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2001年11月21日 

衆議院 厚生労働委員会 議事録

雇用関連法案について
やまのい和則 部分掲載


○山井委員

四十分間質問をさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
 本来の雇用関連法案の質問に入る前に、非常に重要なことですので、医療制度改革について一点、坂口大臣にお伺いしたいと思います。
 前回の質問の続きにもなるんですが、大臣在任中は医師連盟から政治献金は受け取らないということを御答弁されましたが、ちょっと確認をしたいんですが、なぜそのように考えておられるんですか。その趣旨は、なぜでしょうか。坂口大臣、お答えください。


○坂口国務大臣 

厚生労働行政というものをお預かりして、そしてこれを担当させていただくということになれば、それはやはり、国民の皆さん方からごらんをいただいて、偏りのない、中立公正な行政にしていかなければならない。そのためには、李下に冠を正さずで、いろいろなところからいただくということは、それは、たとえ自分の気持ちの中でそうではなかったとしても、そういうふうに理解をされる可能性がある。したがって、慎まなければならないというふうに思っている次第でございます。

○山井委員

 まさに、国民から見て偏りのない、公平中立な行政という意味で、李下に冠を正さずということで、本当に私もそのとおりだと思います。
 そこで、一つお伺いをしたいと思うんです。坂口大臣もごらんになったかと思うんですが、ある医療情報紙をちょっと私、たまたま入手して、そこにこういうことが書いてあります。医療制度改革の最終決着は日本医師会会長との話し合いでと坂口厚生労働大臣が明言、これが見出しであります。ちょっと読ませていただきます。
 坂口厚生労働大臣は十七日、医療制度改革案の意見集約について、最終的には自身と日本医師会の会長との話し合いで取りまとめると言明した。小泉首相が繰り返し強調する三方一両損の考え方から、「先生方にもいろいろご苦労をお願いしなければならない」とする一方、厚生労働省としても痛みを十分感じることをやらねばならないとの認識を表明。目先の財政対策ではなく、二十一世紀に耐え得る制度の骨格をつくる決意で今後の改革論議に臨むとして、最終的には日本医師会会長との直談判で決めさせていただくとの方針を明確に示した。
 十七日、三重県四日市市で行われた中部医師会連合委員総会であいさつした中で述べたということでありますが、この報道は事実でしょうか。


○坂口国務大臣 

正確には覚えておりませんけれども、大体そういうことを言ったというふうに思っております。
 そこで私が申しましたことは、それだけではなくてもう少しいろいろのことを言っているわけですが、これからこの年末に、とりわけこの十一月の末にかけまして、医療制度の改革を進めていかなければならない、それを進めていくにつきましては業界やあるいはまたさまざまなところと御意見も伺っていかなければならない、そうして最終決断をしたい、とりわけ医師会にかかわります分野につきましては医師会長との直談判で決めさせてもらいたい、こういうことを言ったわけでありまして、これから進めます医療制度全体を坪井医師会長と二人で決めようなんというようなことは、思ってもできないことでございますし、そういうことを申し上げたわけではありません。


○山井委員 ということは、今まさにおっしゃいましたように、いろいろな関係団体があるわけですから、例えば看護協会の会長さん、歯科医師会の会長さん、薬剤師会の会長さん、あと保険医協会さん、病院協会さん、健保連の会長さんといらっしゃいますが、この方々とも直談判はされるというふうに認識してよろしいですか。


