162-衆-厚生労働委員会-21号 平成17年05月13日
障害者自立支援法案(内閣提出第三五号)
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)
◇社会的入院をしている精神障害者の社会復帰について
◇精神障害者の外来通院医療に係る公費負担制度の削減による影響
◇ニュースJAPANの報道について
◇作業所の工賃を上回る利用料について
◇定率負担導入によるサービス利用抑制の恐れ
○鴨下委員長 次に、山井和則君。
○山井委員 これから一時間、質問をさせていただきます。尾辻大臣、西副大臣、どうかよろしくお願いを申し上げます。
そしてまた、きょうも多くの傍聴の方々、全国からお越しいただいております。現場で働く方、また御家族の方、そして何よりも当事者の方々も、目の不自由な方、また、いろいろな障害の方も来ておられます。本当にこういう方々は、全国数百万人と言われる方々を代表して、自分たちのこれからの生活、命、人生を左右する法案がどう議論されるのか、もっと率直に言えば、やはりこの法案では非常に困る、そういう憤りと不安を抱えて傍聴に来てくださっているんではないかと思います。
そういう方々を前にして、私はこの一時間、この自立支援法案が、本当に名前のとおり自立支援する法案なのか、逆に自立を阻害する法案なのか、そのことをこの場で皆さんと一緒に考えていきたいと思っております。
私も、二十ぐらいのころから福祉施設でボランティアを始めたりして、福祉に人生をかけようと思いまして、それ以来、二十数年福祉の道を歩いてきて、福祉をよくしたいという一心で政治家になりました。その中で、やはり究極の福祉というのは、重度の障害の方が地域でひとり暮らしをできる、そういう社会こそが本当に豊かな社会なんだと。
バブルのころに言われました、日本人はエコノミックアニマルだと。私は当時、福祉のことでアメリカやスウェーデンに留学をしておりましたが、本当に声を大にして反論したかった。日本人はエコノミックアニマルなんじゃない、世界で最も人間を大切にし、人間を愛し、そういう、人間を大切にする国なんだということを言いたかった。しかし、残念ながら、今の現状、日本は福祉、特に障害者福祉が非常におくれております。
この連休も、一週間スウェーデンに行きまして、精神障害者の方々、知的障害者の方々の作業所やグループホーム、そういうところを訪問させていただきまして、改めて日本との落差というものを痛感し、日本のように、精神病院に多くの精神障害者が入っている、三十四万人も入っている、あるいは知的障害の方も多くは施設に入っている、やはりこういう先進国では恥ずかしい状況を一日も早く変えねばならないというふうに感じました。
きょう、九枚、資料をここに添付させていただきました。ぱらぱらっと説明しますと、傍聴席の方、なくて申しわけありませんが、一枚目、世界、諸外国の福祉制度の概要ですが、何が言いたいかというと、最初にもう言っておきますが、世界の中で、障害者福祉のサービスに応益負担を導入し、重い障害の人ほどたくさんお金を払ってもらうというような制度をとっている国は、人類史上まだありません。この法案が通れば、日本が初めてになります。そのことですね。
二枚目は、これによって、まだ未定稿ですが、昨日、障害福祉部からいただいたもので、今回、一割負担を導入したら、年間二百六十四億円ぐらいお金が入ってくる。この二百六十四億円のために今回の自立支援法があるというのも、一つの言い方ではないかと思います。
それで、次のページは、きょうは二つのテーマ、前半は、精神科の通院医療公費負担の削減の問題、三十二条問題についてやりたい。後半は、重度の障害者の方々が地域でひとり暮らしをできる法案なのかということをやっていきたいと思いますが、四ページ目、五ページ目、六ページ目、七ページ目は、精神障害者の方々の生の声をここに添付させていただきました。
それで、八ページ目が、ほかでもありません、きょうも多くの議員が指摘されているように、昨日、六千人あるいは八千人の方々が集まられて、大集会がございました。「聞いてください、わたしたちの声」という集会の状況です。大臣、この写真を見てください。私、午前も午後も行ってまいりましたが、この八ページ目です、朝日新聞の記事にも出ておりますが、本当に私は、この場に大臣にお越しいただいて、本当にこの法案を不安に思っている障害者の方々の声をぜひとも聞いていただきたいというふうに思いました。
それで、まず最初の質問から入ります。
前半は精神障害者の問題でありますが、これに関しては、厚生労働省が宿題を持っていると思います。二年前、私たち民主党が大反対をした心神喪失者医療観察法案の審議の中で、精神障害者の社会的入院、三十四万人のうち約七万人が社会的入院、つまり、地域に受け皿とサービスがあれば復帰できるのに、精神病院にずっと入院せざるを得ない、こんな非人間的な扱いを受けている方々が七万人もいる、これを十年以内に社会復帰してもらうというふうに約束をされたわけです。そのことについて、現状、あれから二年たっておりますが、いかがでしょうか。
○尾辻国務大臣 精神障害者施策におきましては、受け入れ条件が整えば退院可能な入院患者の社会復帰を進めていく、このことは極めて重要な課題だと認識をいたしております。そこで、今、宿題だというお話もございましたけれども、平成十四年十二月から、精神保健福祉対策本部を設置いたしまして、その実現に向けての施策に着手をしたところでございます。
それで、この課題は、今お話しいただきましたように、十年間という目標を持って解決していくということを申し上げておりますから、市町村を中心として、地域で暮らすために必要な福祉サービス、住まい、生活訓練、質の高い医療など、そのために各般にわたる支援を実施していく必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
そこで、このたびお出しをいたしております障害者自立支援法案におきましては、精神障害を含め、障害の種別を超えて、市町村が中心となって障害者福祉サービスを一元的に提供する仕組みに改め、精神障害者に対する社会復帰や地域生活の支援を抜本的に強化をすることといたしておるところでございます。
