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2002年6月12日 

衆議院厚生労働委員会 議事録 

健保法改正に関して

◎山井委員

民主党の山井和則です。

 これから一時間、質疑をさせていただきます。これからの一時間の中で、質問の順番は多少変わっているところもありますので、よろしくお願いいたします。
 昨日、参考人質疑を行ったわけですが、その中でも、この健保法改正に関していかに反対論が強いかということ、そして、まさにプラスとなる面が少ないということを私も痛感しましたし、委員の皆さんも御一緒の意見だと思っております。

 それで、きょうは手元に六ページの資料をお配りさせていただきました。これは、先日サンデープロジェクトで行われた電話調査の結果であります。この資料を見ていただきましても、四つの重要法案の中で最も健保法に関して賛成が低くて、そして反対が一番高い。この国会で議論になっております四つの中で、一番国民に対して不安を与えて、そして審議がまだまだ不十分であると考えられているのがこの健保法の改正である。

 このようなデータもあるわけですが、冒頭、坂口大臣、このようなデータを見て、いかが思われますでしょうか。御感想をお聞かせください。

○坂口国務大臣 

おはようございます。

 アンケート調査というのは聞き方でありまして、三割負担に賛成か反対かといえば、反対だという人が多いのは当然であります。ですから、そういう聞き方ではなくて、医療費がこれから増大するわけでありますから、保険料負担にするか、それとも自己負担にするか、あるいはその両方にするか、こういう聞き方をしてもらえば、私は最も的確な答えが出てくるというふうに思っております。

◎山井委員

 そもそもの聞き方、四つの法案を比較して聞いてあるわけですね。今の答弁を聞いていても、やはり国民の痛みなり不安がわかっていないということを私は感じざるを得ません。

 そして、まだこの金曜日にも審議を行う行わないということで今も理事会で議論をしていたわけですけれども、与党の方は、十四日に総理を呼んで質疑をやりたいというようなことも提案されているそうであります。今回のこの審議も今大詰めにかかっておりますけれども、抜本改革の道筋も見えてこない。そして、この法案に対する不安はどんどん高まってきてこの世論調査の結果である。

 そんな中で、報道によりますと、坂口大臣も聞いておられると思いますが、十四日の日、このまさに健保法改正の三割負担を言い出した小泉首相本人が、ワールドカップのチュニジア・日本戦を見に行きたいということをおっしゃった。そして、その日は政治休戦にしたらどうかと。この厚生労働委員会で十四日の日に総理を呼んでこの最も切実な問題に対して審議をしようとしているときに、まさに最高の責任者である首相が、その日は休んでサッカーを見に行きたい、自分が行ったら日本は勝つんだと。一体これはどういう認識ですか。

 私たちも、大臣も一緒だと思いますが、本当に命をかけてこの審議をやっているわけです。高齢者の自己負担もアップする。サラリーマンの方の自己負担もアップする。これによって受診抑制がかかって手おくれになる人も出てくる。それによって命を落とす人もやはり出てくるでしょう。また、こういう自己負担を、今の最も不況が深刻な時期にやって、一九九七年の例を見ても、これによって景気の、まさにさらに低迷を招くかもしれない。御存じのように三万人以上が自殺をして、この非常に深刻な中で、これがまた景気回復をおくらせて、そしてそれによってまた崩壊する家庭や自殺者がふえたらどうしよう。与党も野党も含めて、私たちは、この法案を通すことによってそういう命を落とす方や家庭崩壊する人が出たらどうしよう、こういう法案を通していいのか。反対するのは当然としても、それでも、厚生労働委員会の一員として、こういう審議をやっていてそのまま通っていいのか、そんな意味で私も非常に心痛む思いで審議をしております。

 ある意味で最も悩んでおられるのは、私、坂口大臣だと思うんです。まさかこんなことを強行採決で、与党単独で採決されることはないと思いますが、そういう坂口大臣も必死に悩んでおられるときに、党の最高の責任者である小泉首相が金曜日の日にサッカーを見に行きたいと言った。このような姿勢に対して、坂口大臣の御感想をお聞かせください。

○坂口国務大臣

 この委員会の審議を熱心に皆さん方に行っていただいておりますことに、私は感謝を申し上げております。

 ワールドカップの話はワールドカップの話でありまして、それはそういうまあ冗談をおっしゃったんだろうというふうに思っておりまして、この審議は審議、ぜひ粛々とお願いを申し上げたいと思っているところでございます。

◎山井委員

 冗談で済まないですよ。先日の福田官房長官の核武装発言にしても、有事関連法案の議論が一番深刻なときにああいう発言が出てくる。そして、この健保法案の審議が大詰めにかかっているときに、冗談ででも、政治休戦をしてサッカーを見に行こうと。これによって苦しんでいる患者さんやお年寄り、そういう人の気持ちをわかったら、そんな冗談なんか言っている場合じゃないでしょう。
 坂口大臣、本当にあれは冗談だと思っておられるんですか。改めて小泉首相の政治姿勢を象徴する出来事ですよ。言った当の本人がサッカーを見に行きたいと言っている、そんな中で私たちはこうやって議論している、そして世論調査では一番不安が多いわけですよ。今回の健保法の審議を象徴するのが、今回の小泉首相の、ワールドカップをその日見に行きたいという発言だと思います。こういう無責任な状態で私は審議をできません。坂口大臣、いかがですか。

○坂口国務大臣

 亡くなる人がないように、そういう医療制度をつくるために今御審議をいただいているわけであります。現在だけではなくて、将来にわたりましても安定した医療制度をどうつくり上げていくかということが我々に課せられた課題でありますから、そのことを熱心に御議論をいただいているところでありますので、この委員会で、ひとつさらに御議論をいただければというふうに思っております。

