165-衆-外務委員会-5号 平成18年11月08日
○山井委員 これから四十五分間、麻生大臣、そして石田副大臣に質問をさせていただきます。
フィリピンとの看護師、介護職員の受け入れのことがメーンでありますが、また最初に麻生大臣には核武装論議について御質問をしたいと思っております。これは御存じのように、同盟国アメリカからも懸念が今出てきております。
最初に一言お聞きしますが、麻生大臣は核保有に賛成なんですか、反対なんですか。
○麻生国務大臣 重ねて申し上げますが、私から議論をしているわけではない。そちら様の議論の答弁にお答えしているという立場だけは重ねて申し上げておきますので、理事の方、よくそこのところだけはお踏まえください。
何回も申し上げておりますが、日本の……(山井委員「賛成か反対かを聞いているんですよ」と呼ぶ)これまでの話をよく聞いていただかないと、何回も聞かれますから。何回も答えておりますので、あなたの御要望にこたえて。もう一回聞かれるとまた大変ですので、こちらも。
だから、私どもの歴代の内閣によって、累次にわたって明確に表明をされております。御存じかと思いますけれども、今、内閣の一員をやっているんだから。政府としては、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはありませんとも答えておりますので、極めて明確だと存じます。
○山井委員 いや、念のため、賛成か反対か、それを一言でお答えください。
○麻生国務大臣 内閣の一員をしておりますので、今申し上げたとおりでありますので、この内閣ではこれまでの堅持していく立場には変わりはないということは、反対ということになろうかと存じます。大体、そう書いてありますから。これまでも言ってきましたから。
○山井委員 私がよくわからないのは、反対であるにもかかわらず、なぜ議論することが大事だということをずっと言い続けてこられているのかということなんですね。
それでお聞きしますが、唯一の被爆国として日本の外務大臣の非常に重要な任務の一つが、悲惨な原爆の被害を世界で唯一体験した国の外務大臣として、核廃絶のリーダーとして先頭に立つことだと私は考えますが、麻生大臣は、核廃絶のリーダーとして先頭に立って日本の外務大臣としてお仕事をされるつもりはありますか。
○麻生国務大臣 日本の立場といたしましては、核不拡散条約体制、通称NPTのメンバーの一人でもありまして、今回も国連におきまして百六十何カ国という話をきちんとやっておりますので……(発言する者あり)毎年。でも、毎年ふえておりますから。ことしもふえております。前よりふえたということを忘れぬでください。努力をしなきゃふえませんから。アメリカも反対、日本は賛成でやっておりますから。
そういった点をきちんと踏まえておいた上で御理解をいただけると思いますが、国際的な軍縮、核不拡散体制というものの強化のために、我々は外務省を引っ張る立場の者として、引き続きこの方面で努力をしておりますし、事実、しておるから百六十何カ国にふえたという事実も御理解いただければと存じます。
○山井委員 今の答弁を聞いていて、私、腑に落ちないのは、そういう努力をされていたら、ブッシュ大統領や次期国連事務総長の潘氏が、日本の核保有論議に憂慮とか心配とか、そういうことになりますか。結局、誤ったメッセージを発しているんじゃないですか。先日も申し上げましたように、フィンランドの議長団が日本の国会に来た、話の三分の二は日本は核武装をするんですかという話になっている。明らかに海外はそういう目で見ているじゃないですか。
ブッシュ大統領も、極東で核武装が少なくなればなるほど世界はよくなると述べて、日本が核兵器についての立場を再考するという発言について、中国が懸念を抱いているのを知っているとブッシュ大統領は言っている。また大統領は、中国は朝鮮半島の核兵器を懸念しているし、北朝鮮から身を守るために近隣諸国が軍備拡張を検討することを深く心配している、彼らは極東での軍拡競争の結果がどうなるか理解しているともブッシュ大統領は言っているわけですね。それで、十一月六日には、次期国連事務総長に決まっている潘外交通商相は、有力政治家により核保有論議が続くことを憂慮する、国連有力加盟国である日本の未来にとっても望ましくない、地域の非核化のため日本も六者協議参加国として努力してほしいと。
