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厚生労働委員会議事録(社会保険庁問題)

164-衆-厚生労働委員会-24号 平成18年05月24日
 ○国民年金保険料不正免除

○山井委員 これから五十分間にわたりまして、川崎大臣と村瀬長官に、今回のこの保険料の免除、猶予の不正問題についてお伺いをしたいと思っております。
 一言で言うと、これはまさに年金納付率の偽装問題であります。今国会では、耐震偽装の問題が大きな問題となりました。
 社会保険庁にとって最も重要な数字を一つ上げろと言われたら、村瀬長官、どういう数字ですか。

○村瀬政府参考人 どういうふうにお答えしたらいいか非常に困るのですけれども、先ほど申し上げましたように、私が社会保険庁長官に任命されましたのは、さまざまな不始末をしっかり直せということで、先般も申し上げましたように、まず、お金の使い道をしっかり正せ。それから、国民のサービスがしっかりなっていないんだから、しっかり国民の視点になったサービスに変える。そして収納率も上げなさい。さまざまな案件があった上でやっておりまして、それが変わります宣言に入っているんだろうと思います。
 したがいまして、私自身は、やはり変わります宣言の中のものをしっかりやっていく、それは業務改革プログラムのものをしっかりやるというのが私の仕事だろうというふうに思っております。

○山井委員 質問にしっかり答えてください。一番大事な数字はと聞いているんですから。
 村瀬長官が一番力を入れておられるのは納付率の向上じゃないですか。この間、二年間。そして、今問題になっているのは、その納付率が偽装されているということなんですよね。
 午前中の審議にもありましたように、大阪では、本人に無断で不正に免除、猶予をしたことによって、二%、納付率が上がっているわけです。長官は二〇〇七年度までに八〇%を目指すと言って、この後も説明をいたしますけれども、どんどん厳しくリーダーシップをとっておられた。しかし、肝心のその数字が偽装されているのではないかということであります。
 ここ一連のこの報道によって、国民の年金に対する信頼はまた失墜しております。また社会保険庁か、また偽装したのか。そして、先ほどの内山議員の質問の中でも、これは刑事罰にも相当するかもしれない。本来、こういうことをやったら、民間の企業だったらこれは業務停止ですよ、勝手に本人に無断で手続をやって。午前中から答弁を聞いていて、そういう反省、危機感というのが全然ないわけです。
 法案審議ということを与党の方々、おっしゃっておられますが、その前提じゃないですか。年金に対する信用が失墜していますよ。納付率という最も重要な数字ですら、社会保険庁は偽装しているのかということではありませんか。
 それで、少しこの間の問題点をおさらいしてみたいと思っております。
 わかりやすくパネルを持ってきました。
 本来、納付率というのは、分母が納付対象者で、実際の納付者、これを上げるということですよね。だれが考えても、この納付者をふやすというのが本来のやり方なわけです。しかし、この納付者をふやすというのはなかなか大変だ。そこで村瀬長官が力を入れられたのが、この分母対策というものなわけですよね。実際納付者がふえなくても、納付対象者の方を免除や猶予で減らしたら、見せかけの納付率はアップする、こういう小手先のことをやっているわけです。
 資料を見ていただきたいと思います。実際、猶予と免除は不正にやっているじゃないですか。では、これを見ていただきたいと思います。資料、多いですが、七ページ、見てもらったらわかりますように、平成十四年、十五年、十六年と、納付率は確かに六二・八、六三・四、六三・六と上がっています。しかし、村瀬長官、御存じのように、実際、納付月数というのは、一万三千六百二十七、一万三千四百九十二、これは万月でありますが、こういうふうに、年々、納付者数と月数は減っていっているわけなんですね。そういう意味では、根本的な対策というのはできていないわけです。
 この間の、本人に無断で不正に免除した、不正に猶予した、そういう意味では、この年金の納付率が偽装されているというこの現状に対して、まず村瀬長官の見解をお伺いします。

○村瀬政府参考人 制度にあるものを純粋に対応しているということで、偽装ということについては若干違うんではないかと思いますが……(山井委員「不正の部分を言っているんですよ、不正の部分を」と呼ぶ)いや、先ほど納付率のことでお話がありましたから、それについてまずお答えをさせていただきたいと思います。
 まず、ここにあります納付率でございますけれども、納付月数と納付対象月数に合わせてやっているわけでございます。したがいまして、納付対象月数が必然的に減れば納付月数は減るわけでございまして、そういう点ではパラレルの関係には必ずしもない、対象の絞り方によっては全然違ってくるんだろうというふうに思います。
 したがいまして、納付率を上げる手段としましては、私は、分子をしっかりふやすことと、分母を法令に基づいてきちっと整理すること、この両方があって納付率を上げるということが、まず正しいやり方ではなかろうかというふうに思います。
 それから、あと、先ほど八〇%という話がございましたけれども、八〇%は平成十九年度の目標でございまして、平成十五年度に目標数値は決定をしております。

