先週の国政報告会でも、介護保険の被保険者・受給者の年齢拡大について議論をしました。
しかし、介護保険を全年齢に拡大し、障害者の介護も介護保険でカバーし、若年者も介護保険料を払うことについては、消極的な意見が多かったです。
何よりも高齢者の介護保険については、
「介護保険のおかげで、親の介護に助かった!」
という喜びの声が多かったですが、障害者福祉に関しては、なかなか身近ではなく、 「高齢者福祉に比べて、障害者福祉は10年遅れている」と話しても、なかなかピンと来ないのです。
しかし、障害者福祉は、本人やそのご家族にとって、本当に大きな切実な問題です。そして、誰もが(自分の家族なども)交通事故や病気、難病などでいつ障害者になるかわかりません。
福祉の議論をすると、福祉推進派の私の議論はどうしても「負担増」になります。ですから、仙谷政調会長からも私は、「ミスター負担増」「大きな政府論者」などと言われますし、「山井が持ってくる話は、カネがかかる話ばっかりやなあ」と言われてしまいます。
確かに、社会保障費は20兆円を超え、日本の財政再建のためには、どのように社会保障の伸びを抑制するかが大きなポイントです。
しかし、一方では、苦しんでいる人々に必要なサービスを提供するのも政治の重要な責務です。
この不況の折に、障害者福祉の予算を増やす。非常につらい話です。難しい話です。しかし、障害者福祉が多くの人々にとって、多くの議員にとって「他人事」であるがゆえに、私は、逆に必死に頑張りたいと思うのです。
遅れすぎている障害者福祉の現状。
たとえば、高齢者のホームヘルプは、全国どこの自治体でも利用できます(当たり前!)が、障害児や知的障害者、精神障害者のホームヘルプは、全国の自治体の半分では利用できないのです。サービスがないのです。
これをどこの自治体でも受けられるようにするには、財源を増やさねばなりません。介護保険を活用しないと、なかなかサービスは増えません。
当然、不況の苦しみは全国民で分かち合わねばなりません。しかし、その不況のしわ寄せをもっとも直撃で受けるのが、今までから最も弱い立場にいる障害者やそのご家族であってはならないと思います。
私は、十数年前から介護保険推進の運動をし、全国で講演し、何冊も本も書いているから痛感します。
介護保険をつくるときは、「お年寄りの介護が大変だから、介護保険をつくろう!」という世論の盛り上がりがすごかった。しかし、今回、その介護保険を障害者にも広げよう、という声は小さい。
理屈から考えれば、高齢者だけでなく、障害者も地域で十分なサービスが受けられて当然です。実際、今は65歳以上の障害者は介護保険の対象であり、かなりの量のサービスを利用しているのですから。
年齢が若いと利用できるサービスが大幅に減るのです(ごく一部、介護保険以上のサービスが利用できているケースもありますが)。
高齢者の介護のため、「65歳以上の障害者福祉」のため、に保険料を払うのは仕方ないが、(64歳以下の)障害者の福祉のために保険料を払うのは苦しい。というのが現状でしょうか。
社会保障と負担増の問題は、永遠のテーマです。
しかし、「高齢者福祉は自分の問題だが、障害者福祉は他人事」という意識は、私は何としても変えねばならないと思います。
これは、にわとりが先が卵が先かの議論でもあります。
障害者がなかなか地域で目立たないから、みんな障害者福祉に無関心。無関心だから障害者福祉の向上に消極的。
介護保険が全年齢対象になれば、一気に多くの障害者がサービスを受け、地域で目立つ存在になります。そうすれば、世論も障害者福祉への関心が一気に高まり、障害者福祉もますます充実する。
そして、障害者福祉が充実し、就労できる障害者が増えることは、国家財政にとっても、もちろん、本人の尊厳にとっても大きなプラスです。
私も一人の国会議員として、目指す国家像というのがあります。世界から日本をどのように見られたいか。私が目指す日本の国家像は、「平和を愛する国」「人間を大切にする国」「ひとりひとりの人間を大切にする国」です。
残念ながら、一時期、日本は「エコノミックアニマル」と海外から批判され、お金はあるが顔の見えない国と日本は言われました。
しかし、そうではなく、「平和を愛する国」「ひとりひとりの人間を大切にする国」として、世界から信頼され、尊敬される国にせねばなりません。
海外から日本に来た観光客は一様に、「日本では、車椅子の人を街であまり見かけない」「街に段差が多い」と批判します。
逆に、欧米の都市を観光すれば、私たち日本人は、車椅子の人々をよく街で見かけることに驚くのではないでしょうか。
たとえば、日本の首都東京の山手線を車椅子で移動するのは至難の業です。
「その国の真の豊かさは、車椅子で独力移動できる距離ではかることができる」というのは、私の恩師の一人である早稲田大学の岡澤教授の言葉です。
ですから、私は介護保険の年齢拡大(エイジフリー化)の議論は、日本の国のあり方、どんな国を目指すのか、が問われる問題だと思うのです。「障害者に冷たい経済大国」という汚名を挽回するためにも、介護保険のエイジフリー化が必要と思います。