麻生大臣は先頭に立って核廃絶の努力をしていると先ほどおっしゃったけれども、周りは全然そう見てないじゃないですか。逆に核の保有論議を拡散させているのがあなたじゃないですか。麻生大臣、唯一の被爆国の外務大臣として、世界の核廃絶のトップに立つのが日本の外務大臣の仕事なんですよ。にもかかわらず、この間、麻生外務大臣の発言は、日本が核武装するのではないかという誤ったメッセージを与え続けております。このことは国益に反する。外務大臣として正反対のメッセージを発したのではないですか。
政治は結果責任です。日本の外務大臣たるものは、唯一の被爆国の外務大臣として世界の核廃絶の先頭に立つ使命があるにもかかわらず、核武装するかのような疑念を世界にまき散らし、同盟国からも心配されている。私は、非核三原則を国是とする日本の外務大臣としてふさわしくないと思います。私は、責任をとって外務大臣をやめるべきだと思います。いかがですか。
○麻生国務大臣 まず最初に、よく議論をされる前に、私の言った発言の中で、核武装をすると言ったことは一回もありませんから。そこのところは、するかのような話とおっしゃいますけれども、私はすると言ったことは一回もありません。持たない、つくらない、持ち込まないという非核三原則というものにつきましては、この話は韓国もアメリカも両方とも、日本の非核三原則についてはブッシュ大統領も潘基文も両方とも十分に理解をしております。
○山井委員 政治は結果責任なんですよ。自分はどういうつもりで発言したという言いわけは通らないんですよ。現に諸外国が心配しているという事実を私は言っているわけです。外務大臣として余りにも言葉が軽過ぎるんですよ、こういう日本の平和国家の根幹にかかわる問題に対して。ですから、一議員として発言されたらいいじゃないですか。外務大臣としてじゃなくて一議員としてだったら、核保有の論議が大事だとか言ったらいいんですよ。そういう意味では、外務大臣として私は全くふさわしくないというふうに思っております。
それでは、本題の質問に移らせていただきます。
先ほど柚木議員からも、看護師、介護職員の労働条件の向上がフィリピン人を受け入れる前に先決である、セットで看護師や介護職員の資質向上、労働条件向上が不可欠である、こういう答弁を石田副大臣からもいただきました。ですから、このことについては改めて触れません。
次の通告した質問に行きますが、これだけ多くの新人看護師が今やめているわけですね。一年目に九・三%やめておるわけです。ここに資料もございますが、お配りした資料の一ページ。なぜこれだけ多くの新人看護師がやめていると認識されていますか。
○石田副大臣 新人の看護職員の九・三%が一年以内に離職している、こういうふうに承知をいたしております。その中で、どうして一年以内に離職をするか。高い志を持って看護職につかれたと思いますけれども、やはりその原因の第一は、基礎教育終了時点の能力と看護現場で求められる能力とのギャップ、このことが一番大きい、いろいろな調査ではそういう実態が出ております。
○山井委員 まさにそのとおりであります。ですから、看護師の基礎教育の見直しということが重要でありまして、前回の質疑でも白石審議官から、それを踏まえて、ことしの三月から看護基礎教育を充実すべきだという観点から検討会が行われているということでありました。
前回、麻生大臣に質問しましたが、きょう石田副大臣にお越しいただいたので、改めて質問をさせていただきます。
今回受け入れるもとの国であるフィリピンの看護師の基礎教育課程は何年ですか。
○石田副大臣 四年と承知しております。
○山井委員 前回と多少重なるかもしれませんが、石田副大臣がお見えになっておりますので、大事なことですから改めて申し上げますが、今回受け入れるもとのフィリピンの方は四年みっちり看護基礎教育をやっているわけですね。実習時間も二千百四十二時間。それに対して、日本の方は千三十五時間と非常に少ないわけです。
そこで、検討会がやっているということですが、今の三年の中でカリキュラムをいじるというのではなくて、ここはやはり日本も四年制に延長するという方向で検討すべきではないかと思っております。これについては、五月十日の質疑で川崎大臣からも、その方向で検討しなきゃならぬといって答弁をされましたし、また、公明党の坂口元厚生労働大臣も平成十五年の質疑の中でこう答弁されているんですね。まずは看護師さんのお仕事というものがどういう範囲に拡大をしていくかということが大事でございまして、一層この範囲を拡大していただいて、医療供給体制の中での中心的な役割を果たしていただくという体制をつくることが私は先決と思っておりますということを、坂口元厚生労働大臣も答弁をされています。
