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2002年5月29日 

衆議院 厚生労働委員会 議事録 

三割負担の問題、情報開示の問題、
そして老人医療費や社会的入院、介護基盤整備の問題、

 

◎山井委員

 今回まで過去十九時間ぐらい、この健康保険法の一部改正の議論をしてまいりました。しかし、負担がふえること以外には、医療サービスがどのように向上するのかということについてはほとんど答弁がございませんし、また、国民が一番知りたいと思っている抜本改革についての答弁もございません。

 前回の質問で、私は、三割負担を初めとする負担増が景気に悪影響を与える、抜本改革なきこういう負担増は許せないということを質問しましたが、坂口大臣からは、心理的なもので景気に影響があるともないとも言えないというような答弁でございました。

 今回まで抜本改革が先送りにされてきて、そして本当に不況が深刻なときに、このようなまさに必要な改革をしないまま患者の負担増だけを行って、良心的な医療を行おうとしている医療者さえ追い詰めようとしているような小手先の財政対策のこの法案には大きな問題があると思っております。

 そこで、本日は三つの点に絞って質問をしたいと思っております。

 まず、この抜本改革の一つの大きな柱は、前回の質問でも申し上げましたように、医療情報の開示であると私は思います。推計によりますと、二万人以上の方が医療事故、医療過誤でお亡くなりになっているというような推定もございます。

 また二点目は、歯科の訪問診療について、これも予防重視、高齢社会においてこれから重視していかねばならない訪問診療というものが逆に大きく制限を受けて、現場は大混乱をしているという現実がございます。

 三つ目は、今回の改正案の中にも老人医療費の伸びの適正化ということがうたわれておりますが、その中で、半年以上の長期入院の社会的入院患者の退院を促進するという流れも軌を一にしたものであると思いますが、それに伴う受け皿の整備がどうなっているのか、このようなことについて質問をしていきたいと思います。

 まず、前回の質問で十分な答弁が得られませんでした医療情報の開示について、坂口大臣にお伺いしたいと思います。

 私たち民主党は、今回、患者の権利法案を提出しておりまして、そもそも医療というのは患者を中心に医師と患者との共同作業で行われるべきものだと考えております。それは単に患者の選択肢をふやすということではなく、支払い明細書すなわちレセプトを患者がチェックすることは、不正請求、過剰請求、検査漬け、薬漬けの防止になり、医療の質の向上とむだな医療費を削減する一石二鳥の効果があると考えております。

 政府は、三割負担にしないと医療改革は進まないと言っておられますが、病気で苦しむ患者という最も弱い立場の人々に痛みを強いる前に、医療情報の開示によって過剰、不正な請求というものを減らす努力をするということが必要だと思います。その意味では、医療情報の開示なくして医療制度の抜本改革なしだと考えます。つきましては、坂口大臣にお伺いします。

 今回のこの法案の附則の中で書かれております医療情報の提供、開示ということについて、どう考えておられるのか。見ますと、いつまでに何をするのかここに全く書いてありません。これで、抜本改革をしますから三割負担をお願いしますと言われても、納得できるはずはございません。具体的にどのようなことをいつまでにしようと考えておられるのか、答弁をお願いします。

○坂口国務大臣

 前回にも、情報の開示の問題につきまして御質問をいただきました。私も、この情報開示につきましては着々と進めていかなければならない、そして、先ほど御指摘になりましたように、医療あるいは医療機関と、そして患者との間の信頼関係の中でこれは明確にしていかなければならないというふうに思っております。

 医療の開示の問題もいろいろあると思います。いわゆるカルテなどの開示の問題もございますし、それから医療全体に対する開示、この病院は今までどういう患者さんを多く扱ってきたとか、どういう成果を上げてきたとか、そうしたことの開示の問題もあるというふうに思います。

 医師の専門性でありますとか、今までの手術の件数でありますとか、そうしたことのいわゆる広告が今まではできなかったわけですけれども、これは広告をできるようにいたしまして、そして、医療機関の広告規制の緩和、これはもう行ったところでございますが、これらのことにつきましてももう少しまたさらに拡大をしていかなければならないというふうに思いますし、インターネットを通じました公的機関による情報提供の充実というものも可能にいたしております。

 ですから、今までいわゆる広告の形で出せなかったものもインターネットではこれをお出しいただけるわけでございますし、かなりここは変わってきたというふうに思います。例えば、診療科目の問題等につきましても、今正式には認められておりませんけれども、しかし、我が病院はこういうことを中心にやっておりますといったようなことは書いていただけるわけでございますしいたしますから、そこはかなり変わってきているというふうに思います。

 それから、根拠に基づく医療、いわゆるEBMと言われております分野につきましても、最新の医学情報を患者の皆さんにもそれから医療機関の皆さん方にもおわかりをいただけるようにするといったことで、今ベースの整理をいたしておりまして、でき次第、ある程度できましたらそれを公開していく、次にまた公開していくということでしていきたいと思います。ことしのうちにこれはかなり進むことは事実でございますし、皆さん方にお示しをすることができるというふうに思っております。

 また、いわゆる日本医療機能評価機構がございますけれども、平成十八年度末までには二千の病院の受審を目標にしまして、これをふやしていきます。十八年度末までに二千以上にしていきます。こういったことを一方でやっていきたいというふうに思っています。

 それからもう一つ、カルテのお話、先般もあったわけでございますが、これは、前回も、ひとつ検討会をつくってやったらどうかというお話でございましたが、いろいろ相談をいたしまして、これは検討会をつくるようにいたします。つくって、そしてこれもそんなに長くかかっていてはいけませんから、専門家の御意見も聞きながら早く結論を出すようにしたいというふうに思っている次第でございます。