○山井委員 一つ基本的なことを村瀬長官にお伺いしたいんですが、今回の経緯ですね、朝から古川議員の質問もありましたが、今回の経緯を見ておりますと、十三ページに、昨日、社会保険庁から提出いただいた経緯、五月十五日、ABC放送から大阪事務局に対し免除申請書の偽造があるのではないかとの取材申し込みというのがあっております。三月の時点、京都でこの不正が発覚したときに全国調査したときには、どこもほかは不正やっていないという回答だったわけですよね。ところが、これ、私も関西ですから見ておりますが、夕方の「ムーブ!」という番組ですよ。そこからの取材があってこの問題が出てきたんです。
 村瀬長官、ということは、その番組の取材がなかったら、今回のこの不正の免除の問題はこんなに明らかになっていなかったということですか。

○村瀬政府参考人 私自身は、先ほどから申し上げていますように、五月十七日に事実関係を確認を、第一報を受け取りまして、詳細な事実関係を知ろうということで指示をして、その結果、公表できるものはすぐ公表すべきであるという方針に基づいてやらせましたので、五月十五日のものが果たしてその中にあったかどうかというのは、私自身はありませんし、現場がどう思っていたかというのは現段階では確認をしておりません。

○山井委員 ここに書いてあるじゃないですか。この取材を受けて調査は動き出したわけです。
 つまり、社会保険庁の自浄作用によって今回この問題が明らかになったんじゃないんですよ。そういう取材や、あるいは、古川議員も取り上げたこの二十八ページにあります大阪正義さんですか、この方からの告発によって明らかになったわけなんですよ。そういう意味では、この調査の不十分さというのがこれは明らかになっていると思います。
 それで、村瀬長官にお伺いしたいと思います。
 現時点では社会保険事務所十九カ所でこういう不正が明らかになっていると認めていられるわけですが、十九カ所以外については本当にないんですか。

○村瀬政府参考人 現段階では聞いておりません。

○山井委員 現段階では聞いておりませんということは、今後出てくる可能性もあるということですか。

○村瀬政府参考人 ないと信じておりますけれども、先ほど大臣の方からも、厳しく中身をもう一度再チェックしろという御指示もありまして、これからやらせていただくところでございます。

○山井委員 村瀬長官、これは割と重要なことですよ。十九だけの問題なのか、全国的にこれが広がっているのか、これは根本的な問題ですよ。今まで出ていた納付率のデータも、全部これは再計算しないとだめになってくるわけです。いつまでに調査結果を出すんですか。

○村瀬政府参考人 まず納付率の問題でございますけれども、まだ本年度納付率というのは公表をしておりません。
 それで、現在、大阪並びに長崎のものにつきましては、すべて免除ではないという前提で、納付率を変えるという処理をさせていただいております。したがいまして、これからの調査の中で納付率の問題で修正が必要な部分が出てくれば、正しいもので公表させていただくというふうに考えております。

○山井委員 村瀬長官、質問に答えてください。
 十九以外にあるかもしれないから調査をするということなんでしょう。それはいつまでに調査をするんですかと聞いているわけです。

○村瀬政府参考人 できるだけ早くやりたいと思っております。
 先ほど申し上げましたように、第一弾としては、事務局長を早く集めて話をしたいというふうに思っております。

○山井委員 村瀬長官、やはり事の重大さをわかっていないですよ。これから、政府は法案を出して法案審議を求めているわけですよね。それに対して、十九カ所だけの不正行為だったのか、全国に広がっているのか、これから調査しますと。
 それじゃ、実態が全然わからないじゃないですか。いつ調査結果出すのか、待ちますから、いつ出すのか言ってください。

○村瀬政府参考人 まず、第一段階で調査をした部分につきましては、先ほどの部分でお話し申し上げている部分でございます。したがって、それをさらに再調査という形でございますので、個別に当たらないと、今すぐ、では、いつまでできるかという形では出てきません。
 ただ、どういう文書で処理をしているかということがはっきりしておりますので、全くやっていないところはどこかという、そちらの方からは早くどんどんどんどんお答えができる形になるのではなかろうかと思っております。

○山井委員 先ほど村瀬長官は、現時点ではほかにあるかどうかわからないとおっしゃった、そして調査はこれからしていくとおっしゃった。ということは、十九カ所でしか行われていないのか、全国に広がる話なのかは、現時点ではわからないということですね。

○村瀬政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、第一弾段階の調査では十九であったということの御報告はしておるわけでございます。

