2001年05月18日 衆議院 厚生労働委員会 議事録 |
やまのい和則 質問 部分
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○鈴木委員長 次に、山井和則君。
○山井委員 このたび、坂口大臣、厚生大臣に留任されまして、おめでとうございます。今までから、公明党さんそして坂口大臣、非常に福祉に力を入れておられるということで、留任していただいたことを私は非常にうれしく思っております。 小泉首相は構造改革ということを言っておられます。そのことをこの厚生労働委員会、厚生労働部門に当てはめますと、私は三つのことが言えるのではないかと思います。構造改革というとどうしても財政の問題が先走りますが、事この厚生労働部門におきましては、次の三点を私は挙げさせてもらいたいと思います。 一点目は、日本版ADA。アメリカでは一九九〇年に障害者差別禁止法ができました。日本はまだそれができておりません。そのことに関して、先日の代表質問でも公明党の神崎代表が、公明党は一貫してこういう問題に取り組んでいるということを言ってくださいました。私も非常に感激をして、拍手もさせていただきました。民主党の鳩山代表もこの問題に精いっぱい取り組みたいということを言っておられます。やはり、体の不自由な方々が安心して地域で暮らせる、自己決定で、住みたいところで暮らせる社会づくり、これこそが第一点目の構造改革ではないかと思います。 第二点目は、同じく住みなれた地域で、あるいは自己決定で暮らしていくことができていないのが精神障害者の方々の問題であります。これは後ほど質問でも触れさせていただきますが、やはり、そういう精神障害の方々が地域で暮らせる社会づくり、これこそ抜本的な見直しを二十一世紀していかねばならないと思います。 そして、三つ目が、ほかでもありませんが、このハンセン病の問題。 日本版ADA、日本での精神障害者の多過ぎる精神病院への入院の問題、そしてこのハンセン病の問題。残念ながら、この三つに共通して流れているのは、強制隔離。弱った方、病気の方々を必要以上に日本という国は隔離してきた。欧米や世界では住みなれた地域で暮らせる方が、この経済的に豊かなはずの日本で、残念ながら病院や施設やあるいは療養所で暮らさざるを得なかった。残念ながらこの二十世紀の反省の上に立って、二十一世紀、まさに厚生労働行政の構造改革というものを、坂口大臣を先頭に進めていただきたいと思います。 そして、まず第一点目ですが、私、きょうの新聞報道を見てびっくりいたしました。このハンセン病の問題に対して、もしかしたら国が控訴をするかもしれないという報道であります。 私、坂口大臣が留任されたと聞いて最も喜んだのが、このハンセン病の問題であります。今までから人権と福祉を旗印とされておられた坂口大臣が留任されたら、今までから公明党さんもこの問題に熱心に取り組んでおられたので、これは大丈夫だ、この問題をきっかけに日本の福祉のこの収容隔離というものが大転換するというふうに期待をしておりました。 先日も、私は多磨全生園というハンセン病の方々の療養所に行かせていただきました。全生園と書いて、全く生きる園。つまり、ここで人生を全うしなさい、人生の最後までここで暮らしなさいという、ある意味では私は非常に厳しい名前だと思います。 先日来られた患者の方々も、自分は小さいとき、昭和三十七年に療養所に入れられた、今回の判決でもわかるように、三十七年だったらもう隔離しなくていいとわかっていた年じゃないんですか、自分はお母さんと一緒に住みなれた地域で暮らしたかった、どうして隔離されないとだめだったんですかと。そのような問題。 二万三千七百人もの多くの方々が無念の思いで亡くなっておられまして、先ほどの金田議員の質問にもありましたけれども、死してなお地元に帰れない。その多磨全生園を案内していただいた平沢さんという方も、私は今もう自由の身になったけれども唯一行けないのが自分の生まれ故郷である、ここに帰ると家族に迷惑がかかるから帰れないんだとおっしゃっておられるわけです。 そこで、お伺いしたいと思います。 御存じのように、平均年齢七十四歳、これ以上引き延ばすということは、生きてこの結審を迎えることができないという方がますます多くなってしまうということになります。坂口大臣、先ほど、小泉首相と相談、法務省との協議ということがありました。しかし、明らかなのは、まさに厚生労働大臣である坂口大臣がどう決断をするか、それを今日本じゅうの国民が注目しているわけであります。政治家として、今坂口大臣が厚生大臣になっておられる歴史的な意味を認識していただきたいと思います。 