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THE 21 より

2000年 日本の救世主

「少子高齢化」を明るくする10人

堀田力氏 選


月刊「The21」ざ・にじゅういち

“新聞に載らない「価値ある情報」を網羅した
ビジネス直結マガジン”PHP研究所


 2000年日本の救世主 という特集で、
「少子高齢化社会」を明るくする10人を、選定するにあたっての堀田力さんのコメント

少子高齢化社会を明るいものに変えていくには、二つの側面からのアプローチが必要です。

一つは、少子高齢化社会が抱えるさまざまな問題を解決し、高齢者が生きやすい社会を実現するための制度や仕組みをつくっていくこと。もう一つは、高齢者の新しい生き方を提案するとともに、歳を重ねることの楽しさを広く伝えていくことです。

前者の観点からいえば、自ら研究所を開いている山井和則氏が、少子高齢化社会を明るくする第一人者といえるでしょう。

山井氏はアメリカやデンマークをはじめ、世界各国の老人ホームで実習経験を積んだのち、スウェーデンで高齢者福祉論を学びました。帰国後、現場での実体験をもとに、独自の高齢者福祉論を構築。さらに最近は、政治家として高齢者福祉問題の解決のための立法化に尽力しています。弱冠三十八歳ながら高齢者の本音もとてもよく理解していて、理論と実践を兼ね備えた貴重な存在として今後の活躍が大いに期待されます。

男女共同参画の観点から、「幸齢社会」の実現をめざす樋口恵子さんの役割も重要です。日本は昔から「男中心社会」ですが、男女がともに支え合う社会にならなければ、高齢社会が「幸齢社会」になることはありません。

のほかにも、患者の精神面を重視した高齢者医療に取り組む聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏や、高齢者の就労を拡大するための提言を長年にわたって続けている慶応義塾大学の清家篤教授も、少子高齢化社会を明るくする人といえるでしょう。

しかしながら、制度や仕組みを整えるだけで、高齢者が明るく生きていけるわけではありません。一方で、老後の生き方のお手本を身をもって示してくれる人の存在も不可欠で
す。

そういう意味では、成田きんさん(故人)と蟹江ぎんさんの果たした役割は非常に大きいと思います。

従来、高齢者は子供のいうことに従い、社会の片隅でひっそりと暮らすものだという考え方が主流でした。ところが、きんさん、ぎんさんの自立してユーモアのある姿は、従来とはまったく違った老後の生き方も可能であることを、われわれに教えてくれたのです。もちろん、「百歳の双子姉妹」ということでマスコミが大きく採り上げたという側面もありますが、あれほど人気を博したのは、多くの人たちが二人のような老後の生き方を求めていたことの表われといえるでしょう。

ほかにも、世界各国でボランティア活動を続けている『三年B組金八先生』の脚本家、小山内美江子さんや、若い男性タレントに堂々と好意を寄せる女優の森光子さんなども、新たな老後の生き方を示してくれた人といえます。また、作家の瀬戸内寂聴さん、画家の片岡珠子さんらも素晴らしい活躍を続けています。

いずれの方々も、他人に頼った生き方ではなく、精神的に自立した生き方をしている点が特徴的。高齢者にとっては、経済的自立や健康もさることながら、それと同様に精神的
自立も非常に大切なものなのです。

このように、新たな老後の生き方を実践し、かつその楽しさを広く世のなかに伝えていける人こそが、少子高齢化社会を明るくする「救世主」になりうる人だと私は思います。

取材・構成  加藤貴之(フリーランス・ライター)


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