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欧州視察報告2(イギリス編(2))(メルマガ743号より抜粋編集)

NHSで説明を聞く  今回は、イギリスの医療制度について報告します。
 サッチャー政権が医療を大幅にカットしたこともあり、手術の待ち期間が半年というような状況で、日本にとっては「反面教師」のような面もありました。
 少し支離滅裂になるかもしれませんが、イギリスの医療の現状を箇条書き的に書きます。
 イアン議員などの説明なので、少し労働党よりの説明だと思いますが、次の通りです。
 保守党のサッチャーは、医療を大幅に抑制した。しかし、労働党政権になり、医療予算を増やした。
 イギリスの医療は、日本のような保険でなく、税金で行っている。
 医療制度は、ナショナル・ヘルス・サービス(NHS)と呼ばれ、無料で医療が受けられる。NHSはヨーロッパ最大の雇用者。
 ブレアは医師や看護師の給料をあげ、人も増やしたので、医療も少しは良くなった。 しかし、需要(医療を受けたい人)が供給(サービス量)を上回っている。 (需給バランスを改善する)方法としては、自己負担(今は無料)を有料にして抑制するか、手術待ちの待機者を増やすしかない。  手術待ちの時間は減ってきている。  イギリスでは、手術は2ヶ月待ちや半年待ちもざらであり、保守党政権時代には、115万人も手術を待っていた。  ブレアは選挙の公約で「100万人以下に待機者をする」とし、それを実現した。しかし、それは素晴らしいことなのか。 「まだ100万人も待機者がいる」と考えるべきかもしれない。  日本のように比較的手術をすぐに受けられる国は夢のようです。

 そのため、イギリスでは海外から医師・看護師を受け入れ、急ピッチで増やしています。逆に、待機期間が長いので、海外で手術する人も増えています。
 医師や看護師が不足しているのは、今まで医療にかける予算が少なく、医師や看護師の待遇・労働条件が悪かったから。 これは、日本でも参考になる話です。
 しかし、一般にはイギリス人の医療への満足度は高い。日本のように 「すぐに医師にかかれないとダメ」という意識はありません。
 家庭医に診てもらうまでに、数日かかり、それまでに病気が治ることもよくあります。

 イギリスでは、日本のように直接、患者が病院に行くことはできません。まず、決まった地域の家庭医に行かねばなりません。そこからの紹介状がないと病院にも専門医のところにも行けません。
 イギリス在住日本人同士の会話では、「日本のほうが医師にすぐにかかりやすいのでよい」という声が強いようです。

 イギリスの医療は税金だから、予算制。
 勤務医も家庭医もNHSトラストという独立行政法人の職員。 公務員に準ずる待遇。
 給料は勤務医、家庭医はだいたい同じくらい。最近、少しあがったので、「医師になろう!」という人も増えていいます。

 イギリスには公的な医療以外に、自由診療もあります。これは全額自己負担。こちらのほうが、医師は儲かります。

 イギリスの年間医療費は、1997年はGDP(国内総生産)の5%少しでしたが、ブレアが医療と教育に非常に力を入れ、予算をつぎ込んだので、現在、9.2%に倍増しています(ちなみに、日本は7.2%であり、ここ数年で日本は追い抜かれた格好になっている)。しかし、平均寿命も伸びているので追いつきません。

 「日本で今、議論されているようにGDP比で医療費を抑制する、という議論はイギリスでは無いのか?」と、日本の議員が質問しました。
 「保守党は、医療や教育をカットしてきた。しかし、労働党は、その2つに力入れて、評価されている。今や保守党もその2つを削れとは言わない。 医療により多くの予算をつぎこむことは与野党で合意済み。 今では、医療のどの部分によりお金を使うか、に議論がいっている」 とイアン議員。
 「なぜ、労働党は、医療予算を増やせたか?」 との質問に対しては、 「経済が活況。ロシアの脅威がなくなったので、国防費が削れた。 自然増収もある。また労働党は最初2年間、失業手当などあらゆる予算を絞り込み、その予算を医療や教育につぎこんだ」 とのこと。
 以上で、海外視察報告・イギリス(その2)を終わります。
 次は、イギリスの家庭医協会でのインタビューです。(つづく)
Posted at 2005年12月15日 11:00 | TrackBack

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