これもいつも申し上げておりますけれども、精神障害の皆さんを入院医療中心から地域生活中心へという基本的な考え方に基づいてそのように変えていく、そのためにはいろいろな条件整備をしなきゃいけませんけれども、大きなそのうちの一つがやはり社会的に受け皿をつくるということでございますから、その社会的な受け皿づくりとして今度の障害者自立支援法案をお出しした。そういう面もあるということを、そういう面もあるといいますより、そのことを強く願いながら私どもがこの法案を出したということを今申し上げておるところでございます。
○山井委員 答弁を聞いて、私は悲しい気持ちでいっぱいです。
質問通告でもしましたから、私の質問の意味はわかっておられると思うんですよね。二年前に、今後十年以内に七万二千人の社会的入院をなくしますということをこの場で約束した。それから二年間たってどういう状況で、その計算でいけば二〇一二年までに七万二千人は社会復帰できるんですかという趣旨の質問をしているのに、全く答えられない、答えることができない。つまり、全く進んでいないわけです。
それで、私、この答弁はもうこれ以上結構です、はっきり言って時間のむだですから。私が言いたいのは、二年前にそんなことを約束しながらも二年間も全然進んでいない、そういう状況の中でこの法案が出ているということであります。
そこで、今回の法案の最大の問題の一つであります、きょうも午前中園田議員が非常に厳しく批判してくれました、三十二条の問題に入りたいと思います。
この資料の中で、(3)の中に「精神科通院医療公費負担の削減ではなく、存続を求める署名」というのがあります。二十三万人もの署名が集まったと聞いております。精神保健福祉法三十二条に規定された精神障害者の外来通院医療に係る公費負担制度がこれは削減されていくわけなんですね。五%から一割負担になっていってしまう。
しかし、これは大臣御存じのように、まさに今大臣が答弁された、精神障害者の方々が地域で生活するときの命綱がこの外来であり、またデイケアになるわけなんですよね。それを今減らそうとしているわけです。これによって、ちょっとでも負担がふえれば、精神の、心の病に苦しむ方々はやはり外来やデイケアに行くことができなくなって、それによって症状がかえって悪化する、あるいは逆に入院がふえる、そして最悪の場合は自殺がふえるんではないかということで、今、現場は大混乱に陥っております。まさに人の命を奪うことにすらなりかねない大問題だと思っております。
この点について、この通院の、この三十二条を自立支援医療という名で自立支援法案の中に移すことは、やはり悪化、入院、自殺の増など、費用的にも結局は高くつく、そのようなことについて、大臣、問題と思わないか、いかがでしょうか。
○尾辻国務大臣 これは御説明申し上げておりますように、今度の障害者自立支援法という新しい法律をつくる、そうなりますと、そのつくったことによって、今まで幾つかの法律があって障害者の皆さんの法体系をつくってきた、それとの関連が出てきて、整理をしながらやっていく。そうすると、今度の障害者自立支援法の本法の本則で書いてあることに照らし合わすと、それぞれの法律をいじらなきゃならない部分が出てくる、それについては附則でいじらせていただきますという整理をしておるということは、もう申し上げておるとおりでございます。
そうした中で、今お話しのようないろいろな話が出てくるわけでございますけれども、法律全体を整理しておるわけでございますから、そして、今度の法律に三障害の皆さんの対応を……(山井委員「いや、その理由を聞いているんじゃなくて、こういうことで悪化をしたり自殺がふえたりしないかということを聞いているんです」と呼ぶ)ということをまず法律自体で整理をさせていただいておりますから、基本的に、政策を変えるわけじゃございませんので、私どもは今度の法律をつくったことによって自殺がふえるというふうには考えておりません。
○山井委員 そうしたら、ほかの聞き方をしましょう。
自己負担がふえることによって受診が減るというふうに認識されていますか、それとも減らないと認識されていますか。自己負担はふえるんですから、これは。大臣お願いします。
○尾辻国務大臣 今のお話で申し上げますと、まず、現行の精神通院公費というのは、医療費の多寡にかかわらず一律五%、こういうことになっております。低所得者の方であっても高額の医療費の場合には五%ですから、その高い負担を求められる、こういう制度でございます。
したがって、制度が変わりますから、負担が大きくなる方も小さくなる方もそれぞれにあるわけでございまして、制度を変えると負担の大きくなったり小さくなったりするということは当然起こるということはあるわけでございます。
ですから、そうした中で、私どもは、一方で大きくなったり小さくなったりする面はありますけれども、低所得者の方々に対してのきめ細やかな対応をするということでそこを解決したいと思っておりますから、必要なサービスは、サービスといいますか医療というのは受けていただけるものというふうに考えておるところでございます。
○山井委員 要は、そう思って、この資料でも二ページ目をつけたのですけれども、言いますが、大体年間、これを自立支援医療に移すことによって、三十億円自己負担がアップすると書いてあるのですね。明らかにもうデータで出ているわけですよ。ということは、自己負担がふえるわけですよ。減る人もふえる人もいるというんじゃなくて、トータルで見るとふえるわけですよ。つまり、ふえることによって受診抑制がかかるんじゃないかと言っているにもかかわらず、そのことに関して明確な答弁がないわけです。
そこで、これはもう水かけ論になりますので、厚労省の現状認識はそれでわかりましたから、具体的な話に入りたいと思います。
やはり答弁を聞いていると、精神障害者の方々の置かれている現状をなかなかわかっていただいていないんじゃないかと思います。
そんなことで、今回、公費通院医療の三十二条の制度を利用している方からこれだけ、ぜひ国会で読んでほしいという手紙を私いただいてきました。これを、大臣のお手元にも届いていると思いますが、読ませていただきます、その一部を。