謝罪の問題がありました。控訴しないことこそが最大の謝罪であります。控訴をして謝罪ということはあり得ません。坂口大臣、明確な答弁をお願いいたします。 ○坂口国務大臣 金田議員にもお答えをいたしましたとおり、私は私の考え方を今固めつつございます。そして、総理とお会いをして、総理に私の考え方を申し述べたいと思っているところでございます。 そうしたお話を聞くにつけ、今まで国として、そして厚生行政として誤っていたところは、これははっきりとやはり誤りだということを明確にしなければならないだろうというふうに思っております。既に菅大臣がそうした点も踏まえて謝罪をしておみえになりますけれども、私もそうした思いは一緒でございますが、今回はこうした裁判のこともございますので、この裁判の結論をどうするかということにつきまして、最終、私の意見も申し述べて、そして最後の断を仰ぎたい、そういうふうに思っているところでございます。 ○山井委員 大臣のその言葉をとにかく信じていきたいと思います。 一九六〇年代にアメリカで公民権法というものが成立いたしまして、その中で人種差別のない社会にアメリカは向かったわけであります。それも、小さなときから人種差別というものに苦しんでいたケネディ大統領という人間が命をかけて政治決断をした。それによって社会が変わったわけです。 次に、私は、このハンセン病の問題、そして多磨全生園に行って考えさせられたことがありました。隔離されて住みなれた地域に帰ることができない。しかし、これはハンセン病という過去の問題だけではないと思います。きょう、資料を七ページ、お配りさせていただきました。このハンセン病の問題と一緒とは言いません、しかし精神障害者の問題と非常に共通する部分があると思います。 それは、ここのデータにもありますように、日本という国は精神病院の数が非常に多い。多いだけではなく、まさにハンセン病の問題で問題になったように、世界ではもう精神障害者に対して入院というやり方は必要ないということがわかった時期から、この冒頭の資料にありますように、日本という国は世界の趨勢に反して精神病院のベッドがふえてきました。そして、その次の平均入院日数のグラフにもありますように、世界の中でも飛び抜けて精神科の平均入院日数は長い。全国で約三十四万人の方が入院しておられます。 そして、この下のデータにもありますように、一番下だけを見ますと、例えば文部科学省の研究によりますと、一年以上の患者のうち退院可能な方は五〇%。すなわち、地域にしっかりとしたデイケア、グループホームやケアハウスやいろいろなサービスがあって、また、精神病院での治療がしっかり、もっとお医者さんや看護婦さんやいろいろなマンパワーの部分、そして整備の部分を厚くしていくということをやれば、地域に帰れる人が、この一年以上の入院で五〇・五%もおられます。精神医学のいろいろな論文や学者の方々の発言を聞いてみても、適正な病床数というのはほぼ二十万ベッドぐらいであろうということが言われております。皆さんの方がよく御存じだと思います。 次のページを見てみてください。 そんな中で、厚生労働省は、平成十四年までに障害者プランで三十三万人の入院患者さんを三十万人に。本来だったら、二十万人ぐらいに減らせるという思い切った取り組みをすべきではないでしょうか。先ほども言いましたように、一年以上の入院患者さんのうち半分以上が、地域の十分なバックアップがあれば帰れるということがわかっていながら、三万人しか病院から出ない。これはまさに、ハンセン病の問題と共通するような、日本の国のやはり隔離的な考え方があるからではないでしょうか。 ぜひとも大臣には早急にこの障害者福祉プランを見直していただいて、やはり世界の流れと同じぐらい、日本でいうと約二十万人ぐらいの方々が入院、それ以外の方々は地域で暮らせる、そういうふうな大転換をしていただきたいと思います。大臣の答弁をお願いいたします。 ○坂口国務大臣 確かに日本の中には隔離、そういう風潮と申しますか、そういうふうにしたいという思いというのがいろいろの疾病に対しましてあったことは事実だと私は思います。今御指摘になりました精神障害の皆さん方に対しましても、そういう傾向が本当になきにしもあらず。なきにしもあらずというのは少し言葉が足りないので、かなりそうした傾向があるというふうに私も思っております一人でございます。 ハンセンの問題もそうでございます。私、ことしになりましてからいろいろハンセンの勉強もずっとしてまいりました。