○山井委員
まず最初に、片山大臣、御就任おめでとうございます。自治省出身で、岡山県副知事を経て、まさに地方自治、分権のために長年お仕事をされてこられたという片山先生が大臣になられたことを非常にうれしく思っております。
私も福祉をライフワークにしておりまして、過去、世界各国調査に行き、中でも一番長かったのがスウェーデンなんですが、スウェーデンでなぜ福祉や教育が進んでいるかという一つの大きな理由が、御存じのように、スウェーデンという国は地方税中心でして、最も分権が進んだ国の一つであります。そんな中で、私は、地方分権こそが福祉充実の重要なかぎであるということを痛感いたしました。本日、総務委員として初めて質問させていただけることを光栄に思っております。大臣、副大臣の皆さん、御答弁のほどよろしくお願い申し上げます。
まず最初に、地方分権には三ゲンが必要だということが言われております。権限、財源、人間ということでありますが、私、最近危機感を感じておりますのが、数年前までは、自治体の職員の方々も、これからは地方分権の時代だということで非常に勢いがあったように思います。しかし、最近、これだけ多くの借金を地方自治体が抱えて、首が回らなくなっている。このあたりに関しては、まさに午前中から中村議員、武正議員、今の松原議員からも言わせてもらった問題で、議論がかなり出ておりますが、私も言わずにはおれません。国が公共事業を繰り返した結果、地方自治体が百八十八兆円もの借金を抱えて、これは九〇年末から三倍にも膨らんでいるわけであります。
前の方の質問にもありましたので少し変えますが、そもそも、このような公共事業を連発して景気回復に成功した、そのような国は国際的にほかの国であるのでしょうか。大臣、御答弁をお願いいたします。
○片山国務大臣
冒頭、山井委員から御丁寧なお言葉をいただきまして、大変感謝いたしております。
今の御質問でございますが、ケインズ理論というのが一時はやりまして、フィスカルポリシーというのがまさにそうなんですね。景気の悪いときには財政が、公共が需要を喚起して需要をつくり出して、それによって景気を回復する。ニューディールなどというのも私はその一種だと思っておりますけれども、一番どこが成功したか、全部成功したか、それはちょっと不勉強で存じ上げませんけれども、戦後の我が国では、このケインズ理論によるフィスカルポリシー、財政調整政策をずっととってきたことは事実であります。
○山井委員
今日本は、ある意味で豊かな社会、少子高齢社会に入っている、安定した時代になっているわけであります。そういう時代においてその理論が成り立たないということは、ある意味で先進国共通の理解ではないかと思います。ある意味では、ばらまきの公共事業というのは、一時のカンフル剤にはなっても、根本的な景気回復にはならないというふうに認識しております。
先ほどの答弁の中でも、今後もこのような形をある程度続けていかねばならないのではないか。そういうことを続ければますます地方財政は悪化していくわけですけれども、今後このような地方財政をどのように改善していかれようと考えておられるのか、御答弁をお願いいたします。
○片山国務大臣
公共事業もいろいろありまして、今、ある学者の試算によりますと、これから一番景気に対する乗数効果が高いのは、例えば情報通信、IT、それから介護、環境だ、こういう研究もあるようですね、検証されたのかどうか知りませんが。
だから、公共事業も単なる道路や河川から次第にそういう新しい公共事業にウエートを移していく。公共事業というのは皆トンカチの事業だけじゃないのですから、公共事業ですから、そういうふうに変わっていく必要があるのではなかろうかと私は思っておりまして、先ほど申し上げましたが、経済財政諮問会議やなんかでしっかりと議論していきたい、こういうふうに思っております。
そこで、地方財政立て直しは、これも繰り返し申し上げることになると思いますけれども、やはり一つは、景気に軸足を置いた景気回復をやって、これによって国税も地方税も税収を上げていって立て直しを図っていくということが一つ。
それから、地方の行革もかなりやっておりますが、さらに地方の行財政改革をやってもらいまして、その中には市町村合併もあると思いますけれども、コストを下げてスリム化をやる、リストラをやる、そういうことによって、むだなお金というのはないと思いますけれども、さらに簡素効率化を図っていくというのが二つ目。
それから、それだけじゃ十分じゃありません。本当の地方分権推進のためには、山井委員も言われましたように、地方税源の充実を図っていく、場合によっては国と地方の税源の現状の配分を直していく、こういうことがその次に必要ではなかろうかと思っております。
○山井委員
今の大臣の答弁の中でも、まさに公共事業の質を変えていかねばならない、IT化あるいは環境、介護というような、二十一世紀に対応した公共事業に変えていかねばならない、それはまさに私ども民主党の主張でもあります。まさにそれが、九〇年代、世界の流れが変わっているときに日本だけが変われなかった、失われた九〇年代と言われて、財政がこれほど苦しくなりながらも景気が回復しなかったことであると思います。
