬害」国に猛省促す」「薬事行政後手に回る」と。きょうの質問のポイントは、まさに薬害、この三回の判決で、国の責任があるということは明らかに、もうほぼ決定的になったと言えます。この国に猛省を促すという中で、国はどう動くのかということこそが、今問われています。
四ページ目、「国の責任三たび認定 クリスマシンも対象」ということであります。
そして、次のページ、五ページ目には社説を載せております。「「敗訴慣れ」せず救済を図れ」「争うより感染者救済を」「控訴やめて救いの手を」、これは今までも私、委員会で取り上げておりますが、大阪地裁の後の社説も福岡地裁の後の社説も、すべての社説がもうこの論調一色であります。そういう意味では、マスコミも世論も含めて、司法に任せるのではなくて政治的な決断が今求められている、このことに関しては、もう全国民的に異論はないと私は思っております。
七ページ目には、ある九州の原告の方の記事を載せさせていただきました。「残り時間はごくわずかなのです」と。この原告の方も、慢性肝炎で、いつ肝硬変になってがんになるかということにおびえおびえ、今この訴訟を闘っておられます。
そして八ページ目、今回の東京地裁の判決を受けて、厚生労働大臣に何としても会ってほしいという申し出に対して、きのう届いた回答がこの二行でありますね。「標記につきまして、国の賠償や謝罪を前提としない肝炎一般対策に係る御要望であれば、担当者がお会いすることは可能です。」ここでもまた大臣は逃げておられるわけです。
九ページ、十ページ、十一ページ、十二ページは、これも今まで私、委員会で取り上げておりますが、インターフェロン治療、早期の治療を通じて肝硬変、肝がんになるリスクが抑えられれば、高額の治療費がかかるからといって、インターフェロン治療を今ためらっておられる方々が経済的理由のハードルなくして利用できるようになれば、かえって総医療費も安くつく、これは弁護団も主張している点であります。
ですから、ここでも申し上げたいのは、お金の問題ではないわけですね。トータルに考えたら、今の状況を放置して多くの方々が肝硬変、肝がんになってしまう方が、より医療費が高くつく。
それと、もう一つ言わねばならないのが、お金の問題だけではなくて、そういう後手後手に回ることによって、いたずらに裁判を引き延ばすことによって、原告の方のみならず、多くの患者の方々の命が奪われていく、そのことの価値。人の命が、一日百人肝がんで亡くなっておられます。対応がおくれればおくれるほど、年間三万人の方が亡くなっていかれます。
ある原告の方がおっしゃっておられました。もし最初の裁判が始まったときに、五年前に救済してくれていたら、多くの患者の方々がもっと救われている、治っておられる方も多いかもしれないということをおっしゃっておられました。
そして、最後のページになりますが、さまざまなデータがあります。慢性肝炎になれば幾らぐらいお金がかかるか、肝硬変、肝がんになると幾らぐらいお金がかかるか。飯野教授、森口教授、三原教授のどれを見ても、大幅に悪化すればするほど費用もかかるということがわかっているわけであります。このような基本的なことを最初に申し上げたいと思います。
そして、今回問題になっているフィブリノゲンがこれであります。大臣もぜひ見ていただきたいと思いますが、これは国が安全であると当時認定した薬です。その薬を使用したことによって、何の罪もない方々が御病気になっておられます。そしてもう一つ、今回企業の責任が認められたクリスマシン、第9因子製剤です。これがクリスマシンであります。
繰り返しになりますが、司法においては何年以降とか区切りがつきましたけれども、この薬によって肝炎で苦しんでいる人にとっては、線引きというのは意味のないことなんです。
そこで、柳澤大臣にお伺いをしたいと思います。
このようなフィブリノゲンやクリスマシンで不幸にして肝炎に感染された方、この方々御本人に何か落ち度や罪はあったとお考えですか。
○柳澤国務大臣 フィブリノゲンの製剤というのは、出産時の大量出血の際、救命のための医薬品として、当時、大変有効であったというふうに私ども考えておりまして、現にこの二十三日、先週の金曜日でございますが、その東京地裁判決におきましても、フィブリノゲン製剤の承認時から昭和六十三年時点に至るまで、一貫して有効性、有用性が認められるとして、この点では国の主張が認められたというふうに受けとめております。
一方、今回の判決では、六十二年四月から六十三年六月までの間、製薬企業を指導して、指示、警告義務を尽くさせることを怠ったということで、国が一部敗訴しておりますけれども、この点については、国の主張が認められずに、厳しい判決であったというふうに受けとめております。
今の山井委員、ずっとこのところ、この問題について御熱心に問題提起をされ、私どもとの間でいろいろとこうした議論を通じて、あるべき対策について御提議もいただいているわけでございますけれども、その中で、今、何か落ち度があったか、こういうことでございますが、その点については、やはりお薬というのは、有用性と同時に、一般的に言っても、必ず副次的ないろいろなマイナスの効果も背負っているということでございまして、そのバランスのもとで薬事行政も行われ、また、各個別の医療機関あるいは医師の先生方、こうした方々の御判断によって治療が行われたということでございます。
それぞれのところでベストを尽くしている中で、本当に不幸なことと申さざるを得ませんけれども、病気に罹患をされたということで、その点については御同情を申し上げる次第でございます。
○山井委員 改めてお聞きします。端的にお答えください。
このフィブリノゲンやクリスマシンで肝炎にかかられた方々に、本人に何か落ち度や罪はあったんですか、大臣。
○柳澤国務大臣 先ほども申したとおり、その方々の御病気を治すための治療ということで、その治療薬として薬事行政の中で承認をされ、そしてお医者さんの個別の判断でその投与が行われたということでございまして、そのプロセスの中で何か患者の方に落ち度があったかといえば、それはないということは言えると私は考えております。
○山井委員 そうなんですね、患者の方々は被害者なんですよ、これは。そして、少なくとも、その薬は国が安全だと認定したから使用されていたんですね。そのことが今回裁判でも問題になったわけですが、司法の判断を離れて、柳澤大臣、大臣としてお伺いしたいんですが、国が安全と認定した薬で、今御答弁あったように、本人に何の落ち度もないにもかかわらず肝炎に感染して、これだけ苦しみ、命の危険にすら身をさらされている。このことに関して、道義的なり、国として責任はお感じにはなりませんか。
○柳澤国務大臣 一般的に申し上げて、国の責任ということはどういう意味か、責任という言葉も非常に多義的なのでございますが、もし今、山井委員がそういうお言葉でおっしゃっておられることが、国の側の不法行為責任というか、そういうことであれば、それはまさに裁判の争点として今司法が担当して、その判定を下そうとしているということであるというふうに私は思っております。
○山井委員 ですから、裁判としてではなく、国が安全と認定した薬でこれだけ被害者が苦しんでいるというこの現状に対して、厚生大臣として責任はお感じになりませんか。
○柳澤国務大臣 先ほど来私が申し上げておりますとおり、薬剤というのは、もともと体の中にあるものではなくて、外側からそれを投与する、あるいは体の中に入れるということでございますので、一般的に言って、御病気を治すという有用性と同時に、いろいろな意味でのマイナスの影響があるということも、どのお薬についても懸念をされておるわけでございます。
そういう意味で、そうした副次的なマイナスの効果ということについては、日ごろからいろいろなシステムで注意をする仕組みになっております。そういう注意のもとで、しかし御病気との関係で一つの最善の選択としてその医療機関なりが判断をして、そこにお薬が投与されるということでありまして、そういう副次的なマイナスの影響ということについては常に留意をしてお薬は使われるということになっております。そういうことを通じて、国としての責任を適切に果たしていく、そういう仕組みになっているということだと私は認識をいたしております。
○山井委員 改めてお伺いします。
こういう国が安全と認定した薬で肝炎にかかってしまわれた方々に対して、国として責任をお感じなるのかお感じにならないのか、どっちですか、大臣。
○柳澤国務大臣 先ほど申したとおり、医薬行政の責任というか任務というか、そういうものは、今言った行政のシステムを通じて果たされているということでございます。
○山井委員 もう一度お聞きします。
そのような国が安全と認定した薬で肝炎になった方々に対して、国として責任を感じるのか感じないのか、それをお答えください。聞いていることに答えてください。
○柳澤国務大臣 ですから、その責任というものがどういう意味であるかということをまずはっきりさせなければいけないのかもしれませんが、私どもは、行政の責任としては、今言ったようにシステムを通じて果たしているということでございます。それ以外に、それが十分でないというか、不作為とかその他そういう一般の不法行為ということかどうかということは、今司法のプロセスの中で判定されようとしているということだと考えております。
○山井委員 そうしたら、大臣、国がその薬を認定したのは事実ですね、その方々に対して申しわけないという気持ちはありますか、ないですか。
○柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、御病気との関係で、その治療の効果と、それから、大体随伴する薬剤というもののマイナスの効果というものもはかりにかけられて、そして医療機関なり具体的にお医者様なりが、ベストの判断としてこの治療の行為としてお薬の投与をしたわけでありまして、この枠組みをつくっているのは国でございますが、その枠組みの中で、そういう枠組みをつくることの中で行政としての責任が果たされているということでございます。
