良質なグループホーム拡充に向け
営利法人にも建設費補助を |
このインタビューは 高齢社会をささえるシルバービジネスの経営情報誌「シルバーウェル ビジネス」のスペシャルインタビューとして掲載されたものです。 |
ご存知のとおり、グループホームには単独型と併設型とがありますが、これまで、厚生省の建設費(施設整備費)補助は併設型にしか出ませんでした。 それではおかしいので、私は昨年8月4日の衆院厚生委員会で単独型ゲループホームにも補助金をつけるべきではない!と提案しました。 ちょうどタイミングよく、同月末、厚生省(当時)は2000年度の補正予算要求に単独型グルーブホームヘの建設費補助を盛り込みました。 介護保険サービスは本来、自由競争のはずですから、社会福祉法人と医療法人には建設費補助が出て、NPQ(特定非営利活動法人)や営利法人には出さないというのは不公平なことです。 ここで思いあたることは、介護保険が導入される直前まで、厚生省は「介護保険のマーケットは自由市場であり、民間活力をどしどし活用する」と盛んにPRしてきたはずです。 しかし、介護保険スタート後 8か月経った現在、厚生省は、相変わらず、医療法人や社会福祉法人中心主義で、NPOや営利法人には冷たい。 実際、私のところにも、こうした法人さんからの抗議や問合せが殺到しています。 厚生省のスタンスは、介護保険導入前と後では、変わってきているように思うんです。 確かにNPOにはまだ不安定なところもありますし、営利法人にもビンからキリまであって、私が視察した営利法人のグループホームのなかにも、質の悪い施設や事業基盤が弱い法人がないわけではありません。 しかし、それは建設費補助を出していないから行政も、いちいち口を出し難い、カネを出さないから見逃されているという現実もあるからではないでしょうか。 私があえて、「営利法人にも建設費補助を出すべきだ」という理由はここにあります。 お金を出せば、市町村も厳しくチェックをしなければならないので、資も確保されやすい。つまり、お金を出せば、必然的にチェックも厳しくなるからです。 補助の対象が広すぎるというなら、補助先の選定も市町村が担当して、 「市町村が良質のサービスを提供できると認めるNPOや営利法人」に限って、建設費補助を出せばいいと思います。 実は、さる2000年11月16日に行なわれた厚生省の全国担当課長会議で、 グループポームの開設にあたっては施設整備費補助の申請をする際に、 申請書に市町村長の意見書を添付するよう義務づけるなど、市町村とグループホームがより連携する方向が示されました。 また、最近、NPOの扱いに関して大きな変化がありました。 平成13年度予算で “一定の要件を満たしたNPO法人”、農協、消費生活協同組合等を対象に、 最高2000万円の建設費補助が行なわれることに決まったのです。 これは大きな前進です。 NPOを設立して事業をはじめようとする人もふえるでしょうし、現在の有限会社がNPO法人格を取って、グループホームをつくる際の建設費補助を受けるというケースも出てくるでしょう。 しかし、大きな前進ではありまずけれど、その反面、営利法人を排除するようで、これも問題ではないかと、私は考えます。
いままさにグループホームに必要なのは、質を伴った量の整備です。 グループホームは、現在、全国に約700か所しかありませんから、5000人くらいしか入居していません。 痴呆性高齢者は現在約160万人いると推計(厚生省)されていますから、約300人に1人しか入居できないことになります。 0.3%ですよね。これが2000年度の現実です。 2004年で3200か所にするとしても、入居できるのは2万3,000人くらい。 痴呆性高齢者はそのとき約180万人くらいになっていますから、それでも80分の1くらい、わずか1.27%です。 グループホームというのは、利用できなければ意味がない、「絵に描いた餅」ではなんの意味もない。 なのに、8割以上の自治体が依然として「1つもない」状態にあるんです。 介護保険の居宅サービスメニューの1つでありながら 「保険あってサービスなし」の典型です。 ともかく、グループホームは今後とも爆発的にふやさなければならない。 それには、社会福祉法人や医療法人に頼っているだけでは無理です。 営利法人にも早急に助成の手を差しのべるべきだと思います。 私の理想としては、中学校区に1つで1万か所を建て、小学校区に1つで2万5,000か所。 