○坂口国務大臣

 いろいろの御意見があると思いますから、承りたいというふうに思っております。


○山井委員

 私は、このような報道を見まして一つちょっと気になりますのが、やはり医療制度改革という、まさに坂口大臣がおっしゃいましたように、国民から見て本当に公正な行政を行わねばならない、ところが、やはり一つの関係団体に偏ったことがあってはならないと私は思っております。お医者さんの意見も大事ですし、看護婦さんの意見も大事ですし、また患者さんの意見ももちろん大事ですし、健保連さんの意見も大事だと思います。
 また、そんな中で日夜医療制度改革づくりのためにある意味で御奮闘されている厚生労働省の役人さんにとっても、このようなことで、最終的には医師会の会長と直談判で決める、こういうふうなことを厚生行政の責任者がおっしゃるということは、ある意味では役人の方のモラルの低下も招くのではないかというふうに私は思いますが、坂口大臣、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 そんなことも思いませんけれども。なかなか直談判して決まる話ではありませんから。
 ただ、医療にかかわります問題というのは、これは医療機関と話をするチャンスというのは当然あるのだろうと私は思うのですね。これはなかなか、決めなければならないところで、大きな分野であろうというふうに思っています。それは医師会だけではありません、病院協会もありますし、さまざまな協会がございますから。そうしたところの中で、いわゆる医師会関係のことにかかわります分野につきましては、これは医師会長と最終的に話をして決めなければならないだろうというふうに私は思っております。しかし、病院協会は病院協会でまた別の御意見があるだろう、その皆さん方とのお話もあるだろうというふうに思っています。
 先ほども申しましたように、全体を二人で決めるというようなことはできるわけでもありませんし、そういう状況にないことも事実でございます。
 また、うちの方の官僚諸君の方は、それぞれ努力をして今やってくれているわけでありますから、逐一話をしながらこれはやっているわけでございますので、もしそういう話をするといたしましても、私が個人の見解で決めるということではなくて、みんなの意見も十分に聞いてそれはやるということになるだろうというふうに思います。
 そういう趣旨でございますから。どうぞひとつ、そういう趣旨に御理解をいただければ幸いでございます。


○山井委員

 私は何も医師会の意見を聞くなと言っているわけではなくて、お医者さんの意見も大事ですけれども、同時にほかの関係団体とも、バランスよく当然意見を聞いていただきたいというふうに思っているからです。まさに大臣がおっしゃったように、偏りのない、公平中立な行政というふうに、今、この医療制度改革、国民が一番注目して、また痛みに対してどう対応しようかとしているときであります。
 そういう意味では、ある意味で医師さんの数よりも看護婦さんの数が多いわけですが、目の前に南野副大臣がおられるので聞いてみたいのですが、こういう医療制度改革の議論では、また、看護協会の会長とも直談判ということがこれから出てくるのでしょうか。


○南野副大臣

 直談判ということよりも、広く御意見をいただく。御意見の中には、直接お聞きすることもあれば、メールで来ることもあるし、クレームが来ることもあるし、いろいろなマスメディアを通して知り得た情報で私の考えをまとめさせていただくということでございます。


○山井委員

ありがとうございます。まさに今南野副大臣おっしゃいましたように、直談判というよりも、広く多くの人の意見を聞くということであると思います。
 ですから、ひとつ坂口大臣にもお願いなのですけれども、やはりこういうふうな、直談判で特定の関係団体と話を決めるという誤解を招かないように、直談判というよりも広くオープンに、意見を聞かせてもらうのだったら、何も直談判という表現ではなくて、オープンな場で意見交換して話を聞かせてもらったらいいと思うので、そういう意味では、坂口大臣、直談判という表現はちょっと適切ではないのではないかと思うのですが、そのあたり、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 いろいろの団体と話をしなければならないというふうに思いますが、医療にかかわっている人との話し合いというのは、これは一番大変なことだろうと思うのです。総理も三方一両損ということを言っておみえになりますが、医師会の皆さん方にも厳しいことを申し上げなければならない、最も厳しいことをやはり医師会の皆さん方に申し上げなければならないのだろうというふうに思っています。
 ですから、他の分野のことよりも最も厳しいところを言うところは、それはまさしくだれかに絞って直談判をして決めるということにせざるを得ないことが起こるのではないか。易しいことを決めようと思っているのなら、それはそんなことを私は表現はしなかったわけでありますけれども、直談判をして私が決めるというふうに言いましたのは、私も覚悟をしておりますよ、どうぞひとつ皆さんも覚悟していてくださいよということを私は表現したわけでありまして、いささか文学的表現過ぎたかな、こう思っております。