本当に不幸にして、そういう判断のもとでまた別の病気に罹患された方々に対しては、大変御同情を申し上げている、感じている次第でございます。
○山井委員 何度か御同情申し上げるという表現をされています。そういうことをおっしゃるのであれば、やはり一番困っておられるのはインターフェロン治療などの治療の経済的負担なんですよ。先ほど、本人に落ち度はないということを明確に答弁された、そして、今そのような御不幸な目に遭われた方に対しては御同情を申し上げるということだったら、患者の方々の一番の切実な願い、もうこれは命がかかっているわけですから、せめて、その治療費の助成ということは検討していいんじゃないですか、大臣、いかがですか。
○柳澤国務大臣 政府というのも、結局、国民が選んでつくられているものでございまして、私どもとしては、やはり行政というのも一種の預かり物だということでございます。その行政をするに当たっては、我々は、やはり国民の皆さんが認める、そういうルールというものを考えまして、そして、そのルールに従っていろいろの行政措置をとっていくということでございます。そこでは、やはり私ども、一つの、行政の今の力というものは国民から預かっているものだということでありまして、そういうものだということを前提に、あくまでも筋を通したことをやるということをもって、国民からの信託にこたえていくということでございます。
そういう意味で、私どもとしても、今委員が御提案になられたようなことについては、もう検討に検討を重ねているわけですけれども、今日まで、なかなかこれを突破してそうしたことに踏み込んでいくという道が見つからないということでございます。
したがいまして、私どもとしては、今は検査体制の強化であるとか、診療体制の整備であるとか、治療法等の研究開発などの総合的な取り組みをさせていただいているということでございます。
この肝炎の治療費助成につきましては、治療費の助成が行われているほかの例えば難病というようなものとも比較し、また結核等の感染症等とも比較する中で、この対象疾病とこの肝炎との間には、やはり事情が異なるものがあるというふうに考えまして、これを乗り越えていくことは非常に難しいというふうに考えているということでございます。
○山井委員 きのうから、事情が異なるという答弁をされていますが、逆に、三度もこれは地裁で負けているわけですよ、国は。今回の東京地裁でも、薬害だということで断定されているじゃないですか。まさにこれは特殊事情ですよ。先ほどおっしゃったように、本人には何の落ち度もないんですよ。国が承認した薬でこんな目に遭っておられるわけですよ。
先ほども、十二時から民主党として申し入れをさせていただきました。きょうの十一時から、厚生労働省前の日比谷公園のところに、今患者、原告の方々は座り込みを始めておられます。私も先ほど行ってまいりましたが、こういうふうなことを患者の方はおっしゃっておられます。
私たちは何の落ち度もないんです。命がけで座り込みに入ります。被害者が座り込みまでしないと大臣と会えない、被害者の救済をしない国が美しい国と言えるでしょうか。国が安全と認めた薬で病気になって、効くか効かないかわからない薬で肝炎になった。悔しくて悔しくてたまりません。なぜ大臣は会って声すら聞いてくれないんですか。裁判の引き延ばしに腹が立って腹が立ってたまりません。私たちには時間がありません。病状はどんどん進行するのです。会わないと話にならない。これ以上裁判を続けることに何の意味があるのですか。病状が悪化して、あるいは命がなくなって、五年後、十年後に賠償金をもらって何の意味があるのですか。
私は、国会議員として恥ずかしくて仕方がありません。最も苦しい立場に置かれている肝炎の方々本人が、自分の健康を顧みず座り込みをしないと、大臣が会いもしない。B型肝炎のときもそうじゃないですか。訴訟中は会えないと言って、やっと去年結審したから、最高裁判決が出たから会ってくださいと言ったら、似たような裁判をC型でやっているから、それが終わるまで会えない。B型肝炎の木村さんを初めとする原告の方々は、大臣の訴訟が終わったら会ってくれるという言葉を信じて、十九年間待っておられたんですよ。
大臣、改めて申し上げます。
私も今も行ってきましたが、肝炎の方々が体調が悪い中、座り込みをされる、これはやはり本当にただならぬことです。ぜひ、まず一度会っていただいて、話を聞いていただきたいと思います。きょうも傍聴席にお見えになっておられますが、午前中、大臣は、中国残留孤児の方々と会われた、そして、心を動かされたとおっしゃっておられたわけですね。ぜひ、原告の方々と会って、話を聞いていただきたい。
一番申し上げたいのは、原告の方々も、賠償金をくれといって裁判をやっているのでは全くないんです。三百五十万人もおられる肝炎患者の中で、だれかが、本当にこれは、裁判で原告になるのは大変なことですよ、何年も、いつ終わるかもわからない。本当にこれは、全国の肝炎患者の方々の声なき声の代弁として、今座り込みをやってくださっているわけですが、ぜひとも大臣に会っていただきたいと思います。いかがですか。
○柳澤国務大臣 先ほど山井委員を初めとする代表の方々ともお会いしたときにも申し上げたことでございます。今、国が、不法行為というか、そういうことだということを御主張になられる患者の皆さん方との間で、先ほど申したように、司法の場での判断を求めておられるということでございまして、私ども行政の立場として、そういう司法の場で、いわば争点を掲げられてその裁定を求められているということを本題として、他方で、司法の場以外のところでお会いをしていろいろお話をするということは、やはり適切なこととは思われないということを申し上げているわけでございます。
したがいまして、その争点ということを離れて、先ほど申し上げたような一般的な対策について、いろいろなお話を聞くなり、私どもが御説明するなりということでお会いをするということでありますれば、それは専門の担当がおりますので、その方々との間でいろいろお話をしていただくのが適切ではなかろうかということで、私どものお答えとさせていただいているわけでございます。
○山井委員 これは、最終決断をするのは厚生労働大臣なんですよ。だから、大臣が会わないと、大臣は現状がわからないじゃないですか、どれだけ大変かということを。
そうしたら、大臣、訴訟が終わったら会うということですか。それはいつですか。最高裁までこれはされるおつもりなんですか。では、訴訟がいつごろ終わると見込んでおられて、その発言をされているんですか。いつですか。
○柳澤国務大臣 裁判は、本当に被害に遭われて御病気になられた方々から提起をされて、国はそれに対して、国民から負託を受けている、そういうことをやる立場で、それはそうではないではないでしょうかということで、応訴というか応じさせていただいているというのが立場でございます。
それに対して、いろいろと司法の場で御裁定をいただいているわけでございますが、そういうことを法律的な争点としている限り、やはり国には国で主張させていただくべき点がございますので、そういうことで、いろいろと検討、分析の上、関係の省庁との協議のもとで、さらに上級審の御判断を求めたいというようなことをさせていただいているわけでございます。
そういう中で、一体いつごろそういう争訟というか争いという局面から離れられるかということは、これは私どもだけで判断できることではございませんので、とにかく、裁判の早期結審あるいは早期決着ということは、一般的に今司法に課されている課題だとも思っておりますので、一般的にそういうことを思う以外に、私が何もここで、何かいつごろだというようなことを言える立場にはないというふうに考えております。
○山井委員 最初に申し上げたでしょう。患者の方、原告の方には時間がないんですよ。もう、きょう、あす、がんが発症するんじゃないか、もう余命一年、二年じゃないか、みんなそういうことにおびえておられながらやっておられるんですよ。
きのうの参議院を傍聴して、ある原告の方はこうおっしゃっておりました。このままいけば、あと十年生きられるかどうかわからない私に、幾らもがいても無理だよ、死ぬしかないよと言われた気がしました。きょう、最高裁まで行くんだろうなと感じましたと。これは普通の人じゃないんですよ、裁判をやっているのは。御病気で、深刻にいえば、死期が迫っている方なんですよ。
きょうもお配りしましたが、この二ページの朝日新聞でも、今回も、原告の方々、御家族が遺影を抱いて裁判されているじゃないですか。柳澤大臣、そうしたら、これから五年か十年最高裁で闘って、やっと会えますといったときに、御家族の遺影と話をするんですか。そんなことして何の意味があるんですか。先延ばし先延ばしで、見殺しじゃないですか、これやったら。
国民の命を守る厚生労働省がやるべきことですか。私は、これは本質的な問題だと思いますよ。厚生労働省そして国は、国民の命を守るためにあるのか、一番つらい、病気で人生苦しみもがいて、死すら意識しているような方々を、引き延ばし引き延ばしやっていくのか。これは本質的な問題ですよ。
大臣にお伺いします。
主要三地裁で、そろって国の法的責任が、今回、肝炎に関して認められたわけですが、国に法的責任があるという司法判断は揺るぎないものではないかと思いますが、大臣はどう認識されておりますか。
○柳澤国務大臣 山井委員がおっしゃられる、厚生省は国民の命を守る役所ではないかということは、それはそのとおりなんです。おっしゃるとおりです。ただ、それを守るためにいろいろな行政のシステムを置いて、そういうシステムを通じて守るということをさせていただいているわけでございます。
この問題について、私どもの行政のシステムではどういうことになるかというと、薬剤というのは、先ほど来るる申し上げているように、効能というか、御病気に対して有用である、そういう部分と、もうほとんど必然的と言っていいほどに高い度合いでマイナスの影響もあるということでございまして、そういうものを薬剤として使うときのシステムというかルールというのはどういうものかということも決まっております。
