鳩山由紀夫代表 と ホームレス視察 へ


 ■ホームレス訪問
  次に私たちが向かったのは、新宿区の戸山公園。

  ここには、約140人のホームレスの人たちが、青いテント小屋に住んでいる。
  多くが日中は週に2、3日、日雇いの仕事に行っている。7〜8割の住人が就労を希望している。

  最近は、普通のサラリーマンだったのにリストラによって、
  ホームレスになる人が増える傾向にある。

  公園の管理事務所に着くと、すでに岡田克也政調会長と鍵田節哉衆議院議員
  (ホームレス議員立法チーム座長)も着いておられた。テレビカメラが数台、新聞記者が数人。
  その報道陣を引き連れ、案内の方々と共に、鳩山さんが公園を歩いていく。

◆鳩山代表と話す

鳩山さんが、テントから顔を出している住人の方々に声をかけ話を聞く。
「何年、住んでおれるんですか」
「もう4年です」
「お仕事は?」
「今日も日雇いの仕事を探しに行ったけどなかったよ。ここ最近は週に1、2日しか仕事がないんだよ。俺たちも本当は、こんなとこに住みなくないし、申し訳ないとも思ってるんだけど、何しろ仕事がないんだから、アパートに住む金がないんだよ」

また、テントから顔をのぞかせておられた60歳くらいの女性の前にしゃがみこみ、鳩山さんは話を聞く。
「お一人ですか?」
「いや、とうちゃんと一緒に住んでるんだよ。今は父ちゃんが仕事に行ってる。でも、週に2、3日しか仕事がなくて、食っていけないよ」

「昔は、大阪で普通に働いてたんだけど、病気になったのをきっかけに父ちゃんが失業してしまって、こんなとこに来ることになったのよ」
「こんなところに住んでいたら、大変でしょう?」

「ええ、以前も見ず知らずの男性に、いきなり棒で殴られたことがあって、今でも肩が痛むんだよ。
昔は、普通の暮らしをしてたのに・・・」と言って、そのおばさんは泣き出してしまった。

「おばさん、きっといいことがあるよ」と、肩を抱いて鳩山さんは言った。

もうここに住んで3年だけど、やっぱり、テントは固くてゴツゴツして居心地よくないんだよ。それにジメジメしてねえ。アパートに住みたいよ。ここ触ってごらんよ」と、またおばさんは、テントの床を指差して涙ぐんだ。

「ほんとに濡れてるねえ」と鳩山さんは、テントの中の床を触りながら言った。

「とにかく、父ちゃんが毎日働けるように、職を増やしてください」とおばさんは言った。

◆のり弁当
その後、ホームレスの方3人と、私たち民主党議員でのり弁当(ほか弁屋で買った)を食べた。
そこでも夫婦でテントに住んでいる別のホームレスの女性が言った。

「まだ女性一人だったら、住める施設がある。でも、夫婦そろって入れる施設がないの。
それを鳩山さんに言いに来たの」とのこと。

また、もう一人のとび職の男性が言った。
「ここの公園にいる野宿者は、『福祉のお世話にはなりたくない』という自立心の強い人間が多い。
でも、仕事がない。野宿に一度なっちゃうと、住所不定だから、職安に行っても、安定した仕事には雇ってくれない。結局、週に1、2度あるかないかの、日雇いの仕事しかないんだよ」

また、もう一人の男性もサラリーマンだったが、3年前にリストラにあって、ここに住みついたという。

◆自立支援センターで解決できない
では、解決策はどうすればよいのか。1つの方法は自立支援センターの整備である。

自立支援センターに2、3ヶ月入居し、そこを住所として、その間に仕事を探し、自立していくのだ。

この自立支援センターによって、職を見つけ、自立していく人は多い。

しかし、東京都には5600人のホームレスがいるのに、自立支援センターは3ヵ所で合計230人分、
つまり、4%分しかない。そのため、自立支援センターの入居希望者は多いが、実際に入居できる人は少ない。

◆補助金が低い。
まず、自立支援センターへの補助金は、厚生労働省からは5%分しかでず、95%が東京都のお金でまかなわれている。この補助金の少なさ、裏返せば、国の補助の低さ。

◆反対運動
もう1つは、自立支援センターを建設する際の周辺住民の反対運動により、自立支援センター建設が進まないことも問題である。

◆呼び寄せ効果
ホームレス問題を考える上でのキーワードの1つは、「呼び寄せ効果」という言葉だ。つまり、ある自治体がホームレス支援に力を入れると、そこに他の都市からもホームレスの人々が集まってしまう。

これを「呼び寄せ効果」と呼ぶ。だから、国の補助金でやるならまだしも、自治体が、多くの自主財源でホームレス対策を講じるのは、今の財政難の時代には、非常に難しい。

◆臨時設置法案

そこで、今私も提出者の一人として、「ホームレスの自立支援臨時措置法案」という議員立法を提出し、与党の賛同も得て、超党派で成立させたいと考えている。

これは、ホームレス対策への国の責任と、自治体への財政援助を明記した法案である。

◆自立したい!

今日出会ったホームレスの男性は言う。「俺たちホームレスの人間も、行政にずっとお世話して欲しい、食べさせてほしいなんて思っていない。ただ、仕事に就くまで自立支援して欲しいということです。このままホームレスのままで放置するよりも、短期間だけ、自立支援センターで、就労支援を受けることによって、自立できたら、行政にとっても、社会にとっても、決して高くつかないと思う。俺たちも、仕事をせずに社会のお世話になるよりは、汗を流して働いて、税金を納めたいと思っている」

のり弁当をホームレスの方々の話を聞きながら食べ、その後、帰りの車に乗り、代議士会へと向かった。

◆最低生活保障を目指して

車中で、隣の席の鳩山さんに、「厳しいですねえ」と私が感想を述べると、「テントは衛生面も悪いよ。この臭いなんの臭いかわかる?」と指の臭いを私にかがせる鳩山さん。変な臭いだが、首をかしげる私に、「オシッコの臭いだよ。さっきのおばあさんが、『テントの床が湿ってる。触ってごらん』
って言ってたでしょう。床がオシッコで濡れてるんだよね。そんなところで毎日寝てるんだよね・・・・」と言って、鳩山さんは言葉に詰まった。

1月27日の深夜も、寒くて東京では雪が散らついた。その晩、新宿駅で野宿をしていた男性が亡くなった。

ひと昔前は、「ホームレス=怠け者」と見られた。確かに一部にはそういう人もいるであろう。しかし、最近ではホームレスの人々の7〜8割が職を探しているのだが、実際、50歳を越えるとほとんど職がなく、特に、一度「住所不定」になると、定職に就くことは至難の技である。

働く意欲がある人は仕事に就ける、アパートなど屋根のあるところで、最低限の人間らしい生活が
「権利」として送れる日本にするため、精一杯、私も頑張りたい。


一度「住所不定」になると、定職に就くことは至難の技
 就職のために試験なり面接を受けると、採否の結果が会社から知らされる。「住所不定」では、その通知を受けることができない。また、採用する側としても住所のある人と住所不定の人がいたら、よほど住所不定の人の方が優れていると認められない限り、住所のある人を選ぶのは、不思議ではない。


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