○山井委員

そういう意味では、これは医師会だけではなくてあらゆるところが今回の医療制度改革では痛みを伴うのではないかと思いますので、もちろん国民を含めて、そういう関係団体の声をバランスよくぜひとも聞いていただきたいですし、それはオープンにやっていただきたいというふうに思います。
 では、本題の雇用関連法案についてお伺いしたいと思います。
 まず、一九九九年に開始した緊急雇用対策では、七十万人以上の雇用創出を目指していたものの、確保できた新規雇用者は、ことし八月末現在で四割弱という結果が出ております。また、二〇〇〇年五月から実施しているミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策の二〇〇〇年度の実績がことし五月までにまとまりましたが、その結果を見ると、二〇〇〇年度の雇用実績は三十一万九千人で、目標の三十五万人を達成できなかった。このようなことに関して、なぜ目標どおり達成をできていないのかということについてお聞かせください。


○南野副大臣 

先生から二つの御質問がございましたが、まず最初の、緊急雇用対策でどうして七十万人ができない、その件につきましては、七十万人の雇用就業機会の増大ということを掲げた一昨年の雇用対策は、これは平成十三年度末までの計画期間といたしている、これが一つでございます。
 その件に関する状況といたしましては、新規また成長分野、これは十五分野ございますが、そこにおける事業主が労働者を前倒しして雇い入れる際の支援については、本年九月末現在で、支給申請対象人員、これが約五・一万人。さらに二番目の項目でございますが、地方公共団体が現在行っている、創意工夫に基づき臨時応急の雇用就業機会の創出を図る事業については、十二年度までの新規雇用就業者数の実績は約二十二万人ということとなっております。これが、本年の九月末現在では、やはり約三十万人近くの雇用就業機会が創出されているということは申し上げられると思います。
 さらに、これに関しての二つ目でございますが、七十万人の四割にとどまっている理由としましては、一つは、対象人数が二十万人とされた緊急雇用創出特別奨励金の支給申請が九千件程度にとどまっているということでもあろうかと思います。さらにまた、本年の三月に終了いたしました人材移動特別助成金の利用率が低い、さらに対象人員の七万人の二割程度にとどまったという、この点も考えられるのではないかなと思っております。こうしたことから、現時点で七十万人に達していないとはいうものの、雇用対策としての、一定の下支えをすることについての効果は果たしてきたというふうに思っております。
 さらにもう一つのミスマッチの件でございますが、これにつきましては、平成十二年度を中心といたしまして、三十五万人程度の雇用就業機会の拡大の実現化を図るというふうにいたしております。
 平成十二年度末における実績、これを御報告いたしますと、一つは、創業や異業種進出を行う中小企業への雇い入れ助成については十二万人弱、これは目標が十万人でございましたので一応達成されているかなと思っております。また、二番目の、地方における臨時応急の雇用就業機会の創出につきましては十六万人弱、これも一応目的を達成しているかなと思っております。さらに、介護関連事業主の雇い入れ助成につきましては二万人弱ということでございます。さらに、新規・成長分野におきます前倒し雇用に対する助成につきましても三万人弱となっておりまして、合計で三十二万人の雇用就業機会が創出されたということでございます。
 このように、中小企業の雇い入れ助成は目標を上回っており、または新規・成長分野雇用創出特別奨励金や介護人材確保助成金などについての目標は下回っているということを申し上げなきゃならないのかなと。目標の三十五万人に達し得なかったということでは事実でございますが、その雇用に関しましては、先ほど申したとおり、下支えの効果があったというふうに認識しているところでございます。