◎山井委員

 そういうこと一つ一つが健保法に対する不信を助長させているんです。坂口大臣からも、小泉首相にきっちりと言ってください。

 大体、小泉首相も、三方一両損といいながら、結局は健保法の公費負担についても、一九九二年の附則によって当面の間一三%ということで引き下げられたわけですが、これはやはり一六・四%に今こそ戻すべきではないでしょうか。三方一両損といいますが、今回は、自己負担と保険料のアップ、これは国民の損、すなわち負担増です。診療報酬の引き下げは医療機関の損。しかし、政府だけは損をしていないではないですか。この政管健保の公費負担の一三%に据え置かれている問題、一六・四%に戻すべきだと思います。いかがですか。

○坂口国務大臣

 国庫補助率につきましては、昭和四十八年だったというふうに思いますが、一〇%の定率補助が導入をされまして、それ以後、保険料率の引き上げが行われました。それは、五十三年には一六・四%に引き上げられたところでございます。しかし、その後、平成四年に、積立金を用いた中期的な財政運営を導入いたしまして、そして、当時の厳しい国家財政も踏まえて、一三%に引き下げられたというふうに聞いております。

 国庫補助といいましても、国民の負担であることには変わりがないわけでありまして、今回の改革は、患者の皆さんあるいは加入者及び医療機関がそれぞれ痛みを分かち合っていただくようにお願いを申し上げているところでございます。

 今回、一三%はそのままでございますけれども、しかし、高齢者の皆さん方に、これから七十五歳に引き上げますが、五割負担というふうにだんだんと国庫負担をふやしていくわけでありますから、国庫負担をふやすことには変わりがございません。

◎山井委員

 このような自己負担、保険料をアップさせながらも、また医療機関に痛みを強いながらも、自分たちは負担増を行わない。そういうことが、一番、国民にとって三方一両損という言葉がまやかしに映っているわけです。

 そして、そのような事態の中で、やはり、もっと医療費のむだを省いていく、またコスト感覚を持っていくことが必要だと思います。

 政管健保の医療費通知について、昨日私、厚生労働省にお伺いをしました。そうしますと、政管健保における医療費通知の実施状況は、総レセプトが三万一千二百七十二のうち、通知レセプト件数が三千二百四十三ということで、非常に少ないわけですね。

 これは質問ではなくて要望にさせていただきますが、せめて国保並みに、年に何回か、全員にやはり通知をして、自分のかかった医療に幾らお金がかかっているのか、やはりそれは通知すべきであると思いますので、これはぜひともやっていただきたいと思います。

 次に、今坂口大臣が答弁の中でもおっしゃいました高齢者医療制度です。
 医療制度改革の最大のポイントであるわけですが、これについては、今回の法案の中で、老人保健制度の対象年齢を七十歳以上から年に一歳ずつ、七十五歳まで引き上げるということになっています。つまり、七十五歳まで引き上げるのに五年かかるわけですね。しかし、今回の法案の附則では、新しい高齢者医療制度の基本方針を今年度中に決定し、二年以内に新しい高齢者医療制度を実施するとなっております。この二つの記述は矛盾していると思います。整合性はどうなっているんでしょうか。

○坂口国務大臣 その五年、二年の話は今御指摘をいただいたとおりでございますが、今回の、五年間の間にだんだんと七十五歳に引き上げていくというこの方針につきましては、これは今後も継続をしていく、この線に沿って次の改革は考えていく、そういうふうに今思っておるところでございます。だから、七十五歳まで五年かかって引き上げていくという線は崩さないというつもりでおります。

◎山井委員

 そのことと、二年後からの実施ということ、本当に整合性がないと思います。そういうこと一つ一つが、まさに、まだ高齢者医療制度の姿形が私たちに見えてこない大きな理由だと思います。

 また、そういうものを議論するために、厚生労働省の中では医療制度改革推進本部というのをつくって議論をされているというふうに聞いております。しかし、これは省内で課長さんとかが集まって議論をされているそうですが、省内で行うだけではなく、もっとオープンに議論すべきだと思います。省内だけで議論をして、最後の案ができてからぽっと国会に出してくるんではなくて、その議論の途中段階でも、しっかりとオープンな形で国会にも提示して議論をすべきであると思いますが、そのような議論の仕方について、いかがでしょうか。

○田村大臣政務官

 先生おっしゃられましたとおり、先般、厚生労働大臣を本部長といたします医療制度改革推進本部を省内で立ち上げました。今もお話ございました、高齢者医療をどうするかという問題でありますとか、医療保険制度体系自体をどうするか、こういう議論をこれからさせていただくわけでありますけれども、法案成立後は、速やかにそのような厚生労働省としての考え方をまとめまして、それを社会保障審議会の方に御検討いただきまして、その後、年度内に基本方針をつくってまいりたい。

 もちろん、幅広く国民の皆様方、いろいろな御意見をいただきながら、新しい制度というものを考えていかなきゃ、抜本改革をやっていかなきゃならぬわけでありまして、そういう意味では、有識者の方々からもいろいろな御意見をいただきながら、これから医療制度改革を進めてまいりたい、このように思っております。

◎山井委員

 これは早急に、急いでやってもらいながら、しかし、かつオープンに、しっかり、私たちは国民の代表でもあるわけですから、国会議員の声も聞いて、国会の場でも議論をぜひやっていただきたいというふうに思います。

 そして、次の質問に移ります。手術に関する施設基準の導入について。

 これは先日阿部知子議員からも指摘があったことですけれども、私も最近、四つの病院を訪問しました。その四つの病院すべてから、今回の診療報酬の改定に対して何とかしてほしいと言われましたのが、この手術に関する施設基準の導入についてであります。これは、百十項目について、年間手術件数が一定に達しないと診療報酬を三〇%減額するもので、事実上、その手術をしない方がよいですよ、しても余りもうかりませんよというような政策誘導であります。