そのときに一番愕然としましたのは、これは厚生省の局長さんもされました大谷さんという方がございますが、この方が本を出しておみえになりまして、その本を読ませていただきますと、昭和三十三年にハンセンの世界会議、国際らい会議というのを東京でやっているわけです。インドで初めやる予定だったのですけれども、インドができないというので急遽日本が引き受けてやることになった。そのとき既にその中で、いろいろの分科会がございましたが、その中の社会分科会というところで、隔離政策というのはやめるべきである、そういう政府がありましたら、その政府に対して厳しくそのことを言うべきであるという決議をしているわけです。 ところが、そのときの学会の決議、そこでの議論というものがほとんど外に出なかった。専門誌も含めて、そういうことをきちっと明確に伝えている雑誌がなかった。外国から多くの人を呼んで非常に苦労したという話、苦労話は大変書いてあるけれども、その、隔離をしてはならないということが公にならなかったということが書いてある。私はそれを読んで愕然としたわけでございます。 そうしたこともありまして、精神病につきましても、やはりどうしても隔離をしたいという気持ちが先行していることは事実でございます。これはやはり日本人全体の疾病に対する意識改革をしなければいけないんだろうというふうに思っております。とりわけ精神病に対する意識改革というものをしていかなければならない。やはり、私たちがこの社会の中で同じに手をつないで暮らしていける相手であるという気持ちを持たないといけないだろうというふうに思っております。 緊急に入院を必要とするような人たちも中にはあるだろうというふうに思いますが、しかし、そうでない人まで隔離をしているというケースがありますことも事実でございますから、そうした点につきまして、十分にこれから配慮した行政というのをやっていかなければいけないというふうに私も思っております一人でございます。 ○山井委員 今大臣がおっしゃってくださいましたように、本当に精神医療というものは重要であります。そして、現場の方々も本当に、お医者さんを初め、頑張っておられます。しかし、現場の方々でさえ、もっと多くの方々が地域に帰れるということをおっしゃっておられます。 ですから、二点、お願いしたいと思います。 先ほど言いましたように、やはり二十万ベッドぐらいを精神病院として残すとして、残りの十四万人分ぐらいは速やかに、地域で暮らせるようなケアハウスやグループホームやデイケアや、共同作業所、支援センター、そういうものをつくっていくというプランを新たに作成していただきたい。 それとともに、地域に戻るためには、今の精神病院の医療体制、看護体制ではまだまだ非常に弱い部分があります。精神科特例の問題、やはりこういうものを変えていっていただきたいと思います。 今、大臣がおっしゃったように、隔離をして悪いという情報がなかなか入ってこなかったという答弁がありましたけれども、少なくとも、ハンセン病の問題で明らかになったように、精神障害者の問題は、日本では病院に入っている人が多過ぎるというのはもう明らかで、今わかっているわけですから、ここでまさに仕事をしないということは許されないと思います。 そういう意味では、厚生労働省のお役人の方々とも議論するのですけれども、非常に言いづらいのですけれども、お役人の方々は、自分たちでは余り大きなハンドルは切れない、やはりそこは政治家の方々にお願いしたいと。まさにその、今ハンドルを切るのが坂口大臣であると思っております。 では次に、このことにも関連しますが、介護保険の問題に移らせていただきたいと思います。 介護保険から一年たちました。しかし、導入してからさまざまな問題点も出てきております。このことに関しては、サービス利用量がふえたり、またサービスを気兼ねなく利用することができるようになった、あるいは身体拘束ゼロ作戦の問題や、グループホームという新しいメニューが加わった、さまざまな大きな前進があると思います。しかし、現場の方々に聞くと、問題点も非常に多いように思います。 そこで、まず第一点目。一番深刻な問題は、特別養護老人ホームがますます入りにくくなったということであります。 例えば文京区では、くすのきの郷という老人ホームで、百五十人の待ちが、一年で三百人になった。あるいは京都市では、各特別養護老人ホームで二百人から四百人待っている。もちろんこれは、介護保険になって、重複して申し込んでおられるということがありますが、それを差し引いても入れない。 そして、介護保険の理念である、本来、老人ホームが選べるようになるというのが理念であったと思いますが、選べないのが現状であります。