新幹線選び
「京都駅、9時10分発ののぞみ号に乗れば、11時半に東京駅に着き、国会の食堂で昼食を食べられる」と私は提案した。しかし、上村君が調べてわかったのは、9時7分発ののぞみは車椅子席がなく、9時7分発の新型のぞみならオーケーということ。
そこで、17日朝9時7分京都駅発の、のぞみ号に乗ることが決定。となると、
近鉄新田辺駅は、何時の電車に乗ればよいか。
「まあ、8時20分発の急行に乗れば十分に間に合う」ということになった。
しかし、翌日、上村君からまた電話。「新田辺駅に相談したら、8時20分の急行は、新田辺駅では、すでに車椅子が乗り込む余地がないので、新田辺駅始発で、7時34分発準急なら確実に乗れるとのこと。そして最後尾の車両の後部乗降口から乗って欲しい、車掌が手伝ってくれる」とのこと。
予定よりも45分も早く出なければならない。
そして、17日当日。
朝7時前に上村君が運転する車で自宅から節子さんは新田辺駅に。7時20分に駅で上村一家と私たち(私と妻)は待ち合わせ。
新田辺駅前広場
新田辺駅では、まずは、エレベーターで二階の改札口へ。
改札へのエレベーター
切符売り場・介助者一人は無料
窓口で聞くと、介助者一人は無料とのこと。切符を買い改札口を通る。プラットホームへは、またエレベーターで一階へ。
改札口
改札よりホームへのエレベーター(ホーム側)
エレベーターでホームに着くが、ホームの端っこ(最後尾)に行くには、階段横の細くなった通路を、点字ブロックの上を通りながら移動する。
ホームにはこんなに細い通路が
点字ブロックの上を通る
この移動は介助者なしでは、危険を感じるだろう。
ホームから車掌さんに介助してもらい、無事、電車に乗り込み発車。乗降用スロープの準備はない。
車掌さんが介助をしてくれる
私はビデオ、私の妻はカメラを片手に乗り込む。私は一泊二日の荷物と、いつもパソコンを持ち歩いているので、それが入った大きなかばんを左手に、右手はビデオで節子さんの動きを追う。
妻も今日、東京で講演なので、書類のかばんを左手、カメラを右手に節子さんを追う。
この国会見学を記録に残し、車椅子の方々にも、健常者と変わらずに、気軽に国会見学に来てもらうためだ。私の事務所には、色んな方々が集い、みんなで、安心して暮らせる社会づくりの拠点にしたいのだ。
電車に乗り、「やっと、出発ですね」と節子さんに声をかける。
車内で・20年ぶりの東京です
東京に行くのは20年ぶりです。昨日は興奮して、眠れませんでした」と感慨深げ。
上村君(正確には「上村市会議員」)は、
「うちのおばあちゃんも数年前までは、車椅子に乗っての外出は、カッコ悪いと言って嫌がっていたのです。それで、家の中で閉じこもりになっていました」と。
また、上村君のお母さんは、「近所の人はバリアフリーの意味がわかっていませんでした。バスが無料になるのが、バリアフリーだと思っていました(バスフリー?)」と。
電車が宇治市大久保駅を越えたあたりで、車内は満員。たしかに、この状態では、車椅子は新たには乗る余地もないし、乗っても危険である。
満員の車内奥に節子さんが
京都駅
8時6分京都駅に到着。
エレベーターで一階に降り、みどりの窓口で障害者手帳を見せて、チケットを入手。
前もって、駅には車椅子で新幹線に乗ると予約は入れてあり、席も確保している。
みどりの窓口に、駅員さんがきてくださる。
京都駅・どこから新幹線のホームに行くの?
さて、ここからどのような経路で、新幹線のホームに行くのか。普通の改札を通るのかと思うと違った。
駅員さんは、どんどんと駅の端に、私たちを誘導する。着いたのは、貨物用の入口。
上の方に車椅子のマークが・貨物用入り口
貨物用通路を通って・・・
そこから入って貨物用のエレベーターに乗る。荷物といっしょに!