 確かに私も病院の機能分化というものの必要性を否定するものではありませんが、現実には、このような減額をされない病院が非常に少ないのが現状です。

 近畿医師会連合の調査では、近畿二府四県、千三百三十五施設のうち、約三分の一の三十一項目では、基準を満たす病院は十未満で、六項目では、基準を満たす病院が近畿全体でゼロなわけなんですね。そして、北海道では、例えば開心術を例にとると、基準を満たす病院は八施設あるが、そのうち五施設は札幌市に集中、人工関節手術では、二十一の二次医療圏のうち十二圏で、基準を満たす病院は皆無です。つまり、これは二次医療圏を基本とした地域医療計画の崩壊につながりかねません。急にこのような改定を行うことは、地域医療の格差を広げ、全国どこの地域でも平等な医療を受けるという権利を侵害するものであります。

 この点について、厚生労働省に聞いてみました。このような手術件数の基準を持ち込むと、各都道府県でその基準を満たす病院があるのかないのか、そういうことを事前に調べてみたんですかと聞いたら、事前にそのような調査はしていないということであります。そんなこともせずにこのような乱暴なことをやって、本当に地域医療圏が崩壊しかねない。

 これに関しては、七月一日現在の病院の状況を厚生労働省に届けることになっているので、八月末ぐらいまでに情報が上がってきて集約するということでありますけれども、このようなことを行った根拠、なぜこういうことを行ったのか。そして、各都道府県に一つも基準を満たすような病院がなければ、やはりこのような乱暴な方針というのは撤回すべきだと思います。そのことについて答弁をお願いいたします。

○坂口国務大臣

 日本の医療を見てみますと、例えばペースメーカーなんかを入れる例を見てみましても、年間一つとか二つとか、そういうところもたくさんあるわけですね。一つ二つが悪いということを言っているわけじゃございませんが、やはり質の高い医療を形成していこうということになれば、集中して多くの例をこなしていただくようにしていく方がいいだろう、成功率は高いだろうというふうに私は思っています。いわゆる機能分化をしていかなきゃならない。そうした意味で、方向性としてはそんなに間違っていないというふうに私は思っています。

 ただ、何例以上という、その例数がそれでよかったかどうかという問題につきましては、これは地域の格差もございますし、若干その点は考えなきゃならない点もあるのかなというふうに思っております。

 四、五、六と三カ月ほど、その他の分野もございますけれども、診療報酬につきましては、いろいろの観点から結果を拝見させていただきまして、その後、そうした問題を中医協で御議論いただくものというふうに思っている次第でございます。

◎山井委員

 大臣おっしゃるように機能分化という方向性、それは、先ほど申し上げましたように、私も否定するものではありません。しかし、まさにおっしゃったように、件数がこれで妥当なのかということ。まさに八月までの調査の結果を見て、そこは柔軟に見直していただきたいというふうに思っております。これは本当に現場の病院から一番切実な要望ですので、そこは柔軟にお願いしたいと思います。

 次の質問に移りますが、今回の医療制度改革の中で、私がかねてから取り上げております救急医療の問題、余り取り上げられませんでしたので、私、取り上げたいと思うんです。

 御存じのように、欧米に比べて心肺停止患者の救命率というのは日本は半分以下であるということで、大きな問題になっております。これに関しては、坂口大臣のリーダーシップのもと、救急救命士の業務のあり方等に関する検討会が今立ち上がって、検討が行われているわけであります。

 そこで、この資料、二ページ目を見ていただきたいんですが、ここで見ると、心原性疾患において、ドクターカーと救急救命士隊の救命率の差が、六・三%と二・六%、二倍以上の大きな差があるわけです。これに関しては、平成十三年の救命効果検証委員会でも、この理由は「ドクターカーにおいては早期に気管内挿管ができること、及びエピネフリン等の薬剤投与ができること」が大きな差であるということが、これは報告書で答申をされております。そして、まさにその下の「考察」のところでも、早期除細動、気管内挿管及び薬剤投与により、発症後早期に心拍の再開を図ることが非常に重要であるということが書かれております。

 これについて、これからは指示なしの除細動、気管内挿管、薬剤投与、この三点セットの業務拡大が必要だと思います。この気管内挿管や薬剤投与ということに関して、今回の検討会で御議論いただいていると思いますが、これは、気管内挿管や薬剤投与をやっていくという方向で議論になっていると思います。その件について、気管内挿管と薬剤投与、今後どのようにしていくのか、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○坂口国務大臣 今専門家の先生方にお集まりをいただきまして、熱心に御議論をいただいているところでございます。委員も傍聴等をしていただいているようでございますが、かなり熱心に御議論を進めていただいているというふうに思っておりますし、七月の初旬には中間報告を出していただけるというふうに聞いておりますので、楽しみにしているところでございます。

 方向性といたしましては、私も、できるだけ患者の皆さん方のことを中心にして考えていくべきだというふうに思っております。したがって、そうした方向でお話は進めていただいているものというふうに思っている次第でございます。

 除細動の問題につきましては、機械器具も発達をしてまいりまして、最近また非常にいい器械が出たようでございますから、かなり問題は排除されたというふうに思っている次第でございます。

 薬の問題でありますとか、それから気管内挿入の問題でございますとか、こうした問題も、いろいろ、どういうときはするかしないかということもある程度は明確にしておかないといけない話だというふうに思いますし、そうしたことも御議論をいただけるものというふうに思っている次第でございますので、そこは、ここまで来たわけでございますから、結論を少し待ちたいというふうに思っているところでございます。

◎山井委員

 まさにこれは坂口大臣のリーダーシップのもとで早急に検討をしていただいて、ありがたいと思っておりますが、やはり人の命がかかっていることでありますし、例えば医師の指示なしの除細動の問題に関しても、一分間その処置がおくれると救命率は一〇%低下するというふうに、本当に切実な、一刻を争う問題であります。