例えば、フィブリノゲン製剤につきましては、初めから肝炎発生のリスクが存在するということを添付文書で明記してあるわけでございまして、臨床の現場の使用については、お医者様の専門的な判断によって、御病気を治すということとリスクとを比較検討して使用されるということが私どもの、厚生労働省としての責任を果たしている一つのシステムということでございます。
そういうことでございますので、私どもとしては、今山井委員からそういうことを言われているわけですけれども、こういうことを通じてその責任を果たしているというふうに認識をいたしているわけでございます。そういうことをぜひ御理解いただきたいというように思うわけでございます。
○山井委員 そんなもの、理解なんかできるはずないじゃないですか。患者さんが一人一人倒れていって、患者さんの方々は知っているんですよ、自分らの仲間がどんどんがんを発症してどんどん亡くなっていっているというのを。次は自分の番なのかと思って、一日千秋の思いで政治的な決断を待っているんじゃないですか。
それを、これ、最高裁まで行ったら、あと五年かかるか十年かかるかわからないですよ。エイズでもハンセン病でもヤコブ病でも、このような、もうある程度地裁の判決で国の法的責任というのがわかった段階で政治決断しているじゃないですか。原告がみんな倒れてしまうまで引き延ばして最高裁まで行っていないじゃないですか。
武見副大臣と石田副大臣にも、これは大事なことなのでお聞きしたいと思います。このまま引き延ばしたら、これは健康的な理由もあって、三年後、五年後に治療費助成しますよと言っても、もう手おくれになっている方が多いんですね。あるいは亡くなっている方も多い。このまま控訴して引き延ばしていったら、これは患者、原告の方を見殺しにすることになると思うんですが、武見副大臣、石田副大臣、いかがですか。
○武見副大臣 司法の、訴訟の問題については、私も副大臣として大臣と同じ立場をとるということについては御理解をいただきたいと思いますが、C型肝炎等に罹患された患者の皆様方に対しては、私は心から同情をしておりますし、また同時に、治療のための最善を尽くす、そうした努力は厚生労働省の立場としては当然すべきだろうと考えております。
○石田副大臣 今、山井委員と大臣のやりとりもお聞かせいただいておりまして、大臣も本当にいろいろな思いをされてここで答弁をされているんじゃないかということを私は正直実感いたしました。私も、座っておりまして、ある意味では、山井委員の言葉というのが胸にぐさぐさと突き刺さってくるような感じもいたします。
この裁判につきましては、これはいたずらにということではもちろんないわけですし、また、政治決断ということを何度もおっしゃいますけれども、どういう政治決断をするのか、これはまた将来において考えていかなきゃいけないことが出てくるかと私は思います。
現に、ある意味でいえば、二十三日に東京地裁で一つの結論が出た、それを受けての現段階でありますので、いろいろと、今後のことについては、それは上級審に判断をさらに求めるとか、またどうするかということはまだ結論が出ていないんじゃないかというふうに私は思いますけれども、少なくとも、法律、法廷の問題については、国が訴えられている立場ということは、これは御理解をいただきたいと思います。
○山井委員 厚生大臣、頼みますよ、もういいかげんにしてくださいよ、引き延ばすのは。何とか控訴せずに、和解の話にでも入ってくださいよ。患者の方、原告の方、体がもたないじゃないですか。五年後、十年後、ぴんぴんして生きて健康にされていたらいいですよ、まだ百歩譲って。そうじゃないじゃないですか。今石田副大臣も、将来的にそういう政治決着もということをおっしゃっていましたが、将来的じゃないんですよ。私は今しかないと思います。
大臣、ぜひ、ここが決断のしどころです。その決断をするためにこそ厚生大臣がいるんじゃないですか。政治家がトップにいるんじゃないですか。柳澤大臣以外、だれがこの訴訟の泥沼に終止符を打てるんですか。これを何にもしないんだったら、厚生大臣なんか要らないじゃないですか、政治決断しないんだったら。これで最高裁まで持っていくんですか。
昨年の十一月に大臣にプレゼントした本があるのを覚えておられると思います。大臣、これ、読んでくださったということで感想も聞かせていただきましたが、きょうも、この原告の福田衣里子さん、二十六歳、生まれたときにクリスマシンで肝炎に感染して、二十までは夢あふれる人生を送っていたのに、二十からはずっと闘病生活ですよ。そして、この裁判が終わって、これでまた最高裁まであと五年、十年引きずるんですか。
繰り返しますが、原告の方、患者の方は自分のためにやっているんじゃないんですよ。この本のタイトル「イッツ・ナウ・オア・ネバー」、時は今、そして今を逃したらもうないということなんです、これ。「イッツ・ナウ・オア・ネバー」、今やるか、先送りして見殺しにするか、その決断が今週なんですよ。だからこそ、患者の方々も今座り込みを命をかけてやっておられるんですよ。
大臣、ぜひ、大臣の決断で控訴を取りやめて、そして和解のテーブルに着いてください。先ほど石田副大臣がおっしゃったように、治療費助成のあり方、どういう救済の仕方、それはその後で議論したらいいじゃないですか。
大臣、御決意をお聞かせください。
○柳澤国務大臣 国は今、不法行為をやったということで損害賠償責任を問われているわけです。ですから、その判決で国が敗訴しているということになると、これは必然的に賠償責任というものを命じられる、そういうことでございます。そういうことについては、国としては法律的な主張を持っておりますので、それに甘んじて控訴をしないとかということはなかなかできかねるわけでございます。
東京地裁の判決については、まだ別に何か態度を決定したということはないんですけれども、しかし、これはまた検討させていただいて、どうするかということを決める、こういうことは累次お答えを申し上げているわけでございますけれども、もう控訴しないでおけとかというようなことは、国民から負託されている私どもの行政の立場からいって、なかなか、すぐにここで賛同できるというような考え方は私どもはいたしておりません。
○山井委員 大臣、今聞き捨てならないことをおっしゃいましたが、今争っている最中で云々ということで。
では、高裁、最高裁まで行って、国が全面的に無罪になる可能性があると大臣、本当に思っておられるんですか。
○柳澤国務大臣 それは私どもはわからないわけです。それは司法という、もう一つの憲法で定められた力がそういうときには最終的な判断をされるということでありますから、我々としては、今訴えられている立場で、私どもの国民から負託された行政の立場で、私どもとしては別の主張がありますということを申させていただく、こういうことでございます。
○山井委員 昨日、民主党は肝炎対策本部の会合を開きまして、そして、菅直人代行、仙谷議員、家西議員初めとしてみんなで話をして、とにかく、早期全面解決、そして患者の方々の救済、治療費助成というものをこれから統一地方選挙、そして参議院選挙も含めて訴えていこうということに決めさせていただきました。
私は何度も申し上げておりますが、ハンセンもヤコブも、今までの決着したケースは、やはり超党派でやってきたんですね。余り民主党だけで、私は正直言ってやりたくない。ですから、ぜひとも与党の議員の方々も決断をしていただきたい。こういう問題に党派は本当に関係がないと私は思っております。政府・与党の決断を求めます。
そして、すぐに座り込みが終わるようにしてください。民主党は、原告や患者の方々とともに闘っていきたいと思います。患者や原告の方々を放置しません。見殺しにすることもしません。柳澤大臣と与党議員の方々の人間愛と決断に期待します。
これからも徹底的に闘っていくことをお誓いして、質問時間が終わりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
166-衆-厚生労働委員会-7号 平成19年03月23日
○山井委員 民主党の山井和則です。
これから四十分間、国民年金法等の一部を改正する法案の審議、それと、きょうは午後二時に東京地裁の肝炎判決が予定をされております、そのことについても質問をさせていただきたいと思っております。
それでは、まずこの法案についてでありますが、今資料をお配りしておりますので、お目通しをいただければと思います。詳しくは後ほど園田議員から質問があるかと思いますので、私からは、概略についてちょっとだけお伺いをしたいと思っております。この国庫負担の引き上げということに関して、まず大臣にお伺いをしたいと思っております。
私たち民主党は、年金の抜本改革、一元化というものを目指しております。そしてまた、今までこのような引き上げの財源に定率減税の廃止などが使われたことに関して、私たちは大きく遺憾の意を感じております。
そこで、今後のことについてお伺いしたいんですが、特定年度において国庫負担を二分の一にするために必要な財源の見込み、今後の見込み、柳澤大臣、どのように考えておられますでしょうか、まずお伺いします。
○柳澤国務大臣 私ども政府・与党におきましては、基礎年金の国庫負担を平成二十一年度に二分の一に三分の一から引き上げるということを国民年金法等の一部改正法の附則でもって定めているわけでございます。したがいまして、これはある意味で、法律で定められた、我々政府・与党の負うている義務というふうに心得ておりまして、そのために一体どういうふうにするか、そのための財源を一体どのように調達するかということが非常に大きな課題であります。この課題に対して、与党の方の税制改正大綱等では累次にわたりまして言及をいたしておりまして、それは十九年度をめどとして税制の抜本的な改革を行う、そのことの中で基礎年金の国庫負担の増額に対する財源的な手当てを行う、こういうことを表明いたしている次第でございます。
