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スウェーデン視察報告(メルマガ854号より抜粋編集)

 1週間、駆け足でスウェーデンに行ってきました。
 年金改革と雇用問題の調査。
 さらに、9月17日はスウェーデンで4年に一度の総選挙(統一自治体選挙も同日選挙!)の投票日なので、その視察です。
 書きたいことは山ほどありますが、かれこれ24時間くらい 寝ていないので、今日は簡単に書きます。

 まず、今回のスウェーデンの総選挙の争点は、雇用と失業問題。

 失業率は4%です。しかし、職業訓練などを受けている人も入れると本当は10%近い失業率と言われています。 特に、若者の失業率はその2倍くらい。
 「完全雇用」「福祉=雇用」を最大の政治目標としているスウェーデンとしては、厳しい状況。

 与党である社民党も野党である保守党も「雇用を増やす!」を、今回の選挙の最大の公約にしています。
 多少の違いは、社民党は「正規雇用の拡大」「正規雇用は労働者の権利であり、非正規雇用(パートなど)は、選択肢である」と述べているのに対し、保守党は、非正規雇用の拡大も国際競争力上、やむを得ないと訴え、また、法人税の減税を訴えています。
 社民党は「雇用を増やす」と言いながらも、財源は不明確です。かたや保守党も「減税するが、雇用は増やす。教育予算も増やす」と、こちらも財源が不明確。

 もう1つの選挙の争点は、失業・雇用問題と共に、「正規雇用の仕事をいかに増やすか」です。スウェーデンでも 人材派遣や請負(プロジェクト雇用と呼ばれる)が増えて、非正規雇用の増加が 問題になっているのです。
 この点は、日本と似ていると感じました。

 最近の世論調査では、保守党は3%くらい社民党をリードし、9月17日には、8年ぶりに政権交代が起こるかもしれません。
 社民党のヨーラン首相から、保守党のフェルト首相(なんと41歳、私よりも3歳も年下)に変わるかもしれません。

 私がスウェーデンに留学していた12年前、1994年に保守党が政権を奪取。当時41歳の、カール・ビルトが首相に就任。私もカール首相に直接インタビューしましたが、「EUに加盟すれば、福祉国家は機能しない!」と。
 しかし、1998年には またヨーラン・パーション議員率いる 社民党が政権を奪回。そして、8年経って、今回、また、保守党が僅差ながら、政権を奪回しようとしています。

 街には、公営の選挙小屋が立ち並び、その前で各党の支持者や議員が、買い物客などにパンフやチラシを配り、政策を訴えています。
 スウェーデンは、比例代表選挙なので、原則として個人でなく、政党に投票するのです。日本のように候補者の名前を連呼したり、候補者が個人事務所を持つことはありません。
 選挙は、政策論争なのです。

 選挙戦は非常に盛り上がり、各選挙小屋の前では活発な政策論議。
 そして、高校生などもグループの宿題で、夕方に各事務所を訪問し、政策を聞いてまわっています。

 書き出せばキリがありません。詳しくは、以前拙著 に書きました。

  「スウェーデン発 高齢社会と地方分権 福祉の主役は市町村」
  (斉藤弥生・山井和則著、ミネルバ書房、1994年)

 私が一番うらやましかったのは、政権交代可能な選挙で、「緊張感!」が街にあふれていることです。
 私としては、社民党が勝とうが 保守党が勝とうが、外国の話で直接は関係ありません。 しかし、スウェーデン国民の一票で、政権が変わり、政策も変わる! これこそ民主主義! と、私は感じました。
 日本でも このように政権交代が現実のものとなり、国民の一票で政権が変わる緊張感と 緊迫感のある政治を実現したいです。
  時差ボケなので、そろそろ寝ます(今は4日深夜1時)。

 私がスウェーデン語を学んだのは 今から12年前、2年間、スウェーデンに留学していました。
  あれから12年も経ちましたが、なぜか、今でも政治論議だけは 私の下手な片言のスウェーデン語でも、多少は通じるのです。それが嬉しかったです。

Posted at 2006年09月05日 12:31 | TrackBack
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Comments

スウェーデン在住4年です。今回のスウェーデン政権交代の様子はとても緊張感のあるものでした。どきどきしながら一晩中テレビの選挙速報に見入っていました。
私は現在スウェーデン人男性と同棲しています。この国では結婚していなくても、きちんと手続きをし移民局で許可されたら滞在許可、労働許可を得ることができます。それだけでも驚きですが、今回の選挙に参加できる権利も与えられたことはさらに驚きでした。国会議員を選出する政党を選ぶ権利はさすがに与えられていませんでしたが、コミューン議会の政党、県議会の政党、さらにTrangselskatt(ストックホルムに出入りする自動車にかける税金)の是非について投票することができました。
興味深かったのは、投票会場にアフリカからの視察団がやってきて民主主義の選挙がどのように行われているのか観察していたこと。
やまのいさんがメルマガにも記されているように、スウェーデンの選挙は政策論争。各政党が政策を詳しく説明し、テレビでは連日党首が論議をかわす。選挙カーが出てきて候補者の名前を連呼するより、こちらのほうが政治が国民にわかりやすく理解され、スマートな方法であると思うのは私だけだろうか?
政権交代すれば税金など生活に直、影響する事柄もあるので、国民の政治に対する感心も日本と比べると断然高い。有権者の80%以上が今回投票したとの報告があった。(テレビでは10数年前の90%台より落ちていると警告していた!)
私は政治のことはあまり詳しくないし、またスウェーデン語もまだままならない。しかし各政党が言わんとすることは非常にわかりやすく理解できた。日本では感じたことのない政治への関心がわいた自分自身に驚いています。
今回のスウェーデン総選挙のことを日本語で書かれた記事がないかと捜していたらこのHPをみつけました。
福祉についてこんなに考えておられる政治家がみえるとは知りませんでした、目から鱗です。これで日本の未来にも希望が持てます。こちらに住んで日本の福祉がまだまだ充分でないことを、少子化に歯止めが利かないのはなぜか、などなど実感しました。
応援しております。それでは、失礼します。

Posted by: 水野寿子 at 2006年09月21日 05:54
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