これを5年以内で実現したいですね。 グループホームの量をふやすうえでの最大のネックが介護報酬です。 グルーブホームの介護報酬は低すぎます。 いま、グループホームの介護報酬は要介護3で月額25万3,000円ですが、せめて30万円に引き上げるべきです。 それも早急に、です。 現在の介護報酬は、特別養護老人ホームが33万円、老人保健施設が37万円ですので、けっして高くないと思います。 介護報酬が低いとどうなるか。 採算がとりにくいため、基準ぎりぎりの体制になります。 すると、夜勤を組めない、職員を研修に出す余裕がないなどの問題が出てきます。 また、安い給料しか出せませんから、いいスタッフを集めにくくなります。 結果として、徘徊などの少ない、軽度の痴呆の方しか受け入れることができないということになってしまいます。 グループホームにとって、いいスタッフとは、痴呆ケァの知識と経験をもっていること、そしてこれが大事なのですが、グループホームケアとは何かをわかっていることです。 しかし、残念なことに、私が全国のグループホームをこまめに回って気づいたことは、まったくの初心者が介護の現場で働いていたり、十分な研修ができないためか、グループホームとは何かを知りない人も少なくないということです。 スタッフの質を高めることと介護報酬のアップとは、セットで行なうべきだと思います。 一方、利用者の側からみると、グループホームの入居費は、特別養護老人ホームや老人保健施設に比べて高すぎる。 これも早急に改善されなければなりません。 具体的には、特別養護老人ホームや老人保健施設で1人当たり月額6万〜8万円のところ、グループホームは1人当たり月額12万〜16万円かかりますから、2倍近い開きがあります。 気がついてみれば、グループホームは、 「ちょっと裕福で、処遇しやすい、軽い痴呆症のお年寄りが入る施設」になってしまう可能性があるわけです。 これはちょっと違うでしょう。 「徘徊があって処遇が困難だけれどもグループホームで生活したから、穏やかになった、というのが、本来の「痴呆ケァの切り札」としての、グループホームのあるべき姿のはずです。 おそらく厚生労働省は、2003年度の介護報酬見直しの際に、グループホームの介護報酬アップを示すと思われます。 「3年後に改定しますから、それまで我慢してください」といういい方もできるでしょら。 ただし、私は、3年後の見直しでは遅いと思います.もし、十分な介護ができないために、事故が起こったり、虐待が起こったらどうするのでしょう。 さらに、日本のグループホームが「終のすみか」ではなくて、 「最後まで面倒みきれませんから、別の施設に移ってください」といわざるをえない、 「軽い痴呆症のお年寄りのための単なる通過施設」どしてのイメージが世の中に定着してしまったら、どうなるでしょう。 特別養護老人ホームや老人保健施設の事業者から批判が出ることは間違いないと思います。 そうなってからでは遅いのではないでしょうか。
もっといえば、無駄な公共事業を減らそうというこの時期、内需拡大、景気回復のために、いま一番ニーズが高い公共事業は何かといったら、お年寄りの住宅とグループホームだと思っています。 政治の話でいえば、景気回復策としてもたいへんな効果があります。 大規模なダムや干拓事業より、地元に密着した、地域活性化事業につながります。 公共事業としてのグループホームを必要としているのは、都市部はもちろんのこと、地域活性化を求める町村部なのです。 都市部では、地価が高く、また、まとまった土地は確保しづらいですから、大規模施設よりもグルーブホームのような小規模なものを分散して整備するほうが無理がありません。 また、集合住宅などのなかに組み込むことも可能てす。 過疎、つまり高齢化が進んだ町や村にとっては、大きな老人ホームを町の真ん中につくっても意味がない。 なぜなら、そういった町村では大多数のお年寄りは集落に住んでいるのであって、集落に住んでいるお年寄りを大規模な施設に集めても、本当の幸せにはならないからです。 だからこそ、集落ごとにグループホーム、をつくっていく必要があるんです。 また、雇用拡大を図る意味でも、安定的な就職先を提供することになります。 グ'ループホームの問題は、一老人福祉の問題ではなく、内需拡大策であり、雇用を促進する意味でも、国家プロジェクトとして行なっていくべきだと思います。 |