 次の三ページを見ていただきたいんですけれども、各国の救急救命士、パラメディックの業務範囲の比較という、この三ページ、坂口大臣、見ていただきたいと思います。

 ここで明らかなように、まず除細動に関しては、アメリカ、イギリス、オーストラリア、すべて具体的な医師の指示は必要ありません。しかし、日本だけ医師の具体的な指示が必要、つまり、事前に電話して聞かないとだめなわけですね。その電話して聞いている間に手おくれになるケースがたくさんあるということが問題になっているわけです。

 それともう一つ、気管内挿管も、アメリカ、イギリス、オーストラリアはできます。ところが日本のところには、それはできませんと。

 そして、今私が質問しました薬剤投与に関しても、何も百種類も二百種類も使えるようにというのではなくて、私もこの間、この土日も三カ所の救急病院と二カ所の消防署に行って、現場の救急救命士さんと救急医の方の話を聞いてまいりましたけれども、ここの下線で引いてある、エピネフリンとリドカインとアトロピン、この三つさえ使えればかなり救命率は上がるということを、救急医の方も、救急救命士の方も口をそろえておっしゃっておられます。

 そして、見てもらったらわかりますように、研修時間というのは、アメリカ、イギリス、オーストラリアに比べても、日本の八百から千時間というのは特に遜色のないものなんですね。

 大臣、この表を見ていただいて、同じような研修期間で熱心に日本の救急救命士さんも研修を組まれておられて、ところが、表で比較してみると、除細動は日本だけ具体的指示がないとできない、気管内挿管もできない、薬剤投与のエピネフリン、リドカイン、アトロピンというものも認められていない。こういう一覧表を見て、かつ、十一年前に救急救命士法ができたときから、実は、この三点セットは一日も早く実現してくださいということが十一年前から懸案になっていながら、十一年間放置された状態が続いている。大臣、この表を見ていかが思われますか。

○坂口国務大臣

 ですから、今、検討会をつくっていただいて、議論をしていただいているわけであります。それもできるだけ早く結論を出していただくということで今おやりをいただいているわけでありますから、そんなに急がないで、もうしばらくお待ちをいただきたいと思います。今進行しているわけでありますから。

 これを背景にしまして、エピネフリンだとかリドカインだとかアトロピンだとかという薬剤もございますが、しかし、時代も変化をしておりますけれども、これらを見まして、なかなか使い方も難しい薬だなという気も率直に言ってするわけです。使い方一つ間違えますと大変なことになるなという気もいたしまして、そうしたこともどうするかというようなことを具体的に決めていただかないと次へ話が進みませんので、そうした問題も御議論をいただきたいというふうに思っている次第でございます。

◎山井委員

 先ほどの平成十三年の報告書で、既に一年以上も前に、そういう薬剤投与や気管内挿管があれば救命率が上がるという報告が出ていながら、今日まで放置されているんですね。だから、急いでいただきたいと思います。

 私が心配しておりますのは、正直言いまして、来年度の概算要求のことも絡んでくると思います。ですから、七月上旬の段階で、指示なし除細動だけではなく、今まさに大臣がおっしゃいましたように薬剤投与にしても気管内挿管にしても研修のプラスアルファが当然必要なわけでして、メディカルコントロール体制の充実も必要なわけですから、今回の中間まとめで気管内挿管や薬剤投与に関してもやっていくという方向を出さないと、来年度予算に間に合わない、また一年先送りということになってしまうわけです。

 現場の救急救命士さんや救急医の方の話を聞くと、この三点セットができれば、救命率も、心肺停止患者の方に関してはドクターカーにかなり近づくんではないかというのが現場の一致した意見なんですね。

 改めて大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の中間まとめで、薬剤投与や気管内挿管に関しても、来年度予算にも関係することですから、研修のことにも関して、やっていくという方向でまとめていただきたい。これは私の要望なんですが、大臣いかがでしょうか。

○坂口国務大臣 あくまでも中間報告でありますから、結論ではないというふうに思いますけれども、しかし、全体としての方向性はお示しをいただけるものと思っております。


◎山井委員

 研修を来年からするんでしたら予算も発生することですので、そこはぜひとも、これは年末までになってしまったらまた一年おくれるわけですので、よろしくお願いしたいと思います。

 そして、まさに大臣がおっしゃいました、薬剤投与や気管内挿管に関しては研修が当然必要であります。そこで、今これも検討会で御議論されていることですので余り口を挟むのもよくないわけですけれども、やはりこの医療制度改革の中で一つ私聞いておきたいのは、気管内挿管を救急救命士の方にやっていただく、そして三つの薬剤投与もやっていただく、もしそういうことを前提とするならば、研修期間は大体どれぐらい必要だというふうにお考えになられますか。そのことについて御答弁お願いします。

○宮路副大臣

 この点、私の方から答弁させていただきます。

 今、基本的な方向は大臣の方から御答弁のあったとおりでありますけれども、御指摘の、実習も含めて研修、教育の問題も重要な検討課題として位置づけられております。その点も専門的な見地から今後御議論をいただく必要があるということでありまして、目下のところ、それを具体的にどういう期間のものにするか、まだ今後の検討課題ということで、御指摘の点も十分念頭に置いてこの検討に臨んでいただくよう我々としても努力してまいりたい、このように思っております。

◎山井委員

 この表には出ておりませんけれども、今、ワールドカップを共催しております韓国でも救急救命士の方々が活躍しておられまして、韓国でも気管内挿管と薬剤投与はオーケーなわけです。聞くところによりますと、今回のワールドカップのサッカーで、何か暴動が起こったときのために多くの救急救命士さんが待機をしておられるということなんですね、この表には韓国のことは出ておりませんけれども。そう考えてみたら、日本、韓国で同じように暴動が起こって、そこで出動した救急救命士さん、韓国の場合は気管内挿管や薬剤投与というものができる、ところが日本はできない、それで救命率に差が出てくるというふうなことにもなりかねないんです。

