特別養護老人ホームを訪問


■夕方、京都に戻り、晩の城陽市長選挙の演説会までの短時間、特別養護老人ホームを訪問。

まんじゅうのおみやげを持って、10年来の知り合いのフメおばあさんを訪ねた。しかし、施設長さんから開口一番、「フメばあさんは、急に痴呆が悪化し、もう山井さんのことはわからないかもしれない」とショッキングな話を聞く。

半年ぶりの訪問。この半年間に急に痴呆症が進み、先月も1ヶ月精神病院に入院していたとのこと。

●施設長さんの話を聞いたあと、フメさんの部屋を訪問。
四人部屋の右奥のカーテンを開けると、フメさんは夕食のあとで、ベッドに横になっておられた。確かに、以前よりもげっそりやせておられる。顔つきも変わっておられる。

 「フメさん、山井です。お元気ですか。山井ですよ!」と、しゃがみこんで、恐る恐る声をかけた。

「うん?」と、上体を起こすフメさん。

じーと、私の顔を見て、2,3秒して、「山井さん、よう来てくれたなあ」と声をあげられた。

 ほっとした。フメさんとは10年来の知り合い。私のことがわかってもらえなかったら、大ショックなところだった。

「手術したんや」とフメさん。脳梗塞のため、痴呆症状が多少出ていると施設長さんは言っておられたが、私との会話は何とか通じた。

「よう来てくれた」と涙を流すフメさんに私も胸が熱くなった。


 二人が話している間に、この部屋に痴呆症らしきお年寄りが入って来ようとする。

「あんたの部屋、ここやで!」と、フメさんがその女性に叫ぶ。同室の入居者らしい。しばらくして、また、その女性は部屋を出て、また、部屋に戻って、歩き回っている。

再びフメさんが、「あんたの部屋、ここやて言うてるやろ!」と叫ぶ。フメさんは声が大きく、怒りっぽい性格だ。

こっそり私は小声でフメさんに聞いた。
「個室と四人部屋とどっちがいいですか?」と。

この4人部屋は、カーテンで仕切られており、他の3つのベッドは見えないが、人の気配はしない。

「そら、個室がええに決まってるやん」。
「なんでですか?」
「四人部屋はゴソゴソ、他の人の音がする・・」とフメさん。

 その後、二人でしばらく、特別養護老人ホームの中を散歩。
足取りは重いが、手を貸せばかろうじて歩ける。

 「また、来ます」と言って、フメさんと握手して別れる。 

事務室に戻って、施設長さんに「私のこと覚えてはって、ほっとしました」と。

◆施設長さんは「一概に個室が良いとは言えないと思う。

特に、この隣のケアハウスでは、プライバシーに配慮しすぎるあまり、かえって居室に閉じこもる『閉じこもり老人』を増やして、痴呆の進行を早めている気がする。

悪く言えば、ケアハウスは、『痴呆性老人製造施設』だ。

自立しているときは個室がいいが、寝たきりになったり、痴呆症になったりしたら、個室はさびしいのでは? 

実際、うちの特別養護老人ホームの和室では四人のお年寄りが雑魚寝(ざこね)をしているが、時には、他の部屋の痴呆症のお年寄りもこの和室に入り込んで、8人で仲良く寝ていることもある。

外人は子どもの頃から個室を持っていたかもしれないが、今の日本のお年寄りの世代は、必ずしも個室に合わない人もいるのではないか」と言った。

◆この特別養護老人ホームは、新たに個室でユニット型の新型特別養護老人ホームの建設とグループホームの建設を予定している。

「個室の新型特別養護老人ホームもいいが、月10万円以上の自己負担になれば、厚生年金をもらっている家庭しか入居できない」と施設長さんは心配しておられる。

◆「個室のことや、ユニット型特別養護老人ホームについては、関心を持っている国会議員が少ないので、私が国会で取り上げます」と私が言うと、

「そらそうですよ。この問題をやってもらわんと、山井さんを国会に送った意味がないじゃないですか」と施設長さんは、言った。

◆個室問題やユニットケアについて、読者の皆さんのご意見もお聞かせください。


 現場 グループホーム トップ