○山井委員

私は非常に不十分だと思うんですが、その中で緊急地域雇用特別交付金についてお伺いしたいのです。これは、さまざま新聞でも報道されているように、新規雇用だけではなくて非失業者をたくさん雇っていたというふうなことが指摘されております。私もこれを調べさせてもらいましたが、なかなかいろいろなものがありました。
 具体例で目についたのを挙げますと、例えば、ちょっと本当に私の独断と偏見で抜き書きしましたが、ニホンザルの生息数調査、被害調査等の基礎調査、三百万円で新規雇用二人。別に、これが悪いと言っているわけでは全然ございませんが。例えば、伊勢崎かすりに関する資料収集と目録作成事業、三百四十万円で新規雇用が四人。飼い犬ふん害等防止パトロール事業、五百六十万円で二十一人雇用。ということは、半年たったら、ふんはもうほったらかしておいてもいいということになるのかな、これは半年ですからね。あと、桜祭り会場駐車場内誘導業務、五十万円で三人。
 ここで感じますのは、何か法の趣旨と違って、地方自治体のお金が足りないから、ああ、ちょうどいいお金が来たからこれを使ってしまえということで、一番多い広島県では三分の二が、非失業者がこれによって仕事をしていたということなんですね。このような現状に対していかがでしょうか。
○澤田政府参考人 今委員が御紹介されました事案は、私どもも承知しております。この交付金事業は、都道府県がやる分と市町村がやる分とございまして、市町村に行きますと、かなり事業規模も小さく、個々の事業においても今のように雇用効果がどれだけかというものもございます。
 この点につきましては、現行交付金の交付要領あるいは通達等で失業者を雇うことということは強調しておりますが、どの程度雇うかとか、その辺の一切の基準がないという点が今回の反省点でございまして、そういうものを含めて、新しい交付金ではより効果的に、かつ、みんなが納得できるような事業が創意工夫のもとに凝らせるようにしていきたいと思っております。


○山井委員

私が一番気になりますのは、この交付金があったから仕事をふやしたということなのか。そもそもやる事業だったけれどもたまたまこの交付金が来たからお金だけをそこに充てた、これでは雇用を創出したことにならないわけですね。
 例えば青森県雇用創出推進プラン策定事業は、一千三百万円で新規雇用一人なんですね。雇用を創出するという趣旨から考えたら、一千三百万もかけて一人しか雇用が生まれていないというんだったら、やはりこの趣旨から余りにも外れているんじゃないでしょうか。それともう一つは、そもそも、青森県雇用創出推進プラン策定事業というのは、この交付金が来なかったらやらなくてよかった事業なんですか。すごく重要なことだと思うんですね、雇用創出推進プラン策定事業ですから。だから、これを見ても、明らかに本来の趣旨とずれてしまっている。
 このことに関して今後どのようにしていくか、答弁をお願いします。

○澤田政府参考人 

現行交付金の趣旨、内容を改めて申しますと、まさに臨時応急の措置として、大臣がたびたび申しているように、ある意味ではつなぎとして雇用創出をしていただく。その場合に、私ども通達で言っておりますのは、今、都道府県なり市町村が自前の財源でやっているものを、この交付金のいわば財源のつけかえで実施することはだめです、新しいことを考えてください、そのために交付金の財源を使ってください、こう言っております。
 したがいまして、今の例で言いますと、青森県の雇用創出事業をこれから起こそうというときに、どういう計画、つまりどういうコンセプトでやろうとか、どういう仕組みでやろうとかということをお考えになることは、まさに今までになかった新しいことでありますから、交付金の使い方としては不適正とは言えない、こう思います。
 今後のやり方でありますが、今申しましたように、とにかく新しい事業で今までの事業の財源のつけかえではない、こうはっきり従来もしておりますが、今後もさせます。そして、雇用創出効果を高めるという意味で、これまでも他の委員の方々に御答弁しておりますように、事業費の中の人件費の割合を八割以上、そして新規に雇う人の四分の三は失業者ということをきちんと示したい、こう思っております。
 そして、その点につきましては、計画段階で私どもが見るだけではなくて、計画を実施した後の事後の報告においても、何人の失業者を雇ったかということ等詳細に報告を得て、都道府県、市町村段階でもそれが公表されるようにしていきたい、こう思っております。