 そういうことで、一日も早くこういう検討を急いでほしいと思うんですが、そのあたりの日本と韓国の格差。ヨーロッパと日本ではなくて、日本と韓国でも、救急救命士法ができたのは韓国の方が後で、日本は抜かれているわけなんですね。そのあたり、坂口大臣いかがでしょうか、お隣の国ですが。

○坂口国務大臣 韓国は韓国の基準でおやりになっておるんだというふうに思いますし、後からやられたところが先進国になることもあるわけでありますから、ひとつよく勉強させていただいて、参考にするところは参考にしたい、そういうふうに思っております。


◎山井委員

 本当に、これはまさに人の命がかかっている問題でありまして、医療制度改革の究極の目標はいかに人の命を救うかでありまして、残念ながら、最初に言いましたように、心肺停止患者の方の救命率が欧米に比べて半分以下だ、それを、十年前から懸案になっていて、まだ改善できていない。やはりこういうことも私は医療改革の重要な一つのポイントだと思いますので、坂口大臣、どうかよろしくお願い申し上げます。

 では次に、高齢者の医療と表裏の関係にあります介護保険のことについてもお伺いしたいと思います。

 今までからこの問題取り上げておりますが、高齢者医療の改善には介護基盤の整備や介護保険の見直しが不可欠だと私は思います。四月の診療報酬の改定の中でも、半年以上の長期入院の社会的入院の方は特定療養費化してできるだけ退院をしてもらうという方向性を出されているわけでありまして、社会的入院を減らしていくということは、まさに高齢者医療をよりよいものにするために重要なことだと思います。しかし、問題は、その受け皿があるか。
 前回は老人ホームの数が足りるかということを質問させてもらいましたが、きょうはその質についてお伺いしたいと思います。

 前回、介護職員の方々の労働条件はどう変わったかということを質問させてもらいましたら、介護保険の前後で、この四ページのようなデータを厚生労働省さんからいただきました。つまり、非常勤がふえてということですけれども、これだけではわかりませんので、このことに関して私が聞いておりますのは、介護保険によって非常勤がふえて、そしてまた中堅の方が人件費が高いからといってどんどん首を切られていっている、それで現場のケアの質も下がっている施設がふえている、そういう現場の嘆きを聞いております。介護報酬、これから特別養護老人ホームについて議論する中で、やはりこのような介護職員の労働条件がどう変わったかということもきっちりと介護保険の中でチェックしていくべきだと思いますが、そのことについていかがでしょうか。

○田村大臣政務官

 先般の先生からの御質問で、たしか私がお答えさせていただいたと思うわけでありますけれども、前回の調査で、常勤と非常勤の割合、やや非常勤の方がふえてきておるというお話をさせていただきました。常勤の給与に関してはそれほど変わっていないという話でございましたけれども、非常勤の給与は把握をしていないということでございまして、これは大変申しわけない話でございます。

 そこで、この秋にまとまる介護事業経営実態調査、こちらの方、実はサンプル数が以前よりもかなり多うございまして、前回、全事業所の二十分の一でサンプルをとっておったんですが、今回三分の一ということで、かなり詳しい内容をお聞きいたしております。これで非常勤の職員の皆様方の給与等々も把握させていただいて、どのような状況になっておるか、我々、今後議論の検討の素材にさせていただきたい、このように思っております。

◎山井委員

 そこは非常に重要な問題でありまして、当然、処遇や労働条件が悪くなるとケアの質も低下していくということは明らかであります。

 そこで、坂口大臣、この五ページ目の概況調査を見ていただきたいと思います。

 この表で本当に一目瞭然なんですね。平成十一年の調査ではマイナス五・六%、特別養護老人ホームは赤字であった。ところが、介護保険に入ってからの調査では一三・一%と、大幅に黒字に転換をしているんです。なぜ黒字に転換したのかというと、この矢印を見てもらったらわかりますように、給与費、人件費を下げている。つまり、非常勤をふやして、給料を減らして黒字に転換をさせていっているわけです。そんな中で、中堅の職員さんが首になり、あるいは給料の安い未経験な人の数をふやすという中で、質の低下を懸念しております。
 ここでお伺いしたいんですが、このような状況になってくると、当然、人件費を減らして質を低下させた方が利益は上がるという傾向になってきてしまうわけですね。それに歯どめをかけるのは厚生労働省さんの仕事であると思います。
 本来なら介護保険で悪い施設は選ばれないという状況だったらよかったんですけれども、実際、御存じのように待機者が多くて、利用者は選べない。ということは、選べないということは、やはり公が質のチェックなり質の担保をすべきだと思うんですけれども、厚生労働省さんは、このあたり、人件費の切り下げや常勤を非常勤にするというふうなことを通じて質が悪化していないか、そういう質のチェック、質の担保はどのようにされていますか。

    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

○田村大臣政務官

 これはもう先生大変お詳しい話だと思うわけでありますけれども、介護保険法に基づきまして、それぞれの人員の配置でありますとかまた運営に関する基準というものは、運営基準によって決めております。ですから、そういう意味では、質の担保という意味では、最低限の部分は担保をさせていただく。それから、それぞれ都道府県が定期的に指導監査に入っておりますので、その点で不備等々がございますれば、実質的にはわかってくる。もちろん、都道府県の指導監査には我が省といたしましても助言等々をさせていただいておりまして、質が落ちないようにというふうには思っております。

 ただ、先生がおっしゃられましたとおり、言われた数字というものが、多分人件費が減ってその分が利益に上がっているんじゃないかというようなお話であったと思うわけでありますけれども、それぞれの施設の努力もあるんだと思います。ある意味では、そういう意味では、人件費切り下げというのが、まあむだな部分というのがあればその部分は切り下げた部分もあろうと思いますが、実質的にサービスが低下をする形で人件費が切られておるということになりますとこれは大変な問題になってまいりますので、今回、今お話ししました調査等々で、どういうような常勤、非常勤の割合になっておるのか、また人件費がどのような形で下がっておるのか、こういうことも把握をさせていただきまして検討をさせていただきたい、このように思っております。