ちょっとはしょって読みますが、二十五歳、匿名の男性の方です。「私は、」「「そううつ病」になった者です。」と。それで、ちょっとはしょりますけれども、この七ページ。「そんな私に対して周囲は冷淡でした。」「家族も社会の人達も、私が精神的に弱く、物事から逃げているだけだとしか判断しませんでした。」
そして、「身内も含めた世の中全てに絶望し、本気で大した迷いもなく死のうとしました。それが一番、自分にとって良いことなのだと思ったからです。その時、死ぬ前に今も通院している診療所に行くだけ行ってみようと思いました。それから、紆余曲折を経て、何とか死を思いとどまり、長い時間をかけて、少しずつ回復していくこととなりました。その長い間、私のほとんど唯一の居場所だったのが、」この診療所の「デイケアだったのです。」「自分と同じか、あるいはそれ以上の病状の人達、そして理解あるスタッフの方々と一緒に過ごすことで、私は再び正気に戻れました。」「デイケアとはそういうところなのです。」ということを書いておられます。一カ月の総出費、十一万円、家賃等込み。うち、食費は二万円。
このデイケア、私も先日行きましたが、例えば焼きそばも、三人で食べられるときに二玉しか自分たちでつくって食べられないのですね。三人で焼きそば二玉ですよ。何でですかと言ったら、いや、焼きそば代がもったいないから、お金がないから。一カ月の食費二万円、一日平均六百五十円、それだけ切り詰めてやっておられるのです。厚労省は今回の三十二条の改正でちょっとしかお金はふえないから大丈夫だと言っておられますけれども、そういう感覚じゃだめなんです。
その次、大臣、もう三ページ前、四ページを見てください。この方は実名を公表してもらって結構ですということで、あえて、国会議員の皆さんへ生の声を聞いてほしいということで、すぎもとはるなさん、二十三歳の女性です、書いてくださいました。三ページ、ちょっと長いですが早口で読みます。
私は、この病院に二年ほど前から通院しています。最初は学生のときでした。そのころ会社に入りましたが、病気を理由に職につかしてもらえず、今はアルバイトで暮らしています。月の収入は五万円ぐらいです。
幸い今は、病気と相性のよい薬と出会う事ができたので、自分のおこづかいくらいは稼ぐことができますが、同じ年の友達に比べれば家族に依存していることばかりで、ほんとに、情けなくなります。
働きたいのに、働けない、頑張って就職活動して受かった会社で働けず、親に頭を下げて東京から地元に帰ってきた時の私のみじめさを想像して下さい。
そこで、大臣、一つお願いがあるんです。その後の文章をちょっと六行ぐらい読んでみてほしいんですね。大臣、ありますね、この四ページ目の「生きている価値がない、と何度死にたいと思ったかわかりません。」そこから一段落だけちょっと読んでみていただけますか。(発言する者あり)
○尾辻国務大臣 お求めでございますので、手元にありますものを読ませていただきます。
生きている価値がない、と何度死にたいと思ったかわかりません。
昨日だって、会社を休んでしまいました。なまけている、といわれればそれまでかもしれません。でも、一生懸命働こうと思っても、心に負担がかかりすぎて、体のガソリンがきれてしまうのです。車なら、あと十リットルのところで、ランプがつきますが、私たちはガソリンがつきるのがわからない。その結果、エンストしてしまう。そんな病気とつきあいながら、それでも社会とつながっていたい一心で、生と死の間をさまよっているのです。
○山井委員 どうもありがとうございました。本当に申しわけありません。
それで、本当に失礼なことで、申しわけなく思っておりますが、私は、今のことも失礼かもしれませんが、それを言うならば、この法案の方が、生と死をさまよっている精神障害者の方々に対してもっと失礼な法案だと思います。
その後を読ませていただきます。
今の病院、カウンセラー、そして薬に出会わなかったら、私は今、生きていないと思います。きっと人生がつらすぎて、自ら、命を絶っていると思います。ほんとに病気と向き合い、共に生きていくのは、一人ではできない、そして、長期的なスパンでの専門的治療を要する病気を、私は、背負ってしまったのです。
というふうに書いておられます。
ですから、私がこういうふうな手紙を今読ませていただいているのは、私も含めて、本当にこの精神障害というのはわかりづらくて理解しづらい。そういう方々の苦しみというものが本当にわかって今回の三十二条の改正が行われているのかということであります。
それで、あるデイケアの人に聞いてみたら、一週間に百人ぐらいが通っておられる。その中で、今回の三十二条が自立支援医療になることになってどういうリスクがありますかと言ったら、じっと考えていろいろ調べてくださって、もしかしたらその百人ぐらいの中の多くが、やはり自己負担がアップすることで、今まで週に四回来ているのを二回にするというふうに減らすかもしれない。その中で、百人中、顔を思い浮かべられるだけでも六、七人、自殺のリスクが高まる人がいるかもしれないということを言っておられました。
もしこの法が、きょうの午前中も園田議員から指摘がありましたが、十月から施行されて、それによって来にくくなった人が自殺でもしたら、これは大変なことになります、私たち国会議員の責任は。そういう意味では、自立支援医療という名のもとで、自殺支援医療ということにもなりかねないわけです。絶対にそんなことはしてはならないというふうに思っております。
大臣、お一言で結構です。この法改正は、自殺がふえることは絶対ありませんと責任を持って断言しますということを、ちょっとここで決意を語ってください。
○尾辻国務大臣 今、自殺の問題というのは、大変大きな問題になっております。国全体の大きな問題だというふうに私も理解をいたしております。そうした問題になっている中で、また、今お話しいただいておりますように、精神通院医療の役割というのは、これはもう極めて重要なことだと考えておるところでございます。
そうした皆さんの公費負担医療制度につきましては、対象となる方の増加によりその費用が急増しておりまして、これも先ほど先生がお出しいただきました、未定稿だとおっしゃった資料の中の数字にも、このこともまた同時に述べていただいておるわけでございまして、費用が非常に急増をいたしております。