○山井委員 そういう現状認識じゃ、これは本当に法案の審議にならないですよ。十九なのか、全国各地でこれをやっていたのか。先ほどまさにおっしゃったじゃないですか、納付率も、不正に免除していたのか猶予していたのかによって、全部再カウントするんでしょう。十九カ所以外にあるのかないのかもわからない。
 そして、村瀬長官、新たにこれが全国に広がっていたら、長官、どう責任をとられますか。

○村瀬政府参考人 どういう形で結果が出てくるかわかりませんので、それに対して、今責任をどうとれというふうに私にお話しいただいても、なかなか話しかねるというのが現状だろうと思うんです。

○山井委員 昨日、大阪の保険事務局の局長が更迭をされました。先ほど川崎大臣は、いや、更迭という名の人事異動だということをおっしゃって、私もびっくりしましたが。
 村瀬長官、この十六カ所の大阪の不正免除は組織的なものと認識されていますか。

○村瀬政府参考人 個々に調べないとわからないと思いますけれども、どちらかといいますと、事務所長が自分の権限下でやったというふうに認識をしております。それをとめられなかった、十分管理できなかったのは局である、こういう位置づけで思っております。

○山井委員 そのだれがどういう指示系統でやったかという調査はいつまでにされますか。

○村瀬政府参考人 処分をやるためには、当然のことながら事実関係を把握しないとできませんので、早急にそれはやらせていただきたいと思っております。

○山井委員 いつまでにその結果が出ますか。

○村瀬政府参考人 申しわけないんですが、できるだけ早くというお答えにさせていただけたらと思います。

○山井委員 要は、十九カ所だけの問題なのか、全国的に行われていた問題なのか、調査はこれからするからわからない。そして、一番大きな問題だった大阪においても、組織的だったのか個人的だったのかもこれから調査するからわからない。ということは、今出てきている不正免除の問題が氷山の一角なのかどうかもわからないということじゃないですか。
 そういう状況で、これから社会保険庁を変えようという法案の審議ができないわけですよ。真相究明と実態把握なくして、対策は立たないんですよ。これは、耐震偽装の審議のときにも、嫌というほど私たちが学んだことなんですよ。現状認識ができていないわけですよ。そういう現状認識もなくて、どうやって改革をしていくかという法案をよく出してこられるなと私は思うんです。
 それで、今、村瀬長官は大阪の保険事務局長が更迭された理由を、それは監督ができなかったという部分をおっしゃいましたが、川崎大臣、なぜ大阪の保険事務局長を更迭されたんですか。

○川崎国務大臣 さっきから御答弁申し上げておりますとおり、三月時点で京都の問題が出てきた。したがって、全都道府県に、それぞれの組織にしっかり調べて報告するようにと言ったときに、ないという報告があった。そして、その時点で、しっかり調べた結果がなかったのか、わかっていてもないという報告をしたのか、これはわかりません。
 しかしながら、現実に今回こういう事案が出てきて、この大阪のトップに立つ者では、今の大阪の実態をしっかり解明をして次の対応をすることについては無理であろうということから、更迭をして新しい人にその任に当たらせる、こういう判断をいたしたところでございます。

○山井委員 私たちは、法案審議のために時間は待ちますので、法案審議の前にしっかりと実態調査をして、この問題の真相を究明してほしいと思います。それは、真相がわからないわからないと答弁されていて、現状はわからないけれどもこう変えたいんですというような、そんなむちゃな話はないわけです。
 それで、村瀬長官にお伺いします。
 今回の本人の許可を得ず不正に免除する、あるいは猶予する、こういう年金の納付率の偽装方法があるということをいつ知られましたか。

○村瀬政府参考人 京都の件につきましては先ほど申し上げた日にちでございますし、大阪の件については先ほどの日にちということで、申し上げたとおりでございますが。

○山井委員 ということは、三月の中旬まで、こういうふうな不正で本人の承諾を得ずに勝手に免除や猶予をしてしまっているといううわさとかそんな話を、全国三百カ所回られたと聞きましたが、全国回っていて、二年間やっていて、全く聞かれたことはなかったわけですか。

○村瀬政府参考人 現実問題としては、やっている話は聞いておりません。
 ただ、いろいろな意見交換の中で、免除自体が申請免除から職権免除に変わる手だてはないかとか、それから、免除自体が継続免除方式がとれないかとか、いろいろさまざまな意見は出てきております。
 ただし、これを現在の法令でいってどうかということであれば、当然申請免除でございますから、それを間違った形でやっている、手続ミスをしているということは、私自身は確認をしておりません。

