こんな悔しいこと、こんな情けないことはありません。
厚生労働省が出生率1.29(2003年)の事実を5月24日には把握していながら、年金改革法案の強行採決までその事実を隠していたのです。
民主党の山本孝史議員が、2003年の出生率を明らかにするように6月3日に厚生労働委員会で質問したにもかかわらず、厚生労働省は「まだ数値はわからない」とウソの答弁をしました。
しかし、今日の質問主意書への答弁では、少なくとも5月24日1.29という数値を知っていたことが明らかになりました。つまり、年金法案採決の12日前にはわかっていたのです。
そして、この2003年の出生率1.29(史上最低)は、厚生労働省が今回の年金改革法案で予測した前提を大きく下回っており、この法案の「目玉」であった
「将来的にも現役時代の50%の年金給付を維持する」
ということはほぼ不可能なのです。
つまり、厚生労働省や与党は、この1.29が法案審議の際に明らかになれば、この年金法案がウソであり、実現不可能なことを約束していることがバレてしまい、法案がふっとぶことを恐れて、「1.29」を隠していたと言われても仕方ありません。
民主党の岡田代表は「厚生労働大臣の辞任に値する情報隠し」と言っていますが、その通りです。
私はこの3ヶ月間、必死で年金審議を行いました。 しかし、情報を隠し、ウソの前提に基づく法案審議を行っていたかと思うと、情けなく、悔しく、涙が出る思いです。
いくら私たち国会議員が必死に審議をしても、肝心のデータや情報を厚生労働省に隠されたら、審議は成り立たないのです。
私は国会議員になって、こんな情けない思いをしたことがありません。民主党の国会議員をだましたということは、国民をだましたということです。
ここ数ヶ月の年金審議で、私たち民主党は、「政府の出生率見通しが甘い過ぎる」とたびたび指摘してきました。
しかし、厚生労働省は、2050年までに1.39に戻ると楽観的な見通しを繰り返し答弁していました。
しかし、2003年の出生率が1.29であるとすれば、その予測は大幅に下方修正せねばなりません。
そうすれば、50%の給付の維持という年金改革法案の「目玉」は、ほぼ実現不可能なのです。
政府や与党は、国民に情報を隠し、いやウソの情報を流し実現不可能な法案を通した責任をどうとるのでしょうか?
おそらく「あとは野となれ、山となれ。先のことなんか知るか」ということでしょう。
いざそのときにはなったら、「予測が狂いました。こんなはずじゃなかったんですがねえ」と、しらばっくれるのでしょう。
こんな無責任なことが許されていいのでしょうか?不利はデータは法案成立まで隠す。こんなことが許されては、国会審議は成り立ちません。
さらに、私が信じられないのは、この問題で厚生労働省も厚生労働大臣も全く誰も責任をとろうとしないことです。
国会は、信頼関係の上に審議が成り立っています。しかし、厚生労働省との信頼関係は壊れました。
薬害エイズの資料隠しと同様です。 今後も私たち民主党議員は、厚生労働委員会で質疑をします。
そのたびに、「最新データは本当に隠してないんですか。本当ですか?」と、いちいち確認しないとダメなのでしょうか?そして、データや情報を隠しても、誰も責任をとらなくていいのでしょうか。
役所の都合の悪い資料は隠していいのでしょうか?
国民をだまして、でたらめな法案を通すことが許されるはずがありません。
「将来的にも現役時代の給付の50%を確保する」と約束した政府の年金改革案。
しかし、審議を通じて、モデル世帯(夫は40年間会社員、妻は専業主婦)というに限り、共働きでは40%前後の給付であることがわかりました。
さらに、審議を通じて、モデル世帯でも65歳時点だけであり、75歳になると40%程度の給付に落ちることが明らかになりました。そして、今回の1.29ショック。
これにより、50%の給付確保はどのような世帯でもほぼ不可能になりました。
「50%を給付する」というウソの約束をした法案を通して、それで済むのでしょうか?
言い換えれば、本当のデータを公表したら、廃案になってしまうようないい加減な年金改革法案をなぜ、政府は出してきたのか?
国会は「だましあい」と、よく言われます。しかし、これほど悪質で、罪深い「だまし」は知りません。
「もう一回、審議をやり直せ!」と叫びたい気持ちです。法案の前提が崩れたのです。
必死で審議したこの通常国会は何だったのか?
7月11日に最後のチャンスがあります。
年金法案は国会では強行採決されました。しかし、7月11日に国民の手で年金改革法を廃案にすることができます。