その急増をしておる費用が、限られた財源の中でどうやって私どもは確保できるか。特に、必要な医療を確保するというのは大変重要なことでございますから、そのことを果たすためにまず今回お願いしているのは、費用を皆さんで公平に支え合う仕組みにしていただきたい、させていただきたい、そういうふうにしていただきたいということを申し上げておりますし、それから同時に、低所得の方や重度な障害でかつ継続的な医療を要する方など、医療費の家計への影響の大きい方に重点化した仕組みにしたい。
そういうことで、必要な医療を引き続き受けていただきたいということを願っておるわけでございまして、そうした中で、自殺という悲しいことにならないようにということを、精いっぱい努力してまいりたいと考えております。
○山井委員 実は、たくさんの方が書いてくださって、これは後で大臣にお渡ししたいと思いますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。(発言する者あり)
そして、これは百人のデイケアでもそういう状況ですから、もしかしたら、日本全国だったら本当に百人とか何百人という数の方がこれによって治療が減って、そういう自殺の危機に瀕する可能性があるわけです。
これは、資料で見たら、年間三十億の負担増じゃないですか。ということは、例えは悪いですけれども、もし三十億円のために百人亡くなられたら、一人の命の値段というのは三千万円ですか。これは人の命の話ですよ。そこはしっかりお願いしますよ。
それで、もう一つ、今まさに重度かつ継続の話になりましたが、ここは朝の園田議員の話にもありましたが、適正化のあり方の検討会の調査報告書の中で、こういう対象となることに関しては疾病はだめだ、疾病名による対象の限定はかえって差別、偏見助長につながるから、そうではなくて状態像だということになっているじゃないですか。このことに関しては、まさに現場の専門家であります水島議員が来週水曜日ももっと質問してくださると思いますが、我が党の朝日先生を先頭に、この問題はやはりこの自立支援法の最も深刻な問題の一つだ、一歩間違えば自殺支援法になりかねないということで、今後も取り上げていきたいと思います。
ちょっとその辺で何か、人の手紙を読んで何とかというのがありましたが、きょうは違います。読んでくれといって向こうが書いてきて、持ってこさせていただきましたので、言っておきます。
それで、次に、「ニュースJAPAN」という番組を先日見させていただきました。大臣も出演をされていたんですけれども、連休中の番組、大臣、これはごらんになりましたよね、御自分も出られていたので。三夜連続で十分ずつだったと思っております。そういう障害のある方五人がどういうふうに自立支援法案で変わるかということをされていまして、その方々についてお伺いをしたいと思っております。
これは、私、その連休中はスウェーデンに行っておりましたので、父母がビデオに撮ってくれておりまして、とてもいい番組だから見なさいということで見させてもらって、本当に感動し、怒りを感じました。
まず最初のケース、知的通所授産、奈良のちいろば園、パンなどをつくったりして、知的障害の方が通所授産という形で働いておられます。工賃が月に一万円。今は自己負担ゼロ。ところが、この法案が通ると、自己負担が二万円か二万九千円になるわけですね。一カ月の工賃が一万円で、自己負担が二万円から二万九千円になる。
私の近所にも通所授産が幾つもありまして、もう怒り心頭に達しておられるわけなんですね。今まで、できるだけ家にこもらないで出てきなさい、出てきなさいといって通所授産を勧めてきたのに、逆にこれだけお金を取ったら当然利用が抑制される、引きこもるか、施設に入るか、自立に逆行するというふうに怒っておられます。
やはりこういうのは問題ではないでしょうか。尾辻大臣、お願いします。
○尾辻国務大臣 「ニュースJAPAN」で取り上げられました幾つかの例でございますが、その中で、ちいろば園のケースというのが取り上げられておりました。あそこで取り上げられたものというのは、報道の内容だけでは詳細はわからないところもありますので、ある程度仮定を置いて私どもも判断しなきゃいけないわけでございますので、そのことはお許しをいただきたいというふうに思います。
そこで、あそこで取り上げられたちいろば園のような通所授産施設を利用される方の利用者負担額でありますけれども、新制度におきましては、定率負担が、作業所で十五万円の通所費用、これも新制度になってこれが幾らになるかというのは、どういう施設になるかというのはあるわけでございますが、今現在十五万円という通所費用だというふうに見ますと、一割ですから一万五千円とまずなります。
それから、食費及び高熱水費等の実費負担分というのは……(山井委員「いや、もうそれは今私がしゃべりましたので、そのことについてどう思うかということを聞いているんです」と呼ぶ)ですから、今先生がおっしゃった数字というのも、仮定の置き方なんですけれども、いろいろな数字に変化するものですから、必ずしもおっしゃった数字にもならないということをまず御理解いただきたくて、こういうことを申し上げておるわけでございます。それは御理解ください。
したがって、今私が申し上げているのは、きめ細かに減免措置などをとりますから、そうしたものの中でまず負担をできるだけ小さくしたいというふうに思っておりまして、その仮定を置くわけですけれども、仮定を置いてその負担額を改めて計算しますと、大体、この前テレビで言われておったものよりはやはり小さい額になると、私どもはきのうもそれなりに計算しながら判断したわけでございます。
したがって、今私が申し上げたいことは、できるだけ、今後またそういうきめ細かな減免措置をとることによって、そうした額を小さくしていきたいと考えておりますということを申し上げているところでございます。
○山井委員 ちょっとテレビの名誉のためにも言っておきますが、一応厚労省からきのうもらった資料では、テレビでは一万五千円と出ていたけれども、厚労省で計算したら二万円から二万九千円となっているというふうに逆のことが書いてありますので、申し添えておきます。
それで、結局、工賃一万円のところから、とにかくそれを上回る利用料を取ることがおかしくないのかという根本的な問題なわけです。