○山井委員 やはり、これは強くノルマを課してやっていけば、こういうことが起こるのではないかというのは、まさに現場主義の村瀬長官だったら気づいていてよかったんじゃないかな。
 それで、具体的に見てみたいと思いますが、例えば、村瀬長官は、社会保険事務局・事務所グランプリというのをやって、こういう納付率を競わせたり、あるいは、十一月八日には社会保険庁長官の名前で「「国民年金の収納率」緊急メッセージ」というのを出しておられますね。当面の目標は、免除対策、納付督励、強制徴収の実施により、全国の十二月末における改善幅を二%とする、この時期になって言いわけは無用である、まず行動を起こし、責任を持って結果を出すことに全力投球してもらいたいというふうにおっしゃっておるわけです。実行すべきことは既に決まっている、ただ、実行し結果を出すことのみと。そしてまた、その中で目標値を厳しく定めておられるわけです。
 私の資料の一番最後の三十六ページを、字が小さいですが見ていただきますと、私読みます、ちょっと字が小さいですから。アクションプログラム、目標納付率。私、今回の事件でなぜ大阪、なぜ京都なのかなということは、ちょっと不思議に思ったんですよ。これを見てみたら、例えば十六年度実績、京都は六二パーを、十七年度には七一・三、九・三%上げなさい、大阪は五四・三、そして十七年度目標が六三・五、九・二%上げなさい、つまり、ほかに比べて非常にハードルが高いんですよね。
 そしてまた、これはその前のページにありますが、各保険事務所ごとに目標値を決めているわけです。もちろん、私は、目標値を決めること自体は悪いと言いません。しかし、やはりここに無理があったから、今回のような不正な免除、猶予というのが起こったのではないか。
 村瀬長官の、これは分母対策と言われるわけですね、分母対策と言われるこのやり方、先ほどお見せした、分子をふやすんじゃなくて納付対象者を減らす、このやり方自体が結果的には不正な免除や猶予を招いてしまったのではないか、そういう意識は村瀬長官は持っておられますか。

○村瀬政府参考人 まず私の文書を見ていただきたいんですけれども、免除だけやれということは一切言っておりません。免除、納付督励、強制徴収、この三つが徴収率を上げる最大のポイントであるということで、すべてをやりなさいという指示をしているつもりでございます。また、事業をやる以上は、各目標を定めて、それに対して的確に仕事をやるというのは、これは当たり前のことだろうと思います。
 また、納付率という観点でいいまして、たまたま今、大阪、京都ということが話されましたけれども、今までやっていなかったからこそ納付率が上がらなかったということで、しっかりやっていただく必要が当然あるんだろうというふうに思います。

○山井委員 そうしたら、村瀬長官は、今回のこのような不正行為が行われた責任は全く自分にはないというふうに思われるわけですか。

○村瀬政府参考人 あるかないかと言われても非常に困るんですけれども、私の役割は何かといいますと、先ほど申し上げましたように、一つの仕事としては、国民年金の収納率を上げる仕事が私の仕事になってございます。
 では、それはだれがやってくれるかということになりますと、当然、四十七の事務局と三百十二の事務所でございます。三百十二の事務所が働きやすい環境をつくって、数値に基づいてしっかり仕事をやっていただく、これは私は、当然のことだろうというふうに思っております。

○山井委員 この朝日新聞の昨日の朝刊によりますと、分母を消せ、上からの必達目標、「上からは「分母を消せ、消せ!」と口やかましく言われた。村瀬さん自身の口癖だったと聞いている。」こう書いてありますけれども、どうなんですか。村瀬長官自身も、こういう分母を減らせということを口やかましくおっしゃったんですか。

○村瀬政府参考人 極めて心外な記事だろうというふうに思っております。私は、申し上げましたように、すべてをやれと言っておりまして、決して一つだけやれというふうには言ったつもりはございません。

○山井委員 川崎大臣にお伺いしたいと思います。
 今回のこのような不正な免除や猶予がなぜ起こったかということで、昨日の記者会見において、記者さんからの質問に対して、納付率の引き下げを意図したものではなかったと思うというお答えをされているんですね。(川崎国務大臣「引き下げ、引き上げだろう」と呼ぶ)そうです。大臣、それはどう思われますか。それは意図したものでなかったと、今でも思っておられますか。

○川崎国務大臣 私は、先ほどの答弁で二つの側面を申し上げました。一つは、担当者が何回も訪ねる、電話をかける、結果として、極めて所得が低く、かつ納付するのが難しいだろう、しかしながら、これを御理解いただければ年金というものが将来保障されていくし、また、所得が生まれた段階で十年さかのぼって支払うこともできる、したがって、自分は親心でやっているのにな、これを聞いてくれない、そういった中で、ひとりよがりで、やってやったらいいんだろうという判断をした人もいるだろう、もう一方で、やはり数字を上げるという目的を、手段を選ばず、まさに法律に照らしてやってはならないことをやってしまった、この二つの側面があるだろうと思っております。
 いずれにせよ、両方とも、どういう理由にしろ、法律に照らして違反だろうと思いますので、厳正に対処すると申し上げております。