私は、ですから、与党側の税制大綱にたびたびうたわれた措置が滞りなく円滑に実現されることを期待いたしている次第でございます。
○山井委員 何かあいまいもことして、理解ができない答弁であります。
園田議員からも後ほど質問させていただきますが、もう一点、このことに関連して、平成十九年度をめどに特定年度を定めることになっているが、いつ、どのように、だれがこれを決めていくことになるんでしょうか、お答えください。
○石田副大臣 基礎年金の国庫負担割合の引き上げにつきましては、平成十六年の改正におきまして、平成十九年度を目途に、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成二十一年度までに二分の一に引き上げる、御指摘の二分の一に引き上げる特定年度につきましては、別に法律で定める、こういうことになっておりますので、税制の抜本的な改革に係る動向を踏まえつつ、二十一年度までに引き上げを実施できるよう所要の法案を提出し、最終的には立法府の判断を仰ぐ、こういうことになると思います。
○山井委員 この財源問題については後ほどまた園田議員が質問をさせていただきますので、私からはこれまでにさせていただきますが、年金ということに関連して、柳澤大臣にお伺いをしたいと思います。
先日、年金の給付見通し、出生率が下がったことに対する給付見通しというものが発表されました。あれは、要は出生率が下がったにもかかわらず、将来見通しは五〇%を上回る、逆に見通しが上がっている、そういう部分があるわけですね。やはりこういう一つのやり方を見ると、いかにも恣意的に年金の給付見込みを決めているのではないかということで、逆に年金の信頼というものを失うのではないかというふうに思っております。
このような年金の給付見通し、これは余りにも、賃金の引き上げや経済成長率、楽観的過ぎるのではないか、この点について、柳澤大臣、答弁をお願いいたします。
○柳澤国務大臣 年金につきましては、平成十六年度改正におきまして、長期的なフレームワークと申しますか、仕組みというものができ上がっていることは山井委員も御承知のとおりでございます。今度の、次の年金の財政の検証というものが法律上明記されておりますが、それは平成二十一年度において行う、こういうことになっているわけでございます。
ところが、昨年末に、実はその前年の国勢調査を受けまして、新しい将来人口推計というものを発表させていただいております。これによりますと、二〇五五年の合計特殊出生率でございますけれども、十六年度改正のころの二〇五〇年時点の合計特殊出生率に比べて、残念ながらそれが引き下げられる、一・三九から一・二六に引き下げられる、こういうことが明らかになったわけでございます。もとより、これは中位数という、人口推計上の低位の推計、高位の推計というものの中での中位の推計でございますが、そうした数字が得られました。
そこで、そういう人口推計を発表した以上、これらについてのいろいろな影響というものについても国民が早く知りたい、こういう期待があることは十分予想されることでございますので、私どもとしてもその国民の期待にこたえていく必要があるということで、正規の財政検証ではないわけですけれども、その正規の財政検証をこれから御議論いただくための、いわば議論の参考資料としていただくために暫定試算というものを公表させていただくことにいたしました。
この暫定試算というのは、年金への人口、経済の影響がどういう方式でもたらされるかということの、方式についてはもう前回の十六年度改正と全く同じ方式を踏襲するわけですが、その数字だけを新しく判明した数字によって置きかえる、こういうやや機械的な、評価を交えない機械的な推計をいたしたわけでございます。
その結果につきましては、これは何通りも発表をさせていただいているわけでございまして、大きく分けますと、経済が、あの十六年度当時よりも若干足元、それから将来見通しとも好転しているということですから、そちらのケースと、それから、いや、もう経済の変動については一切考慮しないで、人口の新しい推計の結果だけを入れかえるという場合にはこれがどうなるかというような、大別してそうしたタイプの推計を、暫定的な試算を発表させていただいたわけでございまして、これによって何か、国民の皆さんに無用な楽観論を振りまいたり、あるいは無用な悲観論を普及させたりというようなことをするつもりは一切なかったということを御理解賜りたいと思います。
○山井委員 この国民年金に関しては、御存じのように、納付率が年々、実質下がっております。反転したように見えているのは、御存じのように、免除、猶予をふやして、見かけ上の公表数値は上がっておりますけれども、実質上の、払っている方のパーセンテージは下がっているわけであります。こういう国民年金自体の崩壊をどうやって防ぐのか、このこともしっかり議論しないとだめだと思っております。
年金については、また後ほど話は戻りたいと思いますが、ちょっと話題を変えまして、先ほども申し上げました肝炎判決についてお伺いをしたいと思います。
柳澤厚生労働大臣、武見副大臣、石田副大臣、この間、この肝炎問題についてはなかなか進展はないものの、内心、非常な思いで、さまざまな、どうすれば解決できるかということに頑張ってきてくださったと私は信じております。
ただ、残念ながら、表面的に見れば、福岡で敗訴し、大阪で敗訴し、にもかかわらず国が控訴をしている。そして、まさにきょうが、二時ごろに東京地裁でC型肝炎訴訟の判決が下されるわけであります。裁判結果はどうなるかわかりませんが、私は、当然国が敗訴するものと確信をしております。
ここで大臣そして両副大臣にお伺いしたいのは、これは本当に裁判だけに任せておいていいのかということなんですね。国会議員として、政治家として、人の命を救うために、今こそ党派を超えた国会議員の決断、ひいては柳澤厚生労働大臣、武見副大臣、石田副大臣のリーダーシップが私は求められていると思っております。
少し議論を整理したいと思いますので、二枚目のペーパーを見ていただければと思います。
これは、読売新聞の今週の連載であります。ここに出ております原告番号十三番の女性、当時五十七歳の方は、柳澤大臣も御記憶あるかと思いますが、私が昨年の委員会で最期の言葉を取り上げた方でありますが、残念ながら、きょうの判決を聞く前に、C型肝炎からがんになって、判決、そして判決のみならず早期全面解決を首を長くして待ちわびながら、この世を去ってしまわれました。
そして、その次のページを見ていただきますと、「出産日が一転、感染日」。つまり、出産の際の止血に使われたフィブリノゲン、当時アメリカではもう、C型肝炎に汚染されて肝炎のリスクがあるということがわかっていた。また、この記事、一々読みませんが、こういう、日本各地でもこのフィブリノゲンを処方した方が、妊婦が、出産した女性が連続して肝炎になったということがわかっていた。にもかかわらず、そのまま放置をされて被害を拡大させた。
そして、きょうの判決のもう一つの大きな焦点はクリスマシンであります。
昨日も私は、判決前夜の集会に行って、このクリスマシンを投与されて出産の際にC型肝炎に感染した二十代の若者の方々の話を聞きました。ここにも書いてありますように、不必要な投与、原告側は、単なる止血剤として、使う必要のなかった患者に使われたということを強く主張しているわけであります。
そして、次のページをお願いいたします。
B型肝炎が多く見て百五十万人、C型肝炎が多く見て二百四十万人、合計約三百九十万人。国民の約三%、第二の国民病と言われております。そして、既に発症している方が、答弁によりますと、合計六十二万一千人、そのうちインターフェロン治療中がたった五万人、八%。大臣、なぜこんなに少ないのかということですね。
これは、きのうも集会で多くの方々から声が聞かれましたが、治療費がなかなか出せない、また副作用が強い、仕事を休まねばならない、生活が成り立たない、何よりも治療費が非常に高い。自己負担で、C型肝炎で年間約八十万円かかるわけですね。
さらっと私の考えだけ申し上げます。
次の六ページをお願いいたします。
そんな中で、これは、こういう治療費助成も含めて、やはり早急に政治が決断をすべきだと考えております。
これは、確かに、司法になると何よりも時間がかかります、そして微妙な年代で区切ったりということになります。かつ、これはカルテがない人は裁判もできない。しかし、ぜひ御理解いただきたいのは、今闘っておられる原告の方々は、自分たちに賠償金を払ってほしいということが主な目的じゃないんです。治療費助成、安心して治療が受けられる、そういう体制をつくるために、国が動いてくれないから裁判をするしかない、そういうやむにやまれぬ思いで今裁判をされております。
そして、七ページを見ていただけますでしょうか。
昨年十一月に答弁いただいたように、現在五万人がインターフェロン治療を受けておりまして、その方々の自己負担が年間二百億円。下から四行目に書いてあります。年間二百億円なんですね、ある意味で。そして、肝炎問題の研究班の熊田教授の報告にもありますように、こういうインターフェロン治療をすれば、中長期的には、本来なら肝硬変、肝がんになって八兆円ぐらいかかる国民の医療費が五兆円で済む、そういう統計も出ていることは、昨年の答弁でも、柳澤大臣も御存じかと思います。そういう意味では必ずしもむちゃな要求をしているわけではありません。
そして、かつ、これは毎年二百億円かかるという話ではなくて、御存じのように、今は非常に薬の効果も出ておりまして、七割ぐらいの方が一年でウイルスを完全に除去できる、そういうこともわかってきているわけですね。
そこでお伺いをしたいと思います。
柳澤大臣、昨日も私、原告の方々にお目にかかりましたが、きょう判決が出て、これで三度目の正直です、これでも政治が動かなかったら、私たちはもう国会から地元には帰らない、命がけで国の治療費助成や救済のために働きかけを続けるということを患者の方々、原告の方々はおっしゃっておられました。