◎山井委員

 前回、検討会の設置をお願いしたいということに対して、検討会をつくるという答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 御存じのように、これは、五年前から三年前にかけて検討会と審議会をつくって、公開のもとに、カルテ開示を法制化するかどうかという大きな議論が行われて、最終的には自主的に三年間やってみようということになって、そしてその三年が今年度の末で終わるわけです。ぜひともお願いしたいのは、やはりこれは、医療現場、また患者さんの立場、医療事故の問題がこれだけ深刻な医療への不信の原因となっているわけですから、オープンな形で、できるだけ早急に検討会を立ち上げていただきたいと思います。

 もう一つお聞きして恐縮なんですが、大体いつごろから検討会を立ち上げるか、大体のめどで結構ですので、来年三月末には結論を出すわけですから、大体いつごろからでしょうか。

○坂口国務大臣

 一、二カ月というふうに言っておりますけれども、まあまあ、一カ月ぐらいの間に何とか立ち上げるようにしたいと思います。

◎山井委員

 ありがとうございます。

 やはりこういう検討会、もちろん公開の形になると思うんですけれども、マスコミの方や患者団体の方、いろいろな方の声を含めて、本当に国民全体の議論で、まさに医療制度の抜本改革の一つの大きな柱として、情報開示、カルテ開示、そして次にお願いしますレセプト開示の法制化の問題にも取り組んでいただきたいと思います。

 次に、レセプトの遺族への開示について。

 これも前回の質問の続きなんですが、現状では、社会保険庁のマニュアルによって、御遺族が開示請求をすると、この御遺族がレセプトの開示請求をされましたよということを医療機関に通知することになっているわけです。

 しかし、前回、内閣府の小川参事官からも答弁をいただきましたように、遺族の方がレセプト開示を請求したということは個人情報なわけですから、それを本人の承諾を得ずに勝手に医療機関に通知するというのは、やはり本人の了解が要るのではないかという趣旨の答弁が、個人情報保護法案を担当されている内閣府の小川参事官からもございました。

 そういう意味では、まさに防衛庁のリストの問題も今回出ておりますけれども、その請求をしたという情報はやはり御遺族の方は病院側に知ってほしくないケースも多いわけですから、このような社会保険庁のマニュアル、すなわち、遺族からのレセプトの開示請求があったということを病院側に無条件に通知するというこのマニュアル、やはりこれは改正すべきではないでしょうか。いかがですか。

○坂口国務大臣

 ここはなかなか難しいところもあるというふうに思いますが、保険者に義務づけておるわけではないんですね。必ずしもそれを医療機関に全部報告しなきゃならないということでも……(山井委員「でも、適当であるとマニュアルに入っておるわけですから」と呼ぶ)適当であるというのは、何が何でもしろという意味ではないわけでありますから……(山井委員「いや、マニュアルにそう書いていたら、普通やります」と呼ぶ)

 そこはいろいろの解釈の仕方があるというふうに私は思いますけれども、しかし、もとをただせば、レセプトというのは病院がおつくりになったものでございますし、そして保険者の方に提出をされたものでございますから、そのことは、そのレセプトに書かれておりますことがすべてかといえば、そこは一番必要最小限度のことがそのレセプトには書いてあると私は思うんですね。ですから、もし仮に訴訟か何かのことがあって、そして本当のことを、もっと詳しいことが知りたいということであれば、私は、それこそカルテなりなんなりを見ていただくとかいうことにならざるを得ないんではないかと思います。

 したがいまして、いずれにいたしましても、それは医療機関との間で話をしなければならないことでありますから、保険者が医療機関にそのことをもう言わなくてもいいというふうに決める必要もない、私はそう思っています。これは、そういうふうにあったということを言ったから問題が起こるのではないと思っておりまして、より詳しいことを知っていただくためにはやはり医療機関に言っていただく以外にないわけでありますから、そこは、その中に書かれておりますような文言で、必ずしも何が何でもそうしろというふうには書いていないというふうに御理解をしていただければいいかと思います。

◎山井委員

 御遺族が亡くなった患者さんのレセプトを開示請求するというのは、やはりそれなりの不満なり疑問があってのことだと思います。それで、やはり多くの場合、御遺族は、そういう請求をしたということは、医療機関に不信を持ったとも受け取られかねないわけですから、病院にそういうことを知ってもらったら不都合があると思われる方も多いわけですよね。

 そういう請求したという事実、つまりこれは個人情報です。そういう個人情報を、本人、その御遺族の承諾なくして、了解なくして医療側に提供するということは、やはり問題があるんではないでしょうか。やはり御遺族の承諾というのを得るべきだとは考えられませんか。それが今回の個人情報保護法案の趣旨だと私は思うんですが、坂口大臣、いかが思われますでしょうか。御本人たちが嫌がっても医療側にはこれは勝手に通知していいんだと大臣思われますか。

○坂口国務大臣

 私は、もう一つ、そこは医療機関と患者さんの間の風通しというものをやはりよくしなければならない。医療機関におきましても、これからは、そういう開示を求められれば必ずそれをお示しして説明をする、やはりそういう関係にしていかないといけない。ただ保険者のところに尋ねて云々ということではなくて、そこはやはり医療機関と患者さんの間の関係というものをよりもっとクリアな形にするということの方が私は大事だというふうに思っておりまして、そのことにもっと積極的になりたいという気が私はいたしております。

◎山井委員

 この情報開示の問題は、ポイントは、大きな覚悟を持たないと情報開示を請求できないというようなことであっては、今まさにおっしゃったように風通しのいい関係にならないと思います。そういう意味では、できるだけそのハードルを下げてもらうように、これからも私もこの問題を要望していきたいと思います。