IT化は先ほどからも御答弁ありましたが、環境の問題や介護に対して公共事業がシフトしていく、今まさに大臣がおっしゃったそのようなことに対して、総務省は今後どのような転換を図っていこうという取り組みをしていかれるおつもりでしょうか。
○片山国務大臣
ITの方は、IT国家戦略、e―Japan戦略も決めましたので、三月までに重点計画を決めるということで関係各省一生懸命今努力しておりまして、特に私のところは、超高速ネットワークのインフラを整備する、それによってデジタルデバイドを解消していく、あるいは高齢者や障害者の方のいわゆる情報バリアフリーをもっと徹底していく、こういうことを考えておりますし、それから、やはり公正な競争を促進していかなければいけません。このITのマーケットで、適正な、公正な競争を促進することによって活力を出していく。
それから、私のところは旧総務庁や旧自治省もありましたので、電子政府、例えば届け出や申請を、今一万四百件ぐらいあるそうですけれども、これをインターネットを通じてできるようにする。あるいは、調達、いろいろな入札だとかそういうことも電子化していく、IT化していく。あるいは、輸出入の手続もワンストップサービスにするとか、いろいろなことはあると私は思いますけれども、そういう電子政府の実現、地方は電子自治体になるんでしょうか、そういうことをしっかりやっていく必要があるのではなかろうか、こういうふうに思っております。
それから、介護の方は、御承知のように、去年から市町村を保険者にして仕事が始まりましたので、これは主として財政面になるんでしょうけれども、いろいろバックアップをしていったり、あるいは、お話がありましたように、今市町村の連合でやっているところも全国にたくさんあります。こういうものもきっちり連合が動くように応援していきたいと思っております。
環境についても、環境省ができまして一生懸命頑張っておられますので、総務省も、地方を含めまして、環境省を大いにサポート、応援していきたい、こういうふうに思っておりますので、そういうことの面で、これが景気回復に資し、地方財政の立て直しに大変いい働きをすればそれは望ましいことだ、こういうふうに思っております。
○山井委員
今ある意味で中央官庁の姿勢を聞かせていただいたんですが、本来でしたら、やはり地域が元気になる、地方自治体が主役になる、そして住民のニーズをいち早く取り上げて景気回復に取り組んでいくというのがあるべき二十一世紀の姿だと思います。
その意味では、先ほど松原議員からも話がありましたが、九七%もの自治体が地方交付税を受けなければならない。やはり、そういう地方の地場の力をそいできたのは中央集権的な日本の今の行政のあり方だと思います。
ある町長さんからも次のような意見を聞きました。地方から税金を一たん国が取ってそのお金を交付税という形で地方に配分するというのではなくて、もうその税金をやはり地方が取らせてもらって、確かに貧しい自治体への財政調整は必要だからその分だけ負担金として中央に出していく、あくまでも財政の主体は地方にあるんだというふうな改革をしてほしいということを言われました。
このことに関しては、特定補助金を減らすなり、あるいは交付税の見直しということになると思うんですが、先ほどからの質問とも重なりますが、そのような地方自治体の主体性を確立する、そのことに関してのお考えをお聞かせください。
○遠藤副大臣
地方分権で一番大切なことは、事務は法定受託事務になったわけですけれども、肝心の財源の地方への移転がないということでございまして、これをどうするかということは大変大きな課題です。
現在は、不交付団体というのが大変少なくなってしまって、本当は不交付団体が多くなってみずからの地方の事務は地方の財源でできる、こういうふうになるのが望ましいわけでございまして、そのためには、まず第一に地方の地方税の領域を大きくしなければいけない、こう思うわけでございます。
ただ、地方の税というのは、地域によって大きな格差がございまして、遍在をしているわけですね。例えば、ここにちょっと資料があるんですけれども、平成十年度でいいますと、一人当たり地方税がどのぐらいあるかというと、東京都は一年間で十九・五万円なんですけれども、沖縄では七・三万円というわけでございまして、約二・三倍の格差が生じているんですね。ですから、地方税をふやすということは大変大事なわけですけれども、地域の格差をどういうふうに調整するかということも大変大事なわけでございまして、そういう意味では交付税の役割が今後もある、こう思っています。
それからまた、交付税の中の約半分くらいの額が、国が法律で決めております例えば小学校や中学校の先生のお給料ですね、この人員配置基準を、標準を決めておりますから、そちらの方にいく。社会保障の関係あるいは公共事業の関係、こういうのにつきましても、法律で地方の負担が決められておりますものですから、それに対して大体普通交付税の総額の半分ぐらいがそちらの方に回らなければならないという状況になっておりますものですから、おっしゃるとおり、地方税を大きくするということは大変大切。