荷物といっしょに?貨物用エレベーターに
ホームの端っこ
そして着いたのが、新幹線のホームの端っこ。
「直接、ホームについてしまったら、二階のおみやげもの売り場が通れない。車椅子の人はおみやげを買えないのか。それにしても貨物用のエレベーターに乗せるのはひどい」と思った。
実は私は10年前にも、車椅子の知人と一緒に、東京に行ったことがあり、そのときにもこの貨物用エレベーターを利用したことがあった。
この10年、京都駅のバリアフリーは進展なしだ。
しかし、後でチェックして判ったのは、正規の改札を通ったところのエスカレーターには、車椅子が乗れるマークは入っているのだ。不思議なことだ。
おそらく、そのエレベーターの場合、車椅子で利用できるように設定を変える手間がかかるので、駅員さんは、貨物用のエレベーターに案内したのであろう。
エスカレーターの注意書き
待つこと30分間。やっと9時7分ののぞみが到着。
新幹線の車椅子用の入口
車両に車椅子のマークが見えますか?
駅員さんに介助してもらい、車椅子のマークの入った乗降口(普通よりちょっと広い)から入り、無事乗車。ここでも、乗降用のスロープなし。
車椅子用スペース
乗務員にお願いすれば使えます
車椅子用のスペースに座る。
その車両のすぐ横には、車椅子用のトイレもある。
しかし、素朴な疑問。
このスペースは一人分しかないが、車椅子の方が数人一緒に新幹線を利用したい場合、どうなるのか。
新幹線の中で、遅まきながら、東京駅から、国会議事堂の前にある議員会館までの移動を考える。車椅子用のリフトつきタクシーがあることを、事前に調べていたので電話する。
しかし、東京駅から永田町の議員会館まで、なんと14650円(普通タクシーで1200円程度)。
これは高すぎる。結局、普通のタクシーに乗ることにする。
東京駅
11時半に東京駅到着。
玉置事務所の秘書の竹鼻さんが出迎えてくださる。
駅員さんに相談し、丸の内口に向かう。
しかし、これが悲惨。京都駅と同じく貨物用運搬用のエレベーターに乗り、暗くて汚い地下通路を移動。5分くらいで丸の内口の到着。
東京駅でも、貨物用通路を通る
暗くて長いトンネルのよう・・・・
タクシー
丸の内口からは、タクシー。節子さんは松葉杖をつかっての移動ができるので、普通のタクシーにも何とか乗れるようだ。車椅子はたたんでトランクに入れる。
車椅子はトランクに
普通のタクシーに移動できない方は、リフトつきタクシーを利用しなければならず、料金は10倍。・・・・
国会議事堂
議員会館に到着・国会議事堂が見えます
やっと、11時45分に、衆議院第一議員会館240号の、私の部屋に到着。
議員食堂
一休みしてから議員食堂で、お寿司を食べる。「江戸前のお寿司は美味しい」と節子さん。
議員食堂で昼食
その後、上村一家はバリアフリーに対応したホテルに宿泊。
晩は、節子さんの希望で銀座に行った。車椅子での「銀ブラ」である。
議員会館
翌日は、朝からバリアフリーの専門家である、玉置衆議院議員の事務所をみんなで訪問。
玉置議員の部屋で
議員会館に入ったところの車椅子用エスカレーターに乗る。上がったところが一階。そこからはエレベーター。
議員会館のホールから1階へのエスカレーター
衛視さんが介助を
会うなり玉置さんは、満面の笑みを浮かべて「節子さんのおかげで、私は当選できました!」と歓迎の言葉。
これには多少説明がいる。今回の選挙(2000年6月)の2000人決起集会で、節子さんが玉置さんに、応援の花束を贈呈したのだ。2000人の観客の前で、車椅子の節子さんがスポットライトを浴びた。バリアフリーを公約の柱と掲げる玉置さんにピッタリであった。翌日の地元紙に大きくその写真が載り、玉置さんの政見放送にも、節子さんから花束を受け取る、そのシーンが放映された。政見放送の日に節子さんは、「今晩、私がテレビに出る」と、ベッドの上から知り合いに電話を、元気にかけたそうだ。
このように選挙によって、節子さんが出番を持ち、元気になった。後日談だが、選挙が終わって、出番が減り、節子さんは少し退屈しておられたので、この国会見学はちょうどよかった。
そんな事情があったので、玉置さんは節子さんにお礼を言ったのだ。
それから、歩いて5分の民主党本部の7階に行った。
議員会館の前
10時から常任幹事会がある。その部屋の前に、私たちは陣取った。
そして、「20年ぶりに東京に来た方です。バリアフリーのチェックをしながら、京都から民主党本部まで来ました」と、常任幹事会に入る直前の、鳩山由紀夫代表、羽田孜さん、菅直人さんに立ち止まってもらい、車椅子の節子さんを囲んで、大急ぎで記念撮影。
菅直人さんと
羽田孜さんと
鳩山由紀夫さんと
菅さんは、「民主党本部は、一番バリアフリーが遅れているんじゃないですか」と冗談を言って笑わせてくださった。節子さんも「一生の記念になった」と大喜びであった。
午後は、玉置さんが主催する「交通バリアフリー」の勉強会に上村一家は参加。
その勉強会には、私をバリアフリー問題に開眼させてくれた、、今福義明さんも電動車椅子で来ておられた。懐かしい!