逆に、痴呆症のお年寄りが、手がかかるからといって、逆選択ということで、逆に入りにくくなっている部分があります。 その点、坂口大臣は老人保健施設にお勤めであられたということもお聞きしたのですが、どういう現状か御存じだと思います。特別養護老人ホームに入れないから老人保健施設で待っている、ところが、老人保健施設は半年か一年で出されてしまう。それをまた老人保健施設のほかのところに入れると、都道府県から老健のたらい回しはだめですよと怒られるから、一カ月病院に入れたり、二週間自宅に帰して、一たん老健の関係を切って、また老人保健施設に行く。それをぐるぐる二、三年回っている。 先日も私、ある老人保健施設に行きましたら、お年寄りの方々が、おれは一体最後までどこにいられるんだ、ついの住みかはどこなんだ、家から老健に入っただけでも悲しいのに、またこの老健から半年で出ていって、次に行く先もまたどこかわからない、早くついの住みかを決めてほしいということをおっしゃっておられました。 また、老人保健施設の現場の方も、一回老人保健施設を出て次の老人保健施設に行って、また戻ってこられたら、変わり果てて弱っておられる。すぐに特別養護老人ホームに入れたら、こんなに弱ったりしないのになということをおっしゃっておられました。 そういう意味で、このような特別養護老人ホームをふやしていただきたいと思います。坂口大臣もおっしゃっておられますが、これからは個室の、そしてユニット型の特別養護老人ホームを、新設される際にはふやしていただきたい。しかし、この場合には、家賃や生活費、ホテルコストを自己負担する必要も出てくると思いますので、この点に関しては、低所得の方が、それを理由に個室の老人ホームに入れないということが決してないようにしていただきたいと思います。 それとともに、既存の特別養護老人ホームに関しては、十カ年戦略でもつくって、順次計画的に個室に転換していくという取り組みも必要ではないかと思います。そういう意味では、個室になったという段階でもはやこれは施設ではなくて住居なのだというような大転換が、これも必要になってくると思います。 この点に関して、坂口大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。 ○坂口国務大臣 特別養護老人ホームを御希望になる方が在宅介護ができました後も非常に多い、予想以上に多いということは事実のようでございます。 私も経験がございますけれども、やはり特別養護老人ホームに入れないとそれが老健施設の方に回ってくるというのも事実でございます。今までは、老健施設には三カ月、長くても六カ月ということでございまして、それで御指摘のようにぐるぐるとたらい回しの状況が続いていたことも、これも御指摘のとおりであったと思います。最近はそれが緩和をされて、長くてもいいということになってきたそうでございますけれども、前にはそれはもう限定されて、そこにもう三カ月なり六カ月で出なければならないということが厳しく言われたものですから、もうたらい回しであったことは過去にはそのとおりでございました。 いずれにいたしましても、高齢者の皆さん方が御家庭で在宅介護が受けられない状況、それは身体的な問題とあわせて、それは家族の環境にもよるというふうに思いますが、そういう状況の皆さんにつきましては、本当に、おっしゃるように、安心をしてここでいつまでもいられるという場所をやはり決められるようにしていかなければいけないのだろうというふうに私も思う一人でございます。余り遠くの老健や特養にやられて、全然だれも来てくれないというようなことであってはいけないというふうに思いますから、その辺のところも考えながら、これから施設整備というものをしていかなければならないというふうに思っております。 しかし、ただ、そうした特養や老健施設というだけではなくて、ケアハウスなり、あるいはまたグループホームなりといったような中間的なそういう施設もこれからふやしていって、そういうところで生活のできる人はできる人としてまたお願いをする、選択のできるような形にしていかなければならないと考えているところでございます。 個室の問題は、御指摘のとおり、私もそうした問題をこれからきちっとできるようにしていきたいというふうに思っております。 ○山井委員 ありがとうございます。 個室の問題、きちっとしていくという御答弁をいただきまして、私も四人部屋の老人ホーム、一週間ぐらい泊まったことがありますが、横の方のポータブルトイレの音で目が覚めるとか、一週間、一カ月は我慢できても、あそこはついの住みかとは決して言えないと思います。 