ただ、地域の遍在があるものですから、それを調整するということも重要。また、一般の行政の標準の水準を国が決めているものですから、これに対してきちっとした措置をしなければならない、こういう状況がございまして、今後もこの交付税の議論は必要なものでございまして、できるだけ交付税の果たす役割が少なくなるようになった方がいいと思うんですけれども、これは必要欠くべからざるものでございますから、これをどういうふうに調整していくか、また一緒に御議論を願いたい、こう思っておるところでございます。
○山井委員
確かに貧しい自治体への必要最小限の財政調整というのは必要でありますが、その部分が余りにも大きくなり過ぎて、結局は地域の主体性というものがなくなってきているように思います。
このような財政を立て直す解決策の一つが市町村合併であると思います。これに関しては、分権の受け皿ということで、先ほどから松原議員の質問も出ておりました。まさに松原議員からございました、なぜ三千三百を千なのかということは、私も質問をしたかったわけでありますけれども、先ほどの答弁を聞いていてもやはりイメージがわいてまいりません。
例えば昭和の大合併の際には、中学校や国民健康保険の事務を任せられるというような一つの目安があったように思いますし、明治二十二年の合併の際には、小学校などの事務を任せるというような理念があったように思います。この千というのは、最低限その自治体がどのような機能を果たせるとお考えでしょうか。あるいは、人口や面積など何らかの基礎自治体のイメージがあるのでしょうか。大臣、お聞かせください。
○片山国務大臣
昭和の大合併、昭和二十八年ごろから三十年代の初めまでやりました合併は、今委員が申されましたように、中学校を新制にしまして、それは市町村が設置管理する、それがちゃんとできるようにということがありまして、人口八千というのが一つの目安だったんですね。
ところが、今回はそういう具体的な目安はないんですよ。何度も言いますように、地方分権の受け皿として、私は、今後は福祉や保健や環境や都市計画は市町村でやってもらいたい。そのためには、市町村が相当の規模と財政力、行政能力を持たなければいかぬ。最初に委員が言われましたように、権限と財源と人間がそろわないと、市町村というのが本当の基礎的自治体としてちゃんと機能を発揮していない。
ただ、これは、今回は例えば人口幾ら、面積幾らというのはなかなか難しいものですから、都道府県にお願いしまして、都道府県ごとに行政推進のパターンをつくってくださいと。大体全都道府県でおつくり賜るようですから、私は、それを一つのたたき台に市町村合併を推進したい、それが恐らく千ぐらいになると思います。
ただ、もう少し大きくした方がいいという意見もありますよ。ただ、大きくすれば大きくしただけの今度はデメリットも出てくるわけで、コミュニティー意識がなくなるとか、行政サービスが満遍なく行き届かないとか、前の委員が言われましたように、ゲゼルシャフトになり過ぎる。市町村というのは、やはりゲマインシャフト的なあれは残った方がいいんですよ。
そういう意味で、いろいろな議論がありますが、とりあえずは、我々は、与党三党がやる千を目標に、都道府県がおつくりになった合併のパターンをもとに、十七年度三月までにできるだけそれに沿って推進していきたい。
仮にそうなると、今私が言いましたように、相当の仕事を市町村でやれるようになる、こういうふうに思っております。都市計画、環境、福祉、保健。介護なんというのは、いろいろな議論がありましたけれども、我々は、やはり市町村を保険者にするのがいいのじゃないか、こういうことで踏み切ったわけでありますので、今言いましたような基本的な考え方のもとにぜひ今後とも推進していきたい、こう思っております。
○山井委員
そういう意味では、明治の合併、昭和の大合併よりも少しイメージがつかみにくいという部分があるように思うんですが、総務省さんのホームページを見ると、市町村合併のメリットということでいろいろ書いてあります。今おっしゃったような大臣の思いがあるにもかかわらず、なかなかまだ、地方自治体も腰が重い、機運が十分に高まっていないという気がするのですが、なぜそのあたりは思うように合併が進まないと大臣はお考えでしょうか。
○遠藤副大臣
昨年、市町村合併をともに考える全国リレーシンポジウムというのを行いまして、そこでアンケートをしたわけでございますが、市町村合併が余り進まない理由として三つ挙げられておりました。
一つは、住民の意見が行政に反映されなくなるかもしれないという不安です。二つ目は、住民の一体感と個性を失うかもしれないということです。それから三つ目が、市役所や町役場が遠くなってしまうかもしれない、こういった意見が寄せられたようなところでございまして、こうした意見に対して、安心をしていただけるような広報活動がどのようにできるかということを今考えているところでございます。
○山井委員