これからはチーム医療の視点も必要となっておりますし、医師不足の中で、ただ単に医師をふやすだけではなく、看護師でできることはもっと看護師がやっていくべきだ、そういう議論も高まっております。
そこで改めてお伺いしますが、やはりこの検討会の中で、看護師の基礎教育を四年制に延長する、それを目指して検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○石田副大臣 この問題につきましては、前厚生労働大臣もお答えになったと思いますけれども、現在の看護職の教育、これについてはやはりもっと充実させていかなくてはならない。これは先ほどの御質問の、新人の看護職の方が一年以内で九・三%離職される、それが、現実の受けてきた看護教育と現場に行ったときのギャップ、こういうことで悩んで、こういう方が一番多いということも先ほど御答弁させていただきました。
これにつきましては、委員も御承知のとおり、検討会をつくって今検討させていただいているところでございますし、そういう十二分ではないという前提で今検討している。ですから、ここのところを、三年を四年に延ばすのか、それとも三年の中で濃密にやっていくのか、これはある意味では、時間経過を横軸として内容の深さを縦としますと、教育内容は縦掛ける横の面積という考え方もできますので、深く掘り下げて時間をたくさんやっていくのか、それとも四年に延ばすのか、これにつきましては今検討しておりますけれども、少なくとも、四年についてのそういう議論も排除はしておらない、こういうことでございます。
○山井委員 前回の答弁も聞いたんですけれども、四年の議論は排除はしていないというのは、正直言って、極めて何か後ろ向きな答弁なんですよね。四年制というものを目指して検討する、やはり四年制の移行というものを視野に入れて検討する、そういうことじゃないと、排除はしませんと言ったら、やる気、感じられますか、そういうので。
これは繰り返しになりますが、九・三%もやめたら、一年間に百四十校分の養成学校の看護師さんが一年以内にやめる、何のために多くの税金を使って養成しているのかわからないわけなんですよね。
そういう意味では、こういう、フィリピン人を受け入れる、かつ、そのフィリピン人の方が四年制なんだという紛れもない重い現実もあるわけですから、そこは、この看護教育、基礎教育の四年への延長というものを目指して、視野に入れて検討していくという方向性をぜひ出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○石田副大臣 これは四年、五年という年数が最初にあるということではなくて、やはり、どういう内容の教育をするか、このことが私はまず一番先にあると思うんですね。
そういう中で、現在の三年の中で、では、できるのか、どうしてもこれは、物理的な時間等を考えて、より充実した教育をするためには三年では足りない、こういう結論が出るか、今検討していただいているところでございますし、最初に年数ありきではない、このように私は思っておりますけれども、白紙から考えて一つ一つ積み上げていって、その中でどういう結論になるか、これは、山井先生、首をかしげておられますけれども、まずそこから検討するのが大事ではないか、こういうふうに思います。
○山井委員 改めて、四年制を目指して検討していただきたいという要望をしておきます。これはちなみにいつまでに方向性を出されますか。
○石田副大臣 これは年度内にというふうに考えております。
○山井委員 この看護師の離職の問題、労働条件の問題、医療は今、インフォームド・コンセントあるいは医療事故の増加、チーム医療、本当に激動の時代を迎えておりますし、看護師さんは、まさに人の命を守る、ある意味で社会の宝物でありますから、そういう意味では、ぜひ、その年度内の結論のときに、四年制に延ばしていくという方向で結論を出していただきたいと要望をいたします。
次の質問に入ります。
このフィリピン人千人を受け入れる施設、病院の場所は教えていただけるのか。もう非常に具体的な言い方をしますと、その受け入れる施設、病院が決まったときに、国会議員である者が連絡をして教えてほしいということを言えば、教えてもらえるんでしょうか。
○石田副大臣 照会がありました場合には、御回答をしたいと考えております。
○山井委員 前回はそこが答弁が不明確でしたので、前向きな答弁をしていただいて感謝しております。ぜひ、それは教えていただいて、やはりその方々がきっちり、何というんですか、いい労働条件で働き、より質のよいサービスができていることを確認していく、オープンな形でというふうにしていくべきだと思っております。