 そして、諸外国ではこのような医療側の了解を得てレセプトを開示している例というのはないんではないかと思いまして、このことを前回質問しましたら、今調査中ということでありました。このことに関しては改めて早急に調査してくださるということですので、諸外国の例を調査してまた報告してくださいということを言いまして、時間の関係上、次の訪問歯科診療の話に移らせていただきたいと思います。

 そもそも、この医療制度改革の中でも、歯科というものは今までから医科に比べて非常に軽視されてきたと思います。しかし、歯科はこれからの高齢社会でますます重要になってまいります。歯のかみ合わせや口腔ケア、こういうものをしっかりすることによって、寝たきりだったお年寄りが物が食べられるようになって歩き出したケースとか、また、かみ合わせや口腔ケアがきっちりうまくいっていなかったばかりに痴呆症状が進んだとか、歯がしっかりしていると脳に刺激が行って痴呆症状の予防や進行の悪化を遅くすることもできるということがわかっています。

 そういう意味では、高齢社会において、こういう老人に対する歯科医療が最も重要で、その中でも、今回問題になっております訪問歯科診療というのは、そういう寝たきりや痴呆症などの本当に歯医者さんに行きづらい方、私も今までから在宅の寝たきりの御家庭とか百軒以上回っていますけれども、本当にもう入れ歯も入っていない、それが原因で病状が悪化しているというケースも多かったわけですね。それに対して、こういう訪問歯科診療が広がってきたおかげでおいしいものが食べられるようになったとか、多くの患者さんが喜んでおられたわけです。

 にもかかわらず、この四月の診療報酬の改定で、そういう訪問診療が大幅に制限をされるようになりました。私たち民主党も、歯科医療改革三つの視点ということで、これからは予防歯科が非常に重要だということも言っておりますし、訪問診療の重要性も訴えていたわけであります。このことに関しては、不適切な訪問診療の事例があったということなんですが、田村政務官、どのような不適切な事例があったのか、そのことをお答えいただければと思います。

○田村大臣政務官

 レセプトの方は今調べておりますが、早急に先生にまた御報告に上がりたいと思います。

 それから、歯科訪問診療の件でございますけれども、我々も、歯科訪問診療、これは大切なものであるというふうに認識をいたしております。

 ただ今回は、通院が可能である、つまり他の医療機関に通院をしておられる方がこれを受けておられるというのが、レセプト等からわかってまいりました。これは、具体的にというよりは、幾つかのところからそういう事例が多数挙がってまいってきておりまして、本来は、要するに、医療機関に独自で行けない方に対して、訪問歯科診療という形で診療を受けていただこうということでこのような制度を今導入しておるものでありますから、そういう意味からいたしますと、これは適当でないということで、中医協の方とも議論をさせていただきまして、このような他の医療機関に定期的に通える方に関しては、これには当たらないというふうにさせていただく、こういうふうなことでございます。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

◎山井委員

 そのように行き過ぎた事例があった。それは、元気でぴんぴんされている方が訪問診療を受けて訪問診療の点数がつくというのは私もおかしいと思いますが、先週の日曜日、私も地元の歯医者さんの「歯のひろば」というのに行かせてもらって歯医者さんの話を聞いたら、私が質問するまでもなく、山井さん、何とかしてくれ、せっかく訪問診療でこれからの高齢社会に向かってお年寄りの歯のことをやっていこうと思ったら、今回のことで非常に難しくなったと。

 その難しくなったというのが、今、田村政務官も答弁してくださいましたけれども、完璧に元気で通院されている方ならば、もうだめなわけですね。ところが、グレーゾーンの方が非常に多いわけです。

 きょうも資料をつけさせてもらいましたけれども、例えば一番目、問い一というのが、この2の見開きのところにありますけれども、医科の疾患に対する治療のために保険医療機関へ通院している患者についての歯科訪問診療料の取り扱いはいかがかという問いですね。これは五月一日に保険局医療課がこの問題について出した事務連絡でありますけれども、これについては、答えは、「通院困難な患者が緊急の治療、検査等のため病院等での治療を必要とし、医療機関に搬送されたような場合など、医療機関で外来診療を受けた場合であっても、歯科訪問診療の対象となる場合もあり、通院困難であるか否かは、必要に応じ個々の症例毎に適正に判断していくものである。」こうなっているわけですね。

 もう一つわかりやすいのが、次のページの問い五です。歯科訪問診療の対象となる通院が困難な者、何をもって通院が困難な者と定義するかは、どのような状態が該当するのか。これも、結論を見ますと、「通院困難であるか否かは、必要に応じ個々の症例毎に適正に判断していくものである。」と。

 問題は、ではだれが適正に判断するのかということなんですが、坂口大臣、これは当然、歯科医師の歯医者さんが判断すると理解してよろしいですか。

○坂口国務大臣

 書いた人に聞いているわけじゃございませんけれども、常識的に読めば、私はそういうことだと思います。

◎山井委員

 まさにそうですよね。歯医者さんが行かれているわけで、第三者が行っているわけではないですから。そこで、そういう意味ではやはり、もちろん完全に元気な人に訪問歯科診療の点数をつけるのは私もおかしいと思いますが、現場のお医者さんにある程度の判断の余地を当然与えていただきたい。歯医者さんたちが心配しているのは、オーケーと判断したけれどもレセプトで後ではねられたとか、一回一回判断に苦しまれるわけですね。地域によってその判断の差があってもなりませんし。

 そこで、問題の問い四なんですね。医科の医療機関に自力または家族等の付き添いにより定期的に通院している通院可能な患者に対しては、訪問診療の対象とならないか。そうしたら、答えは、そのとおりとなっているわけです。