次に、どんどん似たような話を行かせていただきます。
次の「ニュースJAPAN」の方も、視覚障害の六十一歳の男性の方で、盲導犬を利用されておられます。中途障害でありまして、月三十時間、介助やショッピングに視覚障害のためにサービスを利用しておられます。収入は年金のみで、一割負担。この人は、今無料なのが、月に約五千五百円になるわけです。
それと、次、もう一人のケースの方も、四十三歳の男性の方で、自動車事故で脊椎損傷、車いすになっておられます。一日十時間程度、月三百二十時間の介護を受けられて、収入が年金等で十万七千円。十万七千円収入の方が、二万四千円、今回の自立支援法で負担が発生をいたします。
これは、大臣、素朴な疑問なんです。自立支援ということは自立をしやすくするわけですよね。自立をしやすくする法律でありながら、これを見てみると、法案が通ったら、自己負担が発生して二万四千円とか払えなんて、どう考えてもこれは自立しにくくなるように思えるんですが、大臣、いかが思われますか。
○尾辻国務大臣 今、また二つの例をお述べになりました。
私どもも、きょう御質問いただくということを昨日お伝えいただきましたから、こうしたケースについてもそれぞれ、先ほど来申し上げておりますように一定の仮定を置かなきゃいけないわけでございますが、仮定を置きながら、私どもなりの計算をさせてもいただいております。ただ、きょうそのことを申し上げて、またそのことをお聞きになっておるわけでもありませんから、先ほど来申し上げておるように、私どもは軽減措置できめ細かく措置をしたいということを申し上げておる、そこのところは御理解いただいておるだろうというふうに思います。
ただ、では、自立支援といいながら負担がふえるじゃないか、こういうことでございますけれども、これはこの法案をお出ししたときに申し上げておりますように、社会福祉、こうしたもの、障害者の皆さんの施策も社会保障全体の法律の体系の中できれいに整理をしていきたい、そしてまた、その他の社会保障の法律、仕組みなどと整合性を持たせたいということでのお願いをしておりますし、また障害者の皆さんにも、ぜひ皆さんの中でのお互いの助け合いも考えてくださいというようなお願いをしておるわけでございまして、そうした中で負担が一部ふえるということは、これはぜひお互いの助け合いだと思ってやってください、そうでないと制度そのものが持続可能でなくなりますということをお願い申し上げておるところでございます。
○山井委員 ちょっと私、気になっているんですが、先日の質疑のときから大臣は助け合い、助け合いとおっしゃるんですけれども、そもそも最初の助け合いは、それこそ健常でばりばり働けるお金のある人が障害者の方々を支えるというのがまず根本的な助け合いであって、今言っているのは、本当に障害で苦しんでおられる方々からお金を取るという話なわけですよ。
だから、ここで大臣、落差があるんですよ。大臣や厚労省さんは自立支援、自立支援といいながら、利用者の方は自己負担がふえるだけなんですよ。自立阻害なんですよ、利用者の方にとったら。そこが問題なんです。
そこで、根本的なことをお聞きしたいと思います。この法案で、重度の障害を持つ方がひとり暮らしはしやすくなりますか。大臣、これはもうシンプルな質問です。
○尾辻国務大臣 その重度の方の収入だとか、その他いろいろな環境があろうと思いますから、それ次第だというふうに申し上げざるを得ません。したがって、私どもから申し上げますと、生活が苦しくなったりやりにくくなったりしないように、精いっぱいさせていただきたいと存じますということを申し上げます。
○山井委員 だから、もう答弁一つ一つが何か根性論なんですね、頑張ります頑張りますと。でも、実際、データ一つ一つは明らかに自己負担はアップしていっているわけですよ。この資料にもありますように、年間自己負担は、書いてあるんですよ、二百六十四億一割負担でふえると言っているわけなんですね。
それで、では具体的な話、昨日会ってきました。(パネルを示す)この「ニュースJAPAN」に出られたお一人の牧井さんという方に、その集会の中でお目にかかってきました。
この方、脳性麻痺でおひとり暮らしです。一日十時間、月三百二十時間利用されております。収入は年金等で十万七千円。この方に、今まで無料だったのが、負担が二万四千六百円発生する。これは厚労省も認めておられるわけなんですね。それに対して牧井さんはどうおっしゃっておられるかというと、牧井さんのお写真ですけれども、どうおっしゃっておられるか。びっくりしますよ、僕らの生活ってこれからよくなっていくと思っていたのにということをおっしゃっているんですね。
それで、今までだったら、施設に入っておられたわけです、牧井さんは。それで、在宅生活の方がいいということで、仲間の人にも施設から出てこい出てこいと言っていたけれども、この法律になるんだったら、制度不安があるので、仲間に施設から出てこいとは言いにくくなるということまでおっしゃっておられるんですね。それで、自己負担がふえたら、二万四千円の自己負担が発生したら、今一日十時間、月三百二十二時間介護を受けているのを減らすことにもなるかもしれないということをおっしゃっておられます。
大臣、それで、きょう、その牧井さんが傍聴に来られているんです。大臣、入り口の方を見ていただければ、一番端っこにいられる方です。牧井さん、電動車いすで西宮から来てくださっています。この法案に対して素朴な疑問を持っておられます。ぜひ、一言、一日十時間、月三百二十時間の介護ということで、この方に対して、ぜひともどう思うのか、大臣、答弁をしてください。(発言する者あり)大臣、答えてください。いや、私が聞いているんですから。
○尾辻国務大臣 委員会のあり方として、傍聴席に向かって私が申し上げるというのはいかがかと思いますし、また、私はできるだけ多くの方とお話ししたいと思っておりますから、このケースの方についても、もしまた時間でもあれば、機会があれば、よく、これはこの場で先生にお答えする言葉として申し上げますけれども、お話もさせていただきたいというふうに思います。