○山井委員

ちょっと坂口大臣にあえてお伺いしたいんですが、繰り返しになりますが、国民の貴重な税金で雇用対策ということをやっていて、今のような、一千三百万も使って新規雇用が一人しかふえなかった、そういうことに対していかが思われますでしょうか。
○坂口国務大臣 先ほどいろいろの例を挙げていただきましたのは特に悪い例ばかり、もっといいのもあると僕は思いますから、例を挙げていただくときにはいいものも一つ二つぜひ公平に挙げていただきたいと思うのです。
 それはそれといたしまして、この事業は、先ほどから話が出ておりますように、一時的なつなぎの役割をするということでございます。したがいまして、先ほど例を挙げていただきましたのは青森県でございましたか、いろいろこれをお使いいただいて、そこではあるいはお一人しか雇用に結びつかなかったかもしれませんけれども、そこで働いていただいた皆さん方の中には、御自分でまたその間にいろいろ雇用のことをお考えいただく一つの機会になったのではないかというふうに思います。
 そこで働いていただいている皆さん方が半年しても何らなくて、半年で全部が終わりで、その間に新しい仕事を見つけることも全部できなかったということになれば大変残念なことですけれども、やはり私は、その間に考えていただく方もあるのではないか。あるいはまた、今まで自分の予定していなかったことだけれども、半年間そこで働くことによって、新しい仕事への価値観、こういう仕事も一遍自分は将来やってみてもいい、そうした思いが芽生えることも私はあるのではないかというふうに思っております。
 私ごとを申し上げて恐縮ですけれども、私は若いときに三カ月のアルバイトに行きまして、それで、これはええことやというので、そこで私は七年間、一つ仕事をすることになったわけでありまして、人生思わざるところで思わざる方向に価値を見つけることもあるわけでございますから、私はそうしたことが生まれることを期待いたしております。


○山井委員

一つ御要望したいのは、本当に半年後の雇用に結びつくかどうかということなんですね。そういう意味で、今回のこの新たな三千五百億円の雇用創出特別交付金に関してもきっちりと、どれぐらい雇用に結びついているのかということを検証していただきたい。先ほども言いましたように、それによって雇用が生まれたのか。もともとその事業はやろうとしていたけれども、たまたまこういう交付金が来たから当てはめたということでは、ある意味で雇用行政、雇用創出の政策そのものの信頼性も失われると思います。
 それと、私もおとつい、ハローワークや地元の市町村の窓口に行ってこのことについて聞きましたら、人件費率八割、そして四分の三以上新規雇用ということになったらもう職種がなかなかないですよという声を聞きました。だから、逆にこの三千五百億円が使い切れないんじゃないかというふうな心配もしております。そのような意味で、ある意味でここ一、二年の失敗というものを踏まえて、決してばらまきにならないようにしていただきたいと思います。
 次に移らせていただきますが、自治体の担当者も、ある意味で、雇用対策だけでは不十分である、雇用の受け皿、不況対策と車の両輪としてやってもらわないと限界があるということをおっしゃっておられました。そんな中で、私は、大型の建設型の公共事業よりも医療や介護の方が約二倍ぐらい雇用創出効果が高いという研究調査もあるわけですから、介護分野にこれから力を入れるべきだと思っております。それに関連して、介護雇用創出助成金についてもお伺いしたいと思います。
 どのような中身で何件ぐらい介護雇用創出助成金を使ったのか、それで年間の予算は大体何億円ぐらいだったのか。この一例として、介護雇用創出助成金についてお伺いしたいと思います。


○澤田政府参考人 

介護雇用創出助成金は、介護分野で新サービスの提供等を行う事業主が、そのサービス提供に伴って新たに労働者を雇い入れた場合に、賃金助成をしたり、職場環境の整備に要する施設整備費を助成したり、あるいは能力開発が必要な場合にはその能力開発の費用を助成したりという制度でございます。
 これの助成を受けるには、まず、介護労働法に基づきまして、自分が雇う労働者の雇用管理の改善計画を都道府県に出して認定してもらうことが要件になりますが、そうした上で、この助成金が別途申請されて支給されるということになります。
 雇い入れの人数及び予算等のことでございますが、平成十二年度分といたしまして、一万八千人強の雇い入れ人数が出ております。制度発足以来の累計で申しますと、二万四千七百人強が助成対象として受け入れられております。予算でございますが、平成十三年度は約七十六億円を計上しておるところでございます。


○山井委員

年間一万八千人ということですが、これは大体、すべての介護関係の事業所のごく一部だと思います。新しく新規雇用や新規事業を始めたところの中でもこれを利用されているのはごく一部だと思うんですけれども、なぜ一部のところしか利用されていないのでしょうか。