 ところが、これも、きれいに百かゼロの話ではなくて、例えば、内科のお医者さんは歩いて五分のところにあった、ところが、歯医者さんは二、三十分かかる。だから、歯医者さんは訪問治療を受けないとだめだけれども、目の前にある内科のお医者さんには月に一遍行っていますよとか、あるいは、どうしても耳鼻科の診察が必要になった。歯医者さんは体が不自由なお年寄りの家に来てくれたけれども、耳鼻科は絶対来てくれないから、もう痛くて仕方がないから耳鼻科にかかった。そうしたら、これも訪問診療点数ペケになるのか。それとか、最初訪問診療に行ったときは通院していなかったけれども、途中で風邪を引いて、やむにやまれず通院せざるを得なくなったとか、いろいろなケースがあるわけですね。

 そこをやはり、ある程度もう現場の歯科医師さんの判断に任せるという形にしないと、実質上、これもだめ、あれもだめということで、三月まで訪問診療を受けて、いい歯を持って寝たきりから脱しようとされていた方も、訪問診療がストップするということになりかねなくて、今はっきり言って医療現場は大混乱しています。

 そこで、坂口大臣、改めてお伺いしたいのですが、そういういろいろなグレーなケース、それに関しては、もちろん元気でぴんぴん歩いているケースは絶対だめとしても、この方にはやはり訪問診療が必要だ、そう何度も頻繁に歯医者さんには来られないという方に関しては、訪問歯科診療というものを点数上も認めるということでよろしいでしょうか。

○坂口国務大臣

 歯科医師という非常に常識のある皆さん方ですから、常識的にやっていただければいいと思うのですね。今おっしゃったように、近くの病院にはついていってもらったけれども、歯医者さんは遠くて行けないというケースもあれば、病院は遠いけれども、歯医者さんは隣にあるというケースもあるわけでありまして、遠い病院へ行っているのに隣の歯医者さんには往診してもらうというのも、これもちょっと常識的でありませんしいたしますから、その辺は常識を持って、歯医者さんが医学的に判断をしていただくということだろうと思います。

◎山井委員

 私も、坂口大臣がおっしゃるとおりだと思います。常識でもって本当にそこは判断していくということで、逆に行き過ぎたケースがあれば、やはり厳しく、それは点数にならないということを指摘するのは当然のことであると思いますが、今回の通知によって不必要に、不必要にというか、今までから訪問歯科診療を利用されていた要介護の高齢者の方々の歯科診療が制限されないようにぜひしていただきたいと思っております。

 次に、老人医療費の……(発言する者あり)ちょっとストップします。傍聴席の方が人が多いようですが。

    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

○森委員長

 山井君、続けてください。

◎山井委員

 では、続けさせていただきます。

 老人医療費の伸び率の適正化、その中の一環で、冒頭にも申し上げましたように、長期の社会的入院の患者の退院促進という方針のもとに、半年以上の長期入院の患者さんの自己負担の特定療養費化というところが四月一日の診療報酬の改定で出てきたわけです。このことは、今後の高齢者の医療をどう日本でやっていくかということにも非常に重要な関係が出てくると思います。

 一つは、この抜本改革の中で、老人医療費の伸びを適正化していく中で、医療を受ける権利が損なわれて、高齢者が病院から追い出されてたらい回しに遭って死期が早まるということがあってはならないということ、また、そのためには介護基盤の整備をせねばならないということ、それともう一つは、老人医療費の伸びを適正化するために安易に医療保険適用の療養型病床をそのまま介護保険に持っていったら済むという問題ではないと思うわけです。

 その意味で、老人医療費の伸びの適正化ということが高齢患者の不利益にならないように、以下、質問をさせていただきます。

 まず、政務官にお伺いしたいのですが、診療報酬改定により、半年以上の長期入院で社会的入院と判定された患者は特定療養費の対象になったわけですが、その受け皿の整備、介護保険施設の整備はどうなっていますか。平成十九年までの介護基盤整備計画の参酌標準などについてお答えください。

○田村大臣政務官

 今先生からいただいた御質問でありますけれども、介護保険施設等の参酌標準を設定するに当たってということでありまして、基本的な部分では、前提といたしまして、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、それから介護療養型の医療施設ということで、三・二%ぐらいの伸びを見込んでおる。それプラス、グループホームとそれから指定を受けたケアハウス、これは施設といいますか在宅の世界の話でありますが、しかし、施設という意味からしますと、これが約〇・三%。合わせて、合計三・五%ということでございます。

 これをもとにといいますか、あくまでも参考でありますけれども、基本的には、先生がいつもおっしゃっておられます、では今回、特定療養費化して五万人出てくるんだね、出てきた人たちの受け皿はそれで大丈夫なんですかという議論も含めまして、地方自治体がそれぞれ第二期介護保険事業計画というものを立てていただきまして、当然そういう方々が多いところもあれば、病院から出てくる方々が少ないところもございますし、それぞれ地域によってニーズが違うと思うのです。そういうものを積み重ねた上で全体としての計画が出てくるということになろうと思いますから、あくまでも、この三・二、三・五という数字は参考といいますか、このような形で一応、参酌標準として、国といたしましては標準としては出しておりますが、最終的には、各自治体が必要な分に応じて計画を積み重ねてきた数字になってきたものと調整をして結論を出す、答えを出してくる。答えといいますか、計画を立てるという話になってこようと思います。

◎山井委員

 六十五歳以上の高齢者人口のうちの三・二%を、介護保険施設、整備するということなんですが、ここに、なぜ三・二%なのかという、参酌標準の考え方についてという資料を厚生労働省さんからいただきました。