○山井委員 先ほどお聞きした答弁では、大阪の保険事務局の局長が更迭されたのは監督責任を果たさなかったからだ、指示したかどうかはわからないということを答弁されていました。
 ということは、幾ら村瀬長官がこれは自分とは関係ないとおっしゃっても、こういう年金の納付率に対する深刻な国民の不安を招いた、実際、こういう違法行為を常態化して放置していて、それが全国に広がっているかもしれない、そういう状況において、川崎大臣は村瀬長官の監督責任ということをどう思われますか。

○川崎国務大臣 そういった意味で、大阪の問題については京都の事件以来の話でございます。先ほど御質問ございました長崎の例、東京の例も、どうであるかと言われたときに、大阪の事案に照らしてみれば、他の案件というものは少し違うように思っている。したがって、大阪の案件については、すぐ担当者をかえて、徹底的な調査、新しい体制づくりに励んでほしいということで、人事の更迭を命じたところでございます。
 したがって、村瀬長官は、今そうした全体の解明のために、まず四十七都道府県の局長を集めてもらってしっかり話をしてもらい、そして、その局長から再度こういうことはないんですねと、一人一人の局長に村瀬さん自身から語りかけてもらおう、こう思っております。

○山井委員 結局、村瀬さんのやってきたこの二年間の中でこういう不正というものが起こったというのは事実なわけですね。そして、かつ、マスコミからの五月十五日の取材がなかったらこのことの実態も明らかになっていなかった。三月の調査では全くこういう問題は出てこなかった。自浄作用もないわけですよ。これでも村瀬長官に監督責任はないとおっしゃるわけですか。
 これは村瀬長官にお伺いしたいと思います。
 昨年、年間の納付率はいつ発表になりましたか。

○村瀬政府参考人 正確な日にちは今覚えておりませんが、六月の上旬だったというふうに記憶しております。

○山井委員 昨年六月の上旬ですか。
 ことしはいつ、前年度の納付率は明らかになりますか。

○村瀬政府参考人 今までの予定からいきますと、同じ時期ぐらいにやりたいというふうに思っています。
 ただし、先ほどもお話ありましたように、内容のチェックというのが入ってくると、若干時間はずれ込むかもわかりません。

○山井委員 大阪の場合は、不正な免除、猶予によって二%ぐらい納付率が上がっていた。そして、全国にもこういう不正があったかどうかということはわからない。これから調査するということは、正確な納付率というのはいつ出るんですか。

○村瀬政府参考人 大阪について申し上げますと、四月にさかのぼって、すべて免除の部分について、先ほどありました三万六千件ですか、あの分につきましては解除をいたしますので、当然、それによる納付率ですから、委員おっしゃっているような不正な納付率なんというのは出てこないというふうに私は思っております。
 京都も、その件につきましては三月までにすべて終わっておりますので……(山井委員「全国を聞いているんです、全国を」と呼ぶ)
 全国は、先ほど申し上げましたように、個別の調査をし次第ということですから、例えば、大丈夫だというところは個別にできますけれども、それをやらない限り正しいものは出てこないということで、しばらくお待ちくださいというのが先ほどの答えでございます。

○山井委員 今この場で聞いたって、前年度の三月末までの納付率も、いつ出てくるかもわからない。そうしたら、法案審議の最大の前提じゃないですか、納付率が上がっているのか、下がっているのか、前年度が幾らだったのか。そういう基礎的なデータも出てこない。年金審議のときでも、年金審議の一番重要なデータというのは出生率ですよ。それが、審議が終わってからぽろっと出てきた。
 今回、私たちは待ちますよ、その納付率が出るまで。そして、そういう現状を踏まえてしっかり法案審議をすべきだと思いますが、村瀬長官も、どう思われますか、その点について。

○村瀬政府参考人 まず、先ほども申し上げました二月末の数字というのは出ているわけですね。その中で、大阪の部分は、これは当然修正しなきゃいかぬ。それから、長崎の部分も修正しなきゃいかぬということで、二月の段階における数字というのはある程度出るんだろうと思います。
 三月の最後の段階については、先ほど申し上げましたように、大至急局長を集めて再確認をします。その上で、できるだけ早く出したいというのが私の方のお答えだというふうにお考えいただきたいと思います。