まさにそのアンケート調査を私もここに持っておりますが、民意が行政に反映されなくなる、市役所などが遠くなり、一体感、個性の喪失、やはりそういう意味では、逆に言えば、住民の方が合併というものに対してしり込みする意味も非常にうなずけると思います。
私自身は、先ほども言いましたように、しっかりとした基礎自治体で分権を進めていくという意味で市町村合併には基本的には賛成でありますけれども、しかし、住民の方々のこのような不安というものをきっちり取り去っていく必要があると思います。
例えば、財政が危機であるとか財政効率が悪いというようなことを言っても、なかなか住民の方々にとってはぴんとこないわけであります。それよりも、サービスが遠くにいってしまうのではないかとか、きめ細かいサービスができないのではないか、あるいは町の名前も変わってしまうのではないか、そういう意味では、特に小さな町村にとって合併というのは、ある意味で分権どころか、権限が遠ざかるということになります。調査でも、小規模な自治体、本来は財政力が弱い自治体ほど合併をした方がいいという面があるのですが、実際はそういう小規模自治体ほど合併に消極的だというデータも出ております。
そのために、今遠藤副大臣もおっしゃった市町村合併をともに考える全国リレーシンポジウムが行われていると思うのです。私も実は近所で開かれたのに行かせていただいたのですが、ある意味で、こういうシンポジウム一つを見てもちょっと不十分な点があると私は思います。例えば、この市町村合併をともに考える全国リレーシンポジウム、四十七カ所、二〇〇〇年の七月から、総括が十二月十五日ですか、それを見てみても、土日は五カ所のみなんですね。ほとんどがウイークデーの昼間です。そして、私が行った会でも、こう言っては失礼かもしれませんが、参加者の多くが自治体関係者の動員であります。そしてまた、そこで聞く話というのも、先ほど言いましたように、このままでは自治体は破産しますよ、財政的にもたないですよという財政の話がぼんと正面から出てくるわけですね。
実際このシンポジウムの参加者の合計を見てみましても、男性が九千五百四十人に対して女性は六百七十一人、先ほど中村議員の質問にもありましたけれども、若い世代は非常に少ない。こう言うと言い方が悪いですけれども、行政による行政のための行政の合併シンポジウムであり、合併計画ではないかというような気がするのです。
そういう意味において、やはりこのような、これからの住民の方に対する啓発活動が非常に大事だと思うのですが、取り組み、いかがお考えでしょうか。
〔荒井(広)委員長代理退席、委員長着席〕
○遠藤副大臣
おっしゃるとおり、土曜日にやったところは山梨、石川、奈良、愛媛、鹿児島の五会場だけでございまして、あとはウイークデーでやっているということでございまして、住民の皆さんが参加する機会が狭められているのではないかということでございます。
やはり、市町村合併を深く理解していただくのは、行政の皆さんも当然のことでございますけれども、一番大切なのは住民の皆さんでございますから、住民の皆さんにどのようなメリットがあるのかを正確に理解していただくという広報活動をしていかなければいけない、このように考えております。
平成十三年度の予算案におきまして、市町村合併啓発事業というのを盛り込んでおります。あるいはまた今度は各都道府県の皆さんももっとこうした活動に積極的に取り組んでもらいましょうということでございまして、都道府県体制整備費補助金を創設するようにいたしておりまして、予算面で充実をさせていますとともに、市町村の皆さんにも、行政の皆さんにもお願いをいたしまして、もっと住民の皆さんに広く啓発広報活動ができるような、日程の考え方も、土曜日とか日曜日にできるような体制を組んでいただけるようにお願いをしたい、このように思っているところでございます。
○山井委員
まさに今御答弁いただきましたように、当然、主人公は自治体の職員さんではなくてそこに住む住民なわけですから、住民の方々を巻き込んだ啓発のシンポジウム、運動をしていただきたいと思います。
例えば、私が思いますには、そういうシンポジウムや啓発の際には、財政が破綻しますよとかそういうことよりも、一般の住民の方にとっては、合併すれば介護サービスがこんなに進みますよとか、実際、合併で養護学校の問題や障害児のための福祉や教育がこんなに進んだ例がありますよとか、あるいは広域になって環境への取り組みもこんなに進みますというような実例や、生活サービスが進むということを前面に押し出していただいたら、多少のリスクというものを感じながらも、住民の方々に合併していこうというふうな思いも出てくるのではないかと思います。
例えばスウェーデンでは、一回目の市町村合併は基礎自治体を福祉サービスをきちんと提供する単位に、福祉充実のために、そして二回目の合併では合計二千五百から二百八十九に今日までになったわけですけれども、小学校をしっかりと運営できて、子供が安心して暮らせる自治体づくりというような理念を持ってやられたわけです。