大臣にお伺いします。きょう二時から判決が出るわけですが、やはり今こそ、司法だけに任せるのではなくて、政治の出番ではないか、やはり政治的な判断が必要ではないかと思いますが、柳澤大臣、いかがでしょうか。
○柳澤国務大臣 この肝炎の問題につきまして、山井委員が非常に、私の就任当初のころからでございますけれども、いろいろな角度から研究をなさり、また患者さんの声をじかにお聞きになる中で、御質疑の形で今おっしゃるような御主張をたびたび聞かせていただいているということでございまして、このことについては、私として、本当に敬意の気持ちを持って、毎回ですが、聞かせていただいております。
ただ、何回もそうしたお訴えに積極的に対応しない答弁ばかりしておるということを本当に申しわけないとは思いますけれども、現実にこのフィブリノゲン製剤というものは非常に有効な医薬品であったということでございますし、それからまた、患者を救うための医薬品において生じた問題については、その時代その時代の医学的な知見に照らして、裁判において厳正な司法判断を求めざるを得ないというのが行政の立場でございまして、その責任者の立場にいる私も、その考え方というものをむげに否定するということはできない、そういう立場であると私は自分自身認識をいたしているわけでございます。
ただ、訴訟の問題とは別に、肝炎対策を推進するということに対しては、私どもは積極的にこれは、当然のことでございますけれども、努力をしたい、このように考えておりまして、これまで申したことで申しますと、早期発見、早期治療の促進、さらには治療水準の向上というような観点から、診査体制、診療体制、それから治療方法の研究開発、こういうようなことの進展のために総合的な取り組みを推進していきたい。今までも推進してまいりましたけれども、今後さらにそうした取り組みを強化してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○山井委員 フィブリノゲンが有効な薬だということをおっしゃいましたが、この記事にも書いてありますように、大臣、その薬のせいで多くの人がC型肝炎に感染しているわけですよ。その人たちの人生はどうなるんですか、命は。有効な薬では済まないでしょう、それは。
きょうも傍聴席に、この八ページの記事にあります、出産時に血液製剤フィブリノゲンを投与されて肝炎に感染した森上さん御夫妻もお見えになっております、あそこにマスクをしておられますが、来週水曜日からまた入院。肝臓移植もして、本当にもう、目もなかなか見えない。そしてまた、これも委員会で取り上げましたが、移植前には医師から保険が適用されるはずだと言われていたのに、その後しばらくたってから、厚生労働省から、保険はききませんと。全額一千万円以上払ってくださいということになってしまった。そういう問題も出てきているわけですね。
そして、もうお一方、先日も私取り上げさせていただきましたが、昨日の集会に行って、この二ページの、きょう判決が出ます原告番号十三番の女性、当時五十七歳の長女の方、そしてお母さん、妹さん、お姉さんにもお目にかかりました。こういうものをお借りしてくるのはどうかと思いましたが、私はやはり、柳澤大臣、石田副大臣、武見副大臣に、きょうの判決を聞くことなくお亡くなりになられた原告十三番の方のお顔を見ていただきたいと思うんですね。
柳澤大臣、ここにそのお写真がございます。きのうの集会、長女の方がお母さんのこの遺影を抱いて来ておられました。そして、昨年私がこの委員会で取り上げたと言ったら、非常に感謝してくださいまして、きょうもこの遺影をお借りすることになりました。きょうも、長女の方、お姉さん、そして亡くなられた原告の方のお母さんもこの傍聴席にお見えになっております。
前回も申し上げましたように、亡くなる直前にこうおっしゃっているわけですね、原告十三番の方は。
ちょっと説明しますと、一九八四年七月に出産して、一カ月後にC型肝炎に感染していることがわかり、フィブリノゲンを出産のときに投与されていた。そして、二〇〇〇年八月にガンを発病し、二〇〇二年十月から東京原告になられた。しかし、きょうの判決を待つことなく、二〇〇三年の六月十二日にお亡くなりになった。それで、最後のビデオを長女の方が撮影された。それはなぜかというと、まさにこうやってその声をだれかが行政に届けてほしいという思いなんですね。
私は二十年間、どこに相談の窓口があるか分からず、苦しみ、闘ってきました。ようやく、闘いの窓口にたどりつきました。が、もう体がついていきません。どうか裁判を早く終わらせてください。そして製薬会社の人たちも、自分達のしてきたことを認めてください。国は争うことなく現実を見つめ、人の健康と命の重さを認めてください。私はとにかく元気になりたいんです。そして、この問題を各ひとりひとりが、自分の問題として受けとめて下さい。
わたしは、こんなふうになりたくなかった。平凡でもいいから走り回り、みんなで…、楽しく、笑い転げながら、これからも生活をしていきたかった。
そして、二〇〇三年六月十二日、三人のお子さんの名前を最後呼びながら、安らかに天国に召されたわけであります。
この原告十三番の女性の方の御冥福を心よりお祈り申し上げます。
大臣に申し上げたいのは、この人一人じゃないんです、原告だけじゃないんです、多くの方々が国が控訴している間にガンを発症し、インターフェロン治療がもう手おくれになり、そして亡くなっていっておられるんですよ。
大臣、司法判断とおっしゃいますが、多くの人が亡くなってしまわれているわけです。
きょうも森上さんが来られているのは、もっと早くインターフェロン治療が治療費助成があって受けられていたら、自分は肝臓移植までしなくて済んだのに。だから、自分は体調が悪いけれども、自分の命をかけてでも、この現実を見て、一人でも多くの人がインターフェロン治療やいろいろな十分な治療が受けられるように国に動いてほしい、そんな思いで来られているわけです。
柳澤大臣、お聞きしづらいですが、判決が出た、そして将来的に動いた国が、でも、そのときまでにもう患者さん、原告は亡くなってしまわれていたとなったときに、その判決はどういう意味があるんですか。
○柳澤国務大臣 山井委員は、きょう二時、裁判の判決が出るということを前提といたしまして、その後の展開の中で一つの想定をお立てになられて、仮にその想定のとおりに、国が何らかの手だてをしたときに、そのタイミングとの間で不幸にして亡くなられるというような方が起こったときにどうするんだという、まことに切実なお話を承ったわけでございますけれども、本当にそうしたことを申し上げるのは心苦しいということを感じつつ申し上げますけれども、私どもとしては、行政としては、やはりこの判決が出ましたら、判決の内容について子細な検討を加えて、そして関係省庁とも話をして、その後の対応を決めていくということを行っていくことになるだろう、このように思います。
私どもといたしましては、とにかく、そうしたこととは別に、先ほど来申したように、一般的な肝炎対策をさらに一層強化していくというこの取り組みに専心をするということになろうと思う次第でございます。
○山井委員 もう言うまでもないことですが、一番患者の方々が求めている治療費助成が入っていないじゃないですか、その中に。このままいかれたら、どんどん亡くなっていくんですよ、悪化していくんですよ。
そして、この原告十三番の方もインターフェロン治療をされていたんですよ。一回目やって、そして二回目やったけれども、子供の進学のころと重なって治療費がもう続かなくなって、それを断念されたわけですよ。そして、がんになられて五十七歳で亡くなられたんですよ。当時治療費助成があったらまだ生きていられたかもしれない。きょうもその亡くなられた方のお母さんがお見えになっているんですよ。何で母親を置いて娘さんが先に亡くならないとだめなんですか。
やはりこれは、厚生労働省そして厚生労働大臣のお仕事というのは、救える命を救うことではないですか。武見副大臣、石田副大臣からも、このことについて一言御答弁をいただきたいと思います。
○武見副大臣 今までのお話、非常に深刻かつ重く受けとめて聞かせていただいております。
そして、その上で、私自身も副大臣の立場として、訴訟の問題について、これはやはり大臣と同じ立場をとるということは申し上げなければなりません。
そして、その上で、やはりこうした肝炎にかかわる問題というものを一刻も早く解決するために可能な予防措置から始まる、改めて早期診断、早期治療、そしてその治療のためのさらなる技術開発というものとその普及、これらを徹底して行うための諸策というものは、やはりでき得る限り国としても努力をし、そしてそのため万全を期すという考え方を、私自身、政治家として持っております。
○石田副大臣 今、山井委員からお話を伺っておりまして、私は、実は薬害エイズのときにちょうど委員でおりまして、随分そのときにいろいろなことも勉強もさせていただきました。現実に司法の場で争っているということ、これは事実でありますから、きょうの二時の判断をこれは待たなければいけないということは事実でありますけれども、私は、それと同時に、現に苦しんでいる患者さんがいらっしゃるということは厳粛に受けとめていかなきゃいけない、こういうふうに個人的には思っております。
○山井委員 救える命を救うためにこそ国会議員がいて、そしてこの厚生労働委員会もあるんだと思います。党派を超えて、この政治決断のために、やはり今こそ行動するときだと思います。今動かなかったら何のために国会議員がいるのか。多くの患者さんの方々を見殺しにすることはできない。後で治療費助成をしても、後でインターフェロン治療をしても、もう後でやっても手おくれなんです。このことは今後また、判決が出てからこの委員会で議論をしていきたい。