 それによると、今、田村政務官が答弁してくださいましたように、こういう長期入院の患者が、今回の特定療養費化の影響もあって退院されるであろうという方が五万人、それと平成十四年度末における施設利用者見込み数が六十八万人、あわせて七十三万人で、今の六十五歳以上の人口は二千三百万人、これで割ると約三・二%になるということなんですね。

 しかし、私は、この計算はおかしいと思うのです。なぜならば、今、六十八万人分、介護保険施設を利用されているということにすぎないのであって、御存じのように多くの方が待機されているわけですよね。待機されている方を置いておいて、今入っている人の上に病院から退院される方の数をプラスしても、要は、老人ホームに入れない、老人保健施設でたらい回しになっていたりもするという今の状況は改善されないということになってしまうわけですね、この三・二%だけでは。もうちょっと上乗せしないと。そこは田村政務官、いかがでしょうか。

○田村大臣政務官

 先生おっしゃられる意味もよくわかります。ただ、基本的に介護保険制度というものは、御承知のとおり、もう先生には言わずもがななんですけれども、在宅ということ、居宅ということを基本に置いておるといいますか、そういう制度でありまして、もちろん何でもかんでも施設に送り込めばいいという話じゃないんです。

 ですから、そういう意味からいたしますと、我が省といいますか、想定した中において、やはりこれぐらいの数の方が基本的に施設に、施設サービスの方に行っていただくべきなんであろうというような、理想といいますか、我が省の試算した数字を含めて、それが実態六十八という数字とほぼ一致しておるという考え方で現状あるものでありますから、このような形で、六十八プラス五万の新たに出てくる方々をとりあえず施設としての基準として、あくまでも標準といいますか、我が省が示す参酌標準としてお出しをさせていただく。

 ただ、今も言いましたとおり、それぞれ地方から、そうはいってもと、いろいろなものが出てくると思います。出てきたものを、もちろんそれをすべて我が省として受け入れるわけにいきませんので、もう一度、仮に総計の数字が我々が示した数字よりも大きくなってきた場合には、一体どういうような状況でそうなったのか、また各自治体等々にいろいろと調査をさせていただいて、適当であるかどうであるかということは一応確認いたしますけれども、その上で、最終の計画というものは一番適しているものを出すという話でございまして、あくまでもこれは、標準というのはすべてではないということだけは御理解をいただきたいと思います。

◎山井委員

 私がこのような質問をする理由は、本当に、老人医療費の伸びの適正化という議論は、やはりその受け皿となる介護保険施設の整備とセットでないと成り立たないと思うからなんですね。

 それで、ここにも書いてありますように、施設利用者見込み数が六十八万人であって、施設を必要とする人の数というのは、やはり厚生労働省さんは推定をされておられないわけです。

 坂口大臣にお伺いしたいんですが、今の特別養護老人ホームの待機者の現状、このことについてどう認識しておられるのか。今はもう特別養護老人ホームや介護保険施設は十分足りているという認識なのか、それが全然足りないという認識なのかによって、この三・二%が正しいのかどうかという議論は全然変わってくるわけです。ここは非常に重要な認識だと思います。現状認識で足りているのか足りていないのか、そのことについて、坂口大臣、答弁をお願いいたします。

○坂口国務大臣

 計算の仕方によって随分ここは違うと思うんです。これはうちの方の出している一つの案。中には、それほどもないと言う人もあるんですよ。

 というのは、各都道府県等で待機をしていただいている人に対して、もう一遍確認の手紙等を出しているところもあるんです。そうしますと、この一、二年は要りませんとか、前出しましたけれども今のところはよろしいとか、そういう人も中にはあったりして、必ずしも今出ている数字がそのまま現在必要な数字でないというようなデータの出ておるところもございますので、一概にちょっと言いにくいんですけれども。

 しかし、いずれにいたしましても、国としては、入りたいけれども入れないという人がたくさんおみえになるというような状況を続けることは決して好ましいことではありませんから、早く対応できるようにしなきゃならないことだけは間違いないと思っています。

◎山井委員

 足るか足らないかというはっきりとした答弁はないわけです。
 例えば、私が持っております名古屋市からの資料では、名古屋市では大体特養の定員が三千七百人。三千七百人に対して一万四千四百四十五人、ほぼ四倍待っておられるわけですね。しかし、大臣おっしゃったように、その中には重複して三つ四つ申し込んでおられる方や、緊急度の低い、今困っていないけれどもということで申し込んでおられる人もおられます。そういう人を除いて名古屋市が低目に見積もっても、二千人は緊急度が高い人が待っておられる。

 それで、年間三千七百人の定員に対して、こんな計算はそう簡単にできませんが、一年間に一割の方がかわられると考えても、単純に、三百七十で二千を割るわけですから、五年間ぐらい待たないとだめだ、緊急度が高い人も。しかし、大臣、五年待たなくていいんですね。なぜかというと、五年待っている間にお亡くなりになってしまわれる方が多いわけです。やはりこういう現状を前提にしてこれからの施設整備をしていくというのは、私は間違っていると思います。

 それで、きょうの資料の5を見てください。名古屋市の資料でありますけれども、抜粋をしました。

 現在どこにいる方が特別養護老人ホームに申し込んでいるか。まず、老人保健施設で待っている人が四〇%もいるわけですね。五人に二人が老人保健施設を特別養護老人ホームの待合室として使っているわけです。まさに今問題になっていますように、一般病院や診療所に関しても、十人に一人は、今すぐでも移りたいけれども特別養護老人ホームがあかないからといって病院で待っているわけです。

 それと次の、申し込み理由ですね。この申し込み理由も、一番多いのは、状態が重くなり在宅生活が難しくなったためというのが三八%ですけれども、次に多いのが、老人ホーム入所までに時間がかかると聞いているため、将来に備えて申し込んだものというのが三人に一人以上いるわけです。