これは、できるだけ多くの皆さんの御意見を伺いながら、よくお聞きしながら、この法案も御理解をいただきたいと思いますし、また、いつも言っておりますように、細部を政省令で決めるところが多いわけでございますから、そこに持っていきたいというふうに思っておるわけでございます。
計算の仕方で随分違うわけでございまして、牧井さんの場合も、私どもが今計算をして出しております数字でいいますと、最大限が二万四千六百円ということでございまして、その間いろいろな数字が出てこようと思いますし、よくそれぞれのケースでお話をお聞きしながら、本当に何回も言っておりますけれども、皆さんにきめ細かな対応をさせていただきたいということをまた改めて申し上げたいと存じます。
○山井委員 それでは、もうお一方のお話をさせていただきたいと思います。
「ニュースJAPAN」に出ていられた海老原宏美さん、脊髄性筋萎縮症で、車いすでおひとり暮らしであります。昨日、集会に来ていられて、私もお目にかかってまいりました。きょうも傍聴席にお見えになっております。牧井さんの隣に座っておられます。この方も、収入が給料十二万円と年金。この方の場合は、自己負担が厚生労働省さんの試算によると二万四千六百円かあるいは四万二百円になるということなんですね。こういうふうに、非常に自己負担が発生する。
この海老原さんがどうおっしゃっているのかというと、結局、買い物に行く、駅に行く、おふろに入る、食事をする、トイレをする、一日大体十数時間介護を受けられているわけですから、ほぼ全介助になるわけです。夜は人工呼吸器をつけて眠っていられまして、介助者の方がつきっきりでないとだめなわけですね。この海老原さんの素朴な疑問は、食事をする、買い物に行く、駅に行く、おふろに入る、トイレに行く、普通の人だったら当たり前のことをするのに、なぜこれだけお金が発生してくるのかということです。それも一カ月、二カ月のことじゃない、一生、この法案が通ればそういうことになる、それはやはり納得できないということをおっしゃっていられます。
就職活動もされたそうですが、車いすで、トイレも介助が必要と言った段階で、面接さえしてもらえないで、結局門前払いに遭ったということなんですね。
私は、そういう意味では、牧井さんや海老原さんのような方が地域でひとり暮らしをされている、それこそがある意味では日本の誇りであり、そういう方々がいらっしゃるおかげで日本という社会はよりすばらしい、いい社会になっていると思うんです。でも、自己負担のアップによってそういう方々が生きづらい社会をつくっていくというのは、逆に問題だと思っております。
そこで、大臣、先ほどおっしゃってくださったんですけれども、ここという場ではなんなのでまた個別にお話をしたいとありがたい言葉を言っていただいたので、大臣がそうおっしゃってくださるのなら、牧井さんと海老原さんに、もちろんこの場でなくてよろしいので、来週ぐらいに、もう短い時間でも結構ですから、ぜひ直接お目にかかって生の声をぜひとも聞いていただきたいと思います。
それで、私がお願いしたいのは、これは私、こういう個別の方の例をきょうあえて挙げさせてもらったのは、要は、全国の何百万人という方が本当に似たような思いを感じておられるんです。二日前に傍聴された方にも、終わってから私聞きました。感想、どうでしたかと言ったら、僕の暮らしはこの法案が通ったらどうなるのかわからないと言うんですよね。わからないというわけですよ。だから、そういう意味では、ぜひ、牧井さん、海老原さんをそういう重度の障害で勇敢にもひとり暮らしをされている方の代表としてお目にかかっていただきたい。それで、どこかでこそっとお目にかかっていただいて大丈夫だよと言ってもらってもしようがないわけですから、テレビとかにも入ってもらって、ぜひとも、そういう、悪いことにはならないからということを公の場で言っていただきたいと思います。
まず、大臣、先ほど会っていただけると言っていただいたので、ぜひ御検討いただきたいと思います。大臣、お願いします。
○尾辻国務大臣 この場ではまさしく一般論でお答え申し上げますけれども、これは、これまでの審議の途中でも、先生からも御示唆いただきましたら、いろいろな現場に私も行かせていただきました。先生に言っていただいて出かけたところ、もう五カ所ぐらいあるかなと思ったりもいたしております。
そのように、私、現場にあちこち行かせていただいておりますから、そうした努力は絶えずさせていただきますという、まさにこの場では一般論でお答えさせていただきたいと思います。
○山井委員 そうしたら、大臣が先ほどおっしゃったように、私が言うまでもなく、大臣の方から、この場で言うのもあれですから個別にお目にかかりたいと言ってくださったので、大臣の自由意思ということでお目にかかっていただけるということを御確認したいと思います。お二人に会ってくださると先ほどおっしゃったわけで……(発言する者あり)いや、大臣が先ほどそうおっしゃったので。
○尾辻国務大臣 私が申し上げておりますのは、できるだけ多くの皆さんの御意見を伺って事を決めていきたいと思っておりますし、できるだけ多くの現場を見ておきたいということをいつも申し上げておるわけでございますから、私はそのようにさせていただきますということを申し上げます。
○山井委員 昨日の六千人の集会の中で、本当に多くの障害のある当事者の方々が口々におっしゃったのは、当事者抜きに、私たちの声を聞かないで法案をつくって法案を採決するのはやめてほしい、私たちの人生と命にかかわることなんだからということなんですね。それで、それこそ全員に会えるわけではないので、私は、代表としてだれかに会ってほしいという話をしているわけであります。
それで、やはりこれだけ何百万人もの障害者が、これは自立支援法なのかな、本当にそうなのかな、逆に自立を阻害しているんじゃないかという不安を持っているのは事実なんですよ。だからこれだけ大きな集会にもなっているわけなんですね。だから、もし大臣がそれは誤解だとおっしゃるならば、私は、どんどん大臣がその中に入っていって説明をされて、説得をされて理解してもらったらいいと思うんです。法案に自信があるならば、そのことをぜひお願いしたいと思います。