次の質問に移らせていただきますが、これも前回の質問の続きであります。
来年の通常国会では、介護福祉士法の改正が法案として審議される予定になっております。その中で、このパネルにもございますが、今回のこの条約の中で三つのパターンがありますが、一つのパターンが、養成校に二年程度行けば無試験で介護福祉士の資格を取得できるということになっております。しかし、来年の介護福祉士法の改正で、恐らくこれが無試験ではなくなるんではないか、養成校を出てからも介護福祉士の国家試験を受けることになるんではないだろうかというふうに今聞いております。
そこでなんですが、そのように日本の介護福祉士制度が改正された際に、今のこの条約の内容はどうなるのかということであります。私の意見を申し上げますと、当然、日本人と同等の試験を受けて介護福祉士になる、この条約自体が日本人と同等の試験を通るというのが大前提であると理解しておりますから、その介護福祉士法改正が実現したら、フィリピン人も日本人と同じ試験を受けなければ介護福祉士になれないというふうに私は理解をしておりますが、石田副大臣、この件について御答弁をお願いいたします。
○石田副大臣 来年の通常国会に法案を提出するということも、これはまだ決めたわけではございませんし、現在の状況は、もう委員も御承知のとおり、本年七月に取りまとめられた検討会報告書において、介護福祉士資格の取得方法については一元化を図る、こういうふうな検討会の結論も出たわけです。
これにつきましては、その後、現在、審議会で御審議をいただいている状況でございますので、いただいている状況の中でいろいろと先取りをした発言は私は差し控えたいというふうに思いますけれども、EPAでフィリピンとの約束をしたいろいろな問題につきましては、これは現時点を前提にする以外ないわけですので、現時点におきましては、今委員が資料でお示しをいただいた図のとおりだ、こう思っております。
ですから、その後のことにつきましては、審議会の御結論をいただきまして、どういう形にするのか、そこはまだ出ておりませんので、現在の段階では将来の仮定の話を前提にしてお答えはしにくいということは、ぜひ御了解いただきたいと思います。
○山井委員 前回の答弁より後退していますね。それはやはりおかしいんじゃないですか。やはり日本で働いてもらう以上は、日本人と同じ介護福祉士の試験を、日本人が全員受けるのならば、養成学校を出た人が受けるのなら、フィリピン人にも受けてもらう、それが筋じゃないですか。
今回、これ、一応、法案の審議をやっているんですから、方向性はきっちり出してもらわないと、今わからないということじゃ、そうしたら、わかってからもう一回出してくださいということになるわけですから、やはりそこは方向性は出していただきたいと思います。
○石田副大臣 先ほど申し上げましたように、法案についてはまだ何も決まっていないということは申し上げたとおりであります。
ですから、現時点においては、介護福祉士と、それから資格の取得方法の見直しの具体的内容については、現在検討中の段階でありますから、具体的な議論については、見直しにかかわる法律案の審議のときにぜひお願いをしたいと思いますが、見直しが行われた場合、これは仮定の話でありますけれども、対応については、日本人と外国人について同様の扱いをする、こういうことを基本としながらも、日比経済連携協定との関係で問題が生じないように、これは関係省庁で緊密に協議をしていきたい、こういうことでございます。
○山井委員 それは、今の答弁には納得できないですね。今の答弁を聞いていたら、日本人と同等を原則にしながらもフィリピンに配慮する。そうしたら、日本人は全員試験を受けて通っているのに、フィリピン人だけは養成学校で試験なしで日本のこの介護現場で働ける、そういうのを認めるかのごとくの答弁は私は納得できません。そこはやはり大原則は、日本人よりも冷遇するのはよくないけれども優遇するのもこれはおかしいわけですから、原則として、厚生労働副大臣は、日本人と同等の試験を受けて日本人と同等の条件で働いてもらう、そのことはびしっと答弁してもらわないと、この条約そのものの趣旨が変わってきてしまいます。
○石田副大臣 先ほども御答弁しましたけれども、日本人と外国人について同様な扱いをすることを基本としつつと、こういうふうに申し上げております。