○山井委員 結局、その二月の時点でも、十九以外にも不正が行われていたかどうかがわからないわけですよね。そういう根本的なデータも出てこないわけじゃないですか。
 川崎大臣、お話を聞いていてどう思われますか。恐らく、私は、多くの国民の今の感想というのは、社会保険庁、またこういう偽装が明らかになったと。まず納付率なり不正がどこまで全国で行われているのか、そして、本当の納付率は何%なのか、そして、組織的にやっていたのかどうか、そういうことをまず解明しないと、その社会保険庁をどう改革するかというような議論には入れない、実態がわからないんですから。
 私、きょうもカウントしていたんですが、与党の上野議員も十七分間がこの年金の不正免除問題ですよ。上田議員も十数分間、半分以上が不正給付問題ですよ。つまり、法案審議といったって、法案審議の前提が成り立たないじゃないですか。これは私たちだけが言っているんじゃなくて、それが多くの国民の思いだと思いますよ。こういう一番肝心な年金の納付率までが偽装されている、そういう状況において法案の審議はできない。
 川崎大臣、どう思われますか。集中審議をまずやって、真相究明をして、実態把握をする、それが先決だと思いますが、大臣、いかがですか。

○川崎国務大臣 一昨年の年金の議論以来、社会保険庁を解体的に出直しをしなければならないという中で、与党の中でずっと議論をしてまいりました。また、村瀬長官も、まさに二年後には解体的に出直しをしなければならない途中経過的な社会保険庁を引き受けながら、少しでも職員が意欲を持って働いてもらいたい、国民の奉仕者としてしっかりやってもらいたい、こういった思いで今日まで努力されてきた。
 しかしながら、一方で、またこのような事件が出てしまった。まことに残念だと思うと同時に、やはりこの組織は解体的な出直しをしなければならない。したがって、法案の審議をお願い申し上げたいと思っております。

○山井委員 ぜひこの集中審議をまずすべきだということを理事会で諮っていただきたいと思います、委員長。

○岸田委員長 理事会で協議いたします。

○山井委員 恐らく、きょう朝から聞いていられた若い与党の議員さんもびっくりされていると思うんですね。今までの年金改革の議論を聞いていなかった人も、こんな現状なのかと。本当に、こんな現状で法案審議どころじゃないということをお感じになったんじゃないでしょうか、これは。
 午前中から議論を聞いていて私は思うんですけれども、村瀬長官、そもそも年金制度の問題点を現場に解決を押しつけていったんじゃないですか。納付率を九%上げろとか、一二%上げろとか。でも、実際、若い世代なんかはどうやって面談するんですか。電話するのも大変ですよ。そういう時代の変化、納入の難しさ、そういう制度の根本的な問題をほったらかしにして、その制度の矛盾を、現場にむち打って、もっともっと数字上げろ、数字上げろと。それをあおった結果が、やむにやまれず現場がこういう違法行為にまで走ってしまった、そういうことじゃないですか。
 村瀬長官、やはりこの年金制度では納付率を上げるのは無理がある、村瀬長官はそう思われませんか。

○村瀬政府参考人 なかなかお答えがしづらい質問でございますけれども、まず、我々がやらなければいかぬことは何かといいますと、やはり収納する要員を確保することが必要だ。だから、職員が収納にもっと責任を持って動く、こういう組織にやはりすべきだろうということで、今回、与党との協議の中でも、与党の御議論の中でも、まず収納要員をふやしたいということで議論いただきまして、今回の改革法案の中でも、システムを駆使し、また、外部委託をしながら、千人規模で収納要員をプラスにするんだ、こういう形をやっていただいております。
 したがいまして、現行のシステムの中でも、職員、収納要員をふやすことによって、また今回、先ほどありましたように、使い方は間違えましたけれども、所得情報をいただくことによって、きめ細やかな納付ができる。こういうことをやっていけば私は必ず収納率は上がるのだろうというふうに思っております。

○山井委員 やはりその認識が間違っていると思います。今のシステムで納付率をどんどん上げていくというのは、ある意味で非常にコストもかかりますよ。
 村瀬長官、そこでお伺いしたいんですけれども、なぜ若い世代の方々が年金保険料を払ってくれないんだと思われますか。そこが今の問題点の根本ですよ。その現状認識を持っていられないと、納付率も上がらないと思います。なぜ、この分子の方ですね、実際の納付者はふやしにくいんですか。なぜだと村瀬長官は思われますか。

○村瀬政府参考人 まず、十六年度の年金法改正で、先ほどおっしゃったように、若い方々がなかなか納めにくいということで今回の猶予制度ができたわけでございます。そして、三十歳までは猶予ができる。三十歳以降、ある程度ゆとりがあるときに、さかのぼって納めていただく仕組みをつくっていただきました。それから、十六年度の年金法改正におきまして、その免除制度というものの中で多段階免除ということで、納めやすい仕組みをおつくりいただきました。
 そして現在、与党の協議の中では、適用の拡大ということで、十六年度の年金法改正でできなかった二分の一というのも御検討いただいているところで、さまざまな形で現在御検討をいただいております。
 したがいまして、その制度を的確に使っていけば、若年者に対する年金権の確保というのも私はできるんじゃなかろうかというふうに思っております。