 つまり、みんながもう老人ホームはすぐに入れないという不安を持っているから、早く申し込まざるを得ないという悪循環になっているわけです。やはりこれから整備計画を立てるのならば、本当に困ったときに申し込んだらそれほど待たずに入れるというような安心感こそ必要ではないでしょうか。

 それとともにかわいそうなのが、この3です。現在入所、入院している施設等へ入所、入院するとき、老人ホームへ申し込んでおくように言われたため。つまり、病院に入院するときや老人保健施設に入る段階で、老人ホームに申し込んでもらわないと入所させませんと言われているわけですね。まさにこれはたらい回しじゃないですか。お年寄り本人にとったら、老人保健施設に入った、病院に入った、でもここもまた出される。自分のついの住みかに一日も早く行きたいというのが高齢の患者の方の心情だと私は思っております。

 坂口大臣も御存じのように、私も二十年間老人福祉をやってまいりましたし、坂口大臣も老人保健施設で勤務されていたと聞きますが、お年寄りの痴呆症状や寝たきり症状を悪化させるのは簡単なんです。本人の意に沿わない、急に病院を変えたり老人ホームを変えたり、これはトランスファーショックと言われておりますが、環境を急に変えれば症状が悪化して早く亡くなるようになるわけですね。そういうことをやっている現状というのがこのデータで出てきているのではないでしょうか。

 また、次の6というページを見てみましても、今入所中の施設から半年から一年たって特養に申し込んでおられる方が一番多い。

 それと、いつごろ入所したいかというその次の問い十三では、今すぐにでも入所したいという方が三八%。5は、入所中の施設、病院から退所、退院を求められたら入りたいと言われている方が五人に一人。

 そして、どういうときに申し込みを取り下げるかという条件では、2にありますように、特別養護老人ホームの整備が進んで、待機者がいなくなり、必要なときに入所できるようになったら申し込まないでおく。

 大臣、このような待機者の現状に関してどう思われますか。これで今の特別養護老人ホームの現状は足りているという認識ですか。

○坂口国務大臣

 介護保険の問題ができましたときに、一番中心は在宅介護、ここをどうふやしていくかということに知恵を絞ろうということでこの問題はスタートしたわけですね。私は、その考え方は間違いではなくて正しかったというふうに思っているわけです。

 しかし、最近、どちらかといえば在宅介護よりも施設に入りたいというふうに、御本人が思われるのか家族が思われるのかはわかりませんけれども、そういう傾向が強くなってきていることも事実でございます。

 そこを一体どうしていくのかということだろうと思うんです。在宅介護よりも施設介護をふやしていくということになれば、それ相応の経費がかかりますし、それは介護保険料にはね返ってくるわけでありますから、そこをどうするかというのはみんなで相談をして決めていかなきゃならない問題だというふうに私は思います。

 それで、どうしてもやはり施設に入りたいという方が多かったと。今ちょうど、第二期の調査で調べているところ、第二期介護保険事業計画の策定に向けまして各市町村に今お問い合わせをしまして、まとめてもらっている最中でございます。もう既に出てきているところもございます。そうしたところで、介護保険施設、あるいはまた特養も含めてでございますけれども、施設に入りたいということをおっしゃる方が非常に多いということになれば、やはりそういうことを中心にしてもう一度考え直さなきゃいけないと私は思います。

 病院というところは、これは永遠の住みかではないわけで、遠からずここは出なきゃならない場所であることだけは間違いないわけです。もう終生、病院でというのは、それだけ医療を受けなきゃならないような人であれば別でございますけれども、そうでない限りは、病院というところはいつの日か退院できるというのが、どの人にとりましても一番いいこと、幸せなことだと思うわけです。

 ただ、後の受け皿の問題だというのは先生の御指摘のとおりでありまして、そこをどうしていくかということについて、皆の傾向として、やはりこれは施設で、もう家庭よりも施設だという傾向が非常に強まってくるということになれば、そういうふうな方向にこれは方向を変えなきゃならない。そのかわりに、その財源が必要になってくる、どうするかというような問題も出てくるわけですけれども。

 私は、したがいまして、この第二期介護保険事業計画の結果というものを非常に重視いたしております。その結論によりましては、すべてのことを考え直すということもしなければならないと私は思っております。

◎山井委員

 坂口大臣おっしゃるように、介護保険の理念は在宅重視であるということは、私も全く同感であります。しかし、介護保険がスタートして二年たってから、私も質問でも何回も取り上げておりますが、在宅で介護保険を利用しやすいような介護保険の見直しという方向性は、まだ厚生労働省さんからは聞かせてもらってはおりません。そういう中でこういう施設志向が高まっているわけですから、大臣、お願いですが、ぜひとも、在宅で介護保険で生活できるようにどうしていったらいいのかというやはり抜本改革の案を、介護保険に対しても私は思い切った案を出さないと、施設志向はとまらないと思います。

 そして、まさに、こういう受け皿が不十分でたらい回しが日常化しているというこの現状を置いて、老人医療費の伸びの適正化というときに、安易に病院から出すことを私はしないでほしいと思います。

 もう一つ、この特別養護老人ホームなど介護保険施設の受け皿の問題、質のことについてお伺いしたいんですが、介護保険後、常勤の職員さんが減って、非常勤の職員さんがふえたという現状がございます。そのような特別養護老人ホームや介護保険施設での雇用形態の変化、労働条件の変化ということに関して、厚生労働省はどのように把握しておられますか。坂口大臣、お願いします。

