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2002年11月7日 

厚生労働委員会 会議録 

参考人質疑で母子及び寡婦福祉法改正について
○山井委員

 よろしくお願いいたします。
 本日は、参考人の黒武者様、山崎様、榊原様、前田様、赤石様、本当に急な依頼ではなかったかと思いますが、この厚生労働委員会にお越しくださいまして、本当にありがとうございます。特に黒武者様なんかは九州からお越しくださったということで、本当にありがとうございます。また、先ほど、十分という本当に短い時間の中で、皆さんがある意味で人生をかけて、またそういう母子家庭の方々、お母さん方、お子さん方の代弁者として声なき声を訴えてくださったこと、本当に心より御礼申し上げます。

 私も実は、政治に入りましたきっかけがこの母子福祉の問題でありまして、学生時代、母子寮、今、母子生活支援施設と変わっておりますが、そこで四年間ボランティア活動をしておりました。そのときのお母さんの御苦労、また子供たちの御苦労、高校に行きたくてもなかなか行くのが難しいとか、ましてや大学はもっと難しいとか、あるいは母子寮から出てもなかなか仕事が見つからないとか、また、別れた夫との関係、あるいは夫からの暴力とか、そういうさまざまな問題を、私、学生時代、その子供たちに勉強を教えたり、一緒にソフトボールをやったり、ハイキングに連れていったりする中で痛感しまして、それが、私がこういう福祉や政治に取り組むきっかけにもなりました。

 そういう意味では、あれからもう二十年たちましたけれども、改めてその問題がまだまだ深刻であるということを痛感し、何とか国会での審議を通じて、母子家庭の皆さんが安心して暮らせる社会になってほしいなというふうに思います。

 そこで、十五分間お伺いさせていただきますが、まず最初に、榊原参考人にお伺いしたいと思うんです。

 最後のところで、お母さん方の最も大きな願いはやはり就労である、誇りを持って、自信を持って働きたいということをおっしゃっておられました。私もそのとおりだと思いますし、今回のこの法改正の中で就労支援が入っているということは非常に重要なことだと思います。ただ、今のこの非常に厳しい状況の中で、本当にこの法案に入っている就労支援で正社員になれるのか、あるいは十分な仕事につけるのか。
 その点について、榊原参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○榊原参考人 就労支援ということですが、この法案の中に入っている就労支援策というのではどうかという御質問なんですが、まだこの法案の中の就労支援策が明確でないので、これで就労が今までより、若干進むことはあるかもしれませんが、本当に手当を返上して働けるほどの就労促進になるというようなものが見えてきていないと思います。

 数日前、テレビでやっておりましたが、母子家庭だけではなくて、パートで働いていて、子供ができたとうっかり言ってしまったために、ただ無理由で解雇されたという報道がありました。そうした偏見を取り除いていく等のすべての対策が必要なのではないかと思います。


○山井委員

 ありがとうございます。

 この就労支援策が非常に厳しい雇用情勢の中でこの先五年きっちりと実を結ぶことができるのか。そういうことがないと、この手当の一部支給停止というのは非常に問題が多いと思っております。

 次に、山崎参考人さんにお伺いしたいと思います。

 今回、私、一つ心配していますのが、五年後に手当が一部停止になった場合など、かえって生活保護になる方がふえるのではないだろうか。当然、今回の法改正の主な目的は自立支援なわけですよね。ところが、その命綱である手当が五年後に大幅に減ることによって、それだったら、もうあきらめて生活保護を受けた方が安定しているし楽だというふうなことにもなりかねないと思うんですね。

 その点について、山崎参考人、いかが思われますでしょうか。

○山崎参考人

 お母さんたちの願いというのは、今度の法案にもございますけれども自立支援、保護ではなくて自立支援ということに強いお考えがあると思います。この就労のための支援の施策をどのように持っていくことができるのか。特に、就労の場合につきましては、これから地方自治体に大きな力を発揮していただかなければならないと思いますし、そのための施策を動かしていくためのいろいろな仕組みが必要かというふうに思います。