そして、老健の問題も、介護保険になってから、残念ながらこれはたらい回しがなくなっておりませんので、取り組みをどうかよろしくお願いいたします。 今も大臣に触れていただきましたグループホームの問題に移りたいと思いますが、やはり隔離主義を変えていくというときに重要なのがこのグループホームの問題であります。千二十五カ所までふえましたが、まだ七割以上の自治体には一カ所もありません。 そして、この資料の四ページにも出ておりますが、下から二番目、グループホーム、痴呆対応型共同生活介護にどんな方が入っているかということを見ますと、要介護三以上の、ある意味で中度以上の方がもう三〇%になっているわけであります。前回の質問で、坂口大臣、軽度な痴呆の方がグループホームという御答弁ございましたけれども、確かにそういう議論もあったかもしれませんが、実際にはもう中度の方も入っておられる。それで、ある調査では、半数以上のグループホームがもう夜勤体制でやっているということであります。 それで、先ほどの老人ホームの問題にも関係しますが、では、中度、重度になったから特養に移したいといっても、そこが三年待ちなわけですから、移せないわけなんですね。そういう意味では、前回もお願いしましたが、やはり介護報酬の見直しというものを早急にお願いをしたいと思っております。 実際、ある都道府県に私の知り合いがグループホームをやりたいということで相談に行かれたら、都道府県の担当者が、あれは痴呆のお年寄りにとって非常に居心地がいいけれども、採算はとれないからやめた方がいいよと都道府県からアドバイスを受けてやめたとおっしゃるわけなんですね。 もう一つ、介護保険の介護報酬のことに関して、ケアマネジャーさんのことについても触れさせていただきたいと思います。 また、この次の、朝日新聞のケアマネジャーの全国調査を見ていただきたいのですが、五ページ目でございます。右端にございますように、ケアマネをやめたいと思ったことがあるという方が六一%。この右端のデータですね。六一%の方がケアマネをやめたいと思ったことがある。そして、月平均のケアプランの作成数は、二四%が一番多くて、五十件以上ということになっております。 そういう意味では、十分なケース検討会議も開けない、あるいは訪問も十分にできないということで、施設志向がふえて、在宅サービスが伸びない理由の一つが、このケアマネジャーさんにもあると思います。 その意味で、三十件くらいできっちりと生活が成り立つように、ケアマネジャーさんの介護報酬も引き上げるべきだと私は思います。 上げる上げると言うと、保険料が上がって困るという議論があるかもしれませんが、グループホームをふやすと、特養に入る人が減るわけですし、療養型に入る人も減るわけですし、ケアマネさんがきっちり仕事ができるようになれば、施設に入る人が減るわけですから、結果的には保険料はそれほど上がらないと思います。 坂口大臣、このあたり、二年後を待たずに介護報酬をやはり大臣の決断で上げていく。私の愛読雑誌の一つであります月刊「潮」を読ませていただいても、坂口大臣、必ずしも二年後にこだわる必要はないと御発言されていたようですので、ぜひとも御英断をよろしくお願いいたします。 ○桝屋副大臣 大臣にお尋ねでありますが、大臣、「潮」の関係もあってお答えが難しいのではないかと思いまして、私の方から順次、まずはお答え申し上げたいと思います。 毎回、介護保険の内容をお取り上げいただきましてありがとうございます。 最初に、グループホームのお話がありました。 資料を見させていただいております。グループホームについては、委員御指摘のとおり、七割以上がまだない。しっかり全市町村で展開できるようにという御指摘がありました。おっしゃるとおり、ゴールドプランの中でやはり一番難渋をしている事業でありまして、先ほど市町村の指導で取りやめたケースのお話をいただいて、一体どこか教えていただきたい心境でありますが、ゴールドプランに基づきまして着実に進めていきたい、やっとその流れができたかなというふうに思っております。 そうした中では、この資料で、要介護三以上の方が入っておられる実態ということもお示しをいただきました。大臣も、先般、やはり介護保険が用意しておりますグループホームの調整の方の想定している介護の実態というものから見ると、ちょっとこれは十分検討しなければいかぬなと思っておりますが、ただし、やはり今のグループホームはどうしても中程度の痴呆症に対応するという形が現状だというふうに思っております。 