○田村大臣政務官

 御指摘の点、介護保険施設の介護職員の雇用形態についてでありますけれども、常勤と非常勤の割合は、制度施行後と前とで比較いたしますと、やや非常勤職員の割合が増加しておるということであります。それから、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設については、ほとんど変化はないということであります。

 全体としての調査を実は昨年の十月に行いまして、四月に発表したんですが、全体のスケールといいますか、大体二十分の一ぐらいの調査しかしていないものですから、はっきり申し上げまして、実態として詳しくはわかり切っていないところがございます。そこで、新たな調査を現在させていただいておりまして、秋ぐらいには結果を出したいと思っておるわけでありますけれども、その限られた情報の中でお話をさせていただきますと、全体的に見まして、今お話しさせていただいたんですが、賃金等々も、これは常勤しかわかりません。非常勤の方は正直言ってこれからの調査の中で、非常勤の方はどうかということはこれからという話でお許しいただきたいんですが、常勤に関しては、さほど差はない、今現状さほど差はないというふうに我が省といたしてはとらえさせていただいております。

 いずれにいたしましても、勤務の状況が変わったという形でサービスが低下をいたしたということは、これは大変な話になりますので、低下しないように、これからもしっかりとその点は注視してまいりたいと思っておりますが、同時に、低下せずに賃金が下がったという話になりますと、今度、働く方々に過剰な負担が生じますが、そこら辺は、診療報酬上でもし何らかの問題があって給与が下がったという話になれば、そこはまた勘案をさせていただいて、いろいろな措置をしたいと思いますが、そこはなかなかまだ現状がわかっておりません。診療報酬がどうだから報酬がどうだというところまで出ておりませんので、引き続き、その部分も含めていろいろと調査をさせていただきたいというふうに思っております。

◎山井委員

 この7のグラフ、きのうつくったグラフなんですが、見ていただきたいんですけれども、例えば、平成九年から平成十二年まで、特別養護老人ホームはどんどんふえております。ところが、平成十一年から十二年まで、介護保険が導入されるときのこの常勤職員の数というのはほとんどふえていないんですね。

 つまり、このグラフを見てもわかりますように、介護保険というのは、別名パート促進法と言われるように、常勤職員さんをどんどん非常勤にかえていく。そして、介護保険で経営が厳しくなるから、常勤を減らして非常勤をふやさないと経営が成り立たないぞというような、そういう風潮になったわけです。

 それから、その次の8の資料を見ていただけますか。ちょっと字が小さいんですけれども、ここで、今、田村政務官もおっしゃった、先日発表になった概況調査の結果ですけれども、これはちょっと字が小さくて見にくいですけれども、何が言いたいかというと、特別養護老人ホームの利益率が、平成十一年にはマイナス五・六%だったのが、今回の調査では一三・一%に利益がアップしているんですね。利益がアップしている反面、人件費、給与費というところが非常にダウンをしていっている、そういうことがあるわけですね。千四百三十万円から千二百六十一万円というふうに、月々これはダウンしていっているということがわかるわけです。

 だから、このこと一つ見ても、介護保険によって特別養護老人ホームは人件費を下げて利益をふやしていったということです。こういうことを、どうしても起こりがちですけれども、厚生労働省さんとしては、その質のチェック、放置されてきたのか。最初の議論で申しましたように、これから病院からどんどん重度な高齢の患者さんを、まさに老人医療費の伸びの適正化のために出されていくわけですよね。そういうときには、今まで以上に質の高い多くの人手で介護保険施設でお世話しなければならないときに、その一方では、介護保険施設の非常勤はふえて、ケアの質は下がっているのではないか、そういうふうな危惧が持たれるわけです。

 このあたりについて、きっちりこれからも、そういうことがないように、今もう一度詳しい調査をされているそうですけれども、田村政務官、非常勤の方の調査はよくわからないとおっしゃいましたけれども、まさに非常勤の方がふえているわけですから、そこをやっていただきたいと思います。

 それともう一つ重要なのは、老人医療費の伸びを適正化するために、医療保険適用の療養型病床を介護保険に安易に移すのは問題があると考えます。なぜならば、医療保険適用の療養型病床が介護保険に安易に転換すると、介護保険料が大幅にアップするということがあるわけですから。

 このことに関しては、例えば、ある市町村が、三千円の保険料が三千三百円になるぐらいかなと思っていたら、急に大きな療養型病床が二つ介護保険に来たら、どんとはね上がってしまうわけですね。大きく計算が狂うわけですから、事前に市町村の了解を得るべきではないかということが一つ。

 それともう一つ、今回社会的入院を減らすという坂口大臣の趣旨でありますけれども、医療保険適用の療養型病床が介護保険適用に変わったからといっても、社会的入院がなくなったことには何にもならないんですね。

 社会的入院の何が悪いかというと、本来入院治療が必要でない方が病院のような環境に長居するのは、医療費にとっても本人にとってもよくないですよというのが社会的入院を減らす意味なわけですから、その病院がそのまま介護保険適用の療養型病床になったって、それは数字上で老人医療費が減って介護保険費がふえるというだけで、何ら本人にとっては社会的入院の解消になっていないわけです。

 そういう意味では、もし医療保険適用の療養型病床が介護保険適用に変わる場合では、やはり介護保険というのは、生活の場で介護を受けるというのが理念なわけですから、その生活の場と呼ぶにふさわしい療養環境も整備することとセットでないと、医療保険適用の療養型病床は介護保険に移れないようにする、それが私は筋だと思います。坂口大臣、いかがでしょうか。