○山井委員 やはりここは、かねてから年金審議の際に私たち民主党が主張しているように、基礎年金の部分を消費税にしていく、そういう抜本的な改革をしないと、百年安心ということにならないわけですよ。そういう制度改正を、国民年金を含む一元化という抜本的な改革をせずに、小手先でこういう納付率だけを上げよう、そういうことをすること自体に無理があるわけです。
 そこで、川崎大臣にお伺いしたいと思いますが、私たち民主党は、やはり一体化して歳入庁にしてやっていくという方法でしかこの問題は根本的に解決できないのではないかと思いますが、その点について、川崎大臣、どう思われますか。

○川崎国務大臣 自営業者等の納税者、サラリーマンを除いた場合は三百五十万、年金の対象は二千二百万、かなり母数、先ほどから母数、母数という話をされるけれども、母数が余りにも違う組織を一緒にしても、効率が上がるものではないと思っております。

○山井委員 抜本改革を先送りしている、そういう意味では、私は根本的な責任は小泉総理にあると思っております。それで、社会保険庁長官の首をかえてどうなるという、根本的な問題では全くありません。
 一つ私は村瀬長官にお願いしたいんですが、この二ページ目、朝日新聞の記事の中に、分母減らしということを組織的にやった社会保険事務所のケースが書いてあるんですね。
 「通知免除等の取り消しに係る作業計画について」と題する文書が職員に配られているわけであります。そしてそこについては、「Q 納付率の粉飾目的で分母減らしを行ったとあるが?」それに対して「A 申請書一枚を出さなかったばかりに年金を受け取れない事例を何度も見てきた。勇み足ではございましたが、積極的に行動した結果です。 A4判一三ページ。想定問答集のほか戸別訪問や電話対応をこなし」云々かんぬん、こういうふうなマニュアルがあるわけです。
 やはり、現場でどういうふうに行われていたかということを、これはきっちりと把握する必要があると思いますが、早急にこの資料を委員会の理事会の方に提出してほしいと思いますが、村瀬長官、お願いします。

○村瀬政府参考人 今おっしゃっている部分というのは今初めて私も見たのですが、大阪の方の某事務所でつくっている部分だというふうに記憶しております。
 理事会の方で御指示があれば、お出しさせていただきたいと思います。

○山井委員 いや、これはちょっと、理事会の問題じゃないんですよ。何でもかんでも理事会と言ってもらったら困るんですよ。出してもらったらいいんですよ。出してもらえますか。

○村瀬政府参考人 では、出させていただきます。

○山井委員 それで、少し戻りますが、納付率、例年は六月上旬に出しているということをおっしゃっていますが、そうしたら、ことしも再調査をしない部分のものとかは、第一弾は六月上旬ぐらいに出してもらえますか。第一弾はいつ出しますか。それとも、めどは立たないんですか。

○村瀬政府参考人 先ほどから架空の数字だとおっしゃっているんですが、それを出して何をされるのかというのがよくわからないんですが、必要であれば出させることは構いません。ただ、せっかくやるのであれば、しっかりした形でお出し申し上げたいというように思います。

○山井委員 わかりました。そのしっかりした形で、いつごろ出されますか。

○村瀬政府参考人 先ほどから何回も申し上げていますように、早くに調査をしてということで、調査期間がまだ決まっておりませんので、それができた段階で、どれくらいということで御報告申し上げたいと思います。

○山井委員 この問題は、やはり、年金にとっての出生率、そして社会保険庁にとっても納付率というのは一番重要なデータであるわけです。
 先ほど、二月までのデータは出ているということをおっしゃいましたが、その二月末までのデータについても、こういう不正な免除や猶予というものが含まれている可能性はあると認識しておられますか。

○村瀬政府参考人 先ほど申し上げましたように、京都は三月末で全部終わっておりますので入っておりません。大阪と長崎については入っております。したがって、今、大至急その分の取り消し処理をするように手はずを整えさせているということでございます。

○山井委員 先ほどインターネットのニュースを見ましたら、損保ジャパンの社長が不祥事の引責で辞任をされたと、一部業務停止になっているわけですね。保険契約の水増しとかそういうもので引責辞任をされたわけであります。もちろん、御本人が何をされたということではないでしょうが、監督責任ということだと思います。
 やはり、民間の発想でいくと、お客様、消費者あるいは国民の信用を失ったというのは、これは本当に大問題であると思います。今回のこの年金の免除、猶予を四万人分以上、少なくとも勝手にやった。やはりこういうことに関して、ますます失われてしまった年金に対する信頼というのは、非常に大きな問題と思います。
 そのことについて、村瀬長官としてはどのように責任を感じておられるのか、お伺いしたいと思います。