 特に、母子家庭等就業・自立支援センターというのが設立されるというふうにも伺っておりますし、それから母子寡婦団体の就労のこと、それから情報の提供とか無料職業紹介の提供とかというので、中核都市とか指定都市とかあるいは都道府県にこのセンターと言われるものが八十九カ所ぐらいできるとも伺っています。それから、自立支援給付金というのが始まるというふうになっていますが、三年後のところで助成が行われるということとか、それから母子家庭高等技能訓練手当というのが能力開発の中で進むということも伺っています。

 私、実はボランティアのことをやっているんですが、DVで夫のもとを逃れて、そしてシェルターとか先ほどおっしゃった母子生活支援施設を利用される方の今は八割ぐらいがDV被害者でいらっしゃいます。夫から逃れて逃げてくる方たちの、どうしても就労したいという願いをかなえるためにということで、ある民間の外国の有名な企業ですが、そこの広報部長さんにお願いをしましたらば、今隠れているそういう世帯のために仕組みをつくってくださるということで、それから、これは各新聞社にもお願いして、働いている女性たちが、特にコンピューターの専門家の方たちに入っていただいて、そういうシェルターの中に入っていただいて就労支援をしていくという、数千万になるお金を結果的にいただいたんですが、そのことを今いたしております。

 実際に直接にDV被害あるいはシェルターの方々の中に入って、その女性たちがその現実を支える必要があるということを痛感してくださっています。そのようなやはりさまざまな仕組みをとりながら、就労できる状況を私たちは何としても切り開いていきながら進めていくことが必要かと思います。

 五年後の見直しにつきましては、慎重に、現実を見ながら、まだ政府もどういうふうになるということは決めていないのではないかと思いますけれども、そこを慎重にしながら配慮していくことが必要だということを先生方にもお願い申し上げて、ぜひよい方向に動きますことを心から祈願いたしております。

 ありがとうございました。


○山井委員

 ありがとうございます。

 今山崎参考人さんがおっしゃいました、五年後のときにその状況を見きわめてもう一回どういうふうな形にするかというのを考えるということは、私は非常に重要なことだと思います。
 今と同じ質問なんですが、榊原参考人、いかがでしょうか。自立支援策というふれ込みの今回のこの法改正が、かえって生活保護の方をふやすという結果になってしまわないでしょうか。
○榊原参考人 それは五年後の減額という場合だけではなく、前回、今回の案というのは現実には児童扶養手当減額という結果をもたらしていますので、例えば子供が幼くて就労が、家事、育児との両立が大変であるというときに、必死で働いて月五、六万の収入と手当でやっていくよりは、それで厳しい生活をするよりは、生活保護を受けた方が時間ができて収入も多くなる、そちらを選ぶという、ボーダーの方はいつも絶えずぎりぎりの選択ラインにあると思います。既に本来生活保護を受ける水準でしかない方でこの手当があるから保護を受けないという方がいらっしゃるのですが、それが保護の方にシフトするということは現実に想像されると思います。


○山井委員

 ありがとうございました。

 赤石参考人さんにも今と同じ質問なんですが、先ほど、非常にこれは命綱であるというお話でしたが、一歩間違うと、命綱に頼るよりはもう生活保護を頼った方がいいんじゃないかというような、そんなことというのはなりますでしょうか。

○赤石参考人 母子家庭の平均年収二百二十九万円というのは手当額を含んでおりますので、就労だけでいいますと大体年収百八十万です。ですから、ほとんど半分以上の方は、このまま生活保護を受けられるラインの方たちだということになります。

 実は私も、子供を産んでから一年半余、生活保護を受給しておりました。しかし、生活保護の事務手続は非常に厳しいです。ですから、確かに生活保護ライン以下の方はたくさんふえると思いますが、生活保護を申請に行って、それが受け入れられるとはなかなか思えません。