○澤田政府参考人 

実際の数字をちょっとあらあらでございますが計算してみますと、労働者ベースで見た場合に、ゴールドプラン21に基づく基盤整備ということで、年間平均八万人の雇用を介護分野で広げる、広がるということになっています。それで、八万人のうち、この介護助成金の対象になった人は大体二二%ぐらいになると思いますが、そもそもこの助成金を利用するには、先ほど申しましたように、事業主がそこで雇う労働者の雇用管理の改善計画を都道府県に申請して認定してもらうというのがベースになりますので、その改善計画の認定申請を新規に開業された事業主すべてがしているわけではないというのも一つあろうかと思います。


○山井委員

そこで、そもそも私思うんですが、今、年間一万八千人ふえたと。このような雇い入れ助成がなくても、この一万八千人はふえていたんじゃないかと思うんですね。
 単純に言えば、老人ホームの入居者がふえる、あるいはホームヘルプの利用者がふえる、新しい事業展開をしたい。そうしたら、ホームヘルパーをふやしますよね。言ったらなんですけれども、半年だけ半額お金が補助されるというのは、そこに新たに進出しようと決めた後での話であって、半月分お金が出るから新たな事業を介護でやろうとか考える人というのはいないと思うわけなんです。
 そういう意味では、この介護雇用創出助成金があったから雇用がふえた分と、なくても雇用はふえていた分と、例えばこの一万八千人のうち何割が介護雇用創出助成金の効果だというふうに認識していられるでしょうか。

○澤田政府参考人 

そこは、委員御指摘のように、残念ながら分析不可能であります。
 この助成金の趣旨を申し上げますと、この助成金があることによって介護分野で新規に参入しよう、事業を起こそうということを刺激するというよりは、介護分野で新規開業した人たちの創業時の、いろいろ創業時は困難な時期であろうと思います、そういうときに創業時の立ち上がりを支援する、こういう目的がこの助成金のかなりの趣旨でございますので、この助成金があるから新たに人を雇うとか介護分野に進出するというインセンティブは、事業主から見て多いとは私どもは思っておりませんし、現実にもそういう効果としてはないだろう。開業した後の困難な時期において、事業主に対するいろいろな経費面での支援等々では制度として効果があるものと考えております。


○山井委員

新規雇用にどれだけ寄与したか分析不可能というのは、ちょっと余りにも無責任ではないでしょうか。やはり、限られた財源でどうやって効果的に雇用を創出しようかというときに、いや、これによってどれだけ雇用が創出されたかというのは分析はできませんと。逆に言えば、だからこそ、こういうのはやはりばらまきと言われるのではないでしょうか。


○澤田政府参考人 

私の説明が不十分だったと思いますが、実際にこの助成金の対象になった方のうち、当初から使用者が雇おうと思っていた人と、助成金があるから追加して雇おうと思った人の分離はできないという意味で申し上げたのでありまして、助成金の対象になった方はいずれも新規雇用であることは間違いございません。


○山井委員

介護の分野の特徴を言いますと、ある意味で、補助金が、交付金が出るからヘルパーさんをふやすとか新しい事業をやるというよりは、基本的には、需要があるから新しい事業所をふやそうか、あるいはもっと言えば、介護報酬の設定を見て、この介護報酬だったら採算がとれるから、もうかるから、あるいは採算が成り立つからということで新規事業に出ていくわけですね。
 そういう意味では、根本的に雇用創出をしようとするならば、このような、言い方は失礼かもしれませんが、小手先の雇い入れ助成ではなくて、例えば、介護報酬を引き上げて、こういう介護事業、採算とれますよ、しっかりとれますよということをアピールする。あるいは、今、在宅で暮らす人が困難になってきている、在宅の介護保険の支給の限度額をアップさせる。そうしたら自動的にヘルパーさんの数や訪問看護婦さんの数もふえて、雇用は創出されていく。やはり、そういう介護報酬の問題や在宅の介護保険の給付限度額のことまで踏み込まないと、そもそも需要が一定なのにそこに交付金を出しても、それによって雇用がふえたかどうかというのはおっしゃったように検証できないのですね。
 そこで、申しわけないのですけれども、坂口大臣、こういう小手先の雇用対策ではなくて、やはり本当に雇用を創出していく。その中でも、目玉としてITや介護ということを小泉首相もおっしゃっておられるわけですから、そうしたら、やはり介護報酬のことや在宅の介護保険の給付の限度額を上げていって、利用者をふやす。サービスの利用者がふえたら、サービスの提供者の雇用がふえるのは当然なわけですから。そういうところを考えないと、繰り返しになりますが、この給付金でどれだけ雇用が本当にこれによってふえたかどうかわからないというような事業にお金を使うよりは、私は、介護報酬の引き上げや在宅の給付限度額の引き上げの方が、同じ年間何十億を使っても効果があると思うのですが、いかがでしょうか。