そういう意味では、日本でもこれは総務省さんだけの問題ではなくて、他の官庁と密に合併の意義やメリットについて議論をして、合併によって教育、環境政策、福祉がどう変わるかということをきっちり議論していく必要があるのではないかと思います。
そこで、もう少し具体的な話として、私は介護保険などの介護問題に取り組んでおりますけれども、その分野の例で言うならば、例えば合併すれば、介護サービスは一般的に言って充実するのでしょうかあるいは低下するのでしょうか、どのように変わるとお考えですか。総務省と厚生労働省の両方にお伺いしたいと思います。
○遠藤副大臣
私どもは、間違いなく充実すると考えております。
と申しますのは、ただいまも、一部事務組合を広域につくるとか、あるいは広域で保険者になるとか、こうした動きがあるわけでございますが、それがさらに合併ということになりますと、市町村間の調整にかかる時間もなくなりますから、スケールメリットを発揮できるわけでございます。あるいはまた、施設も十分に使うことができる、保険者としての規模も大きくなりますし、あるいはサービスも向上できる、こういうことでございまして、合併することによってこの介護保険制度はさらに充実する、このように考えております。
○堤政府参考人
合併によりまして、例えば保険者の規模が拡大をするということがございます。そういたしますと、安定した保険財政の運営が可能になりますし、あるいは介護保険の場合には介護保険事業計画というものをつくることになっておりますが、こういう在宅や施設サービスに関する計画を広域的につくるということになりますので、一般的には長期的にかつ安定した形で広域的な区域での均衡のとれたサービス基盤の整備が進みやすくなるということは言えようかと思いますので、そういう意味ではプラスの効果があるのではないかというふうに考えております。
○山井委員
全国の大きな自治体と小さな自治体を比べれば、今の堤局長の答弁によりますと、一般的に大きな方が介護サービスは充実しやすいというように理解できるんですが、そのような理解でよろしいでしょうか。
○堤政府参考人
現在介護保険でもいろいろな広域化が進んでおりますし、合併もその延長ということで考えられるわけであります。
もちろん、合併なり広域化の形というのはいろいろ地域の実情によって違いますので、規模とか、あるいはそういう地理的な条件によって違ってくると思います。ただ、非常に大きい規模になりましても、例えば、現に横浜市は三百万の人口を抱えているわけであります。そういうところでも、住民の意見を吸い上げるいろいろな工夫というのは、市町村のさまざまな工夫の中でやっておられるということでございますので、規模とかいうことだけで一概にはなかなか言いにくい、市町村の工夫次第という面もあろうかと思います。
○山井委員
確かに、今、局長がおっしゃいましたように、ある意味で、人口は小さいけれども非常に熱心な町長さんがいらっしゃって、大規模化するよりもはるかに介護サービスが進んでいるという例もありますし、逆に広域化して非常に無責任になって介護サービスが充実していないという例もあると思うのですね。
正直言いまして、そのように介護サービス一つとっても、広域化によって財政は安定するかもしれないけれども、その反面、きめ細かいサービスができなくなるんじゃないかという不安、そういうふうな不安によって、住民の方々もこの合併に対してちょっとしり込みをされる部分もあると思います。
そういう意味では、合併を推進する以上は、ある意味で総務省さんがリーダーシップをとって、教育も合併でよくなるんだ、環境施策も充実するんだ、福祉も進むんだというようなことを連携してやっていかないと、どうしても総務省さんの今までの取り組みを見ると、財政主導で、逆に住民の方にとっては、財政問題というのは大事だけれども、一番ぴんとこない部分だと思うのです。
そのような、住民にほかの具体的な身近なサービスの充実ということとセットで合併の啓発を進めていくというようなことについて、片山大臣、いかがでしょう。
○片山国務大臣
御指摘のように、今総務省の中に合併推進本部をつくっておりますけれども、これは総務省の人だけですから、私は省庁を超えた連携によって総合的に合併を進める戦略というんでしょうか、それが必要なので、例えば、総理を本部長とする各省庁の大臣に加わってもらう合併推進本部か、あるいは私が本部長になって関係の省庁、副大臣も入ってもらう本部か、そういうものをつくって、今言いました介護もありますし、教育もいろいろなことがありますから、そういうところで議論して、相連携して総合的に合併を推進するということを今検討しておりまして、これは近々に結論を得たい、こういうふうに思っております。
○山井委員
ありがとうございます。
そういう意味では、合併によって身近なサービスも進むんだというふうなインセンティブなり優遇策というのを、総務省さんにリーダーシップをとって進めていただきたいと思います。
ある意味でそのこととちょっと反する部分もあるのですが、逆に合併することによるスケールデメリットでサービスが低下することもあるように思います。実際、小さな町村にとっては、役所が遠くなってしまったとか、今までのようなきめ細かなサービスが受けられないというようなことが、昭和の大合併の後も苦情として尾を引いているような自治体もあります。