 例えば、夫はどうしているのかと聞く、養育費の申告をしないのか、養育費をもらってないという証明を持ってきなさい、あるいは親兄弟が扶養しないという証明を持ってきなさい、あるいは、今あなたの所持金幾らか、十万円ありますと言ったら、これが半分になるまで待ってからまた来なさい、いろいろな指導がございます。

 ですから、私は生活保護を受給する方何人も一緒につき合って行っていますが、そう簡単に今できないのではないか。そういう方たちは本当に、だからどこの網からも漏れてしまうということになり、宇都宮で子供が餓死した事件もございましたけれども、非常に悲惨な結果になるのではないかというふうに思います。

 やはり手当ということが、そういった意味では生活保護ライン以下の方たちが頑張る気力を与えている、この手当がそういう意味では生活意欲向上に非常に役立っているということを強調したいと思います。


○山井委員

 次、黒武者参考人さんにお伺いしたいと思います。

 今回、母子家庭等日常生活支援事業という名前になって、この支援事業が新たに拡充されるということになっているんですが、聞くところによると、なかなかこの事業が利用しづらい、使い勝手が悪いという声を幾つかちょっと聞いたんですが、この母子家庭等日常生活支援事業、母子家庭居宅介護等事業と今まで呼ばれていたわけですけれども、このことについていかが思われますでしょうか。

○黒武者参考人

 おっしゃるとおり、今、私たちの団体で介護人派遣事業というのをいたしております。これも正直申しまして県によって温度差もございまして、例えば私は鹿児島県でございます、三十年間この仕事にかかわっておりますけれども、本当にこれは大変いい制度でございます。

 だから皆さんが私の県では非常にいいことだといって大変活用しておりますが、これにまたさらに、今度のあれによりますと、今まではその家庭に行ってお世話するということでございましたけれども、またそれを、いろいろな講習をして養育ヘルパーの資格を取った人が自分のうちで預かるとか、そのような方向に、この法案の中で打ち出されておりますので、そうしましたら、よりこれが充実するのではないだろうかと考えるわけでございます。

 ですから、私たちといたしましては、今あるこの既存の制度、これをいかに活用するかということと、そして、さらに前向きにこれを活用することによって、本人はもとより団体としても、そのような方向に行くんじゃないだろうかといって大変期待しているようなことでございます。
 以上でございます。


○山井委員

 この事業については、急に頭が痛くなったり、風邪を引いたりしたときになかなか使い勝手が悪いという意見も聞いておりますので、そのあたり改善できるように、私もまた働きかけていきたいと思います。
 最後、時間がなくなりましたが、前田参考人にお伺いしたいと思いますが、今回の法案の中で、要は、これは自立支援に本当になるのか。当事者の声としては、もしかしたら、不十分な就労支援よりも、やはり、手当を残してもらった、今までの方がいいという声もあるかと思うんですが、そのあたり、手当か就労支援かという、割とこの法案の根本的なことについて御意見をお伺いしたいと思います。

○前田参考人

 私の最後に、就労の支援というのは、それは大切なことなのでぜひやっていただきたいというふうに申しました。

 それで、この自立支援と手当とを対立的に見るのではなくて、やはり母子世帯にとって本当に命綱です。ですから、これについて所得基準があって、一定の収入になったら手当が支給されないわけですから、その範囲でやっていったらいいのではないかと。

 それと、先ほども自立ということが言われました。私は、生活保護を受けて自立をする、児童扶養手当を受けて自立をする、心の安定、経済の安定というのは本当に母子世帯にとって大切なことだと思っています。 以上です。


○山井委員

どうも大変ありがとうございました。
 皆様方の御意見を、しっかりこれからも国政の、母子家庭の方々の暮らしの向上のために生かしていきたいと思います。本当にどうもありがとうございました。


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