これを今後どうするか、介護報酬も含めてどうするかということにつきましては、見直しを待たずにという話がありましたが、私どもは、ぜひ、状況を見ながら、今整備が進んでいる状況でありますから、整備がいま少し進んだ場合にどういう展開になるのか、これは見きわめる必要があるのではないか、こう思っているところであります。 それからケアマネジャー。これも実は、現場の多くの方の声を私ども聞かせていただいております。この資料でもお示しをいただきましたように、五十程度のケースを抱えて、ケア担当者の日程調整が難しい、ケアの担当者会議もなかなかできないという声もいただいておりますし、それから対応困難事例というものがケアマネジャーさんのところに結構集まってきておりまして、大変に処遇に苦労しておられるという話も伺っております。 そういう意味では、この評価を早く見直すべきではないかということが御指摘をされているわけでありますが、今までもできることはしてまいりましたけれども、いま少し、例えば在宅介護支援センターのケアマネジャーさんとか、それから実際に民間事業者でおやりになっているケアマネジャーさん、それからケアマネジャーさんがケアプランと同時にハンドサービスまで従事しておられるという実態もあるわけですから、その辺のところをよくよく見きわめて、どういう見直しができるのか、検討を続けていきたい、このように思っております。 ○山井委員 ぜひグループホームの問題も力を入れていただきたいと思います。 例えば、この三ページにもございますように、朝倉病院という病院の保険医指定取り消しへという記事が朝日新聞に出ております。グループホームが足りないから、そして老人ホームへ入れないから、精神病院もすばらしい精神病院もありますが、やはりこういう劣悪な病院、私もここへ行きました。八割以上が痴呆性高齢者、半数以上が東京の痴呆性高齢者が埼玉の劣悪な精神病院に入って、不正請求でこういう問題になっているわけですね。まさにそういう流れを坂口大臣に変えていっていただきたいと思います。 そして次は、介護労働者の待遇と労働条件のことについてであります。 南野副大臣も、このような看護婦さんの労働条件など、本当に夜勤の問題も含めて長年取り組んでこられたと思いますが、今、介護保険になって、ますます労働条件、待遇が悪くなったということを私は非常に多く聞きます。 例えば、全国老人福祉施設協議会、老施協の調査によりますと、特別養護老人ホームは、収入が介護保険によって七・五%ふえたけれども、人件費率は五・七%減ったという調査が出てきているわけですね。私は、昨年末の委員会でも、介護保険の利用者の方々にとってはサービスがふえた部分があるかもしれないけれども、ホームヘルパーさん、ケアマネさん、施設の職員さんは逆に苦しくなったと言っている、その調査をしていただきたいということをお願いしていたわけであります。改めて、雇用形態や、介護保険の前後で労働がよくなったのか悪くなったのか、そういうことも含めて介護労働者の労働条件と待遇の問題について調査をしていただきたいと思います。 御答弁お願いいたします。 ○南野副大臣 グループホームについてとても熱心な先生の本当に心熱い思いを、私も同じ思いで聞かせていただいていたところでございます。 このたびのお尋ねは介護労働者の労働条件ということでございますが、昨年末からことしにかけまして、介護労働者の賃金、労働時間を初めとする雇用管理の実態調査を実施しているところでございます。そして、それを現在集計中でございますが、できるだけ早く結果を取りまとめ、公表したいというふうに思っております。一月末に返送を締め切るというような形での作業を進めておりますので、十三年度早期に結果を取りまとめ、公表という方向で進んでおりますことを御報告いたします。 ○山井委員 そのような調査をやっておられるということで私も感謝しておりますが、その調査については私も聞いておりますが、ただ、例えばケアマネジャーさんや施設職員さん、そして何よりも介護保険によって労働がどう変化したのか、そういうようなことも調べていただければと思います。 といいますのは、やはり厚生労働省さんであるわけですから、介護保険によって介護労働者の労働が悪化したということであってはならないと思います。私も、看護婦さんの問題もライフワークとして取り組みたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 それで、最後の質問になりますが、これは低所得者対策、一割負担の問題であります。 