○山井委員 ぜひ、それでやっていただきたいと思います。
これは深刻な問題で、私、今週日曜日、介護福祉士養成講座の授業がありまして、そこに呼ばれて一言あいさつしまして、こういう議論が行われている、もしかしたらフィリピン人だけが特例で試験がないという可能性があるかもしれませんよと言ったら、みんなひっくり返ってびっくりしていましたよ、それは。日本人でも試験を受けるのはお金もかかって大変なんですから。これは後になってやはりそういうことになってしまったということじゃ済みませんから。だから、ぜひともそこは、同じ条件でやるという鉄則は貫いていただきたいと思います。
それでは、二年後に人数枠を見直しする、二年間は千人なわけですね。これは前回も麻生大臣に質問しましたが、今回もお答えいただきたいと思いますが、やはり千人受け入れて、その後気がついたら一万人、二万人にふえていたというのでは、これは当然困ります。
ですから、要望でありますが、人数枠を見直す際には、きっちりその二年間の報告を国会にして、やはり国会に審議にかけて、労働条件は悪くなっていないか、労働市場に悪影響を与えていないか、サービスの質が悪くないか、そういうことをきっちりチェックしていかないと、これは日本の介護現場の労働条件に非常に大きな影響を与えますよ、野方図に万が一やってしまったら。
ですから、最初の二年間はやってみないとわからない部分があるわけですから、その二年後のときにはぜひ国会に報告して、人数枠の拡大について審議をする、そのことを要望したいと思いますが、麻生大臣、いかがですか。
○麻生国務大臣 今、我々として、とりあえず二年間のスタートということを申し上げて、千人の枠を四百、六百で割った、その背景というのは理解しておられるんでしょうね。その前提で話をさせていただかぬと話がちょっと込み入りますので。そういった意味では、まずは円滑なスタートを切るというのが我々としては大事なところだと思っております。
先ほどいただいた資料が正しいとするならば、少なくとも需要と供給のところは、そちらの資料では足りていない、役所の方の資料は足りるという答弁をしているので、そこに差があるという現実に立って、どうするかという話を多分しておられるんだと思いますので、私どもとしては、これはまずは円滑なスタートを切るということが大事なんだと思っております。
まず、偏見もある程度ありますから、はっきり言って。そういった意味では、私どもはセメント会社で、フィリピン、マレーシア、シンガポール、いろいろな国からの人を預かって我々はやってきた経験がありますので、そこらあたりでも最初はやはりみんななかなか受け入れないものなんですけれども、しばらくやっていくとうまくいってきたという例を、自分なりに経験がありますので申し上げているんです。
したがいまして、まずやらせていただきまして、去る十一月一日の答弁でも申し上げましたように、現時点では正直何ら決まっているわけではありません。それは確かにそのとおりなんで、受け入れの実績とか受け入れる施設によってもまた、いろいろ病院、御存じのように違いますから、そういった病院によって差が出てくるところだと思いますので、これはだめだというところは、厚生労働省も先ほど適切に指導すると言うておりますので、そういったところにはちゃんときちんとこういうことをするべきだと。ほかの病院と比べてこうじゃないかというような話は、きちんとした実績が二年間すると出てくると思いますので、そういった意味では、責任を持って判断をしていかねばならぬところだろうと思っております。
いずれにしても、こういったものに対して、これは、かかる、介護される側の人の話もよく聞かないかぬところでもありますので、そこらのところの話がなしで事がどんどん進んでいくというのは断固避けねばならぬと思っております。
○山井委員 確かに、麻生大臣おっしゃるように、主人公は介護される側の高齢者ですから、その方々にも、当然言葉が不自由なわけですから、意思疎通がちゃんとできるかということもチェックしないとだめだと思いますし、ぜひ二年後には、きっちり説明責任を国会に対して果たしていただいて、やはりきっちり審議をするという形でやっていただきたいと思っております。
きょうの資料にも入っておりますが、この五枚目、「介護福祉士養成 学生募集やめた 専門学校相次ぐ定員割れ…」「若い人は定着せず、募集をしても一人も来ない。景気が良くなると、きつくて大変な介護職ではなく、別の仕事に流れてしまう」というコメントも載っております。