○村瀬政府参考人 損保ジャパンの例を出されましたけれども、私はよく中身を存じ上げておりませんので、本件についてはコメントを差し控えさせていただきます。
 私自身の問題につきましては、まずやらなければいかぬことは何かといいますと、やはり信頼を回復するために、先ほどさまざまな御指摘がある部分を、まずきちっと正すということだろうと思います。その結果につきましては、また大臣とよく御相談を申し上げたいというふうに思っております。

○山井委員 この三十三、四ページに、まさに長官が非常に力を入れられたアクションプログラム、分母対策というものが入っているわけですね。三十三ページには、右の方には、社会保険事務局・事務所グランプリというものがつけてありますし、また、左のアクションプログラムについての策定手順。その中の幾つかを三十四ページに入れましたが、留意事項、納付対象月数の削減対策(分母対策)ということについて、具体的な目標値を設定し、これを展開して取り組んでいる。そして、ステップ二についても、二行目のところに、分母対策ベース部分。ステップ三、分母対策強化部分。そして、三、納付対象月数の削減対策(分母対策)ということを言っているわけです。
 今回の不祥事でつくづく感じるのは、このような分母を減らしていく、そして分子を強制徴収によって上げていく、やはりこういうやり方には限界が来ているのではないかと思っております。
 最初におっしゃった八〇%の目標、これの達成というのは、長官、現状では非常に難しいんじゃないですか。そのことについて、こういう状況になっても八〇%の目標達成はできると考えておられるのか。もしできると考えておられるならば、どういう道筋でやっていくのか、今までどおりでできると考えておられるのか。そのことをお伺いしたいと思います。

○村瀬政府参考人 現在、目標値という観点で、十七年度ということからいきますと、六九・五%というのを目標値に掲げてやらさせていただいております。それがどういう結果が出るかまだわかっておりませんけれども、二月末現在という数字からいきますと三・八%ということで、では、当年度、それが一〇〇%達成できるかということについては、極めて厳しい状況であることは間違いないというふうに思っております。
 ただ、今後、分子対策という観点からいえば、分母をしっかり整理した上で、職員をふやし、そして強制徴収も三十五万件程度までふやそう、そして十九年度は六十万件までというふうに考えておりますので、この部分については、現段階においてはまだまだ望みを捨てない数字なんだろうというふうに思っております。

○山井委員 きょうの議論を聞いていて、十九カ所以外にもあるかどうかわからない、また、組織的にやっているかどうかもわからない、また、その結果がいつ出るかどうかもわからない。そしてまた、今回のこのような深刻な不正行為についてもマスコミからの取材がなかったらわからなかった。そういう現状では、これから法案を審議するにしても、現状の実態がわからないわけなんですよ。
 このような今までの、十一月の八日に出た、先ほど読み上げました緊急メッセージ、目標値を設定して分母対策、分子対策をやっていく、こういうやり方自体が限界がある。やはり、これは方向性を変えないとだめだというような認識は、この期に及んでも村瀬長官としてはないんでしょうか。いかがですか。

○村瀬政府参考人 私は現状の社会保険庁長官でございます。したがいまして、私に与えられたことをまずしっかりやるということが仕事だろうというふうに思っております。

○山井委員 時間が参りましたが、この五十分間の答弁を聞いても、現状に対する危機感そして反省。今回のことによって、どれだけまた年金に対する信用が失墜し、一歩間違うとこんなことでますます若い世代が年金に入らなくなってくるという可能性も大きくなってくるわけです。
 そしてまた、今回気になっているのは、安易に所得の少ない人や若い人は免除や猶予でいいじゃないかということになると、全額受け取れる人がどんどんどんどん減っていってしまうわけなんですね。やはり、低所得者を年金でどんどん切り捨てていく、そういう選別、そういうものを私は感じてなりません。
 耐震偽装の問題と同じように、真相究明、実態把握なくして改革案は出てこないんです。そういう意味では、しっかりと調査をしてもらって、その調査を一日も早く、組織的なのか、十九カ所以外どこがあるのか、そういうデータ、そして、前年度のこの三月末までの納付率は何%だったのか、そういうことをきっちりと委員会に出していただいて、そして、それが出た上で法案の審議をやっていきたい。逆に言えば、そういう根本的な実態把握もデータも出てこないのに法案の審議をできるはずがない、そういう法案の審議をしても国民から理解と信頼を得られるはずがない、そういうことを強く訴えて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

Posted at 2006年05月24日 12:00 | TrackBack
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