私も毎週、週末、介護者家族の会などに行って国政報告をさせていただきますと、介護しておられる御婦人の方々が机をたたいて、山井さん、しっかりしてよ、山井さんが推進した介護保険だけれども、利用者負担が重くなって十分サービスが利用できない、何とかしてよと、ある意味で全く政治に関心を持っておられないような方が必死にそのようなことをおっしゃっているわけであります。 このようなことに関して、データを調べてみますと、例えば六ページ目、四国新聞の調査では、一六%の自治体が一割負担がネックで在宅サービスが伸びないというふうに答えております。 それで、最終ページ、厚生労働省の資料を見ますと、介護保険によって七割の人がサービスがふえた、しかし一七・七%の方が減ったと。 結論を言いますと、その中でも、一割負担を払うのが困難だったためサービスが減った人は二・五%だから、二・五%しか低所得者の一割負担の問題はないんだということなんですけれども、私は正直言ってこのデータはだめだと思います。なぜならば、一割負担が重いから、ふやしたかったけれどもふやせなかった人の数が入っていない。本当はもっとふやしたかったけれどもちょっとふやすにとどめたという人のデータも入っていない。 介護保険、一年たって、さまざまな新聞社が結果を発表しましたが、すべての世論調査でこの低所得者対策が最も深刻だというふうに出ております。また、坂口大臣も、このような低所得者の問題に取り組みたいとおっしゃっておられたと思いますが、もし、この二・五%しか数字がないから低所得者問題はそんな大きな問題じゃないんだとおっしゃるんなら、私は現状認識が間違っていると思います。 今、民主党の介護保険ワーキングチームでもこの問題に取り組んでおりますが、私たちは、基本的には、やはり分かち合うということで一割負担はやむを得ないだろう、でも、本当に払えない方々に関しては早急に対策を講じねばならないと思っております。 この利用者負担の低所得者対策について、御答弁をお願いいたします。 ○坂口国務大臣 この利用者負担の問題につきましては、これはデータのとり方によりまして随分違うんですね。 例えば、どれだけ下がったということをいわゆる市町村単位でとりますと、その市町村の中で一人でも下がったということを言う人があれば下がったというふうにしてとれば、かなりなパーセントになりますし、全体の中で利用者負担を理由にサービス利用を減らした人がどれだけかという、人間を中心にして考えるとまた違った数字が出てくる。いろいろ出てきますので、そこはデータのとり方がいろいろだというふうに私は思っております。 しかし、いずれにいたしましても、低所得者の皆さん方の利用料、それから保険料、この両方にいろいろな皆さん方の御意見が集中していることだけは間違いがございません。市町村におきましても、どこへ行きましてもそのお話が出るわけでございますから、そうした問題、先生からも御指摘をいただきましたので、よく検討し、そして、この辺のところにも十分配慮しながらこれから考えていきたいというふうに思っております。 ○山井委員 大臣、よろしくお願いいたします。 最後の締めくくりになりますが、二十一世紀、これから福祉も改革を進めていかねばなりません。私は原則は三つだと思います。 一つは、ハンセン病の問題に象徴されるように、収容隔離をやめて、望めば住みなれた地域で暮らせる、そういう本当に豊かな社会をつくっていく。 二番目は、当事者本人の自己決定、やはり本人が住みたいというところで住める社会をつくっていく。残念ながら、それが今、精神障害者の問題、痴呆性高齢者の問題も、グループホームや十分なサービスがあれば地域で暮らせる人が、今はそれができていない問題があります。 そして三番目は、哀れみではない権利の福祉。やはりそういう住みなれた地域で暮らすということは、かわいそうだからそうさせてあげようとかじゃなくて、住みなれた地域で、本人の住みたいところで暮らす権利があるんだ、そのことを最も象徴的に訴えかけているのが今回の判決であると思います。 正直言いまして、こういうハンセン病の問題についても精神障害者の問題についても、例えば政治家にとったら、特にやったからといって票になる問題でもありません。しかし、やはり政治家の何たるかということを考えたときに、目先の票やそういうことになるということでなくて、命や暮らしを守っていくということを、坂口大臣、先頭に立って何としてもやっていただきたい。そして、そういう収容隔離から住みなれた地域に暮らせるという福祉への大転換を二十一世紀に進めた厚生大臣として、坂口大臣に歴史に名を残していただきたいと思います。 ありがとうございました。 |