例えば、また介護問題になりますが、合併して人口が五十万、百万になった結果、老人保健福祉計画の策定委員会が合併して一つになってしまう。今まで二つや三つや四つあったものが一つになってしまう。その結果、住民参加が難しくなって、きめ細やかな計画やサービスができにくくなるというマイナス面も出てくるように思います。
このあたりの合併による、この例では介護サービスですけれども、このようなスケールデメリットについて、大臣そして厚生労働省にお伺いします。
○遠藤副大臣
今、スウェーデンのお話をされておりました。
私は、ちょっとこの間、一月の二十三から二十六ですけれども、オーストラリアに参りまして、ビクトリア州という州がございます。これはメルボルン市を含む州ですけれども、ここの首相といろいろ懇談をしてきたわけですが、前の首相のときに、二百二十ある自治体を法律で全部解散させてしまいまして、強制的に市町村合併をした。ゼロにしておいてから七十六だけ認めた。こういうふうなことをやったわけですけれども、これが大失敗をいたしまして、選挙をしたらその内閣が崩壊してしまったのですね。新しい内閣ができておりまして、新しい首相が誕生したわけですね。
その方にその後どうされていますかと聞きましたら、もともとあった市町村の自治体の議会を全部また法律で復活させました、そこで議論をしていただきまして、住民の意見を聞いた上で、この七十六になった自治体をさらに分割していってもいいかどうか議論をしていただいておりますというようなことを言っておりました。
そこで、失敗した理由は一体何ですかと聞きましたら、やはり強権的にやるとだめです、地方自治は地方自治体の皆さんの意見というものを大事にして合併は進めるべきだ、幾らスケールメリットが財政的にあるといっても、それを自治体のコミュニティーの皆さんに理解していただけなければ、これは失敗しますと。
どこのところが一番失敗をしましたかと言いましたら、住民の皆さんから見ると、役場が遠くなったとか利便性が悪くなったとか、そういうことでございます。したがいまして、その利便性をよくするために、例えばワンストップサービスを充実するとか、そうしたサービスの向上、サービスの向上をするために市町村合併をするんだというふうな、何のために市町村合併をするのかという目的を正確に住民の皆さんに理解してもらうことが大切だと考えております、こんなことを言っておりました。
ブラックスさんという新しい首相ですけれども、この人は何と支持率が七〇%ございまして、すばらしい人気のある人ですが、やはり住民の意識というのを絶えず大切にされている首相だと思ったわけです。
そうした一つの教訓を考えますと、住民のサービスを向上させる、具体的にこういうメニューで向上ができます、そのために財政規模をさらに大きくする必要があります、こういったことを丁寧に住民の皆さんに知っていただく、そのための広報活動というものが市町村合併にとって欠くことのできない重要なことだろうと思っております。
○堤政府参考人
合併や広域化等で規模が大きくなった場合に、地域住民の意向を反映しにくくなるのではないかということでございますけれども、私ども、介護保険の場合には、介護保険事業計画を市町村でつくっていただくときに、地域住民の意見を反映させるために必要な措置を講じていただくということで基本の指針を示しておりますが、その中で、計画策定委員会のメンバーに公募などによる地域住民の参加に配慮していただく、それから、地域における聞き取り調査、公聴会、あるいは自治会を単位とする懇談会等を工夫して、地域住民の意向の反映に努力をしてくださいということを申し上げております。
市町村によって計画策定の方法に違いはございますけれども、規模の大きい市におきましても、小規模の説明会を何度も開いたり、あるいは既存の市政モニター制度を活用するといったようないろいろな工夫をしながらやっていただいております。
規模が大きくなり過ぎて、仮にスケールデメリットがあると感じられる部分があるといたしますと、それをカバーする工夫を、やはり自治体の方でいろいろな工夫をしながらやっていただく必要があるのではないかと思います。
○山井委員
ありがとうございます。
今私が申し上げたかったことは、例えば五つ自治体が合併して、今までは五つの老人保健福祉計画の策定委員会だった、今局長がおっしゃったように、住民の公募の枠がそれぞれの自治体に五人ずつあった、ところが、いざ合併してしまうとトータルで五人しかない。あるいは、小さな自治体で老人保健福祉計画をつくる際に、医師会の会長さんが来られている、小さな自治体だったら、その医師会の会長さんが自治体のことをすべてわかっておられる。ところが、人口が非常に大きくなったら、なかなかその町全体のことはわからないという部分があります。そのような不安というものを解消していかないと、住民の方々にこの合併の意義というのが理解してもらえないと思うんです。