ただ、最後に本当に申し上げておきますが、これはもう患者の方々、原告の方々も命をかけて闘っておられます。そして、繰り返し申し上げますが、自分のためじゃないんです。だれかが原告となって名前を出して、偏見に耐えながらも、だれかが裁判をして勝たないと国が動かないからなんです。三百九十万人の肝炎患者のために原告は闘っておられる、そのことをぜひ御理解いただきたい。ここまでしないと政治が動かないというのは、国会議員として非常に恥ずかしいことです。
あと少しだけ時間がございますので、タミフルのことにちょっと触れさせていただきます。
タミフルも似たような構図じゃないですか。先週、今週と、我が党の田名部議員、柚木議員がタミフルと異常行動の因果関係等々質問しました。しかし、因果関係は認められない、認められないと言って、しかし、一転してその判断を今厚生労働省は変えようとされている。それだったら、昨年の十一月、昨日も私お目にかかりましたが、タミフル脳症被害者の会の軒端代表などが昨年末に使用制限をしてほしいと言ったときに方針を決めていたら、例えば、この二月にタミフルを投与後転落死されたお子さんの命は失われていなかったんじゃないですか。
そこで、お伺いをしたいと思います。
私の地元でも、三十八歳の方が亡くなられました。タミフルを服用し、その日の晩十時に寝て、夜中一時には布団の中で亡くなってしまわれました。このことについて、私も厚生労働省に問い合わせをし、要望したことがあります。しかし、厚生労働省は、因果関係は認められないの一点張り。本当、けんもほろろでした。
今回異常行動ということをまた調べ直されるということですが、こういう、異常行動じゃなくて、そのまま寝て亡くなられた突然死というのもこの調査の対象にぜひ入れてほしいと思います。
大臣、単に異常行動という範疇でなく、こういう突然死というもの、そして、これも、タミフルに関係ない関係ないといってはねられ続けているんですよ。そういう例が日本じゅうにいっぱいある。ですから、こういう突然死というものも入れていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○柳澤国務大臣 タミフルのことにつきましては、二月に少年の男女がほとんど、もうきびすを接するように、この短い間にお二人、高層の住居からの転落という形でとうとい命を落とされたということがございまして、私も大変ショックを受けまして、二十七日に最後の、二回目のそうした死亡事故がありましたので、即二十八日の日に、いわば注意をさらに喚起いたしたわけでございますけれども、三月になりまして、またさらに、それは不幸中の幸いというか、死亡事故には至らなかったんですけれども、同様の異常行動が見られるということの中で、私も、これはもうとにかく緊急の安全性情報という、特別の注意喚起というか、そういうことをせざるを得ない、こういうことで決断をいたしました。
そして、現在の考え方は、この個別の症例の検証によって、そこで因果関係が何か見つかるかというと、それはむしろ否定的だと。それから、疫学の調査においても、タミフルの服用があったかなかったかでそうした行動をとった人の数が有意に差が生ずるかというと、それもないというようなことで、私ども、これは因果関係は定かでないというか、因果関係はむしろない、こういう立場でございました。
これ自身を今すぐどうこう変えるということではないんですけれども、もう一度しっかりと検証し直すということをやってみたい、こういうように考えて、これから早急にその調査を、あるいは検証作業を進めるわけでございますが、その中には、今山井先生が御指摘になられたような、突然死というようなことも当然に検討の対象にさせていただくということの中で、検証、調査にできるだけのことをしてまいりたい、このように考えております。
○山井委員 もう時間が来ましたので終わらせていただきますが、このタミフルの問題は、これはきっちり集中審議をやるべきだと思いますので、そのことを委員長に要望したいと思います。よろしいですか。
○櫻田委員長 理事会で協議させていただきます。
○山井委員 そして、最後に申し上げますが、できればやはり党派を超えて、人の命を守るのが国会議員の最大の責務でありますから、この肝炎の早期全面解決のために頑張りたいと思います。
しかし、万が一与党が、このような、次々と失われ行く命を放置するのであれば、それは私としても絶対に黙って見ていることはできない、そのような民主党の思いを最後に申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
166-衆-厚生労働委員会-5号 平成19年03月16日
○山井委員 これから三十分間質問をさせていただきます。
まず最初に、午前中、園田議員からもお話がありましたように、一昨日やっと国会が正常化したということで三井筆頭理事とともに本当に喜んでおりましたが、まさにその翌日、昨日、憲法特でああいう強行採決がされました。このことに関しては、あの水曜日の正常化は一体何だったんだということで、本当に、言い知れぬ怒りを感じております。そのことをまず強く抗議申し上げまして、質問に入らせていただきます。
柳澤厚生労働大臣、雇用保険三事業の福祉事業の中で、都道府県の労働相談事業についてお伺いをしたいと思います。
今回、雇用保険三事業が見直しになる、このこと自体は必要であると思います。もちろん、必要な事業あるいは問題のあった事業、両方あったわけですから、見直し自体を否定するわけではありません。しかし、今全国の都道府県で問題になっておりますのが、この補助金がカットされることによって委託事業が廃止になって、都道府県の労働相談事業が、昨今の都道府県の財政状況からして、これ以上都道府県の負担を強いるようなことになれば労働相談事業に深刻な影響が出るのではないかというふうな問題が全国各地で今巻き起こっております。例えば大阪では、平成十八年度の相談件数は六千九百四十七件であり、相談事業の総事業費は三千六百五十八万円、そのうち国庫補助は一五・三%を占めると聞いています。
今回、労働相談事業に係る国庫補助金が廃止されることにより、厚生労働省として、どのくらいの影響が労働相談事業に出るとお考えでしょうか。
○柳澤国務大臣 労働相談事業は、今委員が御指摘のように、従来、三事業の雇用福祉事業で行われてきたということのようでございます。これは、都道府県の労政事務所を窓口とする相談事務について、国の今申した雇用福祉事業からの補助が行われていたというのが現状でございました。
ところで、これは都道府県が自治事務として行っている事業でございますので、これに対する国の関与につきましては、地方分権の趣旨にかんがみまして、事業が定着するまでの援助としては行うのは相当であるけれども、中小企業福祉事業費補助金については、創設後相当期間が経過して、各都道府県においてもそろそろ体制が整い、十分に定着したというふうに認めるに至りました。そこで、もとから補助金としては少額でありまして、そうした今の趣旨からいっても、改めて補助金を継続していくという必要はないものと考えたわけでございます。
しかしながら、厚生労働省としては、必要な情報提供、都道府県労働局との連携という形で、今後ともその仕事そのものについては、補助金の廃止に伴う悪い影響は余り出ないように努めてまいりたい、このように思っております。
○山井委員 確認ですが、労働相談事業に悪影響が出るというふうに認識されているんですか、それとも、出ないというふうに認識されているんですか。
○柳澤国務大臣 ただいま申し上げましたように、私どもとしては、都道府県の労働局との連携という形で必要な情報提供等も行うということで、余り大きな影響が出ないように努めてまいりたい、このように考えているということでございます。
○山井委員 都道府県の労働相談事業は、労働者にとっては身近な駆け込み寺として非常に重要な役割を果たしており、この委託事業の廃止で都道府県の相談窓口が廃止縮小されるのではないかと懸念が広がっております。しかし、住んでいる場所から近く、何かあったらすぐに駆けつけることのできる相談窓口は労働行政として大変重要であり、これがなくなると市民生活にも大変大きな影響があると思いますが、大臣、この労働相談事業の重要性について、いかが思われますか。
○柳澤国務大臣 中小企業は、大企業と比較しまして労働条件や福利厚生面の状況というものが厳しいというようなこともありまして、中小企業労働者の雇用の安定であるとか労働条件の改善であるとか労働福祉の向上、さらにまた労使関係の安定、労務管理の向上といった各般の面でいろいろと相談をすべきことも多いのではないか、このように推測を申し上げます。
しかしながら、この面については、今も重ねて申し上げましたように、各県に都道府県の労働局がございますので、その出先を通じて必要な情報提供等を密接に行うことにより今度の委託事業の廃止に伴うマイナス面を補ってまいりたい、このように考えております。
○山井委員 そのマイナス面があると困るわけです。労働相談事業の重要性ということを認識していただいて、この三事業の見直しにおいては、この間、主として保険料を負担している使用者団体の意見を聞いて行われたと聞いておりますが、この委託事業が廃止されることで、労働者、労働行政にとって本当に必要な相談機能が低下することがないのかというのが一番深刻な問題であります。
改めて大臣にお伺いしますが、労働相談窓口のこのような機能が今回の法改正によって低下することがないのかどうか、ないようにちゃんとしてもらえるのかどうか、そのことを明確に御答弁ください。
○柳澤国務大臣 都道府県に置かれる労政事務所については今後ともその事業が継続するわけでありまして、その事業が十分、中小企業者あるいは中小企業に働く労働者にとって頼りがいのある相談事業というか、そうした相手方として今後とも機能するように、いわば厚生労働省としては、都道府県労働局等にバックアップをしていくということで、事業の運営に遺憾のないように御協力申し上げていきたい、このように思います。
○山井委員 ぜひこれは、労働相談機能が、非常に重要な労働相談窓口ですから、この機能が低下することがないようにしていただきたいと強く申し上げます。