◎山井委員

 ほっておけば、施設にとって、黒字を出そうとすれば、ある意味で、人件費を削れば簡単なことになってしまうわけですね。幾ら質が悪くても、門前市をなすで待機者の方はいっぱいいらっしゃるわけですから。そういう意味では質のチェックをきっちりやらないとだめなわけですし、そもそもこれは、質がアップするインセンティブというのはあるんでしょうか。人手をふやして人件費を高くすれば、利益率は減ります、しかし質はアップするわけですけれども、今回の介護保険制度の中で、特別養護老人ホームのケアの質をアップさせるインセンティブというのが私はないように思っております。

 そんな中で、この介護報酬について、マスコミでは、ケアマネやホームヘルプの在宅サービスを上げる、その財源を捻出するために特別養護老人ホームの介護報酬を下げる、そういう方向で厚生労働省は検討しているという記事がすべての新聞に出ております。坂口大臣、この特別養護老人ホームの介護報酬、下げる方向で検討されているんですか。

○坂口国務大臣

 まだその段階には至っていないというふうに思っておりますが、今御議論ありましたように、私も、特別養護老人ホームの収益が上がっているという場合に、それは質を落とさずに上がっているのか、質を落として上がっているのかというところが大変大事なところだというふうに思います。質を落として上げているんだったら、それは質を上げてもらうように指導するのがやはり厚生労働省の役割だというふうに思っています。

 ですから、何も収益があるからそれを減らそうということではなくて、その質を維持する、質を上げることを行いながらどうなるかというところを見ないといけない、それによって最終判断をしないといけないというふうに思っておりますし、事務局の方にもその点をひとつ十分にチェックするように言っているところでございます。

◎山井委員

 まさに大臣おっしゃるとおりなんですね、これ。利益は上がっていていいなではなくて、それで質が落ちていたら、結局は意味がない。

 そして、まさに今回の医療制度改革の中でも、社会的入院を減らしていく。しかし、そういう方が退院したら、やはり特別養護老人ホームにとっては非常に重度な入居者になるわけです。その重度な入居者が、これからどんどん特別養護老人ホームに、医療改革の流れの中でふえてくる。しかし、受け皿である特別養護老人ホームは、非常勤をふやして、人件費を減らして、質が低下しているかもしれない。そういうことでは、まさにお年寄りにとって不幸な改革になってしまうわけです。

 そこで坂口大臣、今おっしゃったように、利益が上がっている特別養護老人ホームがどういうケアをしているのか、そこを一回調べないと、利益が上がっているから介護報酬を下げるべきだというふうにならないと思うんですね。そのような分析、検討は出されているんですか。そのような分析、検討なく、利益率が上がっているから報酬下げようでは、今まさに大臣がおっしゃったように、人件費を下げてケアの質を悪化させているということも考えられるわけですが、そういう検討、分析をなさっているんでしょうか、厚生労働省では。


○坂口国務大臣

 やってもおりますし、しかし、これからもやらなければならない。その点は、現場の状況というものをよく把握をしてやらないといけないというふうに思っております。

◎山井委員

 まさにそこなんですが、まあ水面下でというか調査はやっていられると思うんですが、いつの時点かで、利益を出している特別養護老人ホーム、そして赤字の特別養護老人ホームの、その理由、ケアの質、そういうものを含めた検討結果というものをオープンにしていただきたい。そうしないと、この特別養護老人ホームが、人件費を下げるほど、ケアの質を下げるほどもうかるというような構図に今なりかかっているんですね。

 坂口大臣、これは非常に重要な点だと思うんですけれども、そのような特別養護老人ホームの、利益率はもう今回概況調査でわかりました、ケアの質に対する調査結果というのは、それこそ介護報酬の議論の前に調査していただいて公表していただくということ、お願いできますでしょうか。

○坂口国務大臣 それを発表するとかどうかということよりも、よい介護とはどういう介護をいうかという、そのやはり基準と申しますか、よい介護の定義と申しますか、そこをはっきりさせないといけないというふうに思っております。

 これは、何がいいかということは、言いますけれどもなかなか私は具体的には難しいことだというふうに思いますけれども、しかし、そこをはっきりさせて、そして現場がどうかということを見ないと見方を誤ってしまう。そういうふうに思います。

◎山井委員

 ぜひとも、ケアの質の検討を行って、やはりそれは私は公表していただきたいと思います。そうしないと、万一介護報酬が下げられたときに現場の方々も納得されません。

 そこで、宮路副大臣にお伺いしたいんですが、先日の桝屋議員の質問によって、ユニット型の新型特別養護老人ホームを視察されたというふうにお聞きしたんですけれども、どこの施設に行かれて、感想は。そして、そこは人手は何対何。つまり入居者と介護職員の割合、何対何ぐらいでやっていられて、利益は出ていたのか。そのようなことについてお聞かせ願いたいんですが、いかがですか。


○宮路副大臣

 私は、千葉県にあります風の村という特別養護老人ホームへお邪魔をしてきたんですが、感じましたことは、一つは、人の配置がかなり一般よりは手厚いということを聞きました。ただし、具体的な数字は今のところ私ちょっと手元に持っておりませんが、一般よりもやや高目であるということです。

 その背景としてありますことは、これは生協がやっておるホームでありまして、したがって、最近NPOの活躍ということがこうした分野でも非常に高く評価され、また、その動きが非常に活発化しつつあるわけでありますけれども、生協が支えておりますがゆえに、ボラバイト、アルバイトとボランティアの折衷のタイプといった方がいいかと思いますが、そういう方々が非常にこの施設の運営にタッチしていただいているということで、そういった面から、いわゆる人件費がそれほど高くならないことに貢献しつつ、人は手厚い配置が可能になっているというようなことが一つの特徴であるなということを見てまいりました。