例えば、このような問題について、スウェーデンでは、地域に密着した議論が必要な福祉や文化行政については大きな自治体で幾つかの準自治体委員会、コミューンデルスネムデンと言われる小さなユニットに分けて、そこに予算をつけて、そのユニット内の行政については住民の身近で決めるという制度もつくったりしております。これは、ある意味では、市町村合併のスケールデメリットを補整する制度だと思うんですが、日本でもこのような市町村合併でのスケールデメリットというものを減らすために、どのような取り組みを考えておられますでしょうか。
○遠藤副大臣
スウェーデンは、約二千五百あった自治体を二百八十まで二回にわたってやりまして、最終的にはちょっと強制的にやったところもあるようですけれども、減少したということを聞いております。我が国の大体一・二倍ぐらいの広い国土にわずか九百万人の国民が住んでいるということですから、直ちに、我が国の実情に合わない部分もあるのですけれども、おっしゃるような基礎的な自治体の下に地区委員会というものを設置して、いろいろと地域の皆さんの意見を聞いているということでございます。
我が国の制度の中にもこの地区委員会と類似の役割を果たすものとして地域審議会というものがございまして、そういうものとか、例えば合併した後の市町村の役場を支所だとか出張所として活用いたしまして、地域の皆さんのニーズをそこでお聞きする、こういうような形をしていく。あるいは、今度法案を出そうと思っているわけでございますが、二万七千四百ございます郵便局で市町村の事務の一部を委任をして行う。こういうふうなことによりまして、地域のサービスが低下しない、そしてさらに、地域の皆さんの声がちゃんと届くような仕組み、こういうものをつくっていかなければいけない、このように思っております。
○山井委員
そういう意味では、これから地方自治体の合併によって広域化する部分と、今、遠藤副大臣もおっしゃってくださいましたように、そのコミュニティーを大切にして細分化していくという部分と、同時にやっていく必要があると思います。
例えば、私の手元の資料でも、高知市ではコミュニティー計画というのをつくって、計画策定のための市民組織であるコミュニティー計画策定市民会議をほぼ小学校単位で結成することを目指して地区ごとに全戸配付による公募を行った、まさに遠藤副大臣がおっしゃるように、強権的にやると後で非常にしこりが残ってしまってうまく機能しない、そういうことでは何のための合併かわからないということになります。
さらにもう一つ、群馬県の小寺知事も小学区ごとに自治区を設け、三億円ぐらいの財源を持たせて、自治によって日常生活で必要と思われる事業を行えないものかというようなこともおっしゃっておられます。そういう意味では、広域化と、またコミュニティーを大事にしていくということを車の両輪でやっていく必要があると思います。
改めてになるのですが、このような市町村合併に最も進みにくい壁というのは何だというふうに片山大臣は御認識でしょうか。
○片山国務大臣
昭和の大合併をやって大分時間がたっておりますね。今の制度に今の首長さんや議会の関係者はなれておりますから、それを破っていくということに対する勇気というのですか、そういうところが今の段階ではもう一つかなと思います。
それから住民の方も、遠藤副大臣から何度もアンケート調査の結果の御披露がありましたように、やはり今の状況は変わるわけですから、目の前にある役場がなくなるわけですから、不安があると思いますね。だから、そういうことをしっかりとわかってもらうということ、そうじゃないのだ、もっとよくなるんだということをわかってもらうということと、やはりこれから我が地域社会の将来をどうするんだ、そのためには何がいいかという大きな賢明な決断をしてもらうことが私は必要だと思いますので、都道府県とも協力して、啓蒙、普及を大いに図ってまいりたい、こういうふうに思っております。
○山井委員
地方自治体で非常に慎重である方の中には、町長さん、村長さん、そして自治体議員の方々も多いと思うんですね。それに対して総務省さんでは、議会の議員定数、在任に関する特例で、結局、合併後の市町村に関しては議員定数の二倍まで定数を最初の任期だけふやすというような特例を設けたり配慮もされていると思うんです。やはり首長さんが一人になる、議員の数が将来、減っていくというような議員さんや首長さんの危機感も非常に強いと思うんですが、そのあたりの方々の理解を得るための取り組みというのは今後いかがでしょうか。
○片山国務大臣
いろいろなことを今まで自治省も民間のそういう協力団体と一緒にやってきましたけれども、さらに都道府県や関係のところの意見を十分聞いて、また一番関係ある全国町村会、全国市長会、町村議長会、市議長会、そういうところとも十分相談して、どういう進め方が一番効果的かということも考えながら、総合的に進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
○山井委員
ぜひお願いしたいと思います。