また、次の六ページを見ておりますと、東京や愛知、香川などでは有効求人倍率も二を上回っております。
それで、さらっと介護職員の状況を言いますと、七ページ目にもありますように、直接介護に当たる介護職員は離職率が二一・四%。それで、平均賃金月額、税込みも、十代では十四万七千円、二十代では十八万五千五百円、三十代になっても二十一万円。
八ページに行きますと、こういう施設で働く介護職員が一番悩んでいる悩み、不安、不満はというと、やはり賃金が安いというのが五四・七%なんですよね。
しかし一方、介護施設の施設長さんから私も話を多少聞いてみると、もう人が集まらぬ、山井さん、フィリピン人をぜひ受け入れてくれ、そういう要望も正直言いまして聞くわけです。でも、その心は何かというと、このままでは賃金を上げないと人が集まらない、そこで賃金を上げなくてもフィリピン人が五人、十人と入ってくれるんならば経営上は非常に助かるなと。これは、背に腹はかえられないからかもしれません。こういうことになるんですね。
ですから、二年間受け入れて、麻生大臣が今答弁してくださいましたように、きっちりとした質のチェック、高齢者はどう思っているのかとか、そういうことなしに、隣の施設は受け入れて人手不足が解消できてよかったな、うちもぜひちょうだい、うちもちょうだいと。最初それは、全国で千人ぐらいだったらもうごく一部ですからね。今、人手不足、足りないのに、どんどんどんどん入れてということになっていって、二年後、そのまま拡大していったら、アメリカやイギリスでも実際そういうケースはあったわけですけれども、結局、その国の若い人が介護士や介護職員に魅力をなくして職につかなくなって、人手不足が外国人を安易に受け入れることによってますます加速していくという悪循環に、泥沼にはまりかねないわけであります。
そこで、お伺いしたいと思います。
二年後にはどのような項目をチェックしていかれるんですか。私としては、ほかの施設や病院よりもフィリピン人を受け入れた施設や病院の労働条件が悪化していないか、またサービスの質を保たれているか、また、ほかの病院やほかの施設との比較ではなくて、過去と比べて、フィリピン人を受け入れることによって賃金や労働条件が悪化したり上がらなくなったということがないのか、そのあたりを十分チェックする必要があると思います。この点について、いかがでしょうか。
○石田副大臣 このEPA協定の署名に当たりましては、受け入れ二年間にかけて当初の人数の上限を千名、こういうことにして、二年間の実績を見ていろいろこれから決定をしていく、こういうことになっております。
厚生労働省としては、病院、介護施設における適切な就労、研修が確保されるよう取り組んでいきたいと思っておりますし、御指摘の点も含めまして、受け入れに伴う問題が生じないように注視をしてまいりたいと思います。
○山井委員 そういう漠然とした答弁ではちょっと困るわけで、サービスの質はちゃんとチェックする、その施設、病院において、フィリピン人を受け入れて労働条件が悪化していないかちゃんとチェックする、この二点を約束してください。
○石田副大臣 これは、受け入れをして、そういうところで問題があれば、フィリピンの方にも不満が出るだろうし、また、お世話をされている方からも当然不満が出てくるだろうというふうに思います。ですから、双方から不満が出ているかどうか、そういうことも私は大事な観点だろうと思いますので、そういう点も含めまして、先生のおっしゃる点もよく承りまして、問題が生じないようにやっていきたい、こう思っております。
○山井委員 何かちょっと答弁が不十分なんですよね。簡単なことですよ。受け入れた施設、病院でサービスの質が悪化していないか、そして労働条件が悪化していないか、そのことはチェックしますね。
○石田副大臣 先ほども御答弁させてもらいましたけれども、先生のおっしゃることも含めてしっかりと注視をしていきたい、こういうふうに申し上げました。
○山井委員 ぜひともやっていただきたいと思います。
そこで、ちょっと個別の話に移ります。
今回、このスキームの中で、例えば看護師の場合、ずっと上限三年いて試験に落ちた、あるいは介護職員が四年間、試験を受けて落ちた、その人が一たんフィリピンに帰った。同じその人がもう一回、またゼロからスタートして、三年、四年、看護師、介護職員として、まあリピーターとして、落ちた人が戻って研修、就労することは可能ですか。
○石田副大臣 協定上は、看護師候補者については三年、介護福祉士候補者については四年の在留の間に資格を取得していただく、こういうことになっております。