それで、この法案審議の中で、財源が足りないからこういう障害の当事者の方々から自己負担をふやす、そういう選択をしたという話がありました。ちょうど昨日の集会でも、この資料の最後にあります「アピール(案)」、先ほど同僚議員からもありましたが、その中に「「障害者自立支援法」を考えるみんなのフォーラム」、その中にどう書いてあるかということは、「また、尾辻厚生労働大臣だけではなく、小泉総理大臣や谷垣財務大臣などにも、そして国会を挙げてわたしたちのことに真剣に向き合ってほしいのです。」と言っております。
この問題は、やはり厚生労働省さんも、もちろんこれは義務的経費にするためにとか必死で頑張ってくださったわけですね。塩田部長も必死で頑張ってくださった。やはり、そういう意味では、これは財務省の責任者も呼ばないとだめだと思います。ぜひ、小泉総理や谷垣財務大臣もこの場に呼んできて、この自立支援法の審議の答弁の場に立ってほしいと思います。
これは、委員長、後で理事会で諮ってください。
○鴨下委員長 その件につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。
○山井委員 これはやはり、本当に何百万人もの方々の命と生活と人生ずっとにかかわる問題ですから、国会を挙げて、総理や財務大臣も来てもらって、当然議論をすべき問題だと私は思っております。
そこで、お金の問題に戻りますが、二ページを見てください。定率一割負担によって幾らぐらい国庫に影響するか。二百六十四億円入ってくるということなんですね。
それで、私が心配なのは、この自己負担をふやせば利用抑制が当然かかるということなんです。先ほどの海老原さんも、自己負担が発生したら、そのお金を払う当てもない。もっと病気が悪化したときのお金のために蓄えもしておかないとだめだ。そうしたら今のサービスを減らさないとだめかもしれない。晩、人工呼吸器をつけて暮らしている。そんな中で、サービスを減らしたいけれども、減らして、もし何かのことで命絶えてしまったら、そんなふうにはなりたくないとおっしゃっているんですね。
そこで、大臣、この二百六十四億円収入がふえるわけですね、自立支援法で、定率一割負担で。それによって逆に利用抑制がかかるわけですよ、それは値上げをしたら。どれぐらい利用が抑制されると厚労省は予想されているんでしょうか。
○西副大臣 今回の利用者負担の増加により、サービス量がどれだけ抑制されるかという質問でございました。
この法案におきましては、一定の定率負担と所得に応じた月額の負担上限、これを組み合わせた利用者の負担をお願いしておりますと同時に、在宅福祉サービスに関する国の負担も同時に義務化ということで強化をさせていただきました。
この負担をお願いするに当たりましては、所得の少ない方にきめ細かく配慮するとともに、激変緩和のための措置も同時に織り込ませていただいております。そのことによって必要なサービスは確保されるというふうに考えておりまして、サービスの抑制ということにつきましては、今のところは私どもは見込んでおりません。
○山井委員 皆さん、今の答弁聞かれましたか。定率一割負担を導入して、それによって厚労省はサービス利用抑制が起こるとは考えていないと。この現状認識で、だからこの法案が出せるんですね。
現場の方々、当事者が何で苦しんでいられるかというと、自己負担がアップしたら、当然お金がないから利用できるサービスが減っちゃう。それでさっきの精神障害者の場合は、それが減ったら自殺につながっちゃうかもしれない。それだけ深刻に悩んでいるときに、法案を提出する側が、応益負担を入れても利用が減るとは考えていませんよと。それはあんまりじゃないですか。だからこれは、厚労省にとっては自立支援しているつもり法案だけれども、当事者にとっては自立阻害法案と言われるわけですよ、そのギャップが。
先ほどの精神障害者の方の通院の話に少し戻りますと、あるクリニックの方はこうおっしゃっているんです。自殺しそうな方には毎日来てもらう。毎日顔を見て、きょうは自殺しないでね、きょうは自殺しないでねと一日一回約束する。それによって、自殺の意識がありそうな人には、とにかく何としてもこの緊急事態を抜け切って、命をもち長らえてもらおうと思っている。しかし、時々、きょうは自殺しないでねと帰るときに言ったときに、約束してもらえないときがある。そういうときは、その方がクリニックから出ていく後ろ姿をずっと見詰めて、本当にあしたこの方来てくれるんだろうかと思うことがある。しかし、約束してくれなかったら、やはりその日の晩に首をつって亡くなられたということがあるというんですよね。
それぐらいの厳しい現実で、お金もかからないから来てね、そう言って来てもらっているわけですよ、自殺してもらわないために、現場は。それを、お金払ってまで来てとか言いづらいわけですよ。
そういう、現場がぎりぎりのところで障害者の暮らしや命のために闘っているのに、厚労省が応益負担で一割負担入れてもサービス利用が減るとは考えていないというのは、これはあんまりじゃないですか。大臣、いかがですか。
○尾辻国務大臣 私どもは、そのことによって、受診抑制といいますか、そうしたことがないようにしたい、とにかくその努力をしますということを申し上げたのが先ほどの副大臣の答弁だと私は理解をいたしております。
とにかく、私どもは、何回も申し上げますけれども、ケースに沿ってきめ細かく対応することによって、そういうことが起きないようにしていきたいということを今申し上げているところでございます。
○山井委員 この法案、私ずっと考えてきて、どうしても許せないなと思ってずっと考えてきて、なぜなのかなということを考えたら、要は、きょうも同僚議員から指摘があったように、応益負担、これは一ページ目の資料にありますように、障害者のサービスに応益負担、つまり、重い人ほどたくさんお金を払ってもらえるという制度を導入した国は人類史上ないんですよ。何でないんだと思われますか。あり得るはずないじゃないですか、障害が重い人ほど仕事もできなくて苦しんでいるわけですから。だから世界のどこにもこんな制度がないんですよ。
大臣、これは世界に先駆けて、胸を張って、日本という国は、日本の国の障害者福祉というのは、重い人からたくさんお金を取る、そういう画期的な制度にするんですと胸を張って諸外国の人に言えますか。