○坂口国務大臣

 総論として御主張になっていることは私も十分理解できることでありますし、私もそのとおりだというふうに思います。

 療養型から介護型の病床にどんどんふやしていくということになれば、それは地域の介護保険事業全体に対して大きな影響を与えることはもう御指摘のとおりだというふうに思いますので、療養型の病床から介護型の病床にふやすということにつきましては、これはやはり、よくその地域地域で検討していってもらわなければいけないわけでありますから、当然のことながら都道府県がその指定を行うわけでございますしいたしますので、そこはきちんと見させていただかなければならないというふうに思っております。

 もう一つのお話は、居住面積のお話でしたでしょうか。

 今、療養型の病床ですと六・四平米ですが、老健が八・〇、それから特養が一人当たりですけれども十・六四、こうなっておりまして、療養型病床の方は非常に少ないわけですね。ですから、これから先の一つの最終の住みかとするというお気持ちの方々に対しましては、小さな限られた面積のところで入院をしていただいているというよりも、特養の方は十・六四ですから、少なくともそのぐらいの大きさの中で、そして生活が十分にできるように、そういう体制を整えていかなければならないんだろうというふうに思っています。

 ですから、このことは、こういうところを選んでいただけるようにできるかどうかということにかかってくるわけでありますね。御自宅で最終をお迎えになるか、それともこういう施設を選ばれるかという問題になってくるわけでありますから、その選択によりましてそれに見合ったようにしていかなけりゃならないというのは、当然御指摘のとおりだと私も思っております。

 いずれにいたしましても、いろいろの施設ができ上がってまいりまして、選択肢はかなり広がってきているというふうに思います。ただ、病院というところは、医療を受ける必要があればともかくとして、そうでない限りは、最後までそこに住んでいる場所ではないということだけは私は事実だろうと思いますから、それ以外のところでどういうところを選択していただけるかということを十分にお聞きをしながら、こちらも整備をしていかないといけないというふうに思っております。

◎山井委員

 坂口大臣、後半の答弁はそういう生活環境に配慮するような方向に変えるということで理解できるんですが、前半の方の、もう一度お伺いしたいんですが、医療保険適用の療養型病床が介護保険に移行するときに、市町村の保険料が非常にアップしますよね。このことに関しては市町村にとっては大問題なので、やはりそういう移行をするときには事前に市町村の了解を得るべきではないか、計画が大きく狂うわけですから、ということについてはいかがでしょうか。

 なぜこういうことを聞くかといいますと、まさにこれから在宅福祉をますます充実させていく上で、ケアマネジャーさんの介護報酬を上げないとだめだとか、今低いホームヘルパーさんの家事援助の報酬を上げないとだめだとか、そういう議論をしていくときに、介護報酬の議論をすると、どうしても介護報酬全体と介護保険料がアップするという議論になります。そのときに、本来ふやすべきホームヘルパーさんやケアマネジャーさんにお金が行くのではなくて、医療保険から移ってきた療養型病床によって介護保険料がどんと上がってしまったら、何のための三年後の介護保険の見直しかわからなくなってしまうわけですね。悪い言い方になると、老人医療費の伸びを適正化するためのしりぬぐいを介護保険にやらせるだけのことになってしまうんですが、そのあたり、いかがでしょうか。

○坂口国務大臣

 後半お触れになりましたところは私もそのとおりと思うんですが、いわゆる保険そのもの、介護保険そのものは市町村になっておりますけれども、そういう施設をつくる、療養型のベッドをどうするか、あるいは介護型のベッドをどうするかというその辺のところは、決めますのが県単位になっておるわけですね。そこが若干違うということがありますけれども、これは県の方と市町村とでよく連絡をして、これは県の方が受け付けますけれども、県の方は市町村ともよく連絡をしてもらうように配慮いたします。

◎山井委員

 そのあたり密に連絡をとって、本当に市町村が嫌がっているのに無理やり来て保険料が上がってしまった、それでほかの介護サービスが充実できなくなったということがないようにしていただきたいと思います。

 きょう質問させていただきましたけれども、自己負担はこれからアップしていく、情報開示についてはまだまだ。レセプトのこと、カルテのこと、もっと本腰を入れて、まさに検討会でやる中で、やはり抜本改革を厚生労働省はやったな、自己負担のアップだけではなくて医療の質の向上をやったなということをぜひともやっていただかなければならないと思いますし、しかも予防重視や在宅の方向にしっかりと向けていく、そういう改革をやってもらいたいと思います。

 最初にも申し上げましたが、今回のサラリーマン自己負担の三割アップ、あるいは高齢者の自己負担のアップ、あるいは保険料のアップ、そういうことによってトータル二兆円ぐらいのアップになるだろう。これは本当に、今の景気の回復をおくらせる深刻な問題になってしまうと思います。最後に改めてお伺いしたいんですが、今回のこのような負担増は景気に対して悪影響をやはり与えると思います。坂口大臣、景気と今回の三割負担を初めとする負担増の関係について、率直な答弁をお願いします。

○坂口国務大臣

 経済のことでございますから、いろいろの心理的な影響を受けることは事実だというふうに思いますが、しかし現在、国民の皆さん方が一番思っておみえになりますのは、現在どうかということではなくて、将来ともに安定した制度ができるかどうかということを一番懸念しておみえになると私は思っております。したがいまして、将来ともに安心できる制度を確立するということをここにお約束ができるかどうかということが一番私は論点だと思っている次第でございます。

◎山井委員

 まさに、今の答弁にありましたように、それは負担増というよりは、やはり抜本改革をしっかりやっていくということだと思います。審議、きょうで二十時間以上させてもらっておりますが、その抜本改革の姿勢というものが、まだまだ私たちは納得することができません。もっともっと時間をかけて慎重審議をして、抜本改革の姿が見えないのであれば負担増も見送る、そのような姿勢をお願いしたいと思います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

○森委員長

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
 


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