残念ながら、資格を取得できずにお帰りいただいた場合は、同じスキームでは再度入国してやることは考えておりません。試験を受けるためだけに短期に入ってくる、これについては認められております。
○山井委員 わかりました。そうしたら、再試験のためにしか戻ってこられないということで、その次行きます。
これも具体的な話です。例えば、九人ぐらいの規模の認知症の、痴呆症の高齢者のグループホームというのがあります。これは夜間、夜勤は一人でやっているわけですね。こういう一人夜勤のときにフィリピン人の研修生が一人でやる、そういうケースは起こり得るのでしょうか。
○石田副大臣 認知症の高齢者グループホームの指定基準については、夜間及び深夜の時間帯を通じて一人以上の介護従事者に夜勤を行わせなければならない、こういうふうになっております。
今回の経済協定につきましては、入国したフィリピン人介護福祉士候補者については、介護福祉士監督のもとで、施設で就労しつつ国家試験の受験に向けての研修を受ける、こういう形になっております。ですから、受け入れ施設の人員基準に定める人員数としては含めない、こういう方向でございますので、認知症の高齢者グループホームの夜勤をフィリピン人介護福祉士候補者が一人で行うことは認めない方針であります。
○山井委員 今のは非常に重要な答弁であると思います。
要は、今回の研修、就労のフィリピン人はあくまで実習、試験のためということであるから、施設の人員配置基準の数としてはカウントしないということですね。これをきっちりやらないと、配置基準が満たせないからフィリピン人を雇って数合わせをしようということになったら大変であります。
それで、次に移りますが、先ほど柚木議員の答弁も聞いておりましたが、この二年間の最後だけではなくて、今後フィリピン人を受け入れた病院や施設のサービスの質は具体的にどのようにしてチェックしていくんですか。
○石田副大臣 受け入れに当たってのサービスをどういうふうに確認していくか、こういうことでありますけれども、受け入れ施設においては、フィリピン人看護師、介護福祉士候補者を除いて受け入れ施設の人員基準に定める看護師、介護福祉士が確保されることとなります。
また、フィリピン人看護師、介護福祉士候補者は、看護師や介護福祉士の監督下で就労、研修していく、こういう仕組みになっておりますので、その人たちを入れたからといってその人たちを人数に含めてやるというわけではありませんので、監督下でいろいろと研修をしていく、こういうことでございますので、水準については確保される、このように思っております。
○山井委員 いや、それはわからないんですよね。要は、施設の人員配置基準というのは、すべての施設がすれすれでやっているわけではないですが、もう一人でも人員が多ければ多い方がいいわけですよ、最低限はクリアしていても。
そこで、その中の人手として、フィリピン人に来てもらったことによってサービスの質がよくなったのか、悪くなったのか。ちょっともとに戻るかもしれない。まず、この検証はだれがするんですか。
○石田副大臣 今回のこの経済連携協定で来られた方に対しては二年後に検証する、こういうことにはなっております。ですから、現状、受け入れ施設に対して国際厚生事業団が巡回指導を行って就労や研修の状況を確認していく、こういうことになっております。
○山井委員 二年後に検証ももちろん必要なんですけれども、受け入れて一カ月後どうなっているか、三カ月後どうなっているか、半年後どうなっているかというのも非常に重要だと思うんですね。
それで、前回もお聞きしましたが、この国際厚生事業団というのはたった十六人しかいないわけですね。総務の方とかいろいろ入れたら、動き回れるのが数人かもしれない。もちろん前回の答弁の中で、それをふやしていって体制を強化するという答弁はいただいていますけれども、やはりそれぐらいで介護サービスの質のチェックというのができるとは思えないんですね。先ほど麻生大臣も答弁されましたが、やはり受け入れた側の高齢者が喜んでいるのか、あるいは喜んでおられないのかということは非常に重要だと思います。
そのあたり、やはり高齢者の声をきっちり定期的に聞いていただきたいと思うんですが、そこはいかがでしょうか。
○石田副大臣 今回フィリピンの方を受け入れるのは、介護職では六百人、こういうことになっております。現在、国際厚生事業団は十六人でやっておりますけれども、やはりこれでは十二分にできるかという御疑問はそのとおりだと思いますので、適切に指導ができる体制はぜひ組んでいただきたい、こういうふうに思っております。