それで、おとといの朝日新聞に出ておりましたのが、市町村合併の住民投票に必要な署名の数が当初案の有権者の十分の一から六分の一に引き上げられた、この法案は合併特例法改正案としてまた国会に出てくるかと思うんですが、その理由として、住民投票の導入に消極的な全国町村会や町村議会議長会などの強い反発によるものだ。そういう意味では、市町村合併を推進されている姿勢と、それに向かって非常に反発が強くて慎重になっていられるという苦悩の姿を感じるのですが、これは残念ながら後退ということになるのでしょうか、いかがでしょうか。
○遠藤副大臣
当初十分の一で考えたわけですけれども、全国町村会の皆さんの御意見を賜りまして、六分の一にいたしたい、このように考えております。もともとこの法律をつくるに当たっては、全国の町村会の皆さん、地方団体の皆さんとよく意見を交換してつくりなさいということが初めに約束されておったものですから、その約束どおりにしたということでございまして、余り大きな差はないのではないかな、このように考えているところでございます。
○山井委員
この十分の一から六分の一に引き上げるというのは非常に大きな差で、非常に大きな後退ではないかなというふうに私は心配に思っておりますが、まさに危機感を感じておられる議員の方々の理解を得る努力をこれからも続けていただきたいと思っております。
最後になるのですが、最初にも申し上げましたように、地方分権には三ゲンが必要で、財源と権限と人間が必要だということであります。私が自治体の職員さんからよく聞く声は、財源もない、権限も非常に少ない、新しいことができない、結局は横並び意識になってしまうということで、残念ながら新しいことを、その町独自のことをやっていこうという思いが非常になえてしまっている現状があると思います。そういう意味では、地方分権の一番中心な柱は人でありますから、そのような地方分権の受け皿となる地方自治体の人材の方々をどうやって育成していくかということも大切な問題だと思います。
一つ具体例になりますけれども、福祉関係者が一番困っているのが、介護保険を導入する去年の四月には、割と市町村の中のエースの方が介護保険課長とかになられて頑張っておられた。ところが、そろそろその方々がもう交代の時期になっていられるわけなんですね。だから、そういう意味では、なれたころにかわってしまう、二年交代ぐらいでかわってしまう。本来だったら、やはり五年でも十年でも、私は、マイナス面もあるかもしれませんが、責任ある仕事というのはやっていただきたいと思っております。そのようなことが起こるのも、やはり財源も権限もないから、上から言われたことをやるだけだから、だれがやっても同じだというような退廃的な気分が支配しているからではないかと思います。
分権と並行して、このような横並び意識から脱却した創造性のある人材の育成が急務だというふうに思うんですが、そのことについて、それに向けた援助や取り組みについてお伺いしたいと思います。
○遠藤副大臣
確かに、地方分権は制度も大切ですけれども、最終的には人でございます。やはり人材が地方に集まるような仕組みをつくらなければいけない、あるいは、現在ある職員の皆さんが、きちっとした、能力が研さんできるような、そうした制度というものをつくっていかなければいけない、このように認識をしております。
したがいまして、採用試験のあり方等につきましても検討をしたいし、職員の研修の共同実施とか、地方公共団体間の人事交流、あるいは社会人を中途採用する制度だとか、そういうものをつくる。
総務省といたしましても、こうしたことを支援するために、人材育成に関する基本指針を策定する考えでございます。また、人材育成等アドバイザーの派遣をする、こういうことも考えております。あるいは、従来からやっております自治大学校における研修制度だとか、市町村アカデミーに対して支援をしていくとか、そうしたことで地方にすばらしい人材が育っていくような制度をつくっていきたい、このように考えております。
○山井委員
そのような人材の方々が育っていく前提としては、やはり自主財源がたくさんあってやりたいことが発揮できるんだ、ある意味で、中央官庁と市町村の役所に勤めようと思ったときに、市町村の役所の方がやりがいが大きいと思えるようにしていく必要が分権社会ではあると思います。
ともすれば、二十世紀は中央が上で市町村が下請みたいなそういうイメージがあったわけですけれども、本来、私たち民主党が主張しておりますように、外交や経済やごく限られた部分だけを国がやって、より多くの生活に関連したサービスは住民の身近な市町村が権限と財源も持ってやっていくんだ、そういうふうな分権改革というのが必要だと思います。
そういう意味では、中央集権型から地域主権の社会づくりへ、そのための税制改革、いろいろな改革を片山大臣を先頭にやっていっていただきたいと思います。
質問時間が終わりましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。
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