それとともに、筋論としましては、今まで雇用保険財源で労働行政を担っていたわけですが、今回のようにそれを縮小するのであれば、一般財源で労働相談事業への補助金を続けるべきではないかと考えますが、大臣、いかがですか。
○柳澤国務大臣 労政事務所の運営と申しますものは、行政改革の上では自治事務と一応されたものでございまして、法定受託事務とは違うということでございます。
もとより、自治事務であるあるいは法定受託事務であるということの区別は、ストレートには財政措置とは絡ませないということがあの当時の行革担当者等の認識でございましたけれども、しかし、大きな意味では、なるべく自治事務に対して国の関与を縮小していくということは、決してこれは筋の違うことではないというようなこともありまして、そういう意味では、新たに補助金を一般会計の中でつくり上げるというのは非常に難しい問題だろうというふうに考える次第です。
○山井委員 もう一度確認します。
労働行政にとって必要なこういう相談機能が低下することがないようにするということでよろしいですか。
○柳澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、厚生労働省といたしましては、必要な情報提供あるいは都道府県労働局との連携という形で今後ともできる限り協力を行い、このことを通じまして、相談事務等に地方が十分力を発揮することを支えてまいりたい、このように考えております。
○山井委員 ぜひこれは、相談窓口の機能が低下することがないようにしていただきたいと思います。
次のテーマに移りますが、今回の雇用保険改正法案の第六十一条の四の六項についてお伺いしたいと思います。
この項については、御存じかと思いますが、育児休業期間に関しては算定基礎期間に算入されないというふうに今回新たに制度を創設しようとされているわけであります。育児休業をとった期間に関しては雇用保険の加入期間から外すということなんですね。大臣、このことは非常に重大な問題だと私は思うんです。
大臣、ちょっと聞いていただきたいんですが、要は、私なりに解釈をしますと、雇用保険の所定給付日数は、被保険者であった期間が一年未満あるいは一年以上五年未満あるいは五年以上十年未満という期間によって給付日数が当然変わってくるわけですね。ですから、一例を申し上げますと、例えば、五年九カ月の被保険者期間がある女性の方が倒産、解雇によって離職を余儀なくされた場合、本来、百八十日の給付日数なんですね。しかし、十カ月その間育児休業を取得したとすると、十カ月引いて四年十一カ月になってしまって、本来あるべき百八十日の給付日数が九十日に半減するということになるわけなんですが、今回の法改正で育児休業期間について算定基礎期間に算入されないということは、こういうことになるというふうに理解してよろしいですか。確認です。
○柳澤国務大臣 今度の育児休業給付につきましては、比較的長時間給付を受けるということ、それから、その間賃金が支払われない場合が多いわけですから、したがって保険料の納付が行われないわけでございます。
そういうようなことを踏まえまして、被保険者間の公平性の観点から、算定基礎期間、今委員の言われたような給付日数の算定の基礎期間でございますけれども、育児休業期間の被保険者期間を差し引くことに改正いたしました。
この措置により、将来失業した際に所定給付日数に差が出てくるケースがありますけれども、基本手当の受給資格要件自体に影響があるわけではなくて、被保険者にとって著しく不利益となるものではないのではないか、このように考えております。
○山井委員 これは著しく不利益になるじゃないですか。今言ったように、五年九カ月の被保険者期間の方が、百八十日、本来給付日数があるはずが、十カ月の育児休業をとったら五年未満になってしまって、九十日に半減するじゃないですか。これは著しい不利益じゃないですか。大臣、もう一回答弁してください。
○柳澤国務大臣 五年すれすれだった方が、今委員のおっしゃるように、ちょうどそこの育児休業の期間によって五年未満になってしまう、もし育児休業期間を算入すれば五年以上だった、こういうようなケースを考えますと、確かに百八十日間給付日数があるものが九十日間になる、こういうことになるわけでございます。
しかし、それは、今も申したように、賃金が支払われなくて、したがって保険料の納付が行われていないということがございますので、そのことを被保険者間の公平性という観点に照らしますと、やはりそういう扱いが公平を実現することになるのではないか、このように考えて、今回、育児休業期間の被保険者期間というものを算定基礎期間から差し引くことにいたした、こういうことでございます。
○山井委員 柳澤大臣、これは割と重大な問題ですよ。子育て支援をやっていくということを片や言いながら、今の話を聞いていると、今回の改正によって、育児休業をとった人は給付を受けるのが不利になる不利益変更を今回するということじゃないですか。
柳澤大臣、ということは、育児休業をとっている人は雇用されていないということなんですか、失業しているということなんですか。そこの認識を聞かせてください、大臣。
○柳澤国務大臣 育児休業をされている方は、その企業の中における地位は保全されているわけでございますが、仕事をしていないということで賃金が支払われない、したがって保険料も支払われない、そういう状態であるということでございます。しかし、育児休業期間が終了すればそれはまた雇用が継続する、こういう位置に立っているものだと理解をしております。
○山井委員 先ほどの内山議員の質問もそうでしたけれども、今回、この法案、不利益変更が多々あるじゃないですか。育児休業をとる人を支援する改正というふうに説明しているんじゃないんですか。それがなぜ、その境界にいる人は給付日数が半数になってしまうんですか。
今、地位は保全されると言っていますが、柳澤大臣、もう一回聞きますが、育児休業をとっている人は雇用されているんですか、されていないんですか。明確に答弁ください。
○柳澤国務大臣 雇用契約のもとにはあるんだろう、雇用契約関係というものはあるんだろうと思いますが、しかし、休業しているわけでございますので、これに対する賃金が払われない状況にある、こういうことでございます。
○山井委員 雇用契約の最中にあるならば、算定基礎期間から除くのはおかしいんじゃないですか。大臣、いかがですか。
○柳澤国務大臣 これは、要は、保険料が納付されていないということで、その他の保険料を納付している被保険者との公平性の観点から、先ほど申したようにこの期間については差し引く、こういうことを御提案している次第でございます。
○山井委員 公平性とかおっしゃっていますが、育児休業をとられる方に対して非常に冷たい改正を今回されるんですね、公平性という名のもとに。何か、今まで柳澤大臣が国会でおっしゃってこられたことと矛盾するようなことをされていて、私も本当に、非常に心外です。
九八年には、産休や育児時間を不就労とみなし、女性への経済的な不利益をこうむらせたことは公序良俗に反するという趣旨で、産休、育児休業の一時金カットを違法と判断する地裁レベルの判決が示されたという例もあるわけですね。そういう意味では、子育て支援を言っている柳澤大臣の今までの政策にこれは逆行するんじゃないですか。
子育て支援と大ぶろしきを広げるのであれば、育児休業給付を上げて、よい顔をする裏側で、雇用保険給付の給付日数に直接関係してくる算定基礎期間をこっそり減らすようなこそくなことはやめた方がよいと思いますが、大臣、いかがですか。
○柳澤国務大臣 別にこっそり減らしているわけではなくて、この問題も審議会で審議を、公労使三者構成の審議会において俎上にのって論議されてここに提出をされているということでありますので、別段、何かこっそりこの規定をどこかへ忍ばせていたということはございません。
○山井委員 算定基礎期間に算入されないことによって給付日数が減るケースがある。
そうしたら、育児休業をとる人にとって、算定基礎期間に算入されないということは不利益変更であるということはお認めになりますか。
○柳澤国務大臣 今までのそうしたことにかかわりのなかった制度に比べますと、そこのところは、今度の改正によって、期間の算定上そこが除外されるという事実は残るということであります。
○山井委員 大臣、もう一回これはお聞きしますが、ということは、不利益になるということですね、育児休業をとられる方にとって。
○柳澤国務大臣 今度給付の率もふえるという面もございまして、どこどこの部分だけをとってこれは有利かこれは不利かというような議論ではなくて、やはり総体として、私どもは少しでも、これは本来は失業等給付の抑制ということが本旨でございますけれども、それが同時に、若い育児中の世帯に対して経済的な支援になるという考え方で給付の率をふやしたということでございます。
したがいまして、そういうものを総合的に判断していただくとありがたい、このように考えます。
○山井委員 百八十日が九十日になるという、この九十日の半減は非常に大きいですよ。子育て支援と片や言いながら、一方では非常にこういう冷たいことをするということに対して怒りを禁じ得ません。
そして、先ほどの内山議員の質問の続きとなりますが、同じような不利益変更、これについて先ほど一時間にわたって内山議員は質問されましたが、改めて柳澤大臣に確認したいと思います。
正当な理由のある自己都合の離職者については、非自発性離職と同様に六カ月の被保険者期間で受給資格が発生する、そのようなことをするということでよろしいですか、先ほどの答弁は。確認です。
○柳澤国務大臣 被保険者期間が六カ月以上十二カ月未満で離職者が出た、その場合に、自己都合というか、決して会社側の都合ではないわけだけれども、やはり正当な理由がある、客観的に見て。つまり、私どもが申し上げているのは、循環的な給付が起こることを防ぐということでございますので、そういうものではないということの関係で、正当な理由がある自己都合離職者ということであれば、それは解雇、倒産等と同様の取り扱いとなるように省令の中に盛り込む、こういうことでございます。