ですから、六百人ということでありましたら、全員が一つの施設に散らばったとしても六百カ所、こういうことですから、一年三百六十五日、何名かの方がしっかり巡回指導していってもそれなりの指導をできる、私はこう思います。
○山井委員 これも要望でありますが、高齢者の声を聞く、高齢者というか、介護されている側の声を聞く、それとともに、やはり同僚の職員の方々の声を聞く。
例えば、夜勤が晩二人だったとしますよね。二人で夜勤していて、片一方側がフィリピン人だった。そうしたら、二人いるけれども、実質これは一人みたいなものですよね。夜間に認知症の高齢者がトイレに行きたいとか何だと言って、緊急事態なことを言ってもなかなか対応できなかったりして、その同僚の方が、フィリピン人の方は心は優しいけれどもやはり能力的には非常に困るというようなことが、もしかしたらそういう声も出てくるかもしれないんです。
そういう、高齢者の声、それと同僚の介護職員やまた看護師の声もきっちり聞いていくということをお約束いただければと思います。
○石田副大臣 今回初めてこちらに来ていただくわけですから、フィリピンの方も、いろいろな、たくさんいらっしゃる中でも、ぜひ日本に来たいとか、優秀な方が来られるのではないか、こういうふうに私は期待もしておりますし、フィリピンの方の能力が劣っているとも思いません。
巡回指導の中で調べていくということでありますから、これは勤めていらっしゃる方、またお世話をしていただく方、両方が満足のいくような体制になっていくようにしていくのは当然でありますから、巡回指導についてはしっかりとやっていきたいと思います。
○山井委員 今回お配りした資料の最後の十一ページに「外国人研修見直し 劣悪な環境、失跡が問題化」ということがあります。先ほど柚木議員の質問でも、どこがどうやってチェックするのか、それでもし待遇が悪かったり、その施設、受け入れ病院側に問題があったらどうするのかという質問がありました。
このことについてお伺いしたいと思いますが、その前に、今もしかしたらちょっと誤解を招いたかもしれませんが、私は決してフィリピン人が介護がよくないと言っているわけではありません。私は、シンガポールの老人ホームで一カ月ぐらいフィリピンとスリランカの介護職員とボランティアで介護のお手伝いをさせてもらったこともあって、本当に心優しくて、日本以上にもしかしたら敬老の心があるぐらいの、お年寄りを大切にする国民です。しかし、言葉というのは非常に大事なんですね。
わかっていただきたいのは、今の介護施設に入居している高齢者の七割が認知症です。ということは、御飯食べましたかと言っても、食べていないと言われるわけですよね。日本人でも、えっ、食べていないのかな、こう思ってしまうぐらい。ところが、そうじゃないでしょう、さっき食べたでしょうというようなことを言いながらコミュニケーションをとる。
例えば、家に帰りたいと言って、夕方になったら認知症のお年寄りは、ふろしきを抱えて帰ろうとする方がいるわけですよ。そうしたら、本当の家じゃなくて、その認知症の高齢者が帰りたがっているのは二十ぐらいのころの古い家だったりするわけで、こういうことに対応するためには、今の国内でさえ介護職員は高いスキルが必要だということで、だからこそ介護福祉士法の改正も今考えられていると思うんですよね。
そういう中で、日本の伝統文化がわからない、また言葉がわからないということで、幾ら優しい気持ちがあっても不十分な面が出てくるかもしれないということで私は先ほど言わせていただきました。
それで、もし施設や病院が劣悪な労働条件であったりして、例えば、もう外出もさせずに閉じ込めたとか、腰痛で苦しんでいるのに病院にも行かせなかったとか、万が一こういうふうなことが見つかった場合には、私はもう厳しく取り締まるべきだと思いますが、その点についてはどう思われますか。
○石田副大臣 その問題は極端なお話だと思いますけれども、それはもう指導するとかいう次元の話ではなくて、これは一種の犯罪ではないかと思います。ですから、当然そういうことはあってはならないと思いますので、そういうことにならないためにも、巡回指導についてはしっかりとやっていきたいと思っております。
○山井委員 ぜひ、そういう苦情が多かった施設、病院は次回からは指定しないというふうなことでやっていただきたいと思います。
それでは、時間が来ましたので、質疑を終わります。ありがとうございました。