 それからもう一つは、大変広いオープンスペースでありますので、自然を非常に生かして、緑がふんだんに園内に整備をされておる。かつまた、内装が、木材をフルに活用してありまして、例えば壁なども、普通はかたいコンクリート等で壁ができ上がっておるものが、おがくずを用いて、あるいは板を、木を用いて、内装にふんだんにそういう木材が使われておって、そのことが非常に雰囲気を和らげ、お年寄りの気持ちを和らげるといいましょうか、そういう環境をつくっているといったようなこと。

 それから、ユニットケアでありましたから、これまで私が見たことのない、見てまいりましたものからすると非常に行き届いておるなと。そして、入っておられる方でピアノを弾いておられる方があったり、あるいは、昔とったきねづかでありますが、壁に張りつけたりするものなどをミシンを踏んで自分でつくっておられる。そういったようなことで、大変びっくりいたし、感銘を覚えてまいりました。

◎山井委員

 本当にあそこはすばらしい施設だと思います。私も先日、訪問で勉強に行かせていただきました。

 そこで、私が現場の方から聞いたのは、二対一の職員配置をしている。今の介護保険では三対一が標準になっているわけですが、二対一と上乗せしているというわけですね。要望で聞いたのは、ユニットケアをしていくには三対一では無理だ、やはり二対一ぐらいが必要だということで、あそこは経営はとんとんです、だから、もうからないわけですよね、それだけ人手を厚くして。これで介護報酬を下げたら、まさに厚生労働省さんが今推奨されているユニットケアを人手を厚くして頑張ろうとしているそういうところが、経営が苦しくなる。それで、手を抜いているところは介護報酬を下げてもそれほど痛くないかもしれない。

 そこで、坂口大臣にお伺いしたいんですが、私は、人手を厚くして例えばユニットケアをやっているところも、人手を四対一ぐらいで少なくしてケアの質の向上に努めていないところも、一律介護報酬を下げるというのでは、これだったら悪貨が良貨を駆逐することになるんではないかと思うんです。そこで提案なんですけれども、例えば二対一の基準の人手を満たしたらこれだけの介護報酬、二・五対一だったらこれだけと。つまり、人手を厚くしてケアの質をよくしようと思ったところには、やはりプラスアルファする。ケアの質を評価するインセンティブをこの特別養護老人ホームの介護報酬の改定に入れるべきだと思うんです。そうしなければ、人手を減らした施設の方がもうかるということでは悪貨が良貨を駆逐することになると思います。

 坂口大臣

、このような新型特養を要はこれからふやしていこうとおっしゃっておるわけですね、ユニットケアの。ところが、そういうところは人手が十分配置できなくてもうかりにくくしますよというのでは、やっていることに矛盾があると思うんですが、このような人員配置基準によって介護報酬を変えていくべきではないか、この考え方に対して、坂口大臣、いかがでしょうか。

○坂口国務大臣 いい介護をしていただくところにインセンティブを働くようにどうしていくかというのは、いろいろの方法もあるんだろうというふうに思います。委員が今御指摘になったようなことも一つのあるいは方法なのかもしれませんが、他の方法もあるというふうに思いますが、その辺、やはりいい介護をしていただくようにしなければいけないわけでありますから、そのための制度というものをどうつくり上げていくか、ひとつ真剣に検討させていただきたいと思います。

    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

◎山井委員

 まさにそこなんですね。今の制度のままでは、繰り返しになりますけれども、人手を少なくして人件費を安くした方が利益率が上がるんですよ。やはり、そうじゃなくて、頑張ったところにも、少なくとも損はしない形にするよという制度改正にしていただきたいと思います。

 そのケアの質をはかる一つのポイントが、私、この六ページ目の身体拘束だと思います。

 これは、二年前、介護保険が導入されるときに、まさに厚生労働省さんの英断で、身体拘束ゼロ作戦というのを打ち出されました。

 つまり、ベッドにひもで縛ったり、自分で脱げないようなつなぎ寝巻きを着せたり、部屋に閉じ込めたり、さくをつけたり、あるいは車いすにベルトやひもでむやみに固定したり、そういうことというのは、お年寄りの痴呆を悪化させ、身体能力を低下させ、生きる意欲を減退させ、寝たきりで死期を早める最もよくないことだ、そういうことを多用している施設は介護保険の認定を取り消しますよということで、身体拘束ゼロ作戦を始められたわけです。

 しかし、特養ホームを良くする市民の会の本間郁子さんが中心になってやられたこの調査によりますと、ゼロ作戦が始まっているにもかかわらず、八二%の施設が、身体拘束をしていると答えているわけですね。

 私も現場を回ってまいりましたが、例えば、先日行った老人ホームでは、夜間百回もナースコールが鳴っている。三人からナースコールが鳴ったらもうてんてこ舞いになってしまう、二人で走り回っているわけですから。

 あるいは、先日、私は鳩山代表とある特別養護老人ホームへ行きました。厚生労働省の方も一緒に来られました。廊下を歩いていると部屋の中が丸見え、カーテンもありません。そして、その四人部屋のカーテンもないところのベッドサイドで、ポータブルトイレにおばあさんが座って用を足しておられるわけですね。人前でですよ。廊下から見えるところで。

 あるいは、漏れてしまった。それで、昼御飯どきなのでおむつを早くかえてください、ちょっと漏らしてしまったんですけれどもと言ったら、いや、今は昼食どきで忙しいから御飯終わるまでおむつ交換待っといてと。そしたら、おばあさんは、こんなぐちゃぐちゃのおむつで昼御飯食べたくないと泣きそうな顔をされている。
 もちろんこれは個々の施設の問題かもしれませんが、この例に象徴されるように、現場というのは職員さんの数が少なくて大変なんですね。そういう現状で、身体拘束ゼロ作戦も、二年前にスタートしながらほとんど進んでいない中で、介護報酬を一律に下げていくというのでは、私はだめだと思うんです。