○山井委員 確認ですが、今おっしゃった非自発性離職と同様にということは、六カ月の被保険者期間で受給資格が発生するということでよろしいですか。
○柳澤国務大臣 受給資格要件は六カ月ということでございます。
○山井委員 そこで確認したいんですが、この正当な理由の自己都合退職ということですが、今までの雇用保険法第三十三条の不支給の例外、除外規定として、次のとおりあります。
一、被保険者の身体的条件に基づく退職である場合。二、妊娠、出産、育児等により退職し、受給期間延長措置を九十日以上受けた場合。三、家庭の事情が急変したことによって退職した場合。四、配偶者等との別居生活の継続が困難となったことにより、これらの者と同居するために、通勤が不可能または困難な地へ住所を移転し退職した場合。また、次の理由により、通勤不可能または困難となったことにより退職した場合。一、結婚に伴う住所の変更。二、育児に伴う保育所等への保育の依頼。三、事業所の通勤困難な地への移転。四、強制立ち退き、天災、自己の意思に反しての住所または住居の転居を余儀なくされたこと。五、鉄道、バスその他の運輸機関の廃止または運行時間の変更。六、事業主の命による転勤または出向に伴う別居の回避。七、最後ですが、配偶者の事業主の命による転勤もしくは出向または配偶者の再就職に伴う別居の回避。このようなことが、今答弁された、正当な理由がある自己都合退職というふうに理解してよろしいですか。
○柳澤国務大臣 私、今、山井委員がおっしゃられたことを一応ちょっと私の手持ちの資料と照合しておりましたけれども、ほぼ間違いございませんので、それでよろしいかと思います。
○山井委員 ありがとうございます。
それでは、もう時間がありませんので、最後に一つだけ、ちょっと法案と関係ないことをお聞きしますが、三月十三日に日本年金機構法案を閣議決定されました。大臣、あの法案について、何点ぐらいのできだと思っておられますか。
今回、非公務員型にされたということで、私、ちょっと心配をしております。先日、社会保険事務所に行ったんですが、あれだけ組織をばらばらにしてやっていったら、逆に徴収率が低下するんじゃないか、あの改革は、何か社保庁を壊すことが目的の法案なんじゃないか、そんな声を現場で聞いたんですが、大臣としては、あの法案について何点ぐらいと思っておられるか、そして、徴収率が低下したり、そういう本来の年金徴収の機能に支障を来さないとお考えなのか、そのことについて最後お伺いしたいと思います。
○柳澤国務大臣 私は、社会保険庁の改革の理念というか、そういうものは二つあったというふうに思っております。
一つは、やはり社会保険庁、組織としてもいろいろな経緯をたどってきたということの中で、企業文化というか企業風土というか、そういうようなものがかなり、全国的に言うと、やや統一性に欠けるというような面等、いろいろとこれはもうやむを得ない事態だったとも私は思うんですけれども、今日の社会保険庁という国の機関として見ると、いろいろな面で問題があった。意識の面、そういうようなことであるいは問題があったのかもしれない。そういうようなことで、それをしっかりと正していくということが一つの目的である。
それからもう一つの目的は、やはり非常に難しい国民年金の徴収だとかあるいは厚生年金の適用だとか、そういう徴収の関係、こういうようなことについて、従来の社会保険庁に比べて、その実績が本当に改善されるということがやはり大きな眼目であるというふうに思っております。
そういう観点から、これは率直に言って、与党の先生方も非常に、その改革の途上であるにかかわらず、いろいろと問題が社保庁の中から露呈してきたことを受けて、どうしたら一番いいものができるだろうというようなことで寄り寄り知恵を絞ってくださった。それから、我々の方の社保庁の担当者も、村瀬長官初め、御自身のこれまでの御奮闘の経験に照らして、こういうものならばというようなことで案を練っていただきました。
そういうようなことからして、私は、とにかくそれを取りまとめて、今回、日本年金機構法案ということで御提出をさせていただいたものでございます。(発言する者あり)
これはもう本当に、また皆さん御議論をいろいろされて、さすがにいいものだというような御感想を持っていただけるように我々努めたい、このように思っております。
○山井委員 私は、年金不安を拡大させる改悪であるというふうに思っております。
以上で質問を終わります。
166-衆-厚生労働委員会-6号 平成19年03月20日
・法案により差別禁止の対象となるパート社員の人数
○山井委員 お昼どき、前回の質疑の五分間、続きをやらせていただき、本当に恐縮であります。早速、お配りしました資料に基づいて、前回の続きをさせていただきます。
ここにありますように、パート労働法の差別禁止に関しては、パート労働法の一番の関心規定であります。これについて、二月二十一日に質問いたしました。
これは、三条件、業務が正社員と同じ、二番目に配置、転勤が正社員と同じ、三つ目が期間の定めのない契約という三点セットが政府案の差別禁止の条件であります。しかし、柳澤大臣が予算委員会で答弁された四、五%というのは、この資料にもありますように、平成十三年の調査でありまして、ここでは二つ目までの条件、正社員と同じ職務、責任、そして転勤も同じようだ、しかし、期間の定めのないか否かというのは調査していないわけですね。ですから、期間の定めのない人をさらに掛け合わせると、四、五%よりも減るのではないかというのが普通の考え方であります。この四、五%というのは誇大な広告ではないかと思います。
この新聞にありますように、きょうも新聞に出ておりましたが、毎日のように差別禁止は四、五%、四、五%と数字が躍っているわけですが、繰り返しになりますが、三条件目の、期間の定めのない契約の部分を、質問していない過大な数値を発表されたということで、私は非常におかしいと思っております。この点について、なぜ三条件目の期間の定めのない契約という部分を、聞いていないこの四、五%という数字が、そのまま差別禁止の対象者の数字として答弁できるのか、そのことについて改めて答弁をお願いいたします。
○柳澤国務大臣 この山井委員の配付された資料によりますと、一番上ですが、「責任の重さや配転・転勤等の取扱いも含めて同じ仕事をしているパートの割合」ということで、そこにありますように、四・七とか五・〇とかというような、正社員ですと四・一というような回答があった、こういうことでございます。
他方、今委員が御指摘になられたように、この左の下の部分でございますが、これはパート労働法改正法案の要綱からコピーされたと思うんですけれども、確かにここで、イ号におきましては、1の業務と責任の程度、それから2の人事上のいろいろな範囲、それから3の期間の定めのない労働契約というものが要件になってございますが、実は、もう一つ、このイ号の後にロ号というのがございまして、「イの期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとすること。」というくだりがございまして、つまり、「期間の定めのない労働契約」とここに書いてありますが、それは形式上の期間の定めがあるかないかということではなくて、実質的に期間の定めのない労働契約を結んでいると同じような状況にある労働者につきましても差別禁止の対象としたい、そういうことで法律要件を整えようというふうに考えておったわけでございます。
そういうようなことで、実際、差別禁止の対象になる労働者、パート労働者についての実はどんぴしゃの統計データはないということでございましたので、私は、今委員も御指摘の、平成十三年の二十一世紀職業財団が調査をした調査の結果で、大体これが近似値として一番近いデータではないか、それによれば四、五%というところぐらいが近傍値ではないか、こういうような趣旨で御答弁をさせていただいたということでございます。
○山井委員 全く答弁が変わっておりません。
もう時間がありませんので、一問だけ質問します。
ですから、前回も聞いたように、契約期間の定めのない、正社員と同視できる有期の反復更新の人が四、五%のうちどれぐらいかということを前回から聞いているんですよ。四、五%のうち、無期の人及び今おっしゃったロの反復更新で無期と同視できる人はどれぐらいなんですか。これで終わります。
○柳澤国務大臣 この十三年の調査によります調査の回答が、配転、転勤等の取り扱いが正社員と同じと回答したものでありますことから、その大多数は長期にわたって雇用される予定の者である、したがって、短期の契約者と差別的取り扱い禁止の対象とならない者のほとんどは、既に転勤、配転等の取り扱いが正社員と同じという、そのことからは除外されているというふうに考えております。
山井委員が全く一かけらもないのかと言われれば、私も、それは一かけらぐらいはあるでしょう、こういうふうに言わざるを得ないんですけれども、しかし、そうしたことを明確に裏づけるような、そういういわばデータがない、こういうことでございますので、そもそもが四、五%、こういうことでもございますし、前にも申したように、私の答弁も断定をした答弁にはなっておりません。しかし、何のめどもなくてこういう大事な議論をするというのはいかにも不適当だと私は考えましたので、こういう近似値で大変恐縮だけれども、そうしたことを御答弁させていただいたということでございます。
それが、その四、五%の中で、あるいは配転、転勤を繰り返しされて正社員と同じだとほかの人が見ている者の中で、この差別禁止に当たらない人がどのぐらいあるかを言えと言われても、なかなかこれは難しいと言わざるを得ないということで御理解を賜りたいと思います。
○山井委員 以上で質問を終わらせていただきます。また引き続き質疑をさせていただきます。
ありがとうございました。