○山井委員

なかなか、介護保険の引き上げというのも、そうなかなか簡単にはいかない話なものですから、お気持ちはわかりますけれども、そう簡単ではないというふうに思います。
 確かにそれは、そういう補助金がなくてもお仕事は始められたかもしれませんし、気は心といいますか、やっていただく皆さん方に対するささやかな支援をさせていただいているということにすぎないというふうに私も思います。それだったら、そんな気は心みたいなことはやめて、ささやかなことはもうやめて、そしてそれをほかへ回したらどうだという御意見、それは、私は率直にそういう御意見もあるだろうと思うのですね。そうしたこともよく考えて、これからやっていきたいと思います。


○山井委員

まさに大臣が答弁をしてくださったように、気は心、そういうふうな形でお金をばらまいていたのが二十世紀の、やはり右肩上がりの時代はそれで通用したかもしれませんが、これから本当に限られた財源で、いかにどうすれば国民の方々の負担をふやさずに雇用をつくっていくかというときには、やはりそれは一回整理する必要があるのではないかと思います。
 それと同時に、介護の分野でいいますと、ホームヘルパーさんや老人ホームの職員さんの離職率が非常に高いのですね。例えば、私の知り合いの東京の老人ホームでは、新卒の方が去年の四月に十人新たに入った、ところが、もう七人やめちゃったというわけなんですね。要は、労働条件が悪いから、雇ってもころころまたやめてしまう。つまり、労働条件をきっちりと介護分野でも整備せずにこういう交付金を出していっても、穴のあいたバケツで水をすくうようなものだと思うのですね。
 そのあたり、やはり雇用を創出していくという前提には、離職者を減らすということとセットでやらないと意味がないわけですから、介護分野の働く方々の労働条件、待遇の向上ということについて、坂口大臣の思いというか、決意をお聞かせ願いたいと思います。


○坂口国務大臣 

もちろん、働く人たちに対し、そのお仕事に対する評価を十分にするにこしたことはないというふうに思いますが、若い人が皆さん方お勤めになって、そして十人のところ七人もやめていかれるというのは、もちろん私は金銭的な面もあるとは思いますけれども、しかし、それだけではなくて、自分たちがやろうとしていた仕事、自分が思っていた仕事の内容と現場の仕事の内容との違い、そのことによっての、やはり落胆といいますか、自分が思っていたのはこういう仕事ではなかった、そういう思いが非常に私は強いのではないかというふうに思います。
 もちろん、給与のことにつきましては、初めお入りいただきますときに大体決まっているわけでありますから、その決まっていた給与でありながら、しかしそこで一年間も続かなかったのはなぜかといえば、給与のことももちろんあるかもしれませんが、しかし、私は、仕事に対する認識、意識、やはり介護とは何をやるべきかということがちゃんと若い人たちの頭の中に入っていないというところに問題があるのではないかというふうに思います。


○山井委員

もう時間になりましたので締めくくらせていただきますが、厚生省さんと労働省さんがくっついたわけですから、繰り返しになりますが、特にこの介護分野というのは離職率が高いわけですね。雇用創出を図る一方では、離職者を減らす、そのことをきっちり厚生労働省さんとしても取り組んでいただきたいと思いますし、また、最初の質問にもありましたように、厳しいことを言うから医師会と直談判するということですけれども、今回の医療制度改革はみんなにとって厳しいのですね。だから、そういう意味では、特別扱いすることがないように、きっちりと、周りから見て公平な取り組みというものをお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。


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