 そのあたり、身体拘束ゼロ作戦とかこういうものに対する決意を、一言、やはりこれからも進めていくんだということ、坂口大臣のお言葉をお聞かせ願いたいと思います。

○坂口国務大臣

 決意は変わっておりませんし、これからもできる限り拘束がないようにしていかなければならないというふうに思っております。

 しかし、これは、言うのは簡単ですけれども、それなりのやはり人の配置も必要でありますし、それから、中の施設そのものも、それにたえ得る施設に少ししないといけないと思うんですね。拘束しなかったけれどもベッドの上から転がり落ちて大腿骨骨折をしたとか、そうしたことは間々あることでありますので、そうしたことがあってはさらにまた寝たきりにしてしまう可能性もあるわけであります。

 したがいまして、ただ拘束をしないというだけではなくて、拘束をしないようにできる、それにたえ得る体制、環境というものをつくり上げていかないといけない。そこをどうしていくかということを、いろいろ現場の知恵もあって、現場も大変御苦労をいただいているというふうに思いますが、しかし、それだけではなかなか追いつかない面もあることも私は事実だと思っております。その点もよく考えていかないといけないと思います。

◎山井委員

 老人介護や医療の現場で、痴呆症のお年寄りがベッドにひもで縛られている姿を私も十年以上前に見まして、それが私の政治を志す原点にもなっています。やはり、このあたりのところ、昨年の予算でも三千万円という広報費ぐらいしか身体拘束ゼロ作戦についていませんので、まさに今大臣おっしゃってくださったように、人員配置もやはり考えねばならない。ということは、そういう拘束をしないために人手を厚くしている施設には報酬はちょっと多くしますよとかというインセンティブが必要だと思います。

 そこで、次の質問に入りますが、問題はこの介護報酬ですね。

 私も介護報酬分科会の傍聴に行かせてもらっていますが、先日、この介護報酬に関して、トータルはどうするんだという議論が出ました。その中で、分科会の会長さんは、まあ、下げるものもあれば上げるものもあるので、そのような気持ちでやってほしいということを発言されたんですけれども、この介護報酬総枠。診療報酬の話にも近いんですけれども、これはトータル、プラス・マイナス・ゼロとか、そういうことは厚生労働省さんとしては決めておられるんですか。いかがですか、坂口大臣。

○坂口国務大臣

 まだ、介護報酬の問題は議論を始めたところでございますから、これからでございます。

 介護報酬をどうするかというのは、これまたこれで社会に与える影響も非常に大きいわけでありますから、むだなところは倹約をしていただかなければなりませんし、そしてまた必要なところはつけなければなりませんし、その辺を、それが総トータルとしてどうなるかということだろうというふうに思っております。
 今、議論を始めたばかりでございますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。

◎山井委員

 まだ報酬は決まっていないと理解しましたが、私が申し上げたいのは、最初に総枠ありきの議論をしてしまいますと、九月から十二月に個々のケアマネジャーさんやホームヘルプや特別養護老人ホームの介護報酬の議論をするときに、ケアマネジャーとホームヘルプを上げる、その財源を出すためには特別養護老人ホームの介護報酬を八%下げないとだめだとか、在宅サービスの介護報酬を上げる財源を捻出するためには同じぐらいの介護保険施設の財源を削らねばならないとか、そんなばかな議論になったらだめだと思うんです。

 まさに今大臣おっしゃったように、個々のサービスに対して、もうかり過ぎている部分があったら減らす、でも必要な部分は厚くする。頑張っている特別養護老人ホームには厚くする、ケアの質に関心がなくて人手を減らしてもうけているところには減らす、やはりそういうことをきっちりやっていかないと。秋の介護報酬の個々の議論のときに、少なくとも、在宅サービスの介護報酬を上げるから、その分は無理やり介護保険施設の介護報酬を下げる、そういう考え方をしてほしくないと思うんですね。

 そのことについて、坂口大臣、改めて答弁をお願いしたいと思います。

○坂口国務大臣

 ですから、トータルで今議論をしなければならないというふうに思っておりますが、まあ、上げなきゃならないところは上げるといいますか、見直さなければならないところはこれは見直していかないといけませんので、そうしたところも考えていく。例えば、委員がよく言われておりますように、ケアハウスのあれは夜勤でしたか……(山井委員「グループホームの夜勤ですね」と呼ぶ)そうした問題もございますし、見直すべきところは見直さないといけないというふうに思っておりますが、しかし、節減をしていただかなければならないところは節減もお願いをしなきゃならないというふうに思っております。

 だから、先ほど申しましたように、それがトータルとしてどうなるかということ、これはまだ結論を出しておりませんし、まだ明確でありませんので、若干全体としての額はふえるのかどうかというようなこともこれからでございますので、もう少しお待ちいただきたいと思います。

◎山井委員

 この二年を振り返ってみますと、老人ホームの現場の方は、介護保険が入って経営が大変になったということで、経営コンサルタントの人に頼んだりして、必死に、黒を出すために、人件費を削減してきたのですね。それで、概況調査を見たら、一三%も全国平均でもうけられていた。しまった、ケアの質を切り下げてもうけ過ぎちゃった、やはりこのもうかった部分はケアの質に転換しないとだめだと、特別養護老人ホームの経営者の方々が今思い始めたところなんです。そこを切ってしまうと、本当にケアの質に対するインセンティブがわかないと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 最後になりますが、小泉首相の発言に見られるように、この健保法の審議、本当に人の命がかかっている問題ですので、やはりしっかりと、慎重に、時間をかけて審議をしていただきたいと思います。どうも本日はありがとうございました。


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