10年前。今福さんと一緒に、東京中をバリアフリーチェックしながら旅行をして、私はバリアフリー問題の切実さを、今福さんに教えてもらったのだ。
当時、今福さんは京都に住んでいて「アクセス京都」という雑誌をつくっておられた。不自由な身体でワープロを打つ姿は感動的だ。その今福さんは、今は東久留米市に住み、今日、10年ぶりに名刺交換をしたら「アクセス東京」となっていた。
東京近郊のアクセスを、現在も今福さんは電動車椅子に乗りながらされているのだ。今福さんと別れて10年。その間、ずっと今福さんはバリアフリーのために生き抜いてこられた。
私も志を同じくし、福祉に生き、このたび国会に来て、バリアフリー問題に乗り組んでいる。そして今日の再会。うれしい。今福さんと記念撮影し、これからの共同戦線を誓い合って別れる。
また、「NO
PITY(哀れみはいらない)」という素晴らしいアメリカのバリアフリー運動の本を日本語に翻訳された、石毛えいこ事務所の秋山さんも、その勉強会に来ておられた。
そして、上村一家は国会議事堂などを見学し、18日の夕方、京都に戻った。
18時28分。上村君から私の携帯電話にメッセージが入った。
エスカレーター
「無事、いま、京都駅に着きました。帰りは貨物用の通路ではなく、ちゃんと京都駅のエスカレーターに乗って二階に降り、そこでおみやげを、今、買っているところです」とのことであった。
無事に旅が終わって何より。
しかし、上村一家の帰りは意外と大変だったようだ。
というのは、事前に駅への連絡をしていなかったために、
車椅子マークの改札口を通ると、階段があった。
駅員さんに尋ねると、ほかの乗降口を教えられた。
そこへ行くと事務所に行ってください。
事務所に行くと、あの改札で待っていてください。
そして駅員さんの案内でエレベーターへ。
駅員さんに訊ねると「事前に、どの方向から来て、どの方向に向かうか」を、知らせて欲しいと。
車椅子で、新幹線や電車に乗るときには、事前に乗る駅に連絡する。
降りる駅、次はどの電車に乗るかなどを、連絡しておくほうが駅員さんの協力や、乗り降り口(階段・スロープの有無など)の便利さが判る。
また、車椅子のみならず、足腰の弱った高齢者の方々、身体の不自由な方々が、自由に乗り降りできる交通機関を望みたい。
このような不便さがないようにするのが、バリアフリーである。
福祉の拠点・240号室(衆議院第一議員会館)
私の議員事務所衆議院第一議員会館240号室は日本の福祉の拠点にしたい。
このように車椅子の方でも、何とか国会見学はできますので、ご関心のある方はお越しください。もちろん、車椅子でない方も大歓迎です。
気軽に第一議員会館240号を訪ねてください(連絡先は下記)。
私は、2月からは火曜日から金曜日までは原則として国会事務所にいますので、皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています。
やまのい和則 国会事務所
100-8981東京都千代田区永田町2-2-1
衆議院第一会館240号
電話 03-3508-7240 FAX 03-3508-8882