私は、この法案が、正直言って与党の方も気が重いと思っています。なぜ気が重いのかとずっと考えたら、この法案というのはやはり人の道に反しているんですよ。要は、お金が足りなかったらお金のある人から出そう、あるいは健康な人から出そう、それがまず物の順序なんですよね。ところが、今回の法案では、財源が足りないからといって、障害が重い人からお金を取ろうということになっているわけです。そういう意味で、私は、この自立支援法案、名前をつけさせていただきました。やはりこれは弱い者いじめ法案だと私は思います。
大臣、どう思われますか。鹿児島の九州男児とお聞きしておりますが、別に、男性も女性もそういう弱い方々をきっちり守っていかないとだめなので、このことは男性も女性も全く一緒なんですが、大臣の生きざまからして、お金が足りない、そのときに、障害の重い、重度の人がより多くのお金を払うこの法案というもの、人の道に反していると思われませんか。
○尾辻国務大臣 私も一人の人間として、できるだけお役にも立ちたい、また弱い方がおられれば助けてもあげたい、それはそう思います。そう思うことは、今私が申し上げたら何か言われるかもしれませんけれども、私もあえて言わせていただくならば、その思いは人後に落ちないつもりでございます。
ただ、どうぞ御理解いただきたいのは、一番基本のところで支援費制度が大変窮屈になって危うくなってきた、ここを何とかしたいという私どもの思いが、こういう形で私どもなりの解決策としてこの法案をお出ししておる。何とかこの制度を、制度といいますかこの考え方を続けていきたい、この制度を、大きな意味でのこの制度を維持したい、その思いであることを御理解いただきたくて申し上げたところでございます。
○山井委員 ある意味で大臣も思いは共有してくださると思いますが、政治の役割とは何かというと、これは与野党を超えて、政治の役割というのは、弱い立場の方々の盾となって弱い方々を守るのが政治の最高の使命なんですよ。そして、その先頭に立つのが、役所であれば厚生労働省であって、厚生労働大臣なんですよね。
今回のこの支援費制度、財源がパンクしつつある、それに対して補正予算を確保して、義務的経費に持ってくる、そのために本当に奔走されたことには敬意を表します。敬意を表しますが、しかし、今言ったような、最も障害の重い、最も弱い立場の方々からお金を取ってきてその財源を穴埋めするという考え方は、これはやってはならない、人の道に反する禁じ手であると思います。国民の理解は得られない。
先ほども言ったように、先日も私、一週間、連休中にスウェーデンに行って、スウェーデンの障害者のグループホームの方々とこの議論を一週間してきました。今度、日本ではこういう制度に変えるんですよ、応益負担といって障害の重い人からたくさんお金を取る、そんな制度に変えるんですよと言ったら、英語でスピーチしていましたが、向こうの人は理解できないんですね。え、何て言ったの、何て言ったのといって。結局、発想の中にないんですよ、そんな考え方は。そんな、重い人からたくさんお金を取るなんて、それは福祉じゃないというんですよね。やはりそれは、普通、どこの国でも、その考え方というのは共通なのではないでしょうか。
そして、そういうこととともに、今回、昨日の集会でもあったように、十月にグランドデザインが出てきて、そして十分に当事者の方々の声を聞くまでもなく、二月に法案が出てきて、そしてこれから審議をちょっとやって法案を通す、それじゃあんまりですよ。
先ほども大臣が繰り返しおっしゃったではないですか、ケースによって、いろいろな状況によって、自己負担は幾らになるかは正確にはわかりませんと。大臣がわからなかったら、だれがわかるのですか。大臣がわからなかったら、一般の人がわかるはずないじゃないですか。もちろん全くわからないと言っているわけではありませんので、それは。だから、それほど制度が複雑なんですよ。だから、そういうことを短期間に納得しろというのは無理なんですよね。だから、そういう意味では――大臣、どうぞ。
○尾辻国務大臣 一点だけ、誤解があるといけないと思って、手を挙げさせていただきましたのは、そこのことだけは申し上げたいと思います。
先ほど「ニュースJAPAN」のケースについて、仮定を置かざるを得ません、よくわかりませんと申し上げましたのは、それぞれのケースが、より、どういうケースかというのがわからないと計算ができないのですということを申し上げたわけでありまして、決して私が制度を理解していないから計算ができないのですということを申し上げたものでもありませんので、そこのところだけは御理解いただきたいと存じます。
○山井委員 いや、私は大臣を責めているのではなくて、制度を責めているんです。
今回も政省令が多くてわからない。厚労省と話をしても、この方のケースは幾ら自己負担になるのですかと言ったら、厚労省の担当者と私と議論しても、二、三時間考えないと幾ら払うのかもわからないぐらいだから、一般の人がわからないのは当然なわけなんですね。
ですから、きのうの六千人の集会の方々の怒り、憤りというのは、自分たちの人生や命がかかっていることが、自分たちの声を聞かなくて、今国会で決められようとしていることなのです。
ですから、大臣にお願いですが、やはりこの法案は、継続審議にするなり、もっと法案を詰めて出し直すなり、もっと時間を決めてやらないと、これはどう考えたって障害者の方々が納得できるはずがないじゃないですか。大臣、いかがですか。
○尾辻国務大臣 これはいろいろな見方、言い方があろうかと思いますが、障害者の団体の方々、代表の方々と、私が大臣になる前でも、もう勉強会で相当いろいろな意見交換をさせていただいておりまして、そういうのをずっと積み重ねてやってきた、それはもう厚生労働省は当然、省としてそういうことをやってきた、この積み重ねがあることもまたぜひ御理解いただきたいと存じます。
○山井委員 冒頭に、この法案は自立支援法案なのか自立阻害法案なのかという話をしましたが、私はこの一時間を通じて、やはり、厚生労働省にとったら自立支援しているつもり法案かもしれないけれども、実際、当事者にとっては自立阻害法案、引きこもり支援法案、閉じこもり支援法案、自殺支援法案、そして弱い者いじめ法案ではないか、